「……逃げられた……! キュート、なんで……キュート?」
どうして、今になって思い出したんだっきゅ……。
千夜と触れ合ったから? けど、そんな機会はいつでもあったっきゅ……。それ、なのに……。
「……な……変身が……」
「……むーん……遊美ちゃん、どういうこと?」
「2人とも、変身が解けたの? ……いえ、もう怪人はリーベル達が倒してくれたから、大丈夫でしょうけど」
遊美と苺の変身が、解けてるっきゅ。
聖歌は………解けていないっきゅね……。
「………どういうこと? どうして2人の変身が解けてるの?」
『……なるほどクル。キュートはもうダメクルね』
千夜が戦場を去ったのを見てか、変身を解除した薬深達がやってきたっきゅ。
……クールの言った通り、キューは、もう……。
『……絶望、してしまいましたわね』
「……絶望? どういうこと?」
『……“ワ・ルーイ”が“絶望”を糧にしているように、私達は人々の“希望”を糧にしていますわ。……つまり、魔法少女の力は“希望”の力ですの』
そうっきゅ。
魔法少女に与えられた力は、“希望”の力。
もし仮に、妖精が絶望してしまったら……その力は、大きくパワーダウンしてしまうっきゅ。
昔、キューが千夜のことで心に穴が空いてしまった時、聖歌が死にかけてしまったのも、キューが絶望しかけていて、そのせいで聖歌の魔法少女としての力が弱まってしまっていたから、というのもあるっきゅ。
「……じゃあ、何でキュートは絶望してるの? 今まで、そんなこと………」
「………多分……千夜と接触したのが原因……かも。……千夜とキュートが接触した瞬間、2人の体が弾けて……そこからキュートの様子もおかしくなってるから……」
そうっきゅ。
千夜と触れ合った時……あの時、キューは全てを思い出したんだっきゅ。
………オクトロアに奪われた記憶は、まだ失われたままっきゅ。けれど、千夜と過ごした大切な、かけがえのない時間は……全部、思い出したんだっきゅ。
【……キュー……ト……?】
千夜は確かに、キューの名前を呼んだっきゅ。苺達の会話から、キューの名前を知っていただけ、そう捉えるには、あまりにも……。
千夜は、まるで、キューのことを、家族でも見るかのような目で、見ていたっきゅ……。
もしかしたら、あの時の千夜には、キューとの記憶が残っていたのかもしれないっきゅ。
……けど、その千夜も、行ってしまって……。
「キュート……」
『………ごめんっきゅ…。キューは……千夜に関する記憶を、思い出したんだっきゅ。……千夜との失われた思い出も……千夜が連れ去られてしまった、その時の記憶も……。千夜がいなくなって、絶望に明け暮れていた日々のことも……』
蓄積された“絶望”が、キューを襲いかかってきたっきゅ。
………千夜を助ける、そう思いたい、苺達と一緒に、千夜を助けに行きたい。
…そう思っているのに、キューの記憶の中に蓄積された“絶望”の塊が、キューから“希望”の力を奪い去っていくっきゅ。
「……キュート」
『………苺、しばらくは、普通に暮らすっきゅ。……多分、キューは暫く苺のことを変身させてあげられないっきゅ……』
『……完全に駄目になってしまった、というわけではなさそうですわね…。でも療養は必要だと思いますわ。しばらくはゆっくり休んでくださいませ』
「……結局、ブラックルーイ捕縛作戦も上手くいかず……。はやくしないと、ブラックルーイの命が……」
『……焦る気持ちはわかりますわ。ですが、今もうこの場に彼女はいないわけですし、一旦解散して、また次の作戦を考える時間にすることをおすすめしますわ』
「だね。……それじゃ、怪人も倒せてるし、今日は一旦解散ってことで」
リーベルがそう発言した後、苺達は各々帰路につくっきゅ。
…キューのせいで、千夜を助けるための道が、また閉ざされていくのを感じるっきゅ。
……本当は、蓄積された“絶望”のせいだけじゃ、ないっきゅ。
キューは一度、千夜のことを見捨てようとしていたっきゅ。
いくら、千夜との思い出を封印したとはいえ、その時のキューは間違いなく、千夜を切り捨てる気でいたっきゅ。
………そんな自分が、恐ろしくて、怖くて……同時に、情けなくて。
自分自身に、絶望してしまったんだっきゅ。
……だからキューからは、苺達を魔法少女に変身させるだけのエネルギーが、失われてしまったんだっきゅ。
「キュート、大丈夫…?」
苺の、キューのことを心配するような目が、キューに突き刺さるっきゅ。
……キューは、千夜のことを見捨てようとしたっきゅ。
大切な家族のことを、平気で切り捨てる、薄情者にまで成り下がっていたっきゅ。
そんなキューにも、苺は、まだ心配をかけてくれているっきゅ…。
『……苺、ありがとうっきゅ……大丈夫……じゃないかもしれないっきゅ』
キューは、苺と約束したっきゅ。皆が幸福になるために、協力するって。
だから、苺にもう隠し事はしないっきゅ。
取り戻した記憶のことも、今のキューの状態のことも、包み隠さず全部話すっきゅ。
そうすることが、千夜を救うことにつながると、キューはそう信じているから。
キューは、苺の部屋にお邪魔して、千夜との思い出の記憶について、全部、包み隠さずに話したっきゅ。
千夜のことを、見捨てようとしていたことも……千夜との思い出を取り戻したことで、そのことに罪悪感を覚えていることも、全て苺に打ち明けたっきゅ。
「……そっか……。それは……辛いよね……」
『……キューは、最低な妖精っきゅ。……千夜のことを……切り捨てようとしていたんだっきゅ……』
「……………けど、結局、キュートは……最終的には助ける判断をしたんでしょ? 私と一緒に、皆がハッピーになれるような選択を取るって、そう決意してくれたんでしょ?」
『苺……』
「………大丈夫だよ。まだ間に合う。千夜ちゃんは、まだ生きてるんだから。………だから、助けよう。私達で。今度は、キュートも、本気で千夜ちゃんを助けたいって、そう思ってるんでしょ? だったら……今までより、もっと上手くいくはずだよ」
苺は、キューのことを励ましてくれるっきゅ。
キューは、千夜のことを見捨てようとしたのに。……それでも、まだ間に合う、手遅れじゃないと、キューのことを責めないでいてくれるっきゅ。
………責めてほしい、という気持ちも、なくはなかったっきゅ。
けど、それは結局、キューが罪悪感を解消するための、自己満足でしかないっきゅ。
本当に千夜を救いたいのなら、自分にやれるだけのことを、千夜を救うための行動を、全力で遂行するしかないっきゅ。
だから………。
『……苺、ありがとうっきゅ。……すぐに調子を取り戻して、また苺達を戦場に向かわせれるようにするっきゅ。けど、じっとしているのは、耐えられないっきゅ。だから……』
キューにも、できることはあるはずっきゅ。
以前、苺が聖歌の名前を出したことで、千夜の身に変化が生じたように。
キューの存在が、千夜に何か良い影響をもたらす可能性だって、あり得るっきゅ。
だから……。
『戦えないし、苺達を魔法少女にすることもできないっきゅ。けど、キューは、それでも、戦場に向かい続けるっきゅ。………キューが声をかけ続ければ、もしかしたら……千夜の洗脳にも、何かしら影響を与えられるかもしれないっきゅ』
「……確かに……。聖歌の名前を出した時みたいに……何か起こるかもしれないね! ……良かった、キュート、前向きになってくれたみたいで」
キューの中で、改めて覚悟が決まったっきゅ。
必ず、千夜のことを取り戻すっきゅ。
明るくて、元気で、優しくて。
そんな千夜を、元の日の光に。
必ず。