やはり俺の逆行は間違っているのか? 作:ペンギンって可愛いですよね
久しぶりにハーメルンにて投稿させて頂きます。
本作は、
「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」の二次創作
となります。
もしも比企谷八幡が“あるタイミング”で逆行し、
赤ん坊からやり直すことになったら?
そして小学生の頃に葉山隼人と雪ノ下雪乃に出会い、
彼らの“未来の行く末”を知った上で
再び関係を築くことになったら?
そんな“もしも”から始まる物語です。
逆行ものとはいえ、
本作のテーマは「無双」でも「ざまぁ」でもありません。
八幡が未来の記憶によって
他者への理解が深まりすぎた結果、
雪ノ下家に“隠れギフテッド”と誤解される。
雪ノ下雪乃からは、
「あなたをもっと知りたい」と興味を持たれる。
葉山隼人は、
未来と違う成長を見せ始める。
そんな、
人間関係の再構築を中心にした物語
として進めていきます。
原作とは違う「やり直し」の青春を、
ゆっくり楽しんでいただければ嬉しいです。
それでは、
どうか温かくお付き合いください。
本編
目が覚めたら、泣いていた。
いや、それは比喩とかじゃなくて、本当に泣いていた。
俺の意思とは関係なく「おぎゃあ」とかいう文明レベルの低い叫び声が出ていた。
そして抱き上げられ、揺らされ、ミルクを飲まされ……。
――あれ? これ、逆行じゃね?
最初は夢だと思った。
まさか自分が赤ん坊の体に戻るなんて普通はあり得ない。
というか、比企谷八幡の人生にそんなドラマティックな展開が訪れると思う方がどうかしている。
だが、俺は確信した。
意識は完全に大人のまま、時間だけが巻き戻った。
赤ん坊なのに、内心のツッコミだけは高校生レベルという気持ち悪い存在に。
◆ それでも時間は進む
逆行したところで、赤ん坊の身体は赤ん坊だ。
歩けないし喋れないし、自分が言いたいことは伝えられない。
だが、親に愛されながら育つ時間は、悪くなかった。
いや、これが本来の俺の幼少期なんだけど、未来を知ってる分、なんだか切なくなる。
自分でも驚くほど順調に成長した。
ハイハイして、立って、歩いて、
幼稚園に入り、友達と遊び、
そして――気づけば小学校入学の年になっていた。
未来の八幡と違って、俺はなぜか運動能力もそこそこある。
たぶん中身が大人だから無駄に落ち着いているせいだ。
だが、小学校入学の日。
俺は最初の違和感に気づいた。
◆ 「……ここ、俺の知ってる学校じゃねーな?」
校門。
校舎の形。
クラス名簿。
どれも俺の記憶と違う。
本来なら俺は別の学区のはずだ。
なのに、どういうわけか――住所も転校の記録も変わっていないのに――
通う学校そのものが違っている。
「……おかしい。おかしいだろ、これ」
両親は何事もない顔で俺を送り出した。
つまり、俺の記憶のほうが“ズレている”らしい。
逆行の影響か?
運命が補正でもしたのか?
分からない。
だけど、胸騒ぎがした。
新しい教室に入り、俺は席に座る。
子供たちのざわめき。
名前を呼ばれる声。
そして――
担任が名簿を読み上げた瞬間、俺は固まった。
「ゆきのした ゆきのさん」
背筋がゾクッとする。
え、ちょっと待て。
雪ノ下雪乃が……俺のクラスに?
まさか、と思ったが――いた。
窓際で静かに座る、小さな女の子。
長い黒髪に、冷たく澄んだ瞳。
まだ幼さが残っているのに、すでに完成されつつある“雪ノ下雪乃”だった。
心臓が跳ねた。
そして追撃のように、次の名前が呼ばれる。
「はやま はやとくん」
「はいっ!」
前のほうで元気に手を挙げた少年。
明るくて爽やかで、周囲の子が自然に笑顔になる空気を持っている。
間違いなく――葉山隼人だ。
……え?
なんで二人が居るんだ?
いや、この場合は俺が二人の元の学校に来たのか?
俺、本来は同じ小学校じゃないだろ?
世界線が変わってるにもほどがある。
俺の頭は混乱しながらも、ひとつだけ理解した。
これは偶然じゃない。
運命そのものが、俺に“この二人のそばにいろ”と言っている。
そして、その運命は残酷なことも知っている。
雪乃のいじめ。
葉山の後悔。
奉仕部で出会い、別れ、涙を流す未来。
俺はあの未来を失いたくなかった。
守りたかった。
たとえ、赤ん坊からやり直す羽目になっても。
⸻
◆ そして、運命の出会い
午前中の授業が終わり、休み時間になった。
俺は静かに席を立つ。
向かったのは、雪乃の席でもなく、教室の隅でもなく――
「葉山隼人」
「ん? なに、比企谷くん?」
小学生特有の無邪気な笑顔。
しかし、その奥にはまだ“王子様ごっこ”すら始まっていない、ただの優しい子供の瞳。
言うべき言葉は決まっていた。
この世界線は、絶対にあの悲劇を繰り返させない。
「……話がある。
これから雪ノ下に起きることについて、だ」
その瞬間、葉山の表情がわずかに強張った。
世界は確かに変わった。
だが、それでもまだ救われてないものがある。
俺はその全てに、正面から向き合うつもりだった。
――比企谷八幡、逆行人生(ゼロ歳から)はじめます。