やはり俺の逆行は間違っているのか? 作:ペンギンって可愛いですよね
小学校生活は、まあ、退屈だった。
未来を知ってる人間が、九九だの給食当番だので一喜一憂するほど子供には戻れない。
だが一つだけ、俺の関心を引く少女がいた。
雪ノ下雪乃。
まだ幼い彼女は――
未来の雪乃と違って“強さ”を身につけていない。
ただ静かで、真面目で、浮いている少女だった。
そして浮いている少女は、クラスという小さな社会で最も狙われやすい。
それを俺は知っていた。
未来の彼女が、どれほどその傷を抱え続けたか。
⸻
◆ そして「選ばれなかった」少女
ある休み時間。
女子三人組が雪乃の机を囲んでいた。
「雪ノ下さんってさー、なんかいつも一人だよね?」
「声かけても無視されるし」
「なんか感じ悪いよね~」
うわ……出た。
テンプレ感のあるマウント女子。
雪乃は静かに、一定の距離を保つように座っている。
反論もせず、逃げもしない。
ただ淡々と受け流すだけ。
その姿は――未来の雪乃を思わせた。
あの頃、彼女はすでに「誰にも期待しない」という処世術を身につけていた。
だが今はまだ幼すぎる。
ただ傷つき方を知らないだけだ。
見ていると吐き気がしてくる。
しかし、もっと最悪なのは――
「はやとー、一緒に遊ぼー!」
クラスの中心にいた葉山隼人が、振り向きもせず女子たちの声に応じた瞬間だった。
雪乃を横目で見て、
迷うように息を呑んで、
それでも “みんな” のほうへ行ってしまった。
ああ、これだ。
これが、雪乃の中で後々まで続く“あの感情”の原点。
――なぜ助けてくれなかったのか。
葉山の優しさは、誰にでも向けられるがゆえに、一人のためには向かない。
それが彼の弱さであり、雪乃との決定的な断絶だった。
未来で彼が引きずった後悔の影が、ここにあった。
しかし、今回の世界は違う。
俺がいる。
⸻
◆ 葉山の心に刺さる一言
昼休み、俺は葉山の背中を叩いた。
「おい葉山」
「えっ、ひ、比企谷くん?」
「さっきの、見たぞ」
葉山の表情が固まる。
図星だ。
俺は淡々と言った。
「雪ノ下は、あれで傷ついてる。
お前が“みんな”を優先したせいでな」
「……違うよ、僕はただ……」
「違わねぇよ」
未来の記憶が俺の口を動かす。
「お前は優しいんじゃない。
優しいフリをして、誰も選ばずに逃げたんだ」
葉山の顔色が変わる。
子供には重い言葉だ。
だが、ここで変えなきゃ意味がない。
「王子様ってのはよ。
みんなに好かれるんじゃなくて――誰か一人のために泥をかぶるやつだ」
静かな沈黙。
葉山は拳を握りしめていた。
「……僕、雪ノ下さんのこと、気になってたんだ。
困ってるのも分かってた。
でも……どうしたらいいか分からなくて」
「なら、選べ。
“みんな”じゃなくて、“守るべき一人”を」
その瞬間、葉山の目に迷いとは違う光が灯った。
決意に似た、初めての芯。
未来で彼が抱え続けた後悔を、ここで断ち切ろうとしていた。