やはり俺の逆行は間違っているのか?   作:ペンギンって可愛いですよね

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第九話 初めてのリムジン、そして悟る“世界が違う”という現実

陽乃に腕を掴まれたまま、

俺と小町は半ば強制的に玄関前へ連行された。

 

小町は小町で、

 

「お、おにいちゃん……すごいお姉さんだね……」

と呟いていた。

いや、すごいどころじゃない。

小学生の皮を被った“魔王”だ。

 

陽乃は玄関の前でくるっと振り返る。

 

「じゃあ二人とも、行こっ♪」

 

「いやいやいやいやいや!

どこへ連れてくつもりだよ!!」

 

「ふふっ、うちの車が待ってるから大丈夫だよ?」

 

車?

いや、普通の車だよな?

まさか小学生で運転なんてしないだろうし――

 

と思った瞬間。

 

家の前に止まっていたのは、

 

黒塗りのリムジンだった。

 

……え?

 

いやいやいやいや。

 

なんで。

なんでうちの前にこんな……

映画かドラマの世界に出てくるような……

大統領が乗るやつみたいな車が……。

 

「……えっ……!?

お、おにいちゃん、これ……

おにいちゃんのお友だちの車なの……?」

 

(小町、お前の兄にはこんな友だちいない。

断言できる。)

 

陽乃は当たり前のように言う。

 

「迎えの車だよ~。うちの執事さんが運転してるの」

 

執事!?

小学生が執事!?

なんだその人生チートモード!?

 

ドアが開く。

 

スーツ姿の渋い男性が頭を下げる。

 

「お嬢様、本日もご機嫌麗しく。

ご友人の皆様も、どうぞこちらへ」

 

小町

「ひっ……!?」

 

(ひっ……!?)

 

陽乃は満面の笑みで言う。

 

「さ、乗って? 八幡くん、小町ちゃん」

 

「いやいやいや!! 帰る!! 俺は帰る!!」

 

小町も俺の服をぎゅっと掴む。

 

「おにいちゃん……なんか怖いよこれ……!」

 

そうだよな!?

普通はリムジンに怯えるよな!?

よかった、正常だよ小町は!!

 

しかし陽乃は涼しい顔。

 

「大丈夫だよ~。

ただの車だから♡」

 

“ただの”じゃねぇよ!!!!

 

しかしここで執事さんが静かに言った。

 

「奥様より、本日のご予定はすべて把握しておりますので。

安心してご乗車くださいませ」

 

奥様……?

陽乃の母親だよな?

もうすでに俺たちが来ることを“予定”されている……?

 

(……やばい。

この家……俺の小学生人生の常識を全力で破壊してくる……)

 

陽乃は小町の手をそっと握る。

 

「怖くないよ? 小町ちゃん。

乗ってみよ?」

 

「……う、うん……」

 

小町、落ちた。

陽乃に落ちた。

天使は魔王にあっさり懐く。

 

俺は天を仰いだ。

 

(……帰りたい。

でも帰れない。

断れない。

なんだこれ……今日って休日だよな?

なんでこんな異世界イベントが起きてんだよ……)

 

「八幡くんも? 乗らないと置いてくよ?」

 

「置いてってくれていい!!」

 

「……それはムリ♡」

 

はい詰んだ。

 

こうして――

 

比企谷八幡(小学生)、

人生初のリムジンに強制搭乗。

 

「わぁぁ……広い……ホテルみたい……」

 

八幡(やめてくれ小町、楽しむな……

兄の精神が削られる……)

 

「二人とも仲良しでかわいい~♡」

 

八幡(かわいくねぇよ、助けろよ誰か……)

 

エンジンが静かにかかる。

 

俺の人生も静かに終わった。

 

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