TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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93悪の魔法少女は幹部な魔法少女と約束する

 

 

「ごめん」

 

「………いや、まあ簡単に離脱できたから良かったんですけど……」

 

ジェネちゃんのアジトで過ごしていたら、突然もう1人の俺とキュヴァちゃんがやってきたので、何事かと思ったけど……。

 

「あー、街の襲撃に行ってたんだ」

 

そういえば、次の襲撃は私が行くーって言ってたな。ていうか、君の滞在場所幹部イコルのアジトじゃなかったっけ…?

 

……まああれか、すぐに撤退しようと思ったら、腕輪型転移魔法を使うしかないし、転移魔法で転移できるのはジェネちゃんのアジトだけだから、必然的にここに来るしかなかったって感じか。

 

まあ、キュヴァちゃんがいるってことは、そういうことだろう。キュヴァちゃんは、一応腕輪型転移魔法の中に搭載されている転移魔法を模倣して、いつでもジェネちゃんのアジトに転移できるようにしてるみたいだから。

 

「あ、そうそう。やっほーもう1人の私、こんこん!」

 

また手で狐作って挨拶してる……。俺昔そんなんしてた覚えないんだけどな……。

もしかして無意識にしてた? いや、してないな。

まあいいや、狐には狐で返そう。

 

「こんこん! というか、この挨拶何?」

 

「ん? いやーなんか、妖怪を操る魔法少女、みたいなのと出会って……その時に、九尾を出されたのが印象に残ってるんだよね。だから挨拶に狐入れてみた、みたいな?」

 

「どゆこと…?」

 

いーみがわからん。ま、いいや。挨拶って割とノリだし。向こうがそれやってきたならこっちもそれに合わせるだけだから、気にするだけ無駄ってやつかな。

って、そういえば。

 

「襲撃に行ったんだよね。どうだった?」

 

「………あ、そうそう、キュートが……って……」

 

「?」

 

キュート? キュートって、魔法少女キューティバース達のお付きの妖精のことだよな? そのキュートが、どうしたんだろう。

 

「いや、何でもない。後で、2人っきりの時に話したいんだけど、大丈夫そう?」

 

??? まあ、キュヴァちゃんとかに聞かれたくないような内容だったのかな。……わからんけど、まあ後で2人っきりの時に話してくれるんなら、別にそれでいいかな。

……あーそういえば。

 

「私も話したいことがあるんだった。それも2人っきりの時が都合良いから、その時にお互い話そう」

 

ジェネちゃんに光堕ち告白するってこと、共有しておかなくちゃ。

まあ、もう1人の俺が拒否してきたら、光堕ち告白もちょっと考えなくちゃいけないけど。

 

まあ、多分大丈夫。俺の気持ちは汲み取ってくれるはずだ。

 

「そうなんだ。じゃあ、丁度いいね。……そういえば、ジェネシス様は?」

 

もう1人の俺こと千夜ちゃんは、周囲をキョロキョロと伺いながら、ジェネちゃんの所在を問う。けど、残念ながら……。

 

「まだ帰ってきてないんだよね。………幹部様とかと話を付けに行くのに、時間がかかってるのかも?」

 

「……ふーん、結構経ったけどね、あれから2週間は経過してるけど……」

 

実は、ジェネちゃんの命がもう長くないと師匠に告げられてから、2週間もの時間が経過しているのだ。わおびっくり、全然アジトに帰ってきてないのです。

 

本当にどうしちゃったんだろ?

 

「……大丈夫、なのかなぁ?」

 

「……多分師匠が連絡取ってると思うから、大丈夫だとは思うけど……」

 

俺達は、ジェネちゃんの安否を心配する。命がもう持たないって話だし、知らないところで倒れてたりしたら嫌だな……お別れの言葉くらいは交わしたい。なんて、そう考えていると……。

 

「………ただいま」

 

噂をすれば何とやら。

頭に包帯を巻いて、見るからに顔色の悪そうなジェネちゃんが、たった今、アジトに帰還したところだった。

 

「ジェネちゃん!?」

 

「あ、おかえりなさい」

 

俺と千夜ちゃんは、ジェネちゃんを出迎える。

けど、まさか頭に包帯を巻いて、こんなにも顔色悪そうに帰還してくるとは思わなかったので、ちょっとびっくりしている。

 

……師匠の言っていることは、本当だったみたいだ。

 

「ごめんね、遅くなって。ちょっと、どうしても時間かかっちゃってさ」

 

ジェネちゃんは、そう言って、俺達に近付こうとする。が……。

 

「あっ……」

 

ふらりと、ジェネちゃんの体は大きくよろけ、そのまま体が床に叩きつけられてしまう。

 

「ジェネちゃん、大丈夫…?」

 

俺はすぐさま駆け付け、ジェネちゃんに手を差し伸べる、が……。

 

思ったよりも、酷そうで。まさか、こんなにボロボロになっているだなんて。

 

「ごめんね、ちょっと馴染んでなくて……。本当にごめん」

 

「体……大丈夫なんですか…?」

 

千夜ちゃんの方も、心配そうな表情でジェネちゃんのことを見つめている。

キュヴァちゃんの方を見てみると、顎に手を当てて深く考え込んでいるみたいだった。

もしかしたら、ジェネちゃんの症状について、考えているのかもしれない。

 

「……大丈夫だよ。少ししたら、いつも通りに戻るから」

 

「頭の包帯は…?」

 

「……あー、そういうものだよ。ミイラごっこだとでも思って。ま……多分このまま外すことはないと思うけど」

 

俺達はジェネちゃんの様子を伺い続ける。本当に大丈夫なのか、疑念の目で見つめながら。すると、奥からガサゴソと、何者かがやってくるような物音が聞こえてきて……。

 

「……おかえり。随分な姿になったわね」

 

「ヒンナちゃん……ただいま。………ちょっとね。もう後1回が限界ってところかな」

 

「………そう。……まあ、私に言えることはないわ…。………本当に、他に手段はないのね?」

 

「………ないよ。私の取れる選択は、2つに1つだけだから」

 

「………」

 

師匠の感情は、伺えない。

けど、今まで師匠は、ジェネちゃんに対して、どうも当たりが強くて。

 

嫌いなのは、本当だったのかも? そう思うくらいには、ジェネちゃんへの突っ掛かりは多かったように思える。

 

けど、今の師匠は……。

 

「師匠、大丈夫ですか…?」

 

「大丈夫よ。あんたは何も気にすることはないのよ。ただ……気持ちの整理だけつけておきなさい」

 

どこか、迷っているような。

ジェネちゃんに対して、嫌悪だけではない、別の感情が向けられているような。

 

そんな気が、しなくもない。

 

「……それと、幹部集合会議に出なくちゃいけない。……ピュアがやられたって情報、入ってきたでしょ?」

 

「みたいね。……たく、最近は幹部が続け様にやられて、面倒臭いわ」

 

「でも、良いことだよ。ピュアが死んだことで、ルーイちゃんに掛けられてる洗脳も解けたはずだから。ピュアは多分、ルーイちゃんの感情が自分へ向くように洗脳してただろうからね。ああいう洗脳の仕方は、その対象者が死ねば、自然と消滅するようにできてるから」

 

師匠とジェネちゃんは、言葉を交わし続ける。

洗脳の仕組みについて、さらっと俺の知らない情報が開示されつつも。

どこか、ジェネちゃんの纏う雰囲気は、いつもの明るいものじゃなくて。

 

「…………これが幹部ジェネシスとしての、最後の会議になりそうだね。………夏場夕音の人生は、そこで終わり、なんちゃって」

 

「………本当の意味での、終わりってことよね」

 

「……そうだよ。正真正銘の、終わり。………まあ、どのみち、終わってた命なんだしさ。………長く持たないのは、仕方ないよ。……それじゃ、ヒンナちゃん、幹部会議、今日の夜らしいから。………またその時にね」

 

「ちょ、どこ行くのよ!」

 

ジェネちゃんが、アジトから去っていく。まだふらふらの足で、安定しない上体を、なんとか保ちながら。

 

………その姿を見ていると、何だか今から死んでしまうような気がして……。

 

「ジェネちゃん!!」

 

俺は思わず、ジェネちゃんを呼び止める。

ここで呼び止めないと、消えてしまいそうだったから。

 

「……?」

 

「………ジェネちゃんと、話したいことがある。私と、もう1人の私と、ジェネちゃんだけで。………だから、約束。……必ず、帰ってきて。………死なないで」

 

「…………ふふ…。大丈夫。大丈夫だよルーイちゃん。私、そう簡単にくたばんないから。…………全然大丈夫だから。でも、そうだね。どうしても心配なら、ちゃんと約束しておこうか」

 

そう言って、ジェネちゃんは小指を差し出してくる。

 

「指切りってやつ。私あんましたことなかったから。せっかくだから、しない?」

 

「……うん!」

 

俺とジェネちゃんは、小指を絡めて、指切りをする。

 

………この繋がりが、ジェネちゃんの命を繋ぎ止めてくれると、そう信じて。

 

「それじゃあね」

 

そのままジェネちゃんは、覚束ない足で、自身のアジトから立ち去って行った。

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