ハードな国に転生したけどカッコ良く生き(り)たい   作:王の物置

19 / 28
投稿するの遅すぎてしんだー!


なにも考えない時間が一番落ち着く件

 

「こんにちはー…お邪魔します……」

 

案内されて村に入れば、そこは思っていたよりも普通の集落といった様子。

文明レベルの話を指しているのではない、一つの集団としての話だ…子供がいて、親がいて…子供同士が遊んでいる…本当に普通の集落だ。

 

結構野蛮…というか怪我とかをしている人が多いイメージだったが思えば俺が原作知識として知っているのは牙狼族に侵略されている…いわゆる切羽詰まった状態の頃。

これが普段の生活か…普通にのほほんとした良さそうな場所じゃないか…!

 

「リグル…戻ッてキたのか?」

 

滑舌が悪くボソボソと聞こえてくる老人の声……声の方に目を向ければそこには震えた腕で杖をもっているシワシワのおじいちゃんゴブリンがコチラへと向かってきている。

 

…リグルドだ!間違いなくリグルドになるゴブリンだ…!

 

実は俺、進化前のリグルド結構好きなんだよね…。

 

「リグル、ソチらノお方は?」

「周辺を散策中にお会いしまして……危害をくわえルヨうな方ではナイと判断し、村へお誘いした次第でして――」

 

…話していること自体はあまり聞かないが声のトーンは普通に話している親子のそれ、仲がいいのか悪いのか伝わってくる。

 

…正直魔物云々の話はまだ理解できていない。

ルミナス教を信じる人達は魔物が悪だというが国とかの話をすれば東の帝国を除けば、魔人がトップの国と人がトップの国の割合はトントンか魔人の方が少し多いくらいだ。

 

ルベリオスを魔人側に含めれば100%魔人がトップの国多くなるはずなのだが……

 

 

「リグル……実ノ採取をしてィる者タチがオソワれぬようニ……頼んダぞ……」

「はい!」

 

……いやだからこそかもしれないな。リムルが現れずともジュラの大森林を開拓しようとする適当な魔王候補が誕生したりすればそこそこの国が誕生することになるだろう。

 

人は群れて生きることが生き残る選択、個人では協力な力を有する魔物や魔獣に勝つことが難しい……だからこそ群れて生きる。

しかし肝心の魔物が群れたとなれば殆どの人間は…人間の国家は手出しできない。

 

それこそラーゼンとかの純人間天井付近の人か強力な力をもつ……異世界人と、か。

 

成程…今ようやく少しだけ理解できた。

異世界人という概念については『勝手に現代から召喚されるのは理不尽すぎる!やむを得ない事情ならまだしも…!』とずっと思ってきたが国としてみたらやむを得ない事情が常につきまとっているのか。

 

まぁ依然として一方的喚ぶなんて理不尽すぎるとは思うけど……

 

「―エドルス殿、どうぞごゆっくり……私はアチラの方に行きますので何カありましたら呼んでクダさい」

「あ、はい!ありがとうございます!」

 

魔物が人に近いから恐れている…大多数の一般人と同じように社交的であり、普通の人のようにある程度のコミュニティが存在しており…人間社会のように社会が構成されているから。

 

それが人の社会レベルに発展すればいずれ力の平均が高い魔物に社会が傾く……だから獣以上に皆が恐れているのか。

 

「タシかオナマえは――」

 

「あ、すいません!名乗っていませんでしたね…エドルスと申すもので…」

「コれはごテイネイに…ナニもナイ集落デスが……ごユックリと……」

「あ、ありがとうございます。」

震えた声でポツポツと呟く姿は前世の近所にいたおじいちゃんを彷彿とさせ、なんだか心が和む。

 

人は考え方が違うだけで殺し合うこともあるし種族という明確な壁があれば殺してもいいとなるのは摂理なのかな…

 

「………」

普通にエルフとかドワルゴンのドワーフとかも半人間(デミヒューマン)と呼んだりするし、種族という壁は俺が思っている以上に分厚いのかもしれない。

 

正直俺が嫌ったりする判断基準は会話が通じるかどうかだしあんまり種族とかそういうのを基準にする人の考えはわからないがそう思ってしまうのも仕方ないかもな。 

…人って意外にポンコツ種族だよな。

 

「あー…恥ず。なんか難しいこと考えてたわ…」

 

いかんいかん…黙っているとまた考え込んでしまう…!本当よろしくない悪癖だな。直そう直そうと思っているのだが中々直らない。

 

「あ、あのー」

「ハイ?ドウかされまシタか?」

 

…今の俺、勝手に村に上がり込んだ挙句ボーっとしているヤバいヤツだよな、自給自足の生活をしている村に一人なにもしないやつが増えるのは迷惑すぎる…普通に追い出されても文句言えない。

村長達も何事もなさそうに過ごしているがきっと中には俺をよく思っていない派閥もあるはずだ、何かすることないか…?

リグルの所行くか…

「もしよろしければ先程おっしゃっていた木の実?の採取を手伝わしてもらっても?」

 

「よ、ヨロシいのデスか?」

「はい!勿論!」

 

難しいことを考えるのは俺の柄じゃない、せっかくの休みなのだから楽しもう!脳内で相手の名前を当てはめ、交流を深めるんだ!

 

 

「あ、スライム君はここに置いてても?」

「モチロンです、ホカノ者がトらエタ獲物ヲザバくようなコトはありまセン」

「ハハハッ……」

 

 

 

 

 

「ダイジョブっすダイジョブっす…こっそり食べれば……リグルの兄貴にも「見てるからな!」「「げっ!」」

 

リグルが言っていた方に来てみれば食物の採取に勤しむ人達がいる。最初に目についたのはリグルに怒られている団子鼻のゴブリン……ゴブタである…!

ゴブタは他のもの達と…確かゴブトとかゴブツそんな名前になるはずの仲間と共に果物でも食べようとしてリグルに怒られているようだ…

か、感動。これが聖地巡礼というやつか(?)

 

「あ…!……お前ラ!変なことするなよ!――エドルス殿、どうかされましたか?」

「い、いえ私もお手伝いできればなと……」

 

俺も何かの役に立たなければな!ついさっき思ったのだが俺はボーっとするよりかは何かやっている方がリラックスできてる気がするのだ。

 

「そ、それはありがたいのですが……」

「いえいえ…!ぜひ!ぜひ!」

「そ、そこまで言うのでしタら」

 

先に折れたのはリグルドだ、当然である…俺の長所は根気だけは負けず鬱陶しいところにあるのだから……うわ自分で言ってて悲しくなってきた!

 

「あ、えっと…じゃあこの、籠に入っているものと、こっちの籠に入っているものを持ってってもらっていいですカ?」

 

指定された木の実は……なんかすごく見たことのある形をしている実だった…なにと聞かれれば名前は出てこないのだが馴染み深い果実。

 

赤い…プヨプヨしている…子供の頃によく食べたアレである!ただし相違点があるとすればリンゴの木みたいな木になっていてほんの少しだけ大きい!異世界にも似たような実があるのか…

 

「任せてください!」

 

名前なんてどうでもいい…どうせ考えてもサクランボもどきという単語に落ち着くだけなのでね。

 

任された仕事に取り掛かるべく軽やかに木へと登り……たいところだが生憎それを出来るだけの身体能力は持ち合わせていないので魔法で浮遊して木を登る。

 

別に運動していないわけじゃない…!ちゃんと鍛えてるし並程度には動ける!騎士の方に勝てず農家の方にも勝てない程度のスペックだが鍛えてないわけじゃない!

 

「お、案外簡単にとれるな…」

 

何も恥じることはない、自分の得意を生かし周りと同じ成果を出せるのだから。

別に俺には魔法があるし大半の相手には初級の簡単な魔法でも熟練度の差で完封できるはずだし何も気にしていない。

 

「…」

 

ヤバいすごく悲しくなってきた。自分の短所を自分で指摘して自分で言い訳する…これほど心に刺さり、虚しくなる行為はなかなか無いな。

 

「……」

 

……さっきから異様に静かだ、まるで他の人がいないみたいに……周りを見渡せば普通にリグルは警備を続けているしゴブタなんかが木を登って実を取っている。

 

なぜ?いやまぁ理由は分かっている。一部からは俺から遠ざかるようにチラリちらりとコチラを見てはヒソヒソコソコソと何かを話している。

 

唐突に怪しい人間がやってきて仕事を手伝う……しかもソイツは魔法が使えると来たもんだ!

相手目線いつこっちに牙を向けるか分かったもんじゃない!ってな反応だろう。

 

至極当然の反応だ、俺だって唐突にラプラスが現れて何か手伝うとか言い出したら警戒度MAXになる……ただ警戒される側というのは結構ムズムズする。

 

リグルもきっとこの空気感を読み取ってあまり乗り気な反応ではなかったのだろう。気遣いを無駄にするような事をしてしまったな……

まぁ良いか!どうせ会うのは今日だけだろうし、積極的に仲良くなりたいわけでもないな。

 

ガビルとも元気そうだなと一方的に見ているだけだし、俺は身の回りのことで手一杯だ。原作キャラに会えたのに親交を深めるだけの余裕が今の自分にはないのが悔やまれる!

 

「……」

 

思えば俺は何でこんなチマチマと木の実を取っているのだろうか…もっと効率的にやればいい!

効率的って何をするかって?そりゃ魔法である。魔法マジ便利なのよ。

 

「よしっ…」

地面越しに感知網を広げて木の位置、実の位置を把握。あとは適当に風で斬って風魔法でコッチに弾けば、半自動木の実収穫器の完成である。

 

片っ端から取っていく、感知に入った実を木からきり離す。コッチに吹っ飛ばす。ある程度接近したら軌道をコントロールしてかごに入れる。

 

感知範囲内に無くなれば少し移動してから繰り返す…うーんすごく簡単な作業だ、楽しくなってきた。

 

無くなったら移動して、また移動して、また無くなって、また移動して……

「あのエドルス殿!もう十分です!ありがとうございました!」

 

――カゴの方を見ればすでにいっぱいに実が入っている。

「あ、はい!ありがとうございます!」

……もう終了らしい、いや意外に始めてみれば早かったな…!

 

「いやーもう終わりッスか!今日は人手が多いから早かったすねー!やっぱ強いとこういう作業も早くできるんスヨ!リグルさんも手伝ってくれたらなー!」

 

 

「やれやれ…俺がいなくなったら誰が周囲を警戒するんだ…」

いずれゴブタになるであろうゴブリンはブーブーとブーイングをしながら抗議している…周りの反応は…呆れる反応もあれば悪ふざけで乗っかる者もいるといった感じ…当然リグルは呆れる側。

 

やれやれと頭を抱えるリグル、それとは対照的にケラケラと笑っているゴブタ一同。

……うーん、いい光景だ…

 

 

「あー!いやーホント助かったッス!あー…エドルスさん?すよね!もーすっごい手際で!」「そうそう!バーっとやってハヤくて――」

感謝感激といった様子でコチラへと来るゴブタ達…ココまで分かりやすく持ち上げられると気分が良い。

 

不定期になってしまうが手伝いに訪れるのも悪くないかもしれないな…

「いやーホント凄いっすよ!グヘヘ…ぜひウチの村でゆっくりと……」

 

前言撤回。近寄ってくるというか擦り寄ってくる!危ない危ない…ゴブタの話術に騙されるところだった……魔物って恐ろしいネ…

 

「バカ。お前ら…エドルス殿に失礼だぞ。それにお前たちはまだ仕事があるだろ…はやく村に戻れ」

「うわ、そうだったッス!ソレじゃあまた!」

リグルの指摘を聞き、嵐のように去っていくゴブタ達…うん、イメージ通りの感じだ…!

 

「すいません。アイツラも悪いヤツじゃないんですけど……」

ゴブタの背後を見た後、リグルはコチラに謝るように少し頭を下げる…凄くお兄ちゃんっぽい。

お兄ちゃん属性とはこういう事を指すのだろうか?

 

「もしよろしければ…そろそろ昼頃で食事をとる時間ですしご一緒にいかがです?大したもてなしは出来ませんが……」

 

「え?いいんですか?」

まさかの食事のお誘いに戸惑いを隠せない。戸惑ってる俺に対して構いませんよ!とリグルはニッコリと笑う…イケメンすぎる…!絶対モテるでしょ!

 

「で、では、お言葉に甘えさせていただきますね…」

くぅ〜!優しい!部外者であって1日目の俺に気を回してくれるなんて!

きっとリグル(弟)も優しい兄の背中を見てきたから強く、思いやりのあるゴブリンなんだろう!

 

「ええ!客人を邪険に扱うようなマネは皆致しません。先に村の方にお戻りください!私はここに残っているカゴを回収次第、すぐに向かいますので!」

 

「お手伝いしますよ。1人で持てる量じゃないですし」

「そ、そうですか……ではお言葉に甘えて……」

 

リグルとともに果実の入ったカゴを抱えて、村へと戻る…出会いはついさっき、ともにいた時間もそう長くはないが彼がとても優しい心の持ち主だというのが伝わってくる。

「そういえば……エドルス殿はどうしてジュラの大森林に踏みいったのですか?」

「え?どうしてってそれは……」

 

答えようとした時、少し言葉が詰まる…どうしてか?と聞かれるが自分でも考える……特に理由はないのだ!

 

まぁ強いて言うなら原作がいつ始まるか把握できればなんて思っていたのだが、それは言えるような内容ではないししかもあんまりよく分からなかった…それ以外に目的…うん無いね。

 

「えっと……そのー……見聞を広げようかと……」

「なるほど!しかしジュラの大森林は広く、危険な場も多いでしょう?お怪我などは大丈夫だったのですか?」

 

「あ、はい。大丈夫ですよ」

咄嗟に口から出任せで言ってしまったが特に疑う様子はない……いやね?言い訳をさせてほしい…封印の洞窟近くまでは飛んできていたのであんまりそういうことには遭遇しなかった…

 

まぁ降りてからも中々魔物に会わずにボーっとしていただけなのだが……

「やはりお強いのですね!我々が怯えぬように村に入ってからはオーラを抑えてくださっていますし……」

「え?いや……?」

なんの話だ?ただ単にリグルが勘違いか?考えてみるが思い当たる節がない。

 

「ご謙遜なさらないでください!私が最初感じ取った際には恐ろしく強い魔人様が村に攻めてきたのかと思いました!近寄った時には既にオーラを消されましたよね?」

 

 

「ハハッ……」

 

わからない、なんのことだ?俺の魔素量は俺が一番理解している……ラーゼンさんの修行のおかげでそこそこの量ではあるが…多いだけで周りを怯えさすほどの総量は有していない…本当になんの話なんだ…?

 

リグルが言うような事は俺は出来ない訳では無いししてない訳じゃないが…常日頃から制御の精度を上げる為にしていることだ。…しかしリグルは会った時の話をして……うん分からん。なんも分からん。

 

俺の知らない俺の情報がある…?

 

 

「コレハコレハ…申し訳ありマセン…色々とテをかしていただいて……ゴ迷惑もおかケしまして……」

 

おっといつの間にか村にたどり着いていたらしい…ヨボヨボと手に杖を持った村長がわざわざ出迎えてくれた……なんだこの心が安らぐ光景は!

「村長、エドルス殿には色々と、助けられたました。なので昼を共に過ごしてもよろしいでしょうか?」

 

 

「モチロン…むしろモテナさなければブ作法というモノ……」

 

「ありがとうございます!」

 

リグルの言ったことは忘れよう。多分だが人として見れば大したことのない魔素量だったが魔法を使うだけの基盤がなかったリグルから見たら恐ろしく多く見えただけだろう…今は今しかできないことを楽しむんだ!

 

 

 

「あノスライムはドウ調理サレマスか?」

「…あ、あれ、食べ物じゃないんです……ペット?友達?という感じで…」




エドルス
定期的に謎が増えている気がするこの人。なんかリグルに言われて一瞬謎が増えたが脳内で完結した。

リグル
イケメン。見た目でわかる好青年、なんやかんやで面倒見が良い。普通に優しい。めちゃくちゃ社交的。社会に出ても普通に生きていけそう。

スライム
スライムは美味しいらしい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。