向き合うことができない   作:夢現

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つづいた


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一週間前あんなに輝いてたはずの未来は一体全体どこにあるのだろうか…………橋本介は入学式前の通学路からすでに岐路に立たされている。

 

入学式前から仲のよさそうなグループが多すぎる

 

冷静に考えなくてもわかりきっていたことだった。六地蔵までの列車の時点でうすうす気が付いていたが……一人で入学式に向かう人の少ないこと。楽しそうな談笑が聞こえる中一人で歩くのは居心地が悪いことこの上ない。

 

一人でとぼとぼ歩いていると、校門のあたりからわずかに音が聞こえてくる。バランスの取れた音とは言えないというか、不揃いなリズム、バラバラなテンポ、粗を探せば無数に出てくるような演奏だけど……どこか中学の吹部を思い出す。足を止めようとは思わなかったけれど、吹部に入ろうかなと思えた。

 

入学式はつつがなく進行していく。隣の席に座っている新入生と楽しく談笑などということは一切できず、ただ時間が過ぎていくのを待つ。

 

 

 

「君、背丈でかいよね、バスケとかやってた?」

入学式が終わり、各々の教室にぞろぞろと移動してる最中に後ろから声をかけられた。ビクッとしてから、後ろを振り返るとさわやかな短髪の好青年が笑っていた。細身だがきちんと鍛えてることがわかる体つきだ。横に並ぶように歩くペースを落としながら、

「…僕はバスケ部じゃなかったよ。…君は?」

「じゃあ、バレー部だったりした?」

「……中学は吹部だったんだ。」

そんな彼は、わざとらしく頭を抱えた後、笑いながら

「なら、今からでもバレー始めない?せっかくガタイいいんだし、一緒にバレーやろうよ。」

「………いやぁ、高校も吹部入ろうかなって。」

「え~、もったいないなぁ。185あるでしょ身長。しかも文化部のわりにちゃんと筋肉ついてそうだし。まぁ、気が向いたら部活の体験行こうよ。そういや名前言ってなかったな。俺、畑正輝。」

「…橋本介。これからよろしくね。」

「よろしく、橋本!どうせ席も近いんだし仲良くいこう!」

畑は、人の好い笑顔を浮かべ先に教室に入っていった。

 

自分の席は教室の廊下側2列目1番後ろ、畑の席はその一つ前だった。席に着くと、変わらぬトーンで椅子の背もたれを胸に抱えるような体勢で、畑が話しかけてくる。

「それにしても、吹部か〜。また珍しいな〜。」

「……爺さんが最近まで楽器やっててね。それがきっかけで昔から。」

その言葉を聞いた畑は笑いながら

「うわ、由緒正しい理由だ。つけ入る隙がない。」

「……なんだよ由緒正しいって。」

畑は僕の右後ろを見て目を見開くと、笑顔で手を振って

「滝野!お前も北宇治だったんだな、こっち来いよ!」

振り返ると、男子がため息をつきながら教室の後ろ入り口から入って、僕の横に歩いてくる。

「お前も北宇治だったんか、畑。というか、ここでもバレー勧誘してんのか…あんま迷惑かけんなよ?」

「そんなことないよな~橋本!てか、橋本も吹部だとさ。よかったやん男子一人じゃなくて。」

「え、ほんと?橋本君、でよかったよな?君も吹部希望?」

うれしそうな顔をした滝野がこっちを見ている。

「………そうだね。滝野君も?」

「はぁ~よかった~、校門とこの演奏で男子部員全然いなかったからさ。ちょっとビビってたんだよね。同学年に男子いるってわかって安心したわ。よろしく、橋本君。」

「……うん。よろしく。」

「いつでもバレー部は歓迎してるからな?」

笑って、畑が話の間に入り込む。

「まだ自分も入部してないのによく言うわ、じゃな。」

滝野はふらっと手を振り、自分の席に向かっていった。

 

 

 

担任は若い女性だった。点呼をした後、明日に試験があるだか何だか言っていたが何を言っていたかはほとんど覚えていない。

クラスメイトが椅子を引く音に気が付き、自分もとっとと帰ろうと立ち上がると畑が振り返って声をかけてくる。

「一緒に帰ろうよ、京阪かJRか知らないけど電車で来てるでしょ?」

「…え、うん。いいよ。」

後ろから、急に声がかかる。

「俺もいい?」

ビクッとして振り返ると、滝野が立っていた。

畑は笑いながら、席から立ち上がって

「びっくりしすぎでしょ、行くぞ~」

 

三人で横並びになり帰路につく。

 

「……二人とも中学は一緒だったの?」

隣を歩く二人に向かってたずねてみる。

「そうよ~、東中。何ならクラスも3年間一緒だったわ。橋本は?北中?」

「……いや、僕は中学まで東京に住んでたんだ。」

二人ともびっくりしたようにこっちを見て

「まじかよ、いいな~東京。憧れるわ。」

「父親の転勤でこっち来たん?」

自分のわがままで引っ越してきたっていうのが少し恥ずかしく思われる。

「…………いや、なんか気分で。」

ブフッと噴き出して笑う畑。

「気分て!控えめな奴かと思いきや、胆据わってんな。」

苦笑しながら、滝野が続けて

「別に言いたくないなら、わざわざ嘘つかなくてもよかったのに。」

「……いや、別に嘘なんてついてないよ?」

「え、まじで?あ、あれか、実家がこっちだったりするん?」

「…宇治のじいさんの家に住んでるよ。」

「なんだ~一人暮らしなら遊びに行けると思ってたのに。」

おちゃらけたように畑が笑って言う。

「宇治なら、電車の方面も一緒だよな。…あれ、京阪だっけ?」

「…JRだよ。」

「JRのがちょっとだけ近いよな。羨ましい。」

「…そうなの?よくわかってないんだよね、ここら辺のこと。」

「そのうち慣れるでしょ。東京みたいにいろいろあるわけじゃないからわかりやすいんじゃない?」

「………そうかなぁ。不安だよ。」

手持無沙汰で、足元に落ちていた小石を前に蹴飛ばす。

その小石をさらに前に蹴飛ばしながら、畑はびっくりしたようにこっちを見て、

「そのテンション感なのに、気分で引っ越してきたん?思ったよりやばいやつやろ、橋本。」

その表情と言葉にびっくりして、一瞬固まるが、どこか面白くて噴き出してしまう。初対面なのに面と向かってそんなこと言われると思ってなかったから。

「あはははは、ふふっ、た、確かに、ふふっ、やばいやつかもね、僕。」

滝野はあきれたように、こっちを見て

「それでいいのか…そこは怒るとこじゃないの?」

「あはは、実際やばいでしょ、気分で引っ越す奴。ふう……久しぶりにこんな笑った。ありがと。」

一瞬あっけにとられていた畑も笑いだし、僕の背中をパンパン叩いて。

「いいやっちゃな、おまえ。これからよろしくな?」

「うん…二人ともよろしくね。」

 

 

 

翌日から、僕たち三人は一緒に行動することが多かった。昼は大体一緒に学食で食べるし、帰宅するときも何もなければ一緒だった。こういうエネルギッシュな人とかかわることはほとんどなかったから、新鮮で面白かった。自宅での練習時間は目に見えて減ったけど、学生らしく楽しい日々だった。

 

今日の放課後は、部活の見学に行くことになっている。……もちろんバレー部に。畑は、学年の身長の高い男子全員に声をかけて回っていたらしい。その熱心さには尊敬すら覚える。

 

ジャージに身を包んだ畑に先導されるようにして、制服姿の僕と滝野の二人で体育館に向かう。

「俺らは、着替えないでよかったのか?」

「いや、俺がもう部活入って練習参加してるだけだから制服のままでいいよ。なに、もしかしてバレー部入る気になったん?」

にやっと笑った畑が振り返りながら茶化してくる。端から返事には期待してなかったのか畑は気にせずに

「ま、いいや。もう何人か捕まえた同級生らは体育館にいるはずだから、そこに混ざっといて。10分か20分くらい練習風景みてもらうだけだから。今日は来てくれてあんがとさん。」

畑は練習したくてたまらないと言わんばかりに、先に走って行ってしまった。その姿を見て、滝野はため息をついて、しかし歩みは止めず

「バレー馬鹿すぎるだろ…………どうする?帰っちゃうか?」

「……それは流石にかわいそうじゃない?」

「橋本はマジで優しいやつやな~」

もう出会って二週間になってくると人となりもなんとなく掴めてくる。滝野は優しい気配りができる人ではあるが、ところどころ雑というか、対面する人によってなんとなく空気管が変わるというか、典型的な男子高校生らしくて、しゃべっていて心地が良かった。

 

体育館に入ると、もう5,6人の制服を着た一年生がもう何人かコート脇で待っていた。そこに小走りで合流すると、すぐに部長らしき人が来た。なんて言ったかよく聞いていなかったが、滝野曰く適当なタイミングで帰っていいとのことらしいので、ちょっとだけ見て帰ることにした。

 

「……すごい。同い年とは思えない。」

ゲーム形式の練習をしているバレー部。その中でも畑の動きが際立って見える。

「確か立華から推薦の話もあったらしいからなぁ、畑は。」

「………立華?」

「……あ、そっか。こっちの高校なんて知らんよな。あれよ、あの、マーチングが有名な吹部があるとこ。」

マーチングはほとんど見てこなかったこともあり、いまいちピンとこない。その雰囲気が伝わったのだろうか

「あれだな、インターハイで全国行けるくらいのイメージ。」

「………すごくない?」

「だろ?……なんで北宇治来たんだって話だけど、本人は和気あいあいと楽しくやりたいんだとさ。」

 

返す言葉が出なかった。ただ自分の好きなものを楽しみたいという畑の純粋さがひどく羨ましく感じた。何か返事をしなければならない、そう思ってはいるものの思考をうまくまとめられない。

 

不思議そうな顔をして、滝野が声をかけてくる。

「橋本?どうかしたか?」

「………いや、なんでもない。………そういえば新入生の吹部の集まり明日だね。」

「あ~そういやそうだな。楽器決まってないのか?」

「…そういうわけじゃないよ。ただなんか急に緊張してきただけ。」

「あれ、何志望だっけ?俺はトランペットな。被らせるなよ?」

「ぼくは小さいときからサックスだよ。バリトンの。」

「ふぅ、ならよし。ただでさえトランペットは人気だから、経験者が多かったらたまったもんじゃないわ。」

安堵の表情を浮かべながら滝野はいう。

「なんでトランペットなの?」

一瞬滝野は言いよどむそぶりを見せながら、

「中学時代やってたからだな。後、花形って感じがするだろ?トランペット。あと………モテそうじゃん。」

急なミーハーな一言に噴き出してしまう。滝野はちょっと照れたように顔を赤らめた後に

「なんだよ、サックスやってるおめ~もどうせそうだろ。」

「いいや、僕は爺さんからサックスやってたのが理由だよ。」

「ちぇ~、つまんねえの。」

 

そんなくだらないやり取りをして、僕らは体育館を後にした。明日から始まる部活への期待を胸にして。

 




ノリと勢いで書いているので、修正はいるかもです。
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