やはり俺の逆行は間違っているのか?   作:ペンギンって可愛いですよね

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第十話 雪ノ下家の門をくぐってしまった

リムジンが静かに動き始めた。

 

隣では小町が完全に固まっている。

 

「お、おにいちゃん……これ……ほんとに乗っていいやつ……?」

 

「俺もわからん……」

 

二人とも、平凡な一般家庭の子どもだ。

こんな高級車に乗っただけで胃が痛い。

 

陽乃は対面の席で、足をぶらぶらしながら笑っていた。

 

「ふふ、リムジンって広いでしょ? 八幡くん、小町ちゃん」

 

「いや……広いとかいう問題じゃないだろ……」

 

「ねぇねぇ、小町ちゃんはジュース飲む?」

 

「い、いいの……?」

 

「もちろん♪」

 

陽乃はミニ冷蔵庫を開け、子ども向けジュースを取り出す。

 

(……リムジンに冷蔵庫……?

いや、普通なのか? 金持ち基準では普通なのか……?)

 

小町は恐る恐るジュースを受け取った。

 

「ありがと……陽乃おねえさん……」

 

「きゃーー!! かわいい!! 何この子!?」

 

八幡(小町よ……そこで懐くな……!

魔王に気に入られると、ほんとに連れてかれるぞ!!)

 

陽乃は小町の手を握りながら、

 

「ねぇ八幡くん。

今日はね、うちのお母さんが“会いたいって”」

 

「は?」

 

「あなたのこと、気になってるんだって♡」

 

(なんでだよ!?

俺なんか“陽乃の観察対象その2”くらいの立ち位置だぞ!?

なぜ母親まで出てくる……!?)

 

陽乃はいたずらっぽく笑う。

 

「大丈夫だよ?

お母さん、優しいから」

 

(未来知識:雪ノ下母=めちゃくちゃ厳しい。)

 

「やめてくれ!!!

嘘だろ!!?」

 

陽乃はくすっと笑って誤魔化した。

 

 

◆ 豪邸の門、規格外すぎる

 

リムジンが止まった先は――

門だけで俺の家が入りそうな敷地だった。

 

門の両脇には綺麗すぎる緑。

長い石畳のアプローチ。

左右対称の花壇。

高級ホテルのエントランスみたいな玄関。

 

そして奥には、

二階建ての“家”というより豪華な洋館。

 

小町

「……おにいちゃん……ここ……お城……?」

 

八幡

「違う……たぶん……違わない……」

 

陽乃

「ようこそ♪ 雪ノ下家へ」

 

うわあああああああ!!!

現実味がない!!!

まじで異世界かよ!!!

 

執事さんがドアを開ける。

 

「お嬢様のご友人をお連れしました」

 

玄関の奥から足音が響く。

ゆっくり、しかし無駄のない歩き方。

 

俺と小町は思わず姿勢を正した。

 

現れたのは――

落ち着いた薄い色の着物を着た、

上品で、若く見える女性。

 

雪ノ下陽乃・雪乃の母親。

 

未来で何回か会ったあの人だ。

 

優しそうな微笑み。

けれど、その奥には鋭い光。

 

完璧な“本物の上流階級の人間”だった。

 

「おかえり、陽乃。

それから、いらっしゃい……八幡くん、小町ちゃん?」

 

小町

「ひっ……!?」

 

母親は穏やかに微笑んだ。

 

「初めまして。

陽乃の母です。

今日は来てくれてありがとう」

 

(……無理。

緊張で死ぬ。

雪ノ下母強すぎる……!!)

 

八幡は未来の記憶から悟った。

 

この人、相手を笑顔で見透かしてくるタイプだ。

 

陽乃の観察力の源だ。

 

小町は完全に縮こまりながらも、

 

「よ、よろしく……おねがいします……!」

 

と深く頭を下げる。

 

(小町……健気……!

守りてぇ……絶対守りてぇ……!)

 

母親は優しく微笑む。

 

「まぁ、小町ちゃん可愛いわね。

八幡くんも……礼儀正しいのね」

 

(いや今の俺、礼儀どころじゃなくガチガチなんだが!?)

 

陽乃が横から言う。

 

「でしょ? お母さん。

八幡くんって面白い子なんだよ?」

 

「……えぇ。そうね。

“とても興味深い子”だわ」

 

やめてくれ、

親子で同じ事言うな。

 

興味深くなくていい。

普通でいい。

ほっとけ。

 

八幡(いやマジで帰して……!!

この家に長居すると……精神が……死ぬ……!)

 

しかし雪ノ下母は優しげな笑みのまま続ける。

 

「さぁ、どうぞ。

お菓子も用意してあるわ。

ゆっくりしていってね」

 

陽乃の家に――

俺と小町は完全に“取り込まれた”のだった。

 

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