ハードな国に転生したけどカッコ良く生き(り)たい   作:王の物置

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危機に陥れば人は強くなれる件

「クックック…フハハハハハ!」

 

俺は自室で一人爆笑する…笑いが止まらない、スライム君がなんやこいつと言わんばかりに部屋の隅に寄っているが多分気のせいだ。

 

どうもエドルス(9)です。

いやー愉快爽快、笑いが止まらんぜ!

なぜか?それはついにラーゼンに対抗できる魔法をたぶん使えるようになったからだ。

めちゃくちゃ苦労した、失敗に失敗を重ね、何をやっても上手くいかなくてイライラすることも多かった。

 

 

だがその甲斐あって、この魔法を習得すればラーゼンに勝てる!……とまではいかないがかなりいい勝負ができるだろう。

 

その魔法の名は【写身(ドッペル)】。自分の分身を生み出すという魔法である。

 

生み出せる数は一体。記憶は作る瞬間までの記憶をそのまま引き継げる。

 

ただし、視覚共有はできないし分身が体験した経験はその分身を本体な吸収しなければならないという短所を持っているらしいが、性質上知識、技能のみだが二人で別々の内容を勉強するという影分身式修行がこの魔法があれば再現可能だし分身を出してからは活動させ続ける魔力は微々たるものという圧倒的なメリットが存在しているので場所と状況を弁えていれば使い得だ。

 

本当は本体で外にいきたいがどうせラーゼンに止められる…しかし!分身をとめる理由なんてある?

 

否、ない!これを使えば外がどんな感じなのかや外での物品の買い物など俺の夢が叶うのだ!

実用するのは初めてだがアレだけやったのだ、間違いなく成功するだろう…

 

「よしっ!実際にやってみるか!」

 

魔法を使用して分身を生み出す。すごく簡単にその場に自分であろう姿が形成されていく…少しゆっくりめだがあくびが出るほどじゃない。

 

「……えっと、こんにちは分身?」

完成したのを確認してから挨拶をしてみれば頭をペコリと下げ「はい、こんにちは本体」とだけ言ってまた黙る。

 

見た目、声。どれをとっても俺自身、どこから見ても俺にしか見えない鏡の中から自分が飛び出て来たみたいだ。

 

まさにドッペルの名を使うに相応しい魔法と言わざるを得ない、努力して覚えた甲斐が当然あったというものだ。

「うんうん、見た目は完璧に俺だな。どっちが本体か分からなくなるよ…嘘だけど」

「……………マジそれな?頑張った甲斐あったわ」

 

どうやら側だけでなく思考も完全に俺と同じらしい。

何を考えているか分からないのに分かる。頭痛が痛い並みに意味不明な感覚だ。

 

「なんかこれいつか分身を大量に出せるようになったら誰が本体かって殺し合い始まらない?えっ?大丈夫これ?俺?」

 

そういうと分身はフッやれやれといった様子で首を横に振ってくる。

さすが俺だ。何か考えがあるのだろう……

 

「まぁ、大丈夫。まだ互いが本体がどっちで分身がどっちかって分かってるから…そんな問題が発生するのは20人くらいに増えれるようになったとき…その頃には何か一つでも解決策は生まれているさ……きっと」

「うーん、未来の自分に託す方法で安心したよ」

 

さすが俺だ、考えてることも俺と同じである…事実その場しのぎができたら未来の自分がなんやかんやしてくれると信じている。

 

本当は良くない考え方だがやめられない…直そう直そうと思ってもやめられないのだ。

 

だってこれで上手くいくんだもん…上手くいくほうが悪くね?うん、こんな考えた方でも上手くいってるこの世界が悪いのだ。

 

「ね。マジで同じこと思ってる。正直一回うまく行ったら次も上手くいくって思うよね。」

「わかる、前うまくいったんだから今回もどうにかなると思ってやるよね。そしてそこでもうまく行ったら…」

「もう後戻りできないよね…」

 

うーん、楽しい。

 

自分と同じ考えを持つ話し相手が、意見を肯定してくれる話し相手…

最低限の会話で話が進んでいく感覚、気軽になんでも話せそうなこの感覚……

 

…はっ!これはヤバいやつだ!なんか擬態と似たような沼を感じる。これ以上やったら取り返しのつかない化け物に進化してしまう。

 

「あー、俺は本体の要望通りに外出るからちょっと準備するわ」

「準備…?」

 

何をするのかと思えば分身は鏡の前に立つと黒い煙を身体から放出する

「えっ、えっ?何してんの?」

 

何だか危ない予感がするのでスライム君同様部屋の隅に寄ってからその煙が晴れるまで隅の方で待機し、やがてその煙が晴れて…とそこには俺のは似ても似つかぬ17くらいの女の子が立っていた…

 

 

なかなかの高身長、大和撫子みを感じさせる雰囲気…宝石かと見紛うほど綺麗に光を反射する大きめの黒目…はねてる髪1本ない見入ってしまうほど綺麗に流れている黒髪。

 

控えめに言ってめちゃくちゃタイプである。

「DARE?」

「俺だよ俺、ユーの分身」

………何を言ってるんだこの人は?確かに俺っぽい雰囲気を感じなくはないが見た目も声も全く違う!脳みそがこんなのが俺だと認識してくれない…

 

「いや、えっ!?」

「うん、だから君の分身だってば」

そう言った女の子はケラケラと笑う。その笑顔はとても妖艶で思わず見惚れてしまうがすぐに我に返る、どうしても頭ではわかっているのに心がコイツが俺だと認識してくれない。

あまりにも可愛すぎる。

 

「え?何してんのお前?」

「ん?擬態しただけだけど」

 

や、ヤバい。これはヤバい。本当にヤバいとしか言えない…前までは自分自身が擬態している時のだった。しかし今回は分身という自分から切り離された存在がしている。

 

本体がやる、分身がやる…たったそれだけの差だが、分身に感覚共有がないせいで目の前にたつ美少女が自分だと脳が認識しない。

 

「分身も擬態使えるのか?てか魔力結構使うけど消滅しないのか?まぁ消滅するほど使わないからしないか……オサメルモノも使えたりするの?いやでもそれだと――」

 

自分の分身を見て照れているという事実から目をそらすように思いついたことを矢継ぎ早に質問する。

 

「…ちょっと落ち着いて?えっと最初の質問から行くね。擬態についてはなんか本体と繋がりみたいなものがあってその繋がりから受信する形になるから俺の魔力は消費されないよ。擬態が使えるのも多分本体と接続してるからだよ」

 

…なるほど、サーバーと端末みたいな関係か。

「……支配者(オサメルモノ)は使えない…使えないわけじゃないかな。ちょっと特殊でね、まあ基本的には本体しか使えないの認識で良いよ」

 

???…つまりどういう事か分からない。

 

つまりサーバーと端末的な関係は本体と分身の関係じゃなくてあのスキルと分身の関係を表してるのか?

 

擬態を手に入れたのがスキルの能力でだから、スキルの能力を使うことによって擬態が引き出されているってことなのか…?

 

いやでもそうなると分身が使えないと言っているのがおかしいことになる。

擬態のスキルは使えるけどその大元になる力は使えないのか?

木の枝を取れても木の根は取れない…的な。

うーん、やっぱ分からん!この分身の仕組みは考えるだけ無駄だな。

この世界に対して謎が増えるばかりだ…

 

「……うん、分からない。もうこの話はやめても良いよ。行ってらっしゃい」

 

考えるのを諦め、分身にそう促すと分身はコイツマジかよみたいな目でこちらを見てくる。

「…えっと、まだ土台ができただけなんだよね」

「?」

 

 

分身はコチラを見てやれやれといった様子で哀れんだあとに再度鏡へと向き直って話し出す。

 

「外に行くときは一つの顔を使おうと思ってるから」

「……?」

 

何が言いたいのだろうか?早く出ていってほしいのだが……

「すまない、はぁやれやれ…先が思いやられる。そこに座れ。きっちり説明させてもらうよ」

分身は鏡の前で目をパチパチさせたり、横顔を確認したり、髪を弄ったりしながら俺に指示する。

そこはかとなく感じる圧、これは何も言わずに従ったほうがいい奴だ。

 

 

「良い?これは外に出る時に固定して使おうと思ってる姿なんだよ。それなら目指すは完璧、だろ?だから今からやるのは微調整」

「あーね?」

 

なんとなく分かった気がする…確かに何事にもベストを尽くすという姿勢は大事だ。

 

…しかし…ここまでの熱量はなんか…擬態に沼っていた時に近しいものを感じる…コイツ本当に俺か?

 

そんな疑問を抱いてちょっと分身に視線を送ったりしてみるが分身は我関せずといった様子で眉毛を細めたり場所を変えたりしながら自分の姿を確認していく。

 

「……サイド減らして後ろに伸ばした方が良いと思う?今の方が良いと思う?」

 

知らん知らん!と言いたいところだけど正直見た目が気に入ったからどんな髪型でもいいと思う。

 

「まぁ今のままでいいんじゃね?」

「やっぱ思う?」

あっ、ちょっと嬉しそう。まぁ俺も自分が良いと思うのを褒められたら嬉しいもんな……めっちゃ分かるぜその気持ち。

こういうところを見ると俺の分身なのだと実感する…

 

「よしっじゃあ行っ―「髪型はこれでいっか。髪決めたら次は顔のパーツ配置だよな。ちょっと変わったら全然印象変わるからな」

分身は鏡の前でコチラに顔を向けながら自分の顔をジロジロと鏡で見ながらなんとなく動いてる気がしないでもないくらいの速度でパーツを動かしている。

…たまげたなぁ、いつまで続くんだこれは…

「ねぇもう良く「あ゛っ?」黙ります」

 

うーんこれはハズレ個体というやつを引いたのでは?

俺、本体なんやけど…なんか分身に力関係負けてる…どういう事や?

 

上下関係が本体<分身なの泣きたい。こだわりが強いやつは嫌われるぞー!

 

「なんやえらい大変そうやな…」

なんか隣から声が聞こえると思って見てみればピエロ男が座っている…どうやらもう一体擬態分身がいるようだ。

今度はエセ関西弁ときた、独特な分身どもだ…なんかあった事のがある気がするが気の所為に決まっている。

 

「お馴染み享楽の道化のラプラスさんやでー」

「あ、はい。お久しぶりです」

 

もう今日に色々おき過ぎである…ペースを考えて欲しい。この1年間大したイベントがなかったからってこの短期間で大量に起き過ぎだ。

「さっきから聞いとったけど喋り方素はそれなん?それなら今度からそれで話してくださいな。ソッチの方がワイはええと思うで」

 

「いや、大丈夫です」

……腹立つー。不法侵入の分際で何勝手に他人の家に上がり込んだ挙句、俺の話し方にイチャモンつけやがって…!許せん!

「なんか冷たない?」

「何しに来たんです?」

 

 

ラプラスの話を無視してそう聞けばせやせやと呟きながらソファにもたれかかって話し出す…何のようだろうか?

 

「色々あるんやけどまずはクレイマンのヤツからな。そろそろ夢で変わったの見た頃合いちゃうんかってな。前話した予知夢の性質上殆ど近い内に体験することらしいからアレやけど例外もあるんやろ?まぁ確認ってやっちゃ。なんもないならなんもないでええで」

 

成程、理解した。つまり夢の内容で役に立ちそうなのあったら言えってことね?オーケーオーケー。

 

……どうしよ、えっ?話す内容か……うーん、これ無いって言ったら一時の危機は回避できるけどそしたら利用価値なしと判断されるよな?

 

そうなれば相手目線俺は自分達の計画を看破されるリスクがあるのに大した情報を吐かない奴となってしまう。

 

そしてそこからこれは死刑で良いですね言われて二度目の人生が終了する未来がみえる。

 

……なんの話をするべきか、何か有益になりそうで情勢とかにほんのちょっと関係ありそうな話……

 

なにかないか?良い感じの話題……何も思いつかない。

 

「えっとー…ちょっと待ってくださいね。今考えますから」

 

それとなく分身助けての視線を送ってみたりするがシカトされる…面倒事は本体の仕事だろと言わんばかりだ。

 

 

…何かあったか?カリュブディスのこと?いやでも知ってたらおかしいよな…?いや強い恨みみたいなのを森の中でーとか言ったらワンチャンか。ゲルミュッドがしている名付けのこと話してみたりするのは?

 

「あー色々ありますけど…ソチラに関係ありそうなのはラプラスさんのような仮面をつけた人が魔物に名付けをして回ってるって言う夢ですね」

 

ラプラスの反応を見るべく、ラプラスの顔を伺ってみるがラプラスは何の反応も見せずちらりとコチラを見て話を続けろと無言の圧力をかけてくるだけだ。

「その夢は……なんだかその人がずいぶん焦ってる様子でした」

「なるほどなぁ…もうちょい詳しく教えて貰ってええか?ソイツの見た目とか」

 

……カマをかけたつもりだろうか?無駄である。ちゃんと俺はゲルミュッドの見た目を記憶している。

 

「えーっと、帽子をかぶってて全体的に白が目立つ服でしたね。仮面もなんかこう…鼻の部分が長いっ…立体的な、とにかくそんな感じのものをつけていましたね」

「そか、おおきにな。参考になったわ…ちなみにな~んで焦っとったかとかなんとなくでもわかるか?」

 

…どうやら今回は変なことを言わずに生き残ることが叶ったようだ。

……ラプラスからなんか試されてる感じがする、更に一歩踏み込んだ発言をしてもいいものだろうか?

 

どこまで言うべきか。魔王誕生とかの計画に触れることは駄目だ、全体にあり得ない…そんなことをすれば俺の危険度が上がるばかりだ。

 

計画の内容は知っていない形で話をしなければいけない…落ち着いて、ゆっくり言おう。

 

「何か予想外のことが起きたみたいな感じでした。誰かに追われてるっていう感じじゃなく、ここまでやったのに!という感じ……ですね」

 

「ほうほう、成程なぁ。」

……ラプラスの反応はマチマチといった様子。たぶん今回は生き残ることができただろう。

 

「……わざわざ丁寧に答えてもろておおきに!クレイマンの分は終わりやで!」

 

さっきから気になっていたがクレイマンの分、ということは他にも何かがあるのか…?誰から?……まさか…ユウキからなのか?

 

俺は色々と考えつつラプラスが答えを発するまで何も行動を起こさずただ待つ。不用意な発言は自分の寿命を縮めるだけだと理解しているからだ。

 

「そないな顔せーへんでや!次はまぁクレームやな。ワイからの」

 

「ラプラスさんからの…?クレーム?」

……ラプラスの言うクレーム、全く心当たりがない。何かやらかしたか俺?全く記憶にない。

 

「エドルスはん忘れているようやから言いますけどここ出たくなったらいつでも協力しますて約束しとったのに一回も出ようとしてないやん!ワイもな?商売人として一度やる言うたことはやりますねん!一回でええからやらせてください。」

 

拍子抜けだ、いやまぁこれでユウキの名前とか出されてたら俺の心臓がもたなかったけど…

 

そういえば確かにそんな約束をしたような気がする。完全に忘れていたがラプラスは覚えてたのか、それでわざわざ今日来てくれたのか?……ありがたい事だが裏がないかと少し勘ぐる…

 

「えっ~と……ごめんなさい?」

「ええわええわ!ほないで今日こそそこの分身さん使おて城抜け出すんやろ?お手伝いさせていただきまっせ!」

 

助かる、分身とは言えどどうせ俺の窓から飛び出していくので万が一俺の部屋から謎の美少女が飛び出す様子をみられていたら大問題になる。

こういった面では非常に助かる、分身もまぁ…俺の分身だし何か問題を起こすことはないだろう。分身とは言え俺が行動するのだから目の届かない場所に行くからってなんの不安もない。

「じゃあ今からすぐお願いします!」

「よっしゃ任せときー。ほな行くで!」

 

 

「待ってくださいね、まだ終わりません。」

「はえー、まだ終わらんのか?」

「そうだぞー。多少の妥協も大切「あ?」……ですよ…?」

 

 

多少の妥協も大切。そういった瞬間に空気が凍りついた。

分身から放たれるのは恐ろしい覇気、これが噂に聞く魔王覇気…?分身から放たれるのに本体の俺は恐ろしくて指一本も動かせそうにない。

 

「………ラプラスさんはまだしも本体はさっき話したよね?なのになんでそんなデリカシーのないこと言えるかな?ちょっと理解に苦しむ。本体はさっきの話聞いてた?妥協したら妥協しただけ後々響いてくるんだよ!例えば冒険者になるとする。同じ実力で同じ金額で雇えるなら可愛かったりカッコよかったりする…付加価値のある、華のある方を取るでしょ?良い見た目の冒険者を雇うだろ?ピエロだってそうだ、変なおっさんが芸をするのとピエロの格好したラプラスがするのじゃ全然印象が違うだろ?それと同じだよ!僕の言いたいこと分かった?」

 

 

「……なんか、大変そうやな。」

「分かってくれますか?」

 

 

コイツ問題起こさないよな?ていうか俺の分身だよな?!なんだか先のことが不安になってきた。




エドルス(本体)
なんか分身、ワシよりも立場強くね?となっているしこの1日で色々起きすぎてもう疲れ切っている。転スラで好きなキャラはシズさんとシュナらしい。

エドルス(分身)
外に行けるのでルンルン。エドルスの分身だとバレないように可愛い姿に大変身。普通に本体と同じ記憶を持つ分身のはずだが……?
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