ハードな国に転生したけどカッコ良く生き(り)たい 作:王の物置
――少し前、封印の洞窟にて
(胃袋のなかで俺は外から、ヴェルドラは内から結界を解析する。それで良いよな?このまんまだと百年も経たないうちに消えちゃうなら、一か八かやってみたいってヴェルドラが言ったんだろ)
(う、うむ!しかしな―…)
大賢者さんの提案により、ヴェルドラを結界ごと取り込み解析する!というところまで来たのは良いものの…なにかヴェルドラは首を右往左往させ、煮え切らない様子でウズウズとしている。
…一見良い案に見えても、一度何かが気がかりになって、考え込んでしまうのは竜種であっても避けられないんだな…生き物の性からは竜種も逃れられないのか。
こういうときは誰が何を言っても、どの選択肢を後悔してしまうもの…俺からは何も言えない。もしもを考えてしまうと無限に後悔してしまうからな。
(う~む…)
チラリちらりと何かと比べるようにこっちを見てくるヴェルドラ…これは、何かかなりの事情がありそうだ。まぁ、聞くだけならしてやるか。
(どうかしたのか?何を悩んでるんだ?)
(!ハーッはっはっ!よく聞いてくれたなリムル!実は我、もう一人、トモダチがいるのだぞ!)
お友達自慢かよ!!う、ウゼェ。このメンヘラ邪竜め…!俺が今までどんな気持ちで草を毎日のように食べていたのかも知らないくせに…!
(で、どんな、奴なんだ?)
(…目が離せず、突拍子もない行動をとるような奴でな。不定期だが、いつも我のもとに訪れては嬉々として我の話し相手になってくれている人間がいるのだ。)
(初めて会ったのは、今からもはや十年以上も前の出来事か。初めて我の前に姿を表した時は、我に物怖じすることなく話しかけてくれたのだ…)
(そうだったのか、確かに……十年も通ってくれていた人から何を言うでもなく別れるなんて…辛いよな。……それじゃあさ!俺がその人にあったら代わりに伝えとくよ!その人の特徴を教えてくれ!)
(そうか、ならば我が盟友リムルに託すとしよう。奴は愛くるしいやつでな…くっきいという食べ物を持ってきた事があった。結界があるから我は取れんのにな…その事に気がついてから本気でショックを受けたようにしておって…)
(あー、そういうことじゃなくて…ほら、名前とかさ!)
(名前…名前か!)
(そうそう!名前だよ、名前!)
(…名前…!!名前…名前。我は人間に名を与えていないぞ!!)
ん?つまり、どういうことだ。嫌な予感…!まさか、オレが思ってる通りのそういうことじゃないよな。
(……我、あの者から名を聞いたことがないな)
(えぇ……)
この駄竜…十年も通ってくれていた人の名前を…一度も聞いたことがないとか…さすがに頭を抱えざるを得ない。抱える腕はないけどね!!
(えっと、じゃあその……姿とか)
(……うむ、基本は黒髪をたなびかせ、かつての勇者のような活力に満ち溢れる姿をしている。しかしまぁ勇者と近しい年の姿なのだろうがその目が離せぬ言動からはオマエのような幼さを感じるぞ!)
?誰が幼いって?……全く失礼な奴である!普通に、ちょっといい会社で働いてた賢者になりかけてた会社員だっての!
しかしそうか…勇者みたいなってことはヴェルドラを封印した勇者のことだろうし、多分女性ってことだよな…幼く見える黒髪の女性か。
ヴェルドラが消失したことを知れば、いずれ訪れるかもしれないし、その時ヴェルドラのことを話してみれば反応で分かるかもな…!
(…わからないけど大体わかった!後は俺に任せろ!)
(うむ、頼んだぞリムルよ!)
(おう!)
■
クレイマンとの会合から約一月が過ぎようとしてます、エドルスです。
クレイマンとの会話を思い出す度に胃が痛む、次があるならいつになるのかと考えるだけで気分が悪い。
が、それ以上に今の俺を苦しめている問題が存在している…!
「はぁ…」
自室で一人、再び俺は軟禁されている。理由は大変な時期に無断欠勤をした罰として。
分身許すマジ。
アイツ……いやね?確かにリグルの方を見てきてほしいとは言ったよ?でも多分問題は起きてないと思うし…戻ってきて俺のかわり担当してくれると思うでしょ?
ところがどっこい!担当するどころか!3週間半経っても戻ってきてません!マジかアイツ…ポンコツロボかな…?
ここ1週間マトモに私用で外に出られていないのでストレスもマッハ、ホントフラストレーションが溜まる…!真面目な場所でずっとニコニコしていた時間だけが、1日の中で外に出られる唯一の時間と言っても過言じゃない。
しかもあいつ多分1回は戻ってきているのが腹立たしい。
クレイマンとの話し合いを終えた時、家帰ったら机に黒のラインが入った金の指輪が置いてあってさぁ、プレゼントのつもりかと……嬉しいよ…嬉しいけどもっと配慮してくれても良くないかな…いや本当に困った。
キョウヤが召喚されたかどうかも把握できてないし、キララにもショウゴにも顔合わせできてないし本当に身動きが一切取れない状態なのだ。
本も読み飽きたし、やることと言ったらそれこそ……前のように擬態の造形美に手をつけるくらいしかない。正直楽しくなってるし再び危機感は覚えているのだがやることがないのだから仕方がない。
―…早く自由になりたい。せっかくクレイマンから自由に行き来できるネックレスを貰ったというのに使う機会が来ないんだから。
ゲルドの様子も見てこないといけないし、キョウヤがいるかどうかも確認しないといけないし……やるべきことが多すぎる。もう何もかもから解放されて自由になりたいな。
……全く!!人とのコミュニケーションが少ないと、寂しがりやな俺としては参ってしまう!
しかしそれも今日の昼まで…!そこからは要観察扱いだろうが城内を再び自由に動けるようになる。
まぁおいおいの行動については、お昼開放後考えればいいだろう…まだまだ俺には考えることが山のようにあるのだから。
リムルについてもそうだ、そろそろゴブリン村にいてもおかしくはない時期になっていると思うし早急に会う手立てを考えなくてはならない。
コレで仮にリグルも生きていませんでした〜となったら本格的に分身の使用を禁じなければならないが流石にそれはない…筈だ。何かしらが理由で戻ってきたあとに消滅していたとなればまた話も変わってくるが、そうなると殺ったのはほぼフットマン、ティアらへんだろうし俺がクレイマンに殺されていないのが不自然になる。
…まぁだから多分リグル救出の任務はやり遂げてくれるはずだろうがそれはそれとして不安ではある。
「……」
分身がおいていったであろう黄金の指輪、何か地雷臭がするので色々と調べてはみたのだが俺の結果ではただの普通の黄金が使用された…マジックアイテムでもなんでもない指輪だと調べはついたのだが…なんか嫌だ。
ラーゼンや、父様からのプレゼントであったなら疑いもしないのだがあの分身のことである…変なところから拾ってきたやつじゃないだろうかと不安になる。
「……スライムくんこれ食べる?」
スライム君に投げ渡してみるが特に反応を示すわけでもなく、いつも通りプルプルしている。うむ、元気そうで何よりである。
「……」
警戒してても仕方がないか。特に何もないと分かったんだし、贈り物はありがたく受け取ろう。
一旦拾って、とりあえずちょうど良さそうな人差し指にはめてみる…うん、結構ぴったりだ。宝石とか、そういう派手な装飾がないので結構俺好みのナイスデザインだな。
いやにしても本当にぴったりだ、緩すぎず締まりすぎず、指輪本体も大して太さがないから指も動かしやすい。中々センスのあるものを渡してくるじゃないか…!
お洒落するときはこれをつけて行こうかな!分身のやつ、行動はいまいちで時折ぶっ殺してやろうかと思ったけど、渡してくれた物自体は大切に扱わせてもらおう。
「――…?」
「ふぅ。……っ!!」
流石にフィットしすぎたか?と、取れない…!びくともしない!ヤバいぞ、ヤバい…!普通に手袋とかつける時あるし、流石に取れないのはまずい。
こういう時は、一旦落ち着いて。まだ慌てるような時間じゃない。
まず手を濡らす、石鹸をつける、――そして取れない
回すことすらできない、本当にびくともしない。
「アイツ…」
間違いなく、奴め…呪いの装備を渡してきやがった。
一瞬でも信用して、見直した俺がバカだったよ。
……絶対に許さんぞあの分身!見つけ次第ぶっ飛ばしてやる!!ぶっ飛ばしてやるからな!!
多分こんな感じの関係
エドルス
プレゼントフォーユー↑ ↓ゆるさない
エドルス(分身)