ハードな国に転生したけどカッコ良く生き(り)たい 作:王の物置
何かの手違いで映画のチケット安くならないかな()
人生とはいつも予想外のことが起きる。そして基本的にその予想外は大抵が悪い方向に転ぶ。
俺は自分の誕生日に他国の人の首を絞めるとかいう、故意にしたことじゃないと言っても誰一人信じてくれないようなことをやらかしてしまったのだ…!
また俺何かやっちゃいました?
この言葉でも許されない所業。普通にそういう筋の人に殺されても文句は言えない!
しかもだ、つい最近シルトロッゾ王国とファルムス王国が経済同盟を結んだのだ。
前世の俺ならこんなニュース聞いても『へー、なんかよくわからんけどおめでとう』とかで終わっている。
今世の俺も多分何も知らなかったら全く同じ反応をしていただろう。
しかし今回ばっかりは非常に良くない状況なのがわかる…シルトロッゾのトップがグランベルという事実はルミナスとかの強者なら知っている情報のはずだ。
そのグランベルが声明を出したと言っても過言じゃない状態なのだ…裏で動いてばかりのグランベルが動く。
この事実によりこの国は一部から注目の的になることが確定してしまっている……あのマリアベルとかがいるロッゾが利益が出るというだけの理由でそんな同盟とかすると思うか?絶対しない。
それにあのマリアベルだ、頭も良いし、いい性格をしているマリアベルの事だし俺の不祥事をダシに何かしら仕掛けてくるにきまってる。
ヤバい、出来るだけ関わりたくない!と思っていた矢先だ…『関係を祝して〜』みたいなことになってマリアベルと1対1で会う事が決定したのだ!
俺死ぬ?
「マリアベル様がお越しです」
今からでも遅くない。家出しようかな……
「この度はお招きいただき感謝いたしますわ、エドルス様。」
「このような対話の実現は、両国の信頼と協力の証でありますね…」
「ええ、新たな同盟の誕生。これが安定と繁栄に寄与することを確信しておりますわ」
一生定型文だけで会話していたい…!父は俺とマリアベルが深い関係になることを望んでいるが無理だ。これっきり会話を終了にしたいが、あの父がそんな事を許してくれるわけがない。
「……」
「…」
鋭い眼差しでコッチを見てくるマリアベル…その視線から目をそらすように俺は目を細める。
「そう緊張なさらないで、ここはただ親交を深めるためだけの場ですわ」
「はい……」
今気づいた、というか…さっきまで無かったものがある…
マリアベルの首に痣がある……それ俺がやったやつか?国際問題発展不可避じゃないかこれ?
さっきは多分魔法式化粧で隠していたのだろう…女児の首に絞めあとつけたやつが居るらしいとか噂されてないか?
「あの……その、申し訳ありません…」「あら?何の事かしら?」
「そ、その……首を……ですね。その、はい…キュッと…」
俺がしどろもどろになりながら謝罪をすればマリアベルは面白いものを見るような目でこちらを見てくる。
お茶でも飲んで落ち着こう、見られるだけでも緊張する…これが格の違いというやつか。
……こっちは命の危機だぞ笑うな!命の危機を感じたのはソッチかもしれないけどな…
「…貴方、異世界人でしょう?」
「ブフォ!ゲホゲホっ、エフっ!」
「図星ね、図星なのよ」
マリアベルの衝撃発言に思い切りお茶を吹き出してしまう…なぜ?なぜバレた?
マリアベルの性格的に憶測で話は振らない。ある程度の確信があったはずだ。
なにで判断したんだ、俺の立ち振る舞いは決しておかしいものじゃなかったはずだ…首絞めだけで判断したわけではあるまい。
仮に俺がそうだと判断した上で問いかける理由はなんだ?それが得があるようには感じない、頭の良い人の考える事はわからん。
「な、なぜ?そう思われたのですか?」
「さあ?どうしてかしらね」
…教えてくれる気はないようだ…聞きたいですオーラを出して引き出そうとしてみるがマリアベルは喋る気がない。
「…貴女もですよね?」
転生者かどうか俺に聞いて、マリアベルは俺に何をさせたいんか分からない、狙いがあるのは分かるのにそれが何か分からない。
知能では勝てそうにないことを痛感させられる。
知性で勝てないなら事前知識で張り合うしかない、こっちはマリアベルがどれだけ調べても知れるわけのない情報を持ってる。
「あら?気づいていたのね」
「えぇ。当然です」
マリアベルは少々驚いた様子…
…当てずっぽうであっても俺がカウンター的に言うだろう事も想定内だったはずたろうに…わざとらしい人だ。
「それで?何が言いたいの?」
…?何が言いたいとはなんだ?
「…互いに転生者。隠し事は不要だな」
「そうね。それで?」
……何を言えばいいんだ?何を求められているんだ?何を欲されている?
わからん、会話は諦めて考えを纏めよう。もう帰って良いか?
考えても考えてもマリアベルが何を言いたいのか分からない、結婚の申し込みでもしようかな。
「……」
「……」
沈黙が場を支配する。
気まずいを超えて、もはや苦しい…マリアベルは何かを待っている。
しかし何を待っているか分からない、会話が進まない…IQが20くらい違ったら会話が成り立たないらしいのは真実らしい。
マリアベルの顔色を伺うが怒りなんかの感情は見えない…子供でも見ているみたいな顔だ、『ガキ嫌いなんだよな』って思ってる奴が浮かべる顔だ。
十歳くらい年が下なのに俺が子供みたいな目で見られている…完全に舐められている。上下関係が形成されつつある…なんか言わないと。
「あのー、同じ転生者ですし…ね?仲良くしませんか?」
「それはどういう意味かしら?まさか、仲良しごっこでもしたいのかしら?」
「えぇ、是非そうしてもらうとありがたいです」
「……」
「あのー?」
マリアベルは心底呆れた様子で俺を見る。
これ以上言葉にしない言葉で会話を試みようとするのはやめてほしいな…なんて思っているとそれを察するように俺の反応に更に深いため息を吐いた。
「…浅慮ね。そんな気はさらさらないのよ。」
「浅慮……?」
「貴方みたいな人間が一番苦手よ、苦手なのよ…考えが無くて読みづらい人間…」
……こいつは俺のことを考えがまとまらない能無しだと言いたいのか…?本当のことだが言って良いことと悪い事があろう。
皆についていくように頑張っているのにそんな事言われたらショック死してしまう。
「……私から提案なのだけど、私と貴方。互いのために手を組まないかしら?」
「手を組む…?」
…恐らくこれからがマリアベルの本題なのだろう。
手を組む、ね…マリアベルの事だし強奪が効かなかった俺の手綱を握りたいとかそんな感じか?
話を聞くべく一度体制を直してからより一層真剣に話を聞く。
「具体的には?」
「…私はロッゾ一族として。貴方のためなら惜しみなく使用してあげても良いわ。」
…マリアベルの提案、世界情勢に関する重大な話であり、こんな場で言って良いのかと思える話……たかだか一人の賛同、しかしされど一人の賛同。それは一票賛成意見が増えるという意味ではないのだ。
その賛成する者の力が強ければ強いだけそれは強い意味を持つことになる…きっと惹かれる者もいるであろう内容。
しかしはっきり言って今の俺にはあまり惹かれない話である、マリアベルが欲しいものはなにかは分からないが乗り気にはなれないな。
「…それで?貴女が私に求めるものは何ですか?」
「……」
それを聞くとマリアベルはニヤリと笑う、そしてその表情のまま口を開いて言った。
「私の言うことを聞いてくれれば良いの。それだけなのよ」
……?マリアベルに何の得があるんだ?そもそも最初から疑問だったがなぜ口約束?
契約魔法は存在しているがそれを使う様子もないしお粗末な口約束で終わらせるつもりか?
まぁそれならマリアベル側にも約束を遂行する義務はないがそれならこんな会話するだけ無駄な気がする。
むしろ話を持ちかけるマリアベルに変な噂が立ったりしたら損失も激しい気がするのだが…マリアベルの考えが分からない。
「あら?不満かしら?なら貴方の要求も聞くわ。何が良いの?」……なんだ?マリアベルには打算的なものを感じない。いや感じさせてくれないと言ったほうが正しいか。
マリアベルは何を欲しているんだ?
いや、違うか。敵対の意思はないという証明か?…俺の凶行はマリアベルのスキル発動により生じたらしいし、マリアベル側からしても隠蔽したいのだろう。
そして俺に手を組むメリットも示す事でその証明としているのか?
……勿論全てがマリアベルの策で、俺のこの推測すら想定内でありこちらを陥れようとしている可能性もあるが………いや、ないな。マリアベルが俺を騙すならもっとうまくやるだろう。
「…マリアベル、君は何を望んでるんだ?それ次第かな」
「……」
シンプルな疑問をマリアベルへと投げかける。それに対し一瞬、マリアベルが驚いた表情を見せた…がしかしそれはすぐに鳴りを潜め、冷たい目で俺を見た。
「信用の導入よ。そのためにファルムスを使うのよ、使うのだわ」
「信用の導入?」
マリアベルの目的を聞いた俺の頭は詩的だなーとしか感じてくれなかった、何かしらの意味がある用語なのだろうが俺の脳では翻訳し切れない言語であったようだ。
「紙幣幣制度が貿易大国で広まれば早くに為替が構築されるのだわ。」
何を言っているか全く理解できない、どうして信用からお金の話になるんだ?意味が分からない。
「つまりどういう事?なんで紙幣を導入したいんだ?」
「……」
……俺の疑問に対して、またマリアベルは俺に対して呆れているようだ…呆れるくらいなら最初から話しかけないでほしい。
「貴方、本当に頭が悪いのね」
「フッ、よく言われるよ」
……マリアベルの直球な暴言に泣きたい。マリアベルのコイツ大丈夫?みたいな目線が一番傷つく。なんで相手の話を聞いているだけなのにここまで言われないといけないのか…涙出そうだ。
「はぁ簡単に言うと借金の制度を作るためよ」
「借金の制度?それは今もあるだろ?」
「口を開く前に少しは考えたら?」
酷い物言いだ。ちゃんと俺なりに考えて発言したのに……流石にへこむ、俺のライフはもう残っていない…
「…回り続ける利息を構築するのよ。今の制度だと借金とは名ばかりの先行投資としてのものに限られるのよ」
…マリアベルは淡々と難しい話をしだす、随分と噛み砕いて話ししてもらっているのだろうがもう既にギリギリだ。
しかし、マリアベルは俺がギリギリなのを察していないのか話を続ける。
「借金を一般化するの、するのだわ。これが成立すれば無から金のなる錬金術の完成よ」
借金の一般化…錬金術…つまり……マリアベルの話をまとめるとあれか…アイ◯ルとかアコ◯とか、そういうのを前世みたいに作って利息とかで金儲かるようにするという事か。ようやく少し理解できた。
「制度の構築に俺が協力するって事か。法整備とか…色々あるもんな」
「そうよ、ようやく通じたのね」
マリアベルは疲れた様子でやれやれといいたげな目線をコチラに向けてくる、その目をコッチに向けるな…!
……マリアベルの目的は前世と同じ社会制度を構築する事が目的ということか…確かに将来起こる天魔大戦はリムルが終息させる。
そこから文明が大きく発展していき、放っておいても似たような社会制度が形成されるだろう。
それをいち早く先駆者として作り上げるのはメリットがあるのだろう。
「なるほど、マリアベルの考えはよくわかった」
俺は理解しましたよというアピールをするため頷く……マリアベルもようやくかといった様子で頷いた。
「断るよ。うん。」
俺はハッキリと、マリアベルの目を見て告げた。マリアベルはほんの一瞬眉を動かすがすぐに平常時の顔に戻る。思いのほかマリアベルって顔に出るタイプなのかもな…
「なぜなのよ?貴方はそんなに私が恐ろしく見えるのかしら?」
嘲笑まじりのマリアベルの問いにたいして俺は首を横に振る。
「いや、むしろマリアベルは俺が思うより良い人だった。でも、俺は俺のやりたいようにやる。だから協力はできない」
……マリアベルは俺が断るのは想定外だったのだろう。少し驚いた後、すぐに冷たい目に戻った……そして、その目を更に冷たくして俺を見る。
「……貴方、ロッゾの恐ろしさを理解していないようね?貴方がいなくても計画は完遂できるのよ。残るのは貴方が断ったという事実だけ、そうなれば貴方はいずれ排斥される側になる」
「それはそうだろうな………まぁそうなったらなったで…仕方ないよな」
俺の言葉にマリアベルは驚き、嘲笑する。損得勘定のできない人間だと思われてしまったかもしれない。
…金の絡む話を著しく嫌う類の人間なのは事実だからその認識は間違ってないと言えば間違ってないけどネ!
「マリアベル、俺はね。今に満足してるんだよ。だからきっと革新を望むマリアベルとはどこかで相容れない部分があると思う」
「相容れない……ですって?」
「手を組みたくないわけじゃないし邪魔もしないけど…乗り気はしないね」
マリアベルは俺を侮蔑するように見ていたが、諦めたように視線を逸らす。
「そう……それならもう良いわ……」
ポツンとそう呟くと先ほどの話はなかったかのように部屋は静まりかえる。
「協力関係は無理だけど…友達としてならいつでも大歓迎するよ。話くらいならいつでも聞けるから」
「……」
……マリアベルは俺の言葉を聞いても反応しない、返ってくるのは静寂だけだ。
「俺はこれが終われば役御免だけどマリアベルはこれからも色々と予定があるだろ?話し相手ってのは居ないときが落ち着くときもあるよな…お茶、置いとくから。ゆっくりしてって」
「……」
マリアベルは会話を続ける気がないようだし会話は一旦ここで終わりにする。
マリアベルは何をするでもなく外をぼーっと見つめている。何か考えているのかどうかすら俺には分からない。
しかし俺は話しかけない。もし相手が不快な思いをしているのなら誠心誠意謝罪したりするほうがいいだろう、そんなのは分かってる。
それでも俺は適当に本を取ってから席に戻って読み始めた。
■
マリアベルの『
スキルの力とマリアベル自身の調べにより奴のあらゆる情報を調べ上げた…いくつかの接触と監視を得て、ファルムスの王子、エドルスについてある程度把握した。
あの男は獣のような男である。理屈のない警戒心を持ち、損得の追求にあまり執着しない。
そういう相手は殆どの場合、相手にならない頑固者と定義できる…自身の価値観に縛られ、商機を逃すタイプ。そしてマリアベルはその弱りきったところを逃さず、刈り取り、存在価値を高くする。
殆どが取るに足らない存在である者だが……その頑固者が重要な立場であればあるほど厄介になってくる。
だからこそマリアベルはその警戒心を解くべく何の細工もしていないごく普通の口約束で接近したのだ。
マリアベルとあの男の関係は操る側と操られる側、自身と対等になれる器でも存在でもないのだ。いつでも排除できる存在。だからこそ話しても問題ないと踏んだ。
断られる想定をしていなかった訳では無い。何かしらの情を持っていたわけでもない…障壁になり得ないと判断したから話した。ただそれだけだ。
あの男を引きずり下ろすのも時間が少しあれば達成可能、マリアベルの脳内には既にプランが幾つも存在している。
しかし奴は周囲からの信頼は厚い、わざわざそれを消してまで引きずり下ろしたいかと言われればそうではない。
目的は奴を自分の傀儡にする事。
あの男を表の主導者として、自身の計画を推し進める。
ゆくゆくは自分自身の傀儡のみでファルムスを支配し、西方評議会をも傀儡としてみせる。
その第一歩があの男の利用なのだ、失墜させるのは容易だがそれでは後が続かない。
だからこそ時間をかけ、自身の手駒として組み込むのだ。
計画を持ち込んだのは、奴がどれだけ反対し、抗おうと大した影響は出ないと踏んでいたからで、その考えは依然揺るがない。
「マリアベルよ。ファルムスの王子は上手く使えるか?」
「えぇ…問題ないわ、問題ないのよ御爺様」
グランベルの問いにマリアベルは微笑んだ。
奴は取るに足らない存在なのだ…唯一の不安点は突飛な行動に出る可能性ことだが
それは配下からの報告、自らの確認。
二重の監視体制を徹底すれば、見逃すことはない。
決して油断はしない、慢心もしない。獣を飼うのならば誰よりも完璧に、そして何よりも思慮深くなければならない。
エドルス
さすがにこれ以上誰かの言いなりになると本格的に死にかねないと判断したのか断った。この判断が後々どう影響してくるかは深く考えないようにしてる。