やはり俺の逆行は間違っているのか? 作:ペンギンって可愛いですよね
一般家庭のリビングの概念を崩壊させるような部屋だった。
天井は高く、
大きなシャンデリアがきらきら光っている。
ソファはふかふかすぎて沈むし、
テーブルはガラスで高級ホテルみたいだし、
カーペットに至っては歩くだけで緊張する。
小町は手をぎゅっと握ってきた。
「おにいちゃん……
ここ、ほんとに人が住んでる家なの……?」
「俺も信じられない」
雪ノ下母は優雅な動作で座り、俺たちに微笑んだ。
「さぁ、どうぞ。
今日は子どもでも食べられるお菓子を用意したの」
そこには、
小町の顔より大きいパフェと、
ホテルのラウンジレベルのケーキ。
なぜか高級そうなクッキーが箱ごと出ている。
「す、すごい……おにいちゃん……」
(小町、食べ物で落ちるな。
ここは敵地だ。気をつけろ。)
しかし陽乃は言う。
「小町ちゃん、いっぱい食べてね♪」
「は、はい……!」
小町は完全に落ちた。
⸻
◆ 雪ノ下母、八幡の分析を始める
雪ノ下母は紅茶を口に運びながら、ふと俺に視線を向けた。
「八幡くんは……
陽乃、雪乃と同じ学校なのよね?」
「は、はい……」
「成績がとても良い、と聞いてるわ」
陽乃がにこにこしながら言う。
「満点だったんだよ~。お母さん。
全部のテスト」
(おい魔王、余計な情報を流すな!!!
ここで満点は火種なんだよ!!!)
「まぁ……優秀なのね。
努力家かしら?」
(いや未来知識でズルしてるだけです!!
とは言えない!!)
「……えっと、たまたまです」
雪ノ下母はふっと目を細めた。
「慎ましいのね。
その“控えめさ”、とても良いわ」
(やばい。この人、気に入った相手は深掘りしてくるタイプだ。
陽乃の観察力の源を感じる……!!)
俺の心臓が縮む。
⸻
◆ 小町、大人気になる
一方その横では。
陽乃が小町の髪をなでまくっていた。
「小町ちゃん、かわいい……
このまま連れて帰りたい……」
小町
「え、えへへ……」
雪ノ下母も優しく笑う。
「本当に綺麗な子ね、小町ちゃん。
将来が楽しみだわ」
「そ、そんな……///」
(小町……どんどん敵陣に取り込まれていく……!!
やめろ、その笑顔はデカい武器になるから!!)
俺の胃はどんどん痛くなる一方だった。
ティータイムが一段落した頃。
玄関の方から足音がした。
コン、コン、と規則正しい歩調。
陽乃が嬉しそうに声を上げる。
「あ、帰ってきた♪
雪乃ちゃん、今日早いんだね~」
雪乃……。
まさかとは思ったが――
扉が開いた。
「ただいま戻りました、お母様。
あ……お姉さま……?」
雪ノ下雪乃(小学生)が、
生真面目な表情でリビングに入ってきた。
そして、
俺と小町を見た。
目をぱちぱち瞬かせる。
「……?」
陽乃
「紹介するね雪乃ちゃん~。
八幡くんは知ってるよね?その八幡くんと妹の小町ちゃんっていうの♪」
雪乃
「ひ、比企谷……くん……?」
雪乃は八幡を見て、
その表情が変わった。
“知っている”
“警戒している”
“でも、なにか引っかかる”
そんな感情が、一瞬で読み取れる。
小町は丁寧に頭を下げた。
「こんにちは雪乃さん……!」
雪乃
「こ、小町さん……こんにちは……」
そして、
雪乃は再び俺を見る。
(絶対なんか思い出してるだろこれ……
幼いながらも雪乃の洞察力は鋭いし……
俺の存在、怪しまれてる……!?)
雪乃は小さく息を吸って、
静かに尋ねた。
「……なぜ、あなたが……
うちに?」
だよな!!!
そう聞きたくなるよな!!!!
八幡
「いや、それは……その……
陽乃さんが……」
陽乃
「私が連れてきたの♪」
雪乃
「…………」
雪乃は無表情になった。
怒っているわけではない。
ただ“理解不能”という顔だ。
雪乃
「……お姉さま。
どういう、基準で友人を……?」
陽乃
「直感♡」
雪乃
「直感……」
(雪乃が混乱してる!!!
珍しいものを見た!!!)
雪乃の視線が俺に戻る。
瞳の奥で、
何かを測るように、
じっと見つめてくる。
(やめてくれ……
洞察しないでくれ……
未来バレするとか地獄なんだよ……!!)
小町が心配そうに俺の袖を握る。
「おにいちゃん……大丈夫……?」
雪乃はその姿を見て、驚いたように目を見開いた。
「……小町さん。
あなた……比企谷くんの妹……なの?」
小町
「はいっ」
すると雪乃は、
ほんの少しだけ頬を緩ませた。
「……かわいいわね。
……少し、羨ましい」
その言葉に八幡は固まった。
(雪乃が……微笑んだ……!?
小町の破壊力は雪ノ下姉妹共通で効くのか……!?)
陽乃は横で嬉しそうに拍手していた。
「でしょでしょ!?
小町ちゃん可愛いよねぇ~~♪」
雪乃
「……えぇ。とても」
こうして――
雪ノ下家に比企谷兄妹が完全に馴染み始めるという
ありえない世界線が静かに動き出した。
八幡の心の声
(……俺、これ以上巻き込まれたら死ぬ気がする……)