ハードな国に転生したけどカッコ良く生き(り)たい 作:王の物置
「よぉ、クレイマン。ゲルミュッドの件はどうだ?」
「その事についてだけれど、少し進展があった、別で面白い人間を見つけてね。オークロードが誕生する日もそう遠くはないでしょう」
白のタキシードを着こなし、優雅としか言いようのない佇まいを見せるクレイマン。
そんな彼とは対照的に、馴れ馴れしく話しかけた男は筋骨隆々とした肉体を持ち、その肉体を見せつけるように服を着崩した金髪の男であった。
「面白い、ね。お前が言うとは余程の奴らしいな!俺も興味が湧くぜ…で、どんな奴だ?」
「そうがっつかないでくれよカリオン。君が気に入るタイプではないと思うよ。妙なところで悪知恵が働き小賢しく動く人間だ」
クレイマンから差し出された酒にも手を伸ばさず、
カリオンと呼ばれた男はクレイマンの言いように首をかしげながら、背もたれへと身体を預ける。
「へぇ、お前が気に入ったとか言ってたから。てっきり愚直で真っ直ぐなヤツだと思ってたぜ」
「おや、心外だね。私は話の通じる賢い人間がお気に入りですよ」
「どうだかな………どのみち、お前がそこまで気に入る人間ってのは珍しいな」
カリオンはようやく酒に手を伸ばし、一口だけ喉へ流し込む。
「それで?そいつの何が良い?」
「特筆すべきところと言えば…内包するエネルギー量ですね、上位魔人と同程度か。それ以上は確実でしょう」
「おいおいマジかよ!有名人か?いくつだ?」
「魔術などで名を成し残している人間ではありませんよ。歳は…まだ若い。将来性を含み、中々面白い存在かと…」
「そりゃ凄い!うちのにも聴かせてやりたいぜ!」
「…随分と、上品な話し方ね。私もぜひ教わってみたいものだわ」
声に振り返ったカリオンの視線は、白い翼を捉える。
いつからそこにいたのか。長い翼を背に畳んだフレイは、クレイマンへと視線を向けていた。
長い真っ白の翼を揺らしながら、カリオンを見下ろすその姿には隠しきれない気品がある。カリオンとは対照的に、露出の多い服装でありながら、その立ち姿には着崩したような印象は一切感じられなかった。
「んだ?来たのかよフレイ、クレイマンのやつが面白そうな人間を連れてきたらしい」
「そうみたいね…それで?クレイマン、その子には何を任せているの?」
「オークへの名付けですよ。」
「大丈夫なの?大胆ね」
クレイマンの言葉にフレイは僅かに眉をひそめた。
「魔王種を生み出すための計画でしょう? その重要な部分を、素性も知れない人間に任せるなんて……」
その瞬間、不意に机が揺れた。
「クレイマン、また面白いのを見つけて来たのだな?!」
いつの間に現れたのか…フレイの隣でピンク色の髪をツインテールに束ねた小柄な少女が、満面の笑みを浮かべていた。
「強いか?面白くなりそうか?」
フレイの反応とは対称的に満面の笑みで飛び跳ねるように反応する様子は、姿も相まって子供のそれだ。
最も…その好奇心が向いた先に国一つが消し飛ぶ可能性がある以上、周囲の者からすれば笑える出来事ではないのだが。
「えぇ、本当に、本当に面白い内容になると思いますよ…」
「それで?結局ソイツはナニモンなんだ?」
「異世界人ですよ」
「……へぇ?そりゃまた珍しいもん拾ったな」
「それは、本当に大丈夫なの…?クレイマン…」
「変わっているということだな!それならワタシが様子を見てきてやろう!」
「ハハッ、それはご容赦を。計画が順調に進んだ後ならば構いませんが……今は出来る限り、介入を避けてもらいたい。まだ使い道がありそうなのでね」
■
あの分身マジふざけんなぶっ殺すぞ。ようやく外に出られる…
…後ろを振り返れば、俺を見ている人はいない。それならやるのは一つ、ショートカットだ。
俺は適当な個室に入って、そこの窓をガチャリと開ける……流石に外に出なければ怒られることはないだろう。
久しぶりにキララ達と会えると思うと、少しばかり気分が上がる。いつも通り窓から飛び降りて浮遊の魔法でキララの部屋の方へと向かっていく。
プレゼントは何もないが、許してくれると良いけど――「キララー!……っ?」
…暗い、部屋が暗い。それに、荒れてる。窓から覗いた部屋は、ある意味で生活を感じられない内装になっていた。机には物が乱雑に置かれている…というよりも置いてあるものをそのまま放置しているように見える、ベットもシワだらけだ。
一昔前のキララですらも考えられないような荒れ具合…何があったんだ?
「キララ…?いるか?」
鍵を魔法で開けて部屋に侵入してみれば、もそりと布団の中から何かが動く。
……目を凝らし、布団の中身を目視すると…見覚えのある茶髪の女性、が入っていた。良かった…なんか強盗…はないにしても良からぬことに巻き込まれたのかとソワソワしたじゃないか。
「キララ久しぶり。ショウゴと元気して――」
「……なんで来たの?」
その声を聞いて、思わず足が止まる。久しぶりに聞いたキララの声は、前と少し違っていた。覇気がないが…響く声。
「な、なんでって言われても…ま、まぁ、友達だからだ?」
キララの顔を見てどきりとした。目元がパット見で分かるほどに黒く、髪もあっちこっちへと乱れている。
「…寝不足気味?大丈夫?」
「……うん」
キララの反応を気にしながら、近づくでもなくソワソワしながら足を動かす…何かあったのか…なんて言うのは聞かずとも分かる。顔色を覗うが、何かに怒っているような感じはしない、
いったいどうしたんだ。
「……ショウゴは元気してた?」
「知らない…」
「あー……ご飯は食べた?一緒に食べない?」
「いらない」
…ラーゼンかが何かしたのか?
………椅子を持ってきて、キララの向かいに腰を下ろす。
「ねぇ…」
「…なに?」
「なんで来たの…?」
「…あー、アハハ…その、理由がないとだめかな…?その、友達同士じゃん……?」
「…友達……」
「友達なら…なんで……なんで来てくれなかったの?!ねぇ…!!」
キララの悲鳴じみた怒号に息が詰まる。そうか。キララからしたら俺が突然消えたことになるのか…
「っ…その、色々大変なことがあってさ、ごめん来れなくて」
「嘘だ!」
「頼まれたから来たんでしょ?!」
「いや、違うけど……」
「嘘」
「嘘じゃないって」
「だって……」
「……だって、今まで来てくれてたじゃん!じゃあなんで来なくなったの?!」
「だからいけない理由があって」
「……理由?」
「うん」
「……私が、何かしたから?」
「え?」
「私が……嫌になったからでしょ?」
「いや、そんなわけ――」
「じゃあ、なんで?」
「だから……」
「私が普通じゃなくなったから…」
「……普通じゃなくなったって?」
「…………」
「ほら、私……人を殺したから」
「……えっ?」
スキルによる殺人。
…すっかり忘れていた。既に、終わった出来事だと、勝手にそう思っていたのだ。キララと過ごして、そんな事起こらないと…脳の隅に捨てていた。
「……人殺しなんかと関わりたくないでしょ?もう行って良いよ?」
「…そうだったのか。ごめん、気がつけなくて……」
―――これは、俺がいれば少なくともこんなことにはならなかったんじゃないか…?
「えっ……?」
「キララの話を聞いていたのに、大丈夫だろうと思ってたんだ。」
「ごめん。気づけなくて」
「ちが…そんなつもりで……」
「……」
「……」
何を言えばいいのか分からない。前と同じだ、気休めの…嘘で塗り固められたような言葉しか思い浮かばない。
結局
「――…ご飯食べてる?一緒に食べない…?」
「…気分じゃない」
適当なことしか言えない。
「そっか」
仕方がない。俺にはどうしようもない。…けど、ココから離れるべきじゃない。
「……じゃあ、何がしたい?」
「……皆に会いたい」
「…そう」
家族にか。
「……今度、旅行に行こうよ」
「…?」
「3人でさ。」
「旅行…?」
「そうそう。イングラシア王国ってところに。有名なケーキ屋さんがあるんだよそこ。3人でそことかへ行ってみようよ」
「……いつ?」
「いつでも。」
「はー、俺ちょっとショウゴに殴られに行ってこようかな……」
「なんで…?」
「ショウゴ、来てくれてただろ……」
「……ほら、アイツ寂しがり屋だから。キララも来る?」
「…行く……」
「やー!ショウゴ君。元気してたかな?」
部屋をガチャリと開けて入ってみれば…ショウゴは苛立たしそうにこちらを睨んでいる。
「テメェ今までどこ行ってやがった?」
声がいつもの数倍低い。
機嫌が悪いのはいつものことだと思ってたけど、愛想が無いだけだったらしい。
……目をつぶり、手を広げて歯を噛みしめる。
「……」
ショウゴには迷惑をかけた、何十発殴られても…数発殴られても文句は言えない。
「全力で来いショウゴ」
…待てど待てど拳は飛んで来ない。遠慮してくれてるのだろうか?優しくなったなショウゴも。もしかして事情を察して労ってくれているのだろうか?
「遠慮しなくてもいいよ」
「は?ヤダよ」
ショウゴお前ってやつは――「気持ちわりぃ、なんで男同士で抱き合わなきゃいけねぇんだよ。病人に見せるもんじゃねぇだろ」
……感動した!ショウゴ、周りのことを見てやれるようになったんだな…!
「ショウゴ…立派になっt、痛…なんで?キララ後ろにいるよ?えっ?」
「キメェんだよ一々」
割とガチ目の肩パンを食らった。普通に痛い……ジンジンと痛みが広がっていく。内出血はしないけど痛いくらいのパンチ…
「ショウゴ…成長し…痛ッ!…………待ってマジ痛いやつ。……ぁっー…」
さらにつよい拳で悶絶する俺に視線を向けることなくショウゴはキララの方へと身体を向けて、無理やり部屋へと引き入れる。
…ちょっと乱暴かもな。
「オイ、キララ。飯食うぞ」
「…気分じゃないし」
「うるせぇ、食ってたら気分になる」
…いや、だいぶ乱暴かもな。
美女と野獣というか…悲しきモンスターが優しくしようとしてるのは伝わってくるぞ、頑張れショウゴ。
「――痛。えっ?なんで?」
「目がキモい」
…コイツ、エスパーなのか?
「オラ、お前も何そこで突っ立ってる。食うぞ」
「…………へぇ〜、OK!椅子用意…って3人座るだけあるのか。まぁ元気ないときは言ったん果物食べるのがいいよね〜」
ショウゴは元気そうで何よりだ。いつにもまして変わって見える。
かごに入っていたリンゴを手に取り、魔法でリンゴの皮を器用に切って、ついでにウサギにしてみたりして、盛り付けてみる。
どうだ刃物もなしにすごいだろ。
「……変なの」
「ホントな。キメェ」
「え〜、なんでそんな事いうのさ。」
…二人の反応はあまりお気に召さなかったらしい。何がだめだったのだろうか、見栄え?
「てか今度さぁ、3人で?旅行行かない?イングラシアってところに。」
「…ニヤニヤしてると思ったら、そういうことかよ。」
ニヤニヤしてる?…そんなことはないと思う。
「えぇー?ショウゴ来ないの?なら、俺が3人分になる…」
「…最低」
「…そこはキララ連れてけよ…」
……いや、まぁ…楽しいんだろうな。
エドルス
君よくデリカシーないって言われるでしょ?女子部屋普通にはいるヤベーやつ。
エドルス(分身)
暗躍加害率No.1。他者の追随を許さない圧倒的な妨害工作で1位を独走中、次点でマリアベル。おそらくどこかの章ボスを担当してると思われる。
腐ァルムスの人たち
まぁ騎士団長が継ぐ能力でもないし一人くらい死んでもエエやろの精神。