フリンズについて……
なんか、あのお兄さんは不思議な感じがするよね。でも、あの人の知恵というのは素直に尊敬に値するよ。……後、サンドローネに仕事を投げるときに、その言い回しは参考にさせて貰ってるよ。
「──グエッ!?」
顔面に叩きつけられる冷たい感触と、背中にかかる二人と一体の体重を受け、思わず情けない呻き声が漏れる。
更に波が寄せる度に、水が各所の包帯に染みて痛い……
「も、戻って来れたのか……?」
「そうみたい。危ないところだった……」
「……スカラマシュ、大丈夫?」
「大丈夫じゃないから降りて欲しいかな……ちべたいし、息できない」
冷たいのもそうだが、砂に顔面が押し付けられてるせいで息苦しいのだ。
折角、元の場所へ戻ってこれたのに、こんな情けない理由で最期は迎えるのは、それこそ末代までの恥だろう。
「全員、無事に戻れたようだね」
「うえっ……口の中にも砂が入った……」
口の中に残った異物感に顔をしかめながら、貼り付いた砂利を払っていく。
その時、その様子を見下ろすアルレッキーノの手が仄かに燃えているのが見えた。
「アルレッキーノ、その手は……」
「ん? ああ……これは只の代償だ。気にすることはない」
「そ、そんな……!」
「アビスは君達を閉じ込めようとしていた。私はその意に反して、君達を連れ出したんだ。アビスがそれに憤るのは当然だろう?」
以前、彼女が見せてくれたように、彼女の腕は既にアビスと融合してしまっている。
仮に旅人が月髄へしたようにアビスの浄化をしようものなら、彼女の腕は消滅してしまうだろう。
「君達に借りを作るため……その魂胆が無いとは言いきれないが、こうしたのは契約を履行したに過ぎない。そうだろう? コロンビーナ」
「うん。約束通り、虹月の月髄を君に預けるね。これから双界の炎は盛んに燃え上がると思う」
アルレッキーノが手を翳すと、月髄は炎のように揺らぎ、その身体へと取り込まれていく。
前にサンドローネがプロンニアに月髄を持たせた時とは異なり、まるで彼女の身体の一部のようだったかのように溶けていった。
「……ああ、確かに受け取った。さあ、手を伸ばしてくれ。私からの月光を受け取ると良い」
そうして、アルレッキーノの手がコロンビーナの手に重なり、双方に仄かな光が宿る。
「うっ……」
しかし、当のコロンビーナは何処か苦しげな表情を浮かべていた。
「だ、大丈夫か?」
「うっ……私の中で異なる力同士が反発し合ってるみたい……」
「霜月の権能のみで他の月の力を操るのはやはり、難しいのだろう。だが、少なく見積もっても第三位の水準までには戻った」
第三位の水準……か、今の『月の狩人』に対抗するには果たしてその水準で事足りるのだろうか?
……いや、こんな事などわざわざ聞かなくても、その本人が一番よく分かっていることか。
「……駄目。まだ足りない……これじゃ月の狩人に対抗できない。もう一度……もう一度、月の力を分けて……」
苦しげに、今にも消え入りそうな声でコロンビーナは言う。
「……分かった」
片方には旅人、もう片方にはアルレッキーノの手が重なる。
再び重ねた手が光、月光がコロンビーナへと流れていく。
少し苦しそうな表情を浮かべながらも、彼女はそれを堪え続ける。
そうして、力を得た彼女に呼応してか、足元の色を失っていた草花が青く染まっていった。
「……どうだ? コロンビーナ、今は戦えるだけの力はあるか?」
「うん……少なくとも、前みたいに隠れないで済む」
「む、無理はするなよ? お前、だいぶ苦しそうだったぞ」
「ありがとう、パイモン。でも、私はあの人にナド・クライに存在し続けて欲しくない。ワイルドハントも……復活した『月の狩人』も本来、在るべき場所に戻って欲しい」
「目標があるのは良いことだ。過去の君より、今の君の方が生きている感じがする」
そう言ってアルレッキーノは懐かしむように目を細める。
「初めて君に出会った時、君は月光というより何処からともなく、漂ってきた霧のようだった。風に吹かれたら消えてしまう……そんな曖昧な霧だ」
以前、フォンテーヌでオルゴールを購入した際、職人は言っていた。
失われた三月の中で霜月は最も明るい月であったと。
今のコロンビーナは様々な人と出会い、明確な未来への目標を見つけている。
それはまさに月光のように彼女を──コロンビーナと足らしめるものへとなった。
そして、それは俺のような人間からすれば、恐ろしく眩しい──それも直視なんて出来ないほどに。
「願わくは君が持ち得たその光を永遠に失わないことを願おう」
「ありがとう、アルレッキーノ。でも、アルレッキーノも何があってもアビスに呑み込まれないで。君が『月の狩人』みたいになるのは嫌だよ」
「ああ、肝に銘じておこう」
執行官が、自らの危険を承知で、その席に座るのは各々に叶えたい目的がある故。
彼女もその例に漏れず、自身の目的のために力を求め続けている。
「それにスカラマシュも、無理ばかりしちゃ駄目だよ。 扉を潜る前もぼうっとしてたよね」
「別にそこまでのことじゃ……」
「……スカラマシュにも叶えたい目的があるのは知ってる。でも、スカラマシュが苦しんでる姿を見るのは嫌だよ……」
「どうやら、これは一本取られたみたいだね、スカラマシュ。奇遇にもサンドローネも同じようなことを言ってたよ」
ふと、脳裏に浮かぶのは、俺が『月の狩人』と初めて戦って、実験設計局へ帰った後の事。
確かにあのサンドローネがあそこまで狼狽しているのは初めて見たかもしれない。
「……はい。肝に銘じておきますよ」
「そうすると良い……フフッ、コロンビーナ。君には新しい名前が必要なのかもしれないね」
「新しい名前?」
「月の少女、クータル、コロンビーナ。それらは全て肩書き──若しくはコードネームであって、名前ではない。無論、『壁炉の家』でもよくコードネームを使う。しかし、人は本名で自我を定義するものだ。昔の君には名前があってもなくても、どうでも良かったのかもしれない。しかし、今は君は、己の経験も踏まえて、その自我を定義している……故に『月の狩人』を倒したら、検討してみてくれ」
かつて、銀月の庭でコロンビーナは言った。
月霊──コロンビーナ自身にも名前が無いと。
彼女が自らを定義する名前──果たして、それはどんなものだろうか?
そして、コロンビーナは前にこうも言った。
俺の──ファデュイ執行官第六位『
俺は自分の名前が嫌いだ、それは今も変わっていない。
何も掴めなかった──ただ、手の中のものを落としていく俺の名前が、あの時から何も変われてない俺が、いつも周りだけがいな──
「……スカラマシュ?」
「……ん? どうかしたかな?」
「ううん……今、とても悲しそうな感じがしたから……」
「そうだね……コロンビーナの成長ぶりに思わず寂しさを覚えちゃったのかもね。およよ……見ない内に立派になって……」
「なんで、お前は親みたいな事を言ってるんだよ……?」
「失敬な、パイモン殿。コロンビーナの情操教育には俺も一枚噛んでるんだぞ?」
そのせいであらぬ噂を広められた事については、今も納得していない。
如何なる事があろうと、俺は冤罪を主張する所存だ。
「うん……でも、またスカラマシュと一緒に寝たいな。ポカポカしてとても気持ち良いから」
「……『散兵』
「えっ……いやいや、俺は何も悪くないでしょ?」
ま、まあ……端から見たら誤解を招く発言ではあるが、幸いここの面々は理解が──
「あっ、でも、抱いてもらうとね。ドキドキとポカポカが両方あって不思議な気持ちになるんだよ」
「ふぇっ!? ///」
違う違うそうじゃそうじゃない……いや、本当に違うからね?
あと、パイモンも赤面しないで。俺は全くの無実だから。
「『散兵』……」
「違うっす……きっと、言葉の綾なんです。頼むからそうだと言ってくれ……!」
「……スカラマシュ、君はもう少し、節操というものをだね」
「えっ? アルレッキーノさんもそっち側なの?」
何はともあれ、虹月の月髄を手に入れ……コロンビーナも少なくとも戦えるだけの力を得た。
現状にて、収束への大きな前進を果たしたのだった。
──いや、俺の風評被害はますます悪化してるんだけど……まともなのは俺だけか!?
「おっ、これはなかなか美味しいぞ!」
「フフッ、でしょ? 私がスカラマシュから初めて貰ったお菓子なんだ」
「ほど良い甘さで食べやすいな!」
「あまり、食べすぎると夜ご飯を食べられなくなるよ?」
「そこは心配いらないぜ! お菓子は別腹だからな!」
……パイモンには胃が2個あるのだろうか?
コロンビーナもそれなりに食べるが、今回はパイモンが彼女以上に貪っている始末。
おかげで俺の手持ちが空になってしまった。
「──おや、皆さん。安心しました。ご無事だったようですね」
そう言って前から現れたのは霜月の里の詠月使と長身のライトキーパー。
確か、ラウマさんとフリンズさん……だったか。
「あっ、フリンズ、ラウマ! そっちはどうだった?」
「ああ、問題無い。ただ、ネフェルとヤフォダさんは『秘聞の館』で情報の整理をしているため、しばらく合流出来ないそうだ」
「帰り道でイネファさんとアイノさんにお会いしました。調査は予定通り進んでいますが、もう少し時間が掛かるそうです」
そう言うフリンズさんの表情はどこか明るく見える。
そして、そう思ったのは俺だけでは無いようだ。
「おや、どことなく表情が明るく見えるな」
「ええ、与えられた任務を完了しただけでなく、良い出会いがありましたから」
「良い出会い?」
「戦いは退屈なものでしたが、この勇敢なお二人と知り合えたのです」
フリンズさんの背後から歩いてくる二人の足音。
その内の一人はまるで龍を思わせる角と尻尾を持ち合わせており、緊張しているのか浮かない表情で俯いていた。
「やあ、久しぶりだね。旅人とパイモン」
「あ、アルベド……ともう一人は?」
「ほら、皆に挨拶をするんだ」
「う、うん……えっと、初めまして……いや、久しぶりかな?」
「お前……まさか、ちびドゥリンか!?」
「うん、そうだよ。会えて良かった」
ドゥリン──俺の知識が間違っていなければ、かつてのモンドを襲った魔龍の名前だ。
あらゆるものを腐蝕する猛毒を持ち、その襲来の折には数多の犠牲者が出たという。
そして、もう一人……パイモンは彼をアルベドと言ったな。
モンドの主席錬金術師……その知識及びに実力は未知数。
それ故に、ファデュイが要注意人物としてマークしている者の一人だ。
「本人によると、もう
「もう小さい子供じゃないからね……」
「面白いと思わないかい? 人間社会へ参入する一歩として、自分の名前と見た目があっているか気にすることだなんて」
「へへ、今のお前、なかなか良い感じだぞ!」
「ありがとう、パイモン。改めてよろしくね」
「旅人、君の周りには様々な人々が集まるね。ファデュイでもここまで多様な人々が集まる事はそう無い」
「まあ、集まるにしても大抵は周りの顔色を伺ってばかりだけどね」
何せ、其処へ集まる面々にとっては一つの失言で、自らの首が飛びかねないのだ。
当然、慎重にもなるし、相応の緊張もあるだろう。
「皆さんの様子から察するに、任務の方は上手くいったようですね」
「それにしても……大所帯になったな。後程、霜月の里から椅子を持ってこよう」
「大丈夫だよ。もし、足りなくなったら錬金術で作ろう」
「お気遣い痛み入る。だが、私は一度、実験設計局へ戻らなくてはならない。サンドローネと話したいことがあるのだ。どうかお気になさらず」
「助力に感謝する」
「ありがとう、アルレッキーノ」
「真の友人であれば、互いに礼儀に拘る必要はない。こうして手を取り会えた事を嬉しく思う。……スカラマシュ、皆の事を頼むぞ」
「まあ、やれることはやるさ……それと、サンドローネに伝言を頼んで良いかな?」
「ああ、伝えておこう」
「なら、追加の薬を頼むって伝えておいてよ。意外と消費ペースが早くてね」
「分かった、伝えておこう。だが、サンドローネは難色を示すだろうね……あまり、彼女に心配をかけないでやってくれ」
「俺もそうしたいのは山々だけど……どうも状況が許してくれなくてね」
「……そうだな。では、ここでお別れだ。皆の無事を願っている」
「うん。またね、アルレッキーノ」
そう言ってアルレッキーノは来た道を戻っていく。
その背中が見えなくなるまで、コロンビーナは手を振っていた。
「えっと……『散兵』。薬って……?」
「まあ、物事には何かと代償が必要ってことさ。そこまで重大なことじゃないよ」
「で、でも……」
「それに、今は個人の健康状態よりも、優先すべき事が山程あるだろ?」
「……私は嫌だよ」
そう言ってコートの裾を掴み、引っ張るコロンビーナ。
「アルレッキーノがいなくなるのも……スカラマシュがいなくなるのも……私は……嫌だよ……」
「……大丈夫だよ。まだ、その予定は無いからさ」
「そ、そうだぞ! お前、コロンビーナを悲しませたら分かってるよな?」
「……ああ、そうだったね。なら、ちゃんと長生きしなきゃね」
嘘は方便……いや、どうだろうな。
『月の狩人』を倒した後、俺達は再び対立関係に戻るだろう。
それを考慮すれば、互いにこれ以上踏み込むのは得策ではないのかもしれない。
『──おっと、一人行っちまったみたいだが……なんか辛気くさい雰囲気だな。折角だし、一杯やるか? 仲間が増えたんだ。それを祝してって感じで』
唐突に、秘密基地の拡声器からはある騎士の声が吐き出された。
「……その実は貴方が飲みたいのではないのですか?」
『なっ、そ、そんなことはないぞ。決してここ最近、一滴も飲めてないからとかそういうのじゃない』
「説得力が無いぞ……」
「……どうやら、本当に椅子が足りなくなりそうですね」
流石は大団長と言うべきか、先程の雰囲気が嘘のようだ。
こればかりは素直に感謝するとして……今はこの不思議な協力関係の恩恵を享受するとしよう。
──いつか、互いに刃を向ける……そのときまで。
「入り口でのやり取りは聞かせて貰った。コロンビーナの同僚が一人帰ったんだろう? ここにいるのは元々いたメンバーと俺の同僚──」
そう言って、ファルカさんは横の仮面を付けた男性へ目を向ける。
「──で、こちらは誰の同僚なんだ?」
……あの仮面、『道化』の物と似ているな。
偶然……にしては、あまりに酷似し過ぎていると思うが。
「……この中で俺を知っているのは、旅人とパイモンだけだ。俺は──」
「──えっと、紹介するぜ! こいつは偉大なるガイドのパイモンとテイワット最強の冒険者の同僚……じゃなくて、友達のダインスレイヴだ!」
……あれ? 今、このお兄さん、ちゃんと自分で名乗ろうとしてなかった?
「おや、自ら名乗らず人に紹介を任せるとは、さぞ高貴な方とお見受けします」
「いや、何か言いたげな顔をしておるが……」
「……」
いや、このダインスレイヴさんはちゃんと名乗ろうとしたんよ。
ただ、パイモンに言おうとした事を全部、持ってかれただけで……
「ダインがオイラ達を探しに来たってことは、何か大事な用があるんだよな? もしかして、ワイルドハントの事か?」
「もし、ワイルドハントが俺達の共通の敵だと言ったら、これから始まる会議の席を用意してもらえるか?」
「ほう、同じ敵がお前をここまで導いたってことか。なら、大歓迎だ。しかし、そうなると椅子が足りないな。アルベド、頼む」
「久しぶりに会うのに、最初の命令が椅子作りなんてね。実に懐かしい……」
「えっと……アルベドは本当に懐かしいって思ってるのかな?」
彼らの関係について、部外者の俺がとやかくは言えないが、アルベドという人物も何かと仕事を投げられる側だったらしい。
モンドが自由の国といえど、要職に就いている人間は多忙のようだ。
「お前のお兄ちゃんだろ? そういうのはオイラ達より、お前の方が詳しいんじゃないのか?」
「えっと……僕、まだ言葉を勉強中だから、アルベドの言い回しを理解するのはまだ難しいんだ……」
「そ、そっか……でも、大丈夫だぞ。言葉って難しいからな。今の時点でドゥリンは十分にスゴいぞ!」
そうそう、言葉というのは本当に難しい。
ちょっと言い回しが違うだけで、簡単に別の意味になってしまって、根も葉もない誤解と噂ばかりが広まっていくんだから。
「……スカラマシュ? どうかしたの?」
「いや、別に……」
今度、機会がある時にコロンビーナには言葉の言い回しについて勉強させても良いかもしれない。
……主に俺の風評改善のために。
「そういえば、ネフェルの方はまだ終わっておらぬのか?」
「様子を見に行った方が良いかもしれませんね。お願いできますでしょうか? この中で彼女を呼びに行くのに最適なのはラウマさんでしょうから」
「私は『秘聞の館』から戻ってきたばかりなのだが……それに何故、私なのだ?」
「ネフェルさんは情報収集に長けている反面、なにやら秘密を隠しているように思えます。そして、彼女は秘密を共有する事を好まないタイプです。そんな彼女の秘密に踏む込むなど……僕には出来ません」
「それは……私であれば、問題はないという事か?」
「詠月使の貴女は僕よりも親しみやすい。それに同じ女性同士、互いに話が弾むでしょう」
……ああ、成る程。フリンズさんの狙いが分かった。
「そ、そうか。そういうことならば見てこよう」
そう言い、ラウマさんは基地の出口へと歩いていく。
「……あれで本当に行くとはな。文句を言う素振りも無かった」
彼女の姿が見えなくなると、ファルカさんは素で驚いたように言う。
「知恵というものは、他人に仕事を任せるときにこそ、真価を発揮するものです。自分にお鉢が回ってきそうな時は言葉巧みに立ち回る──彼女もいつかは知ることになるでしょう」
「或いはそもそも、『やらない』という選択肢もあるね」
「ええ、流石はアルベドさん。聡明なお方ですね」
まあ、要するに……フリンズさんがラウマさんに仕事をぶん投げたという事だ。
……しかし、これは俺の対サンドローネにおける立ち回りで有効活用できるかもしれない。
フリンズさんも見かけによらず、誰かに仕事をぶん投げるのに長けているのだろう。
「ハハッ……どうやら、会議を始めるにはまだ早そうだな。皆、しばらくは自由時間にする。忙しくなる前に楽しくお喋りしとくと良い」
ファルカさんもこう言った事だし……ここはお言葉に甘えさせて、少し休ませて貰おうか。
そうして、傍らの椅子に腰掛けようとした時だった。
「──っ!?」
ガタリと、椅子に座るにしては大きすぎる音が木霊する。
「スカラマシュ……?」
コロンビーナが心配そうな声でこちらへと呼び掛ける。
「……大丈夫。少し……足が痺れただけさ」
今、ほんの一瞬だけ感覚──否、意識そのものが途切れた。
疲労……いや、それだけじゃないか。
ここの所、まともに休むことなく、邪眼を連続して行使している。
実験設計局で『月の狩人』とやり合った時も、月髄を手に入れた時も。
サンドローネから貰った薬で抑えていた反動の影響が今、出てきたといった所か。
「……本当に大丈夫?」
「大丈夫。でも、少し疲れたから……会議が始まるまで寝るね……会議が始まる時、起こしてよ」
「……うん、おやすみなさい」
そう言って、鈍い痛みが頭を襲う中、俺は強引に目を閉じた。
『第六位』について②……
僕達、ライトキーパーとファデュイは互いに武力を持つ以上、牽制し合う関係です。しかし、こうして目的を共にして共闘する事で彼らも至って普通の人間であると理解しました。願わくはこの後も刃を交えることが無いことを願うばかりです。