ハードな国に転生したけどカッコ良く生き(り)たい 作:王の物置
「座りたまえ、君の話はラプラスから聞いている…」
髪も服も真っ白な男、目の前にいるのは間違いなく魔王クレイマンである。
「……あっ、失礼しマス。かの魔王の一人であるクレイマン様とお会いでキて光栄でス」
めちゃくちゃ緊張して心臓バクバクと音を立てる…面接を受けている時のような緊張感、いや命を刈り取られるかもという不安もあるので緊張感倍増である。
「さて、早速本題ですがその能力について詳しく教えてください」
……どうしよう。バカ真面目に話したら間違いなくデットエンドだし適当なこと言っても絶対殺されるし…一体どうすれば良いんだ?
「えっと……そのー、あっ、あの、私の未来予知…というのは、あの、予知夢?みたいな形でして見たことが絶対起こるわけじゃないし、近い内に起こることしか見えないというか……」
まずやるべきは融通の利かない無能能力アピール。重宝するような人間ではない事を全面的に押し出して、存在価値をできる限り薄くする事。
「そりゃ矛盾してんな。近い内…やないやろ?じゃなきゃクレイマンが中庸道化連なんて言葉出てこんやろ」
黙ってくれラプラス、余計な事を言いやがって、的確に俺の間違いを指摘するな!クソっ疑いの…コイツ騙そうとしてるなら殺すかの目で見られてる
「あ、いやそれはその、例外があるといいますか……殆どは最近に起こることなんですけど……その。よく分からない別の人の目線で?見たりとか、他の方が見聞きすることを聞くんですよ……それもその人の視界や見ているもの全て見えるわけじゃなくて…」
苦しい、苦しい言い訳すぎる。
「その別の人というのは?」
「……えっと、それは……近い内に会う人?ですかね?」
「例えば?会話も聞けるのなら名前の一人出せるでしょう?」
詳しく聞いてくるなクレイマン…!くっそこんな事になるならもうちょっと設定を練って喋るべきだった。ここで地雷を踏み抜くわけには行かない…マジでここで間違えたら死亡確定だ。
「あー、えっと」
誰のこと言うのが安牌だろうか?さっきの話しとちゃんと辻褄があっている人…
「あ、フットマンさんとか、ティアさんとかですかね」
「成程…」
成程…って何?えっ地雷踏みました?
……いや、まだ焦るような時間じゃない。クレイマンは特に何か言うわけでもなく考えているだけで怒ってるようには見えないし。
クレイマンのことだし癪に障らなかったら始末されるしまだされてないってことは大丈夫ってことだ。
「――一旦嘘ではないようですね。フットマン、ティア。もう出てきても構いませんよ」
そうクレイマンが言うとクレイマンの後ろから丸々とした緑髪のピエロと小さいピンク髪のピエロがひょこりと姿を現す。
「ホーッホッホッホ!お初にお目にかかります。ご存知の通り中庸道化連
「やっほー!
…どこに隠れるスペースあったんだとか考えるが見当もつかないのでそのことについては考えるのを諦めて、ペコリと一礼だけする。
ティア、フットマンはまさにピエロと言ったように派手に誇張した全身を使った動きで感情を表しておりイメージ通りといった感じだ。
「………ねね、この子全然ビックリしないよフットマン!悲しいねー?」「その通りです!」
少しだけ癒される…動きがオーバーというだけで目の前の現実から目を逸らせれる。がそれも束の間の話で四人組にマークされているという事実を前にして辛い。
「いや、多分結構驚いとるで。ワイの顔見た時もこんな感じで固まって目かっぴろげてたで驚いとった」
ナイスフォローありがとうラプラス。普通にビックリした…ユウキとカガリ以外全員いるという事実に驚いた…こんなに原作キャラに会えてめちゃくちゃ嬉しいという気持ちもある。身体が感情に負けて反応できなかっただけなのだ。
「いや、きっと驚かなかったんだよ!ショックだねー?」「ですねぇー」
そういうとティアとフットマンはその場で固まり、コチラをジトっとした目で見つめて来る……何を求められているのだろうか?芸には反応する人が必要だが、ここでボケるのはちょっと無理がある…
「………うわー、ビックリしたー。心臓が止まったかと思ったー」「もうちょい頑張れたやろ」
やめてくれラプラス、正論を言うのはやめてくれ……緊張と困惑と素の演技から繰り出されるゴミみたいな反応には流石の2人も苦笑いするしかないだろう。良い反応ができなくてすまない…
「なーんだビックリしてたのか!アタイたちが怖すぎて固まってたんだってフットマン!それなら仕方ないよね!」
「その通り仕方ないというものです、誰しも怖いものの一つや二つあるものですからね」「ねー!」
うんうんと首を縦に振るフットマンと驚くような仕草をしてフットマンの周りをクルクルと周るティア…今のカスみたいな感想で良かったのか?
「さて、予知能力を持つことは分かりました。残るはその内容についてです。覚えている事で構わないので、君の予知夢の内容を教えてください」
クレイマンがそう言うとティアとフットマンはこちらに来て俺を取り囲むようにして寄ってくる。
逃げられないようにだろうか?2人がいなくとも逃げる気はない。今緊張しているぶんに上乗せされることはないので本当に今はどうでも良い…………嘘だ。
今にも飛び出して逃げたい…緊張感と目の前で行われている劇のような光景、その2つのギャップに脳がバグって爆発しそうだ。
それより今は質問の回答について頭を悩ませる…あまりにも未来すぎるとまた疑われてしまうし、かといって何も情報を渡さないというのも良くない……何の話をするべきか。
ここで相手にとっての悲報を伝えるのも駄目だ、できるだけ相手を喜ばせるような内容でなくては…
「……はい、えっと、その、あれです…」
何も出てこない。ヴェルドラが消えるという話を言っても相手は百年程度でヴェルドラが消滅するという目星をつけているのでむしろコッチを疑われてしまう。
……喜んでもらえる情報ってなんだ?未来の話とかしたら何か変わるか……?
「何も出てこないですか?」
クレイマンがこちらを真っ直ぐ見つめる。目はコチラを睨み、そこに吸い込まれてしまいそうな感覚に襲われる。
ヤバい、文字通りのデットラインがすぐそこまで来ている。
何か、何かを言わなければ……クレイマンの好きなもの…仲間とガザリームと……あと、お茶会?
「スイーツ!スイーツ食べる夢を見ましたよ。あれあれですあれ…スコーン?です」
何を言ってるんだ俺は…死んだ、死んだぞ俺。
なんかもっと有益な事言えよ。どう考えても今この場で言う事じゃない…悪手のゴミ情報を出してしまった。
もう駄目だ終わった……ここで殺されるんだ、俺の命はここで終わるんだ。
「……成程」
そう言ってクレイマンは口元に手を当てる。まるで何かを考えるかのように顎に手を当ててコチラを見つめる。
殺される…
「フッフッフッ…それを食べてどのように感じたか覚えていますか?」
何会話にしようとしてるんだ…何を求めているのか本当に分からん。
「…えっと、凄く美味しいと言っていました」
「クックック…フッ、フハハハ!」
ヤバい、笑いの三段活用だ…悪い奴が悪いことする時にしか聞かない笑い方…今から間違いなく俺は死ぬ…せっかくこの世界に来たのに!7歳しか生きてないのに!俺は死ぬんだ!
「その力で見たものをこれからも教えてもらえますか?当然それなりの報酬をお支払いしますよ」
「あ、はい!勿論です!」
最後の望みをかけてクレイマンの提案に乗るように全力で首を縦に振る…しかしクレイマンはあとに立ち上がってコチラをじろりと睨みつけたあとに首を背ける。終わった…なにもかも…
「どうやらその能力の説明に嘘偽りはないらしいですね!そろそろスコーンが焼ける時間です。食べていきますよね?」
「えあ、はい…頂きます」
えぇ…これ、は?許されたのか?分からない…もうなにもかも分からない…クレイマンはそそくさと目的のものがある場所へと移動していく。
「ティア。少々手伝ってもらっても?」「ご機嫌だねクレイマン…」
えぇ……許された。そんな事ある?
「うわめっちゃ美味しいです!」
「フッ、当然です。これから役に立つようならお茶会に招待してさしあげましょう」
崖っぷちから助かった後のスイーツはめちゃくちゃ美味しかった。
エドルス
まさかの生存方法。奇跡的な神回避を見せていく。
クレイマン
多分転スラ日記の住民。自分の力作を称賛して貰えてニッコリ。それはそれとして使えなかったら切り捨てる。