やはり俺の逆行は間違っているのか?   作:ペンギンって可愛いですよね

2 / 15
第二話 いじめの芽と、葉山隼人の選択

小学校生活は、まあ、退屈だった。

 

未来を知ってる人間が、九九だの給食当番だので一喜一憂するほど子供には戻れない。

だが一つだけ、俺の関心を引く少女がいた。

 

雪ノ下雪乃。

 

まだ幼い彼女は――

未来の雪乃と違って“強さ”を身につけていない。

ただ静かで、真面目で、浮いている少女だった。

 

そして浮いている少女は、クラスという小さな社会で最も狙われやすい。

 

それを俺は知っていた。

未来の彼女が、どれほどその傷を抱え続けたか。

 

 

◆ そして「選ばれなかった」少女

 

ある休み時間。

 

女子三人組が雪乃の机を囲んでいた。

 

「雪ノ下さんってさー、なんかいつも一人だよね?」

「声かけても無視されるし」

「なんか感じ悪いよね~」

 

うわ……出た。

テンプレ感のあるマウント女子。

 

雪乃は静かに、一定の距離を保つように座っている。

反論もせず、逃げもしない。

ただ淡々と受け流すだけ。

 

その姿は――未来の雪乃を思わせた。

 

あの頃、彼女はすでに「誰にも期待しない」という処世術を身につけていた。

だが今はまだ幼すぎる。

ただ傷つき方を知らないだけだ。

 

見ていると吐き気がしてくる。

 

しかし、もっと最悪なのは――

 

「はやとー、一緒に遊ぼー!」

 

クラスの中心にいた葉山隼人が、振り向きもせず女子たちの声に応じた瞬間だった。

 

雪乃を横目で見て、

迷うように息を呑んで、

それでも “みんな” のほうへ行ってしまった。

 

ああ、これだ。

 

これが、雪乃の中で後々まで続く“あの感情”の原点。

 

――なぜ助けてくれなかったのか。

 

葉山の優しさは、誰にでも向けられるがゆえに、一人のためには向かない。

それが彼の弱さであり、雪乃との決定的な断絶だった。

 

未来で彼が引きずった後悔の影が、ここにあった。

 

しかし、今回の世界は違う。

 

俺がいる。

 

 

◆ 葉山の心に刺さる一言

 

昼休み、俺は葉山の背中を叩いた。

 

「おい葉山」

 

「えっ、ひ、比企谷くん?」

 

「さっきの、見たぞ」

 

葉山の表情が固まる。

図星だ。

 

俺は淡々と言った。

 

「雪ノ下は、あれで傷ついてる。

お前が“みんな”を優先したせいでな」

 

「……違うよ、僕はただ……」

 

「違わねぇよ」

 

未来の記憶が俺の口を動かす。

 

「お前は優しいんじゃない。

優しいフリをして、誰も選ばずに逃げたんだ」

 

葉山の顔色が変わる。

子供には重い言葉だ。

 

だが、ここで変えなきゃ意味がない。

 

「王子様ってのはよ。

みんなに好かれるんじゃなくて――誰か一人のために泥をかぶるやつだ」

 

静かな沈黙。

葉山は拳を握りしめていた。

 

「……僕、雪ノ下さんのこと、気になってたんだ。

困ってるのも分かってた。

でも……どうしたらいいか分からなくて」

 

「なら、選べ。

“みんな”じゃなくて、“守るべき一人”を」

 

その瞬間、葉山の目に迷いとは違う光が灯った。

 

決意に似た、初めての芯。

 

未来で彼が抱え続けた後悔を、ここで断ち切ろうとしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。