ハードな国に転生したけどカッコ良く生き(り)たい 作:王の物置
知らない内に死んでいた件
《ユニークスキル『
「随分と大きな子だ!それに腹から出てきて一度も泣いてないと言うではないか、さぞ聡明な子なのだろう!」
…ここはどこだ?
目の前にいるのは無精ひげを生やしたオッサン…なぜこんな人が目の前にいる?
俺は、確か通学するために電車に乗って…多分寝落ちして、それで?
深く考えれば考えるだけ意識はよりハッキリとしてくる。
周囲を見渡せば知らない人ばかり…なぜ?もしかして誘拐…?
……天井を見れば随分と立派だ。こんなのゲームとかドラマでしか見たことがない、職人魂を感じる金属細工?に華やかな装飾が施されている。
仮に誘拐だとすればなんというか…豪華すぎやしないだろうか?
「おめでとうございます王よ。
……失礼な話になりますが分家や養子より後継者をお選びになると考えておりましたので、驚きました」
「そうか?私は元より実子を後継に据えようと思っていたのだが、少し遅くなってしまったがね」
王?養子?後継?何の話をしているのだ。
おかしい何かがおかしい…そこのおじいさん、今王って言わなかったか?
「あぅあう、あーう」
喋れない。いや、喋れないというより呂律が回らない感じだ。
もしかして俺は、俺が思っていた以上に緊急事態なのではないか?
手を伸ばせばその手は思った以上に短く、そして丸々としていた……まるで赤ん坊のようではないか。
「おー、どうした?腹が減ったのか?それともおしめか?」
そのまま無精ひげの生えたオッサンに………抱きかかえられる………やめろ!ヒゲ生えた面を俺に擦り付けるな!
抱きかかえられた、その触られ心地から自分の体の輪郭……
俺は赤子になっている。小さい赤ちゃん…
うん、夢だこれは。少しアニメを見すぎたせいでこんな夢を見ているのだ。
勧められたアニメを徹夜してまで一気見なんてするんじゃなかった。
「おしめは……大丈夫そうだな? ならばミルクか。もう時期、世話用の侍女が来る。それまで待っておくれ?」
夢なら早く覚めてくれ、というかもうちょっといい感じな夢が見たい!どうしてオッサンとおじいさんに赤ちゃんプレイされにゃならんのじゃ!
「しかし泣かぬな。少しばかり不安になってこんか?ラーゼンよ」
「王よ。そう心配する必要はありません。何かの病というのなら即時に治療を施しますとも。このラーゼン、全身全霊を捧げて治療に専念致します」
「うむ、いつも頼りになるなラーゼン」
……ラーゼン?どこかで聞いたような気がする名前だ。
顔を見れば見るほど何か思い出しそうな気がするのだが引っかかったものが出てこない。
「ご子息の誕生。新たな門出に際して心ばかりではありますが、祝いの気持ちを込めて贈り物がございます。
そして、王からはそのお子様に名をお与えください」
レジェンド?ユニーク?聞いたことある…聞いたことあるぞ、どこでどう聞いた…?思い出せ思い出せ
「…名はエドルス。エドルスだ…」
「エドルス、良き名です。このファルムスを統べる子に相応しい名かと」
ん?ファルムス…?ファルムスに、ラーゼン…?……えっ?
ファルムスってファルムス王国の?
え、じゃあ目の前にいる王って呼ばれたオッサンはエドマリス?え?
じゃあここってアレなの?転スラの世界?えもしかして俺詰みの国に転生した?え?いつ滅びるかは知らんけどヤバい?
流石に人生ハードモードでは?
「あぁぁー、あぅあぅ」
「エドルス、どうした?また腹が空いたか?もう少し、もう少し待っておくれ」
……これはもう夢じゃないな。諦めよう、現実を見よう。
俺はどうやら転スラの世界に転生したらしい。しかもファルムス王国にだ! いや、まだ決まった訳じゃない。
もしかしたら他の国に転生しているかもしれないし、そもそも転スラの世界と決まった訳でもない! そう、きっとここは転スラの世界ではあるけど俺が生まれたのは別の国なんだ!
だからこのオッサンはエドマリスじゃなくて俺の知らない誰かに決まってる!
さっきのはきっと聞き間違い、もしくは俺の聞き間違いだ!
「エドマリス王。異世界人召喚の件なのですが、今回は儀式に失敗したようで呼び出すことができなかったようです。その際に魔力が膨れ上がり怪我人が複数……」
「そうか…国力を増強する為にも異世界人の召喚は急務であったのだが……仕方ない、次は万全の状態で召喚を行え。そのための人員は惜しまん」
「はい。では、その様に……」
……聞き間違いであって欲しかった。
これはもう転スラの世界だ、間違いない。
というか転スラの世界に主人公陣営の身内じゃないところに転生はキツイ…
いい感じの年齢だった場合、もしかしたらテンペストへと駆り出されるかもしれない……そうなったら終わりだ、死亡確定だ。
そんな悲劇の運命は辿りたくない。痛い思いもしたくはないし、何より死にたくない! ならばどうすればいい?
やる事は一つ、力をつけることに決まってる。
普通に暮らせば殺されることはない?何かしら問題が起きても関係ないと割り切って逃げれば大丈夫?
ありえない、そんな事は出来ない。そんな事をしても外が危険なのは変わりないし、物語外でナレ死をしていたら目も当てれない。
何よりそれはカッコ悪い。せっかく好きだったラノベの世界に来たのだから俺もオレツエーしてみたいのだ。
ひとまず目標はリムルに会い、積極的に物語に関わってクロエを混乱させる事にしておこう。
死んだとしても、原作キャラと関われるのなら悔いはない。
「どうしたエドルス?おじちゃんの事が気になるか?ほれラーゼンよ、抱いてみよ」
やっとチクチクヒゲの親父から離れられた…抱いてラーゼンおじちゃーん!
「お、王よ。私、赤子の扱いには慣れておりません…!」
慣れておりません…!ごめん面白い。
そうは言っているのにヒゲおやじよりも抱き心地は良い感じだ…親父は豪快で優しくしようしとしているのは伝わるけど何だか少しぎこちなかった。
でもラーゼンさんはなんというか歴戦の主婦のごとく腕が定位置に置かれてめちゃくちゃ安心した……やはり年の功というやつだろうか?これからはラーゼンおじに抱いてもらうことにしよう。
んー、眠い…寝ないように抗ってみるけど眠いものは眠い。
「どうじゃラーゼンよ、エドルスは良い子にしておるか?」
眠らないように抗ってみるがそれを嘲笑うかのように意識は深い所へと落ちていく……
「はい王よ、とてもお利口にされております。眠たいのでしょう」
「そうかそうか、ならば寝かせてやるか」
前世の最期は電車の中で寝た。今世の最初は寝るのが仕事……
俺は赤子らしく本能に従い、惰眠を貪ることにした。
エドマリス王
この国の王にしてリムルを魔王になると決めさせた原因。大体こいつが悪い。目が利益にくらみやすいだけで良い人…のはず。念願のパパになれた人、息子の誕生に素直に喜んでいる。
ラーゼン
つおい。跡継ぎ問題が解決されたようで一旦安心、儀式失敗の過失をプレゼントでごまかすことが成功したのも安心。
エドルス
転生者。中二病。機能面を捨てカッコよさを選ぶ男。多分ユニークスキルの詳細は2話くらい後の話。