ハードな国に転生したけどカッコ良く生き(り)たい   作:王の物置

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ほぼ毎話寄り道みたいなもんだろって言われたらその通りなんだけどなブヘヘ


閑話 ヴェルドラとの日常

ジュラの大森林、西方に位置する封印の洞窟、そこは湿度が高く、そして光を一切通さない…この洞窟内での光源は魔鉱石の淡い輝きのみ。数歩先すら見渡せないようなほど洞窟内の視認性は悪い。

 

その過酷な環境の中に災害級にも分類される魔物も多く生息しているまさに魔境と呼ぶにふさわしい場所…

 

「ハーッハッハッハッ!よく来たな人間よ!随分長い期間が空いたが……何かあったのか?我のことを忘れてしまったのかと心配してしまったではないか!」

 

「いつもより少しだけ空いただけじゃないですか…申し訳ないと思ってますけど大袈裟ですよ…」

…かなり危険な場所らしいが俺としてはしっとりとしていて涼しく過ごしやすいと思っている。光源も深層は普通に魔鉱石がそこら中に生えて輝いているので問題ない…危険な魔物とやらもヴェルドラの前にいる限りは見たことがないので横になったら爆睡するくらいには快適である。

 

「その少しが問題なのであろうが!人の生は短い。お前が訪れる日々の終わりは我にとってはすぐそこの出来事なのだ!」

 

「…なんか普通は愚痴る側逆じゃないですか?普通短命種の生涯が長命種の一瞬で〜みたいな…」

 

ここに来たら毎回思うこと、ヴェルドラが過保護すぎる。

まぁ話し相手がいないので現れないと不安になる気持ちは分かるが、週一くらいの頻度で寄ってるとはいえ結構不定期だしそこまで心配しなくても良いのにな…まぁヴェルドラが言わんとすることも分かる。自分で言うのもなんだが、俺は来年生きてるかも分からない人生を送っている自覚はあるからな。

 

ヴェルドラからすれば、一年なんて瞬きをしている間みたいなものなんだろう。その瞬きとして過ぎ去るのを心配する側なのもヴェルドラらしいと言えばヴェルドラらしい。

 

一番初めに少し日がズレたときは本当に息子が無断で家出したんかってくらい慌て、俺を見た瞬間『心配したんだからな』と怒られたときは流石に少し呆れたがな…

 

「そうだな、我が見たときにはこれくらいだったのにな。見るたびに大きくなって!人の成長は早いな…」

 

ヴェルドラはグスンと言いながら目を擦るような動作をする……

アンタはうちの親か!てか俺はずっと擬態姿で会ってるんだから成長とか分からないだろ!というツッコミを内心いれる。

 

…そういえばずっと擬態して会っていたのか。このまま隠し続けてもいつか知るだろうしリムルの胃袋内とかでショックを受けるヴェルドラに申し訳ないな…そろそろ本来の姿を見せても良いかもな。

 

「…ヴェルドラさん、少し大事な話があります。」

「む?ま、まさか?」

少し真面目な雰囲気を醸し出してみる。ヴェルドラはショックを受けたように固まり、狼狽える。ちょっと反応が早いかもな、うん。

 

 

呼吸が浅い、めちゃくちゃ緊張している。落ち着いて、1度目をつぶって深呼吸してから…意を決してヴェルドラに打ち明ける。

「実は、今の姿は偽物で本当の姿じゃないんです!」

 

そう言って俺はスキル『擬態』を解除して本来の自分をさらけ出す…今まで仲が良いと思っていた相手に隠し事をされていたなんて…きっとヴェルドラもショックだろう。

 

「うん?なんだそれがどうかしたのか?」

俺の予想に反してヴェルドラは何故か納得したように、うんうんと頷いている。

あれ?なんかリアクション薄くないか…もっとこう……驚きとかそういうのを覚悟していたんだが…

 

ヴェルドラから嫌われることはないと思っていたけど、もうちょっと反応があるものだと思っていた。

 

しかしヴェルドラは俺の予想とは裏腹に、平然とした態度である…何を言っているか理解していないのかと思うほどいつも通りだ。

「その、いや、あのですね?俺実はずっとヴェルドラを騙していて…姿を騙っていたんですよ…」

「うむ、知っておったぞ?」

世界が止まった、少なくとも俺の中では。

 

「え?」

 

……?何を言っているんだこのおじいちゃんは?背中に嫌な汗…緊張した時に感じる血液が巡る感じだ。ヴェルドラの言葉が理解できない。

ヴェルドラは何を言ったんだ?いかん、考えれば考えるほど頭痛がしてくる、視界がゆがむ感じもする…さっき戻した呼吸がまた浅くなる…

 

「初めから知っていたぞ?」

 

つ、つまりどういう事?隠していたと思っていたのは俺だけ?まさかヴェルドラはずっと知っていた……?

「ま、まさか中身とか見えてました?」

「うむ。我のスキルで見えていたぞ?…その事を話したかったのか?」

 

ずっと女装してるの分かって見られてたっていうこと、なのか…?そんなまさか…ヴェルドラは最初から知っていたのに、俺と会話していたと?

それに気がつかず俺は数年間『たまには服別のにしてみるか』とか言いながらルンルンでヴェルドラに見せていたと…?遠回しに『どんなのが見たい?』と聞いていたと…?

 

……顔が熱い、耳が熱い。ヴェルドラの顔が見れない…うつむくことしか出来ない。視界の端でヴェルドラが動く、喋る。

 

背中を向けることにした…『ヴェルドラ〜、どう?負けた勇者に似てる?』忘れろ忘れろ忘れろ!!

 

苦しい、なんだか胸が痛い気がする。心臓発作な気がしてきた…来世は黒歴史を作らないことを願ってワンチャンダイブしかない。ヴェルドラにこんな恥ずかしい事してこの世界で生きていける自信がない……事あるごとにヴェルドラが吹聴するようになる未来しか見えない。

 

「クァーハッハッハッ!そう落ち込むでない!我は嬉しいぞ?知っていた事は重要ではない!お前が隠していたことを話してくれて嬉しく思うぞ!」

「ぅ……うぁ」

 

ヴェルドラの励ましは急所に当たった!

この年になって黒歴史を作ることになるとは思っていなかった…!こんなに身体が熱くなるのはラーゼンに擬態して遊んでたのを観られた以来だ。今すぐ塵になってここから消えたい……。

 

「ソノ、忘れて。ください…」

「我はお前がどんな姿でも気にせんぞ!」

……フォローされると余計辛い。ヴェルドラの励ましの言葉、慰めの言葉がとんでくる度背中に刺さる…時には善意がチクチク言葉になることを思い知った。

 

「ヴェルドラ……?その、他の人にその話はしないでね…?お願い!ぜっったいに誰であろうとしないでね?!」

 

「う…?うむ」

 

ヴェルドラに向き直って熱弁する。今この場で最も重要なのは俺の名誉である。信用とか信頼とか友情だとか、そういうものも大事だが黒歴史拡散防止の前では全て一旦脇に置かれるのだ。

 

「約束だからね?!」

 

「約束…?うむ!そうだな!我等二人だけの約束。にしておこう!」

 

ヴェルドラは約束という言葉に反応し、随分と上機嫌だ…傍目から見てもわかるくらいに上機嫌だ、いつもテンションの高い声は高音にも聞こえるくらいに声が張っているし、今にも鼻歌を歌い出しそうなほど口元(?)が緩んでいる。

 

…ヴェルドラが言いふらす系の小悪魔じゃなくて助かった。この様子なら大丈夫そうだ…

 

「…」

ヴェルドラ…そう遠くない未来、きっとリムルと出会うことになる。そうなればしばらくこの日課ともお別れすることになるのか…そう思うと少しだけ寂しいな。

 

「フハハハ!そう心配せずともお前が多くの人間の目を惹くような女の姿に擬態していたことは誰にも言わんぞ!我は口は堅いからな!」

「………」

 

…これ大丈夫かな。ルミナスの件みたいにポロっと言わないかこれ?

 

「…信じてるからねヴェルドラ?」

「うむ!任せておけ!この秘密は暴風竜の名にかけて守り抜くと誓おう!クァーハッハッハッ!!」

 

俺の真面目な声とは打って変わって元気に響くヴェルドラの声…きっと無理だろうななんて思いつつもこれから先、ヴェルドラが話さないことを祈るしかできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

17歳になりました。ヴェルドラが消えました。




ようやく原作開始なるか…?
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