TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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9 正義の魔法少女は決意する

 

魔法少女ブラックルーイ。

一体、彼女は何者なんだろうか?

 

先日、聖歌や遊美ちゃんと一緒にブラックルーイと対峙した私は、彼女と対話することに成功した。

 

遊美ちゃんは魔法少女になると、相手が嘘をついているのかどうか判別する魔法が自動で発動するようになっているらしく、それを利用してブラックルーイの真意を推測することにした。

 

まず、初めにした質問。これは正直、意図がわからなかった。

この質問に、ブラックルーイは兄弟姉妹はいないと、そう答えたのだが、それに対して、何故か聖歌が動揺し出した。

 

とりあえず、遊美ちゃんと2人で声をかけて何とか宥めたけど……。

 

「やっぱり、何か隠してるよね、聖歌…」

 

『何も隠してなんかないっきゅよ。あの時の聖歌は、体調が悪かったんだっきゅ』

 

「そう、なのかな」

 

分からない。けど、もし聖歌が何か思い悩んでいる事があるのなら、それを私に言ってほしい。

だって私は、聖歌の親友なんだから。

 

『とにかく、ブラックルーイへの質問と、その答えを整理するっきゅ。改めて整理し直せば、ブラックルーイの目的も分かるかもしれないっきゅ』

 

「そうだね。それじゃあ、順番に整理して行こっか」

 

私とキュートは、2人でブラックルーイにした質問を整理していく。

まず、姉がいるかどうか。

これに対する答えはノー。遊美ちゃんによれば、嘘はついていない。つまり、ブラックルーイに姉はいない。

 

この情報は、そこまでブラックルーイを探る上で重要とは言えないと思う。だから、重要なのは次から。

私や遊美ちゃんがブラックルーイに投げかけた質問からだ。

 

【どうして怪人の手助けをしているの?】

 

これは、私の質問。

そして、これに対する答えが。

 

【どうしてって、それが私の役割だから】

 

これが回答。

そして、この回答の真偽は………。

 

「確か、本は開いてたと思う」

 

『それじゃあ、嘘はついてないってことになるっきゅね』

 

「うん。それにしても、役割………役割って、どういう事だと思う?」

 

『やるべき務め、とかっきゅかね。個人的には、誰かに役目を与えられて、それをこなしてる、とかが考えられると思うっきゅ』

 

ブラックルーイの裏に、何者かが存在している?

ブラックルーイが怪人の手助けをして、得をする連中。そんなの、1つしかない。

 

「それじゃあ、ブラックルーイと『ワ・ルーイ』は、協力関係にあるって事?」

 

『もしくは、ブラックルーイが組織の一員である、という線も追えるっきゅ』

 

組織の一員……。どうして、街を守るはずの魔法少女が、組織に加担なんて……。

 

「……ブラックルーイの“妖精”さんは、どう思ってるんだろう」

 

『……それは……』

 

魔法少女には、基本的に“妖精”と呼ばれる存在がついていて、基本的には妖精がいないと魔法少女に変身することはできない。

遊美ちゃんはマスコットと呼んだりしているが、妖精はただのマスコット的存在などではなく、魔法少女達が変身する上で重要な役割を担ってくれているのだ。

 

本来なら、ブラックルーイについているはずの妖精は、怪人の手助けをするブラックルーイに魔法少女へ変身させようとはしないはずだ。

 

けれど、ブラックルーイは変身をしている。

そのことが意味するのは、つまり……。

 

「ブラックルーイの妖精は、ブラックルーイが怪人に加担することを許してるの?」

 

『分からないっきゅ。キューもブラックルーイの妖精は見た覚えがないっきゅから』

 

私も、怪人と戦うのに必死で、ブラックルーイの妖精のことにまでは気が回っていなかった。ブラックルーイが変身できているということは、近くに妖精はいるはず。

 

……今度ブラックルーイと出会った時、妖精の存在を確認する必要があるかもしれない。妖精の考えも、ちゃんと聞いておかないと。

 

「それじゃあ、次は……」

 

【街を破壊して、心は痛まないの!? どうして、どうしてこんなこと……】

 

【あのさ、前も言ったでしょ? 街を破壊して心が痛むのかって言われても答えは決まってる。痛まない。これが答え。それに、どうしてと言われたって、それが私の役割なんだから】

 

「これが、私がした二つ目の質問だよね」

 

『本は開いていたっきゅね』

 

つまり、本当に街を破壊しても心は痛まないと、そう思っているということなのだろう。

 

この質問で、私は、魔法少女ブラックルーイとわかり合うことが、どれほど困難なことなのか、実感してしまった。

 

「やっぱり、分かり合えないのかな……」

 

『…………』

 

【役割って、何なの? その役割は、やらなくちゃいけないことなの!?】

 

【うん。そうだよ。大事な大事な役割。私が、人生をかけてでもこなさなくちゃいけない、大事な役割なんだから】

 

本は開いていた。

 

【その役割のためなら、何をしてもいいの?】

 

【うん。そうだね。役割を完遂できるのなら。できたのなら。死んでもいいかなって】

 

本は開いていた。

 

【……死んでもいいって…そんな……そんな簡単に命を投げ出さないでよ。そんなに役割が大事なの?】

 

【大事だよ。役割をこなすこと。それって、そんなにダメなことかな?】

 

本は開いている。

 

【そんなの……おかしいよ……】

 

【人の価値観を否定しないで欲しいなぁ……。私は、その役割をこなすために生きているって言ってもいい。その役割が大好きだし、その役割の影響で、一度は死んだと言ってもいい。その役割のために、もう一度命を投げ出すことくらい、考えてないわけじゃないよ】

 

本は、開いていた。

 

……ブラックルーイは、どこまでも本音だった。

嘘はついていなかった。

 

ブラックルーイは、どこまでも“役割”というものに誠実で、忠実で、固執している。

彼女にとって、役割をこなすことは全てであるかのように思えた。

 

そして、私は、彼女のその精神性に、既視感を覚えてもいた。

 

「まるで、私達が前に戦った幹部みたいだった」

 

『……それは、あの……』

 

私と、聖歌と、遊美の3人で、何とか撃退して追い返した、触手が擬人化したかのような、幹部の男。

 

あの幹部の男も、悪の組織『ワ・ルーイ』の悲願のために、自身の命すら軽くみているような精神性をしていた。

 

きっと、ブラックルーイも同じなんだろう。

同じように『ワ・ルーイ』に共感し、同じように『ワ・ルーイ』に加担することにした。

 

きっと、対話じゃ分かり合えない。

 

根本的に、彼女と私達とでは、考え方が違うのだ。

 

だから、説得なんてしない。

 

「決めた。私、止めるよ。魔法少女ブラックルーイを」

 

わかってもらおうなんて、思わない。

けど、私はこの街が好きだ。この街を壊されたくはない。

だから、たとえ、ブラックルーイに譲れないものがあるんだとしても。

私の好きな街を破壊してまで、それを達成しようというのなら。

 

私は、全力でそれを阻止する。

 

『……そうっきゅね』

 

「キュート?」

 

私が決意を固めて、ブラックルーイと対峙することを宣言したのを見て、なんとも言えない表情をするキュートを。

 

この時の私は、あまり気にかけもせずに、そのまま見過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ごめんっきゅ、苺。

キューも、嘘はつきたくないんだっきゅ。

けれど、苺の真っすぐさを、失うわけにはいかないんだっきゅ。

 

魔法少女ブラックルーイは、遊美の魔法で判明した通り、根っから悪の組織『ワ・ルーイ』の方針に従っているっきゅ。

 

何故そうなったのか、詳しくは知らないっきゅ。けれど、そんな考え方をしている以上、相容れない存在っきゅ。

 

だから、苺には、ブラックルーイは悪者であると、そう認識し続けてもらうっきゅ。

 

魔法少女ブラックルーイは、妖精と契約せず、おそらく無理矢理魔法少女に覚醒させられた存在だっきゅ。

 

もし、このままどの妖精とも契約せずにいれば、いずれは……。

 

けれど、キューは契約するつもりはないっきゅ。

聖歌や遊美には悪いけど、ブラックルーイと契約して、3人に悪影響があったら……そう思うと、どうしても、契約してあげる気にはなれないっきゅ。

 

だから、ブラックルーイには、敵として、ひっそりと散ってもらうことにするっきゅ。

 

分かり合えなかったけど、どこかで元気でやっている、そう思えば、きっと苺も、傷付くことはないっきゅ…。

だから、キューは心を鬼にして、魔法少女ブラックルーイを見捨てることにするっきゅ。

 

 

 

 

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