ハードな国に転生したけどカッコ良く生き(り)たい 作:王の物置
目の前にはかの暴風竜、ヴェルドラが鎮座している…
一旦目の前の出来事から目を逸らしつつ現状の位置把握を確認が第一優先だ…まずココは封印の洞窟だということ…ならもう一つの方も必然と位置を割り出せる…
最悪の場所の候補として東の帝国の可能性もあったがそれは杞憂だったようで気配の距離的に絶対にあり得ない。多分だがもう一つの方はジュラの大森林ど真ん中くらいにあるはずだ…そこに何があるのかは置いといてそこに目印をつけるほどの何かがあったことには間違いない。
「えーと、こんにちは!」
こうしてぼーっとしていても仕方ないと思い、元気を振り絞って挨拶してみるが相手の反応はうんうんと頷いているのみ…どういうふうに思われているかは知らないがまぁ邪険には思われていないだろう。
ここの洞窟…暗いし怖いし目の前に立つどでかい竜も普通に怖くてチビりそう。よくこんなところに一人で来たなアイツ…まぁヴェルドラに会ってみたいってのがあるんだろうけど…
実際封印の洞窟に来たら自分も会いたいと思って行くだろうしこれに関しては許そう。
「よく来たな人間、元気にしておったか?草を取りに来たのだろう?」
「あ、いやその…」
…どういう関係なのかいまいちよく分からないんだよな。
俺にある記憶は草むしってヴェルドラ無視ってた記憶だし、詳しい記憶が存在しない。
あの分身めもう少し記憶を残せよ……
「えっと今日はヴェルドラさんに会いに…」
そう語ればヴェルドラはキョトンとした顔をこちらに向けたあと…満面の笑み?をこちらに向けて嬉々とした表情を浮かべる。
「我に?……ククク、クハハハハハ!そうかそうか!我に会いたかったか!」
いやなかなかの好反応だ。分身はコミニュケーション頑張っていたのだろうか?
記憶で見た限りだと碌な事してなかった気がするんだがまぁ一部始終しか見ていないので悪意のある切り取りだったのかもしれない。ヴェルドラは見た限り俺を警戒したりする様子はないし分身が何か変なことをしたわけでも多分ないだろう。
「我に何の用か?グフフフフ!話してみると良い!」
うわ笑い方キモ……相手の反応的に一旦前の自分の印象を引き出すのが吉と見た。
「えっと…俺はヴェルドラさんと仲がいいと思ってるんですけど…!ヴェルドラさんはどう思います?」
「クハハハッ!我とお前が仲良しだと?小さき人間と我とが?面白いことを言うな!」
グサッ!心に刺さった…様子見で言ったのはそうだがここまで笑われると辛い…
あーなんか嫌な記憶が蘇ってきた。前世に仲の悪い奴にあけおめ連絡したらブロックされてた過去の悲しさが……別にされたこと自体には何も思わなかったが『こんな奴にブロックされてる?するの俺側だろ』なんて一瞬でも思った自分に対して怒りと嫌悪が湧いてきた…
「えー。ハハッ!酷いですよー」
歩み寄ろうとしている時に突き放されると結構悲しくなる…昔から俺、こんなんばっかりだったか…俺もしかして結構絡みに行くのウザかったんだろうか?
「あ!待て待て!そういうつもりではないぞ?」
意気消沈である…ヴェルドラはコッチの気配を感じ取ったのかアワアワとしているがフォローのつもりだろうか?そういう気にしてるの気付かれたときが一番辛い…ほんっとに…
「落ち込むでない!我はその…そう!初めてのオトモダチというやつが嬉しくてだな!距離感…?というのが分からなかったのだ!」
かの暴風竜様はコチラを気遣って色々弁解してくる……なんだこの優しい竜は?これが邪竜なのマジかよ。ヴェルドラの行動に心が浄化されていくのを感じる…うん、少し元気になってきた。
…何だかズレてしまったがもうそのままド直球に質問してみる。
「えっとじゃあ、ヴェルドラさんにとって俺はどう思われてますか?できるだけ!初対面の時の感じで!」
そう投げかければヴェルドラは顎をさするようなポーズで首をさすりながら考え始める。
顎はどこにあるんだ…いや確かワニの顎は首元にあったはずだから案外そこらへんが顎なのか?
「まずは初めてその姿を目にしたときはお前は気配がとても弱っておったな…」
「…そうでしたっけ?」
気配が弱っていた?どういうことだろうか?消耗していたということか?まぁここまで来るのに強い魔物も多いだろうし、消耗はしていてもおかしくない。
しかしそこまで無理して来たのか…死んでたら多分俺のところに情報来ないんだよな…まぁ良いところまで来たからと進んだのかもしれないが
「そこにある石ころを採ってみたり草を抜いたと思えば口に入れてみたりしておったよな…その時から我はお前を見ておったわけで……おっと!別にお前をいじめようとしたわけではないぞ?ただ、よくもまぁそんな草を食えるものだ、と感心していたのだ。懐かしいな…」
「……」
ヴェルドラが楽しそうに話す姿を見て絶句である…
まずどう頑張っても懐かしくはないだろとツッコミをしたかったが俺の奇行がやばすぎて何も言えない。
草を食べるって……いやまぁ確かにこの洞窟に生えている草は魔素が濃いせいか普通の植物より味が良いのか?美味しいのだろうか?いやそんなことないか…
「あの時のお前は黙々と人形のように動いておって―――」
でも確かポーションの原理は魔力が欠損を補強する…みたいなのを転スラで見た気がするんだよな…どうやら分身は弱ってたみたいだし魔力の補給をしてた?
人間、栄養が足りてない時にそれを摂ると美味しく感じると聞くし分身に味覚があるなら案外美味しいのかも…?
まぁ流石に草はドレッシングか調理の過程を経ないと美味しくはないだろうが…今度食べてみるか。
…しかし、ヴェルドラの口ぶりとちょっと見れた記憶を合わせると俺が存在に気がつく前から見ておりその時から推定ヒポクテ草を収集…そしてヴェルドラの目の前に来てもなお気づかず…いや優先度が草集めのほうが先だと判断してそのまま草集めを続行した?
「――クァーハッハッハッ!まぁ我に怖いものなど一つ二つしかないがな!……聞いているか?」
それでなんで置いて帰ったんだ?忘れる…なんてことはないだろうし何か狙いがあったのか…?
…そういえばあんまりそういうのに関わる機会がないので忘れがちだがヒポクテ草はそのものが貴重でそこそこ値が張るものだし値崩れが起きると踏んでたのかもしれない。
だからこそ置いて帰った…ありうるな。値崩れなんてしようものならもれなく生業としている事業者全てが地獄を見ることになる。
「――あの?」
いやでもそこまで考えなければ行けないほどの量を集めたのだろうか?まぁヒポクテ草そのものの採取量が少なく、高価であるのには違いないので少しでも多めに出回れば一時とは言え値は下がるかもしれないな…
…こういうのにあまり詳しくないのにするのは…という判断か。自分のせいで大変なことになったら…と考えれば躊躇するのも納得できる。一見奇行に聞こえる行動も分身の立場に立てば意外に理に適った行動だったのか…?
分身の行動…草を食べていたのは消耗してた魔力を回復させるためと考えれば納得できる。
そして冒険者としてヒポクテ草を納めるために集めてたが思ったよりも集まり、市場の事を心配し、一部以外は置いて帰ることにした……ということだろうか。
「おーい」
「……?」
ヴェルドラの顔を見れば拗ねているようにぷいと首を横へと向ける。その仕草に俺は首を横に傾ける…どうかしたのだろうか?
「我の話は……つまらなかったか?」
どでかくゴツい竜が横目でこちらを見てくる。なんだろう……凄いあざといというか、可愛い……? これがギャップ萌えというやつだろうか?
「すいません。考え事をしてました」
「考え事…?そうかそうか!それならば仕方あるまい!我もよくするしな!」
うーん、可愛いかもしれない。よく見たら行動一挙手一投足がキャピキャピした女子みたいな動き、ゆらゆらと忙しなく動く動き…なんかオーラが眩い気がしてきた…
「あとさっきも言ったかもしれんがお前が置いて帰っていたものはそこに置いてあるぞ」
「え、あ。」
そう言われてその方向を見れば背負うタイプのデケェ鞄がドンと置かれており、明らかにパンパンに荷物が詰まっている。
…なんか、思ってたんと違う。えぇ…なんか、手荷物くらいの袋を持ってくる程度だと思ってたのに。
「あ、ありがとうございます」
中身を確認してみたら小袋小袋に更に小袋…なんかヤバいもの詰めてる?と言いたくなるレベルで小袋や瓶ばかりが詰められている、そしてほのかにいい香りもする。
…緊張し、ゆっくりと危険物を扱うように瓶の一つを開けて、中身を確認してみればパサパサ、カリカリの抹茶色の萎んでいる葉が入っていた…
「……乾燥してる?」
…茶葉でやるような発酵…たしか…半発酵?不発酵?みたいな名前の発酵だったはず、明らかに自然じゃなり得ない。
つまりこれは分身が作ったものということ…マジで目的が見えてこない、何をやりたいんだアイツは?
「何が入っておった?集めていた草以外に何か入れていったのか?何かなくしたのか?大丈夫か?」
念のため別の瓶を開けてみるが全く同じものが入っている…買った、なんてことはないだろうしまぁ作ったのだろう……手作りか…ちょっと家帰ったら食べてみよ。
「……えっとー、大丈夫……です!全部入ってます!」
分身が何を思ってこんな事をしたかは全く見当もつかないが当初の目的である場所の特定はできたしある程度の収穫もあった。
「ヴェルドラさん、ありがとうございました!また来ますね!」
ヴェルドラにそう挨拶すれば非常に残念とでも言いたげにこちらを見てくる。うーん、面倒くさい彼女みたいなちょっと近寄りがたい雰囲気を感じる…なんだかちょっとウザいって思ってしまう感じの…
「もう行ってしまうのか?忘れ物はないか?次はいつ来る?」
…いや前言撤回。面倒くさい彼女というより孫に甘いおじいちゃんみたいな感じだ…ラーゼンを厳しい方にするならコッチは優しい方みたいなイメージ。
「えっと……また…1週間後に来ます!もしかしたら数日空くかもですけど……」
「クハハ!そうかそうか!ではその時まで待っておるぞ!」
その言葉を聞き、俺はマイホームに帰るべく転移する準備を…準備、を…準備?拠点転移の術の準備は…マーキング……
「……あっ!」
「どうした?忘れ物か?」
「い、いえ大丈夫です!また来ますね!」
仕方あるまい…俺は流れに身を任せて転移を開始する、転移先はブルムンド王国。ちょっと一飛びしたらすぐ家まで着く…大丈夫だ。
…シルトロッゾの方が近い?行くわけないだろあんな場所!行ったら洗脳されて帰ってきそうだもん!
転移した先は幸い人目につかないところ、こっからならかっ飛ばしても問題あるまい…本当は観光したりして遊びまくりたいがこれ以上時間を使おうものなら間違いなく帰った時ラーゼンにしばかれる。
今から始まるのは地獄のロスタイム。怒られないか怒られるかは……俺の頑張り次第だ!
「行くぞ!」
「いつ『
「あっ、はい…スミマセン…その……」
「安心してください、王にはお伝えしておりませんよ」
「ラーゼンさん!」
「―――このラーゼンしてやられました。まさか一人で魔法に向き合うような時間があったとは…これからはより一層、厳しくさせて頂きますぞ!」
「ラーゼンさん?!」
エドルス
ただでさえついていくのがやっとなのに厳しくなること確定で鬱。色々な事が一気に起こってて笑えない。起こるなら間を空けてからにして欲しいと心底思っている。
ラーゼン
普通にエドルスの成長具合に驚かざるをえない。だからもっと厳しくするね…
ヴェルドラ
なんか洞窟普通に探検している人間がいてビックリ、そして初めての話し相手が現れてニッコリ。次会いに来てくれるのを楽しみにしている。