アイより高く軽やかに   作:にいづま

11 / 38
打ち上げ:アクア

 とあるホテルで開かれた『今日あま』の打ち上げに呼ばれていた。『今日あま』の最終回は無事配信された。有馬さんが本気の片鱗を見せたこともあってか、最終回だけは評判がよかったらしい。

 

「こうやって見ると改めて多くの人が関わってるのね」

「そうよ。私たちの演技には多くの人の仕事が乗っかってるの」

 

 会場には現場で会ったスタッフ以外にも多くの人がいた。私の隣には有馬さん。着飾っている彼女はとても綺麗だ。

 

「アクアはなんで制服で来たのよ」

「ドレスとかもってなくて」

「アイドルになるんでしょ。打ち上げに呼ばれる機会なんてこれからいっぱいあるわ。何着か用意しときなさい」

「確かにそうね。でも買うとなると高いし……。有馬さんはどうしてるの?」

「子役をやってたときに引くほど稼いだ貯金で一通り揃えたわ」

「ええ……」

 

 そんな話をしていると誰かが近づいてきた。

 

「撮影お疲れ様でした」

「あ、先生」

 

 『今日あま』原作者の吉祥寺先生だった。二人が話すのを横目にその場を離れる。鏑木プロデューサーはどこだろう。

 

「やあアクアちゃん。最終回は評判だったよ」

 

 彼が私を見つける方が早かった。

 

「収益的にはキビかったけど、君みたいな才能に機会を与えるのが目的だから、それは達成できたかな」

「ありがとうございます」

 

 さて、本題はここからだ。

 

「それでですね、鏑木プロデューサー。その才能にもっと機会を与えてみませんか?」

「うん?」

「もう知っているかもしれませんが、私は妹と一緒にアイドルになるんです」

「そういう話は聞いているね。たしか『B小町twins』だったかな」

「ええ。でも苺プロから10年ぶりのアイドルなので、あまり伝手がないんです。どこか私たちのデビューにふさわしい舞台とかご存じないですか?」

「なるほどね。……あの『B小町』の名前を受け継ぐなんて大きくでたなと思ったけれど、君を見たら納得できたよ。どことなくアイに似ている」

「そう言っていただけてうれしいですね。アイは私たちの目標ですから」

「アイが目標か。面白い。繋がりがあるアイドルフェスがあってね。そことかどうだい? 詳しい話はまた後でしよう。契約の話にもなるし事務所も通さないとね」

「ありがとうございます」

「どこまでアイに近づけるか、楽しみにさせてもらうよ」

 

 去っていく鏑木プロデューサーに頭を下げる。どうにかこのドラマに出演した最大の目的は達成できた。ほっと息を吐くと有馬さんが近づいてきた。あちらも話が終わったようだ。

 

「アクア? もうそろそろお開きよ」

 

 

 有馬さんと一緒に会場を出る。すっかり日が暮れていた。

 

「上機嫌ね」

「原作者の吉祥寺先生に褒められたの。そういうアクアも機嫌良さげね」

「鏑木プロデューサーと次の仕事の話ができたの」

「次、次の、仕事……。よ、よかったわね」

 

 不憫な子だと思う。仕事がない時間を耐えて、やっと主役が出来たと思ったら現場はアレ。この様子だと次の仕事も決まってないんだろうな。

 有馬さんにはお世話になった。このドラマを紹介してくれたし、現場で気分が悪くなった私を介抱してくれたのも有馬さんだ。それに、彼女の芸歴の長さは役に立つ。

 

「有馬さん、今フリーだっけ?」

「そうだけど、何?」

「苺プロに入らない? フリーだといろいろ大変でしょ?」

「気軽に言うわね。アクアにそんな権限あるの?」

「私、社長の娘なの。ある程度の融通はきくわ」

 

 有馬さんは怪訝な顔をしている。警戒しているようだ。

 

「私なんか入れても事務所にメリットなんかないわよ? 無駄飯喰らいが増えるだけよ」

「芸能界のイロハを教えてほしいの。マナーとか暗黙の了解とか、外からわからないことをね。特に妹に。あの子何だか危なっかしいの」

「あー、あの失礼な妹? 確かに思ったことすぐに口走りそうね」

「そうなの。お願いできない?」

「アクア、もしかしてシスコンなの? ……まあいいわ、入ってあげる。妹に言っといて。舐めた口聞いたらコロスからって」

「はいはい。ありがとう有馬さん」

「その『有馬さん』ってのやめない? 他人行儀すぎるわよ。これから同じ事務所になるんだし」

「わかったわ。かな」

「呼び捨てなのね。まあいいけど。最初に会ったときも思ったけど、アクアって年下の気がしないのよね」

 

 こうして苺プロに新たな仲間が加入した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。