TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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91世話焼き妖精は記憶を思い出す

 

 

 

キューの名前は、キュート。

かつては、悪の組織『ワ・ルーイ』から地球を守るために、魔法少女の力を少女達に与えて、日々『ワ・ルーイ』の脅威から皆を守っていたっきゅ。

 

けど、もうキューはそれをやめることにしたっきゅ。

 

なぜなら……。

 

「………わぁあ!!!」

 

『……千夜、どうしたんだっきゅ? そんな大声出して……』

 

「……おはようキュート。いやーなんかね、凄い良い夢を見ていた気がするんだけど……うーん、思い出せないんだよね〜」

 

光千夜。

キューが契約していた、夏場夕音の、姪っ子にあたる子だっきゅ。

 

キューと契約していた夕音は、もうこの世にはいないっきゅ。けれど夕音は、遺言を残してくれていたっきゅ。

 

自分にもしものことがあれば、姉さんのことを頼むと、そう言っていたんだっきゅ。

 

だからキューは、夕音の姉である、光歌朝の幸福を守ることにしたんだっきゅ。

 

『って、千夜! 鼻血が出てるっきゅ!!』

 

「わー! 本当だ! 何で!?」

 

『ティッシュを持ってくるっきゅ!!』

 

でも、キューは、何だかんだでこの生活が気に入ってるっきゅ。

歌朝のことを見守る過程で、歌朝の娘である千夜や聖歌の面倒も見ることになったっきゅ。

聖歌も千夜も、まだ子供で、未熟なところもたくさんあるっきゅ。時折心配になるような行動をすることもあるっきゅ。けど、キューは2人のことが大好きで、幸せになってほしいと思ってるっきゅ。

 

「ティッシュあった〜?」

 

『あったっきゅ! って! 何で床に鼻血垂らしてるっきゅ!? 床が汚れるっきゅ!』

 

「あはっ、手汚したくなくてさ〜」

 

『そういう問題じゃないっきゅ! 床の掃除は誰がやると思ってるんだっきゅ!?』

 

「大丈夫だよ〜。後でちゃんと拭く予定だったから。今はパジャマ汚したくないから拭かないけど〜」

 

本当に、世話が焼ける子だっきゅ。

……仕方ないっきゅね。キューが雑巾を持ってきて、床を拭いておくことにするっきゅ。

 

そう思って、キューは雑巾掛けを始めたっきゅ。すると……。

 

「千夜、起きてる?」

 

千夜の部屋の前に、聖歌がやってきたっきゅ。その瞬間…。

 

「キュートそれ頂戴!」

 

千夜はものすごい勢いでキューから雑巾を取り上げて、床に付着してる鼻血を拭い始めたっきゅ。

 

千夜にはこういうところがあるっきゅ。

キューの前ではだらしない姿を曝け出す癖に、聖歌や他の人の前では、優等生振ろうとする癖が。

 

けど、それは、千夜がそれだけキューのことを信頼しているということでもあるっきゅ。千夜は、学校でも人気者で、誰彼構わず助けちゃう癖があるっきゅ。

そういうところは、夕音によく似てると思うっきゅけど……。

 

逆にそれで、千夜には頼れる人が、極端に少ないっきゅ。

勿論、千夜の友人達は皆、千夜のことが大好きで、頼めば断らずに協力してくれる子達ばかりっきゅ。

 

でも、千夜自身が、周りに頼ろうとしないっきゅ。

 

だから、キューはいつも、千夜が心配で、いつも千夜について回るようにしてるっきゅ。

 

「入るわよ。……って、何で床掃除してるの?」

 

「あはは。ちょっと鼻血が出ちゃってさ。……えーと、まあ、それで掃除中?」

 

「鼻血って、大丈夫なの? どこか体調でも……」

 

「大丈夫! ていうか、準備しないと。今日学校で小テストあるんだよね〜」

 

千夜はそんな風に、はぐらかしたっきゅ。キューが見た感じ、特に千夜の体に異変はなさそうだし、大丈夫だとは思うっきゅ。

 

……多分千夜も、あまり聖歌やキューのことを心配させたくないと思ってるみたいっきゅ。

 

「………今日朝ご飯私が作ったから」

 

「へ? そうなの? お姉ちゃん料理もできるなんて、将来は良いお嫁さんになりそうだね〜。……私と結婚する?」

 

「貰ってくれる人がいなかったら、それもありね」

 

「じゃあ無理だ。お姉ちゃんのこと放っておく男なんていないし」

 

千夜の鼻血という一件はありつつも、2人は無事に身支度を終え、それぞれ学校に向かうっきゅ。キューは周りに見えないようにして、千夜の周りをついていくっきゅ。

 

そんな風に、何気ない日常を送りながら、キュー達は朝を迎えるっきゅ。

結局、千夜はそれ以降鼻血は出さなくて、聖歌も千夜のことを心配そうに見つめていたけれど、何事もなく1日を終えたっきゅ。

 

………キューは、ずっとこんな日々が……。平和な日常が続いていくと、そう思ってたんだっきゅ。

 

でも、それは……。

 

あまりにも楽観的で、愚かで………。

 

馬鹿で幼稚な、考えだったっきゅ。

 

 

 

 

 

 

その日は、たまたま、歌朝の体調が悪い日だったっきゅ。

風邪気味っぽくて、家事もあまり手が回っていないって話だったっきゅ。

 

けど、千夜と聖歌はショッピングモールに一緒に行くって話があったから、仕方なくキューが家に残って、家事をすることになったんだっきゅ。

 

…………今思えば、この時千夜について行っておけば、少しは違う展開が待っていたのかもしれないっきゅ。

 

だって、千夜はこの日から。

 

………キュー達の前から、行方をくらましてしまったんだっきゅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その事実を知ったのは、聖歌が家に帰ってきた時だったっきゅ。

玄関のドアが開いた音がして、歌朝は寝込んでるから、キューが代わりに出ようと、玄関に向かったんだっきゅ。

 

『おかえりっきゅ! それで、どうだったっきゅ…………ど、どうしたんだっきゅ!? というか、千夜はどこっきゅ?』

 

「きゅ……きゅーと……あの……ちがう…いや……」

 

家に帰ってきた聖歌は、転んで擦りむいたのか、足には傷ができていて、髪もびしょ濡れで、酷い姿になっていて……。

 

「……あ……ちがうの……わた……し……あ、いや……ちよ……が……」

 

今にも泣きそうな顔をして、キューに必死に訴えかけてくる様子を見て。

 

……段々と、キューの胸が締め付けられていくような感覚がしたっきゅ。

 

『せ、聖歌、落ち着くっきゅ! まずは部屋に入って、風呂にでも入って、ゆっくりするっきゅ! 話はそれからっきゅ』

 

キューが声をかけても、聖歌は玄関に座り込んで、動こうとしなかったっきゅ。

身体的な外傷は、見た目こそ酷い有様に見えるっきゅけど、擦り傷と髪の乱れ程度で、大きな怪我は見られなかったっきゅ。つまり、これは……聖歌自身の精神の問題で……。

 

「……しょっぴんぐもーるに……」

 

『……ショッピングモールっきゅ?』

 

「…ばけものが……でて……。ち、ちよが……ばけものに、おそわれて……」

 

聖歌の言葉で、キューは全てを、察したっきゅ。

 

『………ち、千夜が……どうしたんだっきゅ?』

 

「……おそわれた……ばけものに……それで、わたしは……ちよを……みすてて……!」

 

化け物がでた。聖歌は、確かにそう言ったっきゅ。

化け物、それを扱って、街を襲わせるもの……。

 

キューは、忘れていたんだっきゅ。

何のために、夕音を魔法少女として戦わせていたのか。

何のために、キューがこの世界にやってきたのか。

 

この一件は、キューにその目的を、強く思い出させるものだったっきゅ。

 

 

 

 

 

 

 

それからのキューは、再び、魔法少女を作って、悪の組織『ワ・ルーイ』と戦うことを決心したっきゅ。

 

契約した相手は、光聖歌。

……元々、千夜と聖歌に魔法少女の素質があることは、知っていたっきゅ。けれど、2人には、戦いとは無縁の世界で……幸せに暮らして欲しかったから。だから、魔法少女の契約は、しないようにしてたっきゅ。……けど、千夜が失われた今、聖歌を突き動かしているのは、『ワ・ルーイ』への憎悪と、妹の敵討ちだけだったっきゅ。

 

今の聖歌から、それを取ってしまえば、壊れてしまうんじゃないかと。そう思って、キューは、聖歌から魔法少女の契約を申し込まれたときにも、断らなかったっきゅ。

 

そうして、キューと聖歌は、一緒に組織と戦う日々を送っていたっきゅ。

聖歌は、段々とかつての調子を取り戻してきていて、苺との交流も盛んになって、元気になっていったっきゅ。けど、キューは……。

 

『………千夜……』

 

キューの心は…。

空っぽのまんまだったっきゅ。

 

聖歌が苺と楽しそうにしていることも増えて、それ自体は喜ばしいことのはずなのに……キューの心は、満たされなかったっきゅ。

 

足りない何かを探し求めていて、けど、その不足はもう埋められなくて。

 

どうしようもなく辛くて、苦しくて……。

 

いっそ、死んでしまった方が楽になれるんじゃないかって、そう思えるくらい、キューは生きているということに意味を見出せていなかったっきゅ。

 

……もう、キューは限界だったんだっきゅ。

 

そんな状態で、いつものように戦場に聖歌と出向いたとき……。

 

キューは、ぼーっとしていて、それで……。

怪人が、キューのことを狙っていることにも気付かずに……。

 

そうして、そんなキューを守ろうとした聖歌が、怪人の攻撃をモロに喰らってしまって……。

 

一歩間違えていれば、今度は聖歌が死んでいても、おかしくなかったという状況だったっきゅ。

 

このままでは、聖歌まで死んでしまう。そう思ったキューの中に、とある発想が思い浮かんだんだっきゅ。

 

…………歌朝のように、千夜の記憶を消してしまえば……。

 

千夜との思い出を、キュー自身が、キューから奪う。

そうすれば、もう……。

 

辛い選択だったっきゅ。

千夜との思い出を、失いたくない自分がいて……。同時に、このままだと今度は聖歌を失うことになる、第二の夕音を作ってしまうことになると、そう思って、板挟みになって、どうしようもなくなったっきゅ。

 

………悩んで悩んで、悩んで悩んで悩み抜いた末に。

キューは、キューの記憶から、千夜の記憶を消し去ることにしたんだっきゅ……。

 

それが、キューと千夜の、全て。

キューが、今まで失っていた、千夜に関する記憶っきゅ。




新しいおもちゃだ^ ^
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