俺はジェネちゃんに受け取った鍵を使って、ジェネちゃんの研究情報が大量に置かれている、秘密の部屋へと入室する。
そこには、色々な資料が置いていて……。
「……うわぁ……資料だらけだ」
紙の山が大量に積み上がっていて、どれから読めばいいのか、皆目見当もつかなかった。
けど、まず目に入ったのは、妖精についての研究だった。
多分、ラフを調べて知った情報なんだろう。とりあえず、とっかかりやすそうだしこれから見てみるかな。
そう思い、俺は資料を見る。
「妖精とは、妖精界から地球へやってきた、地球外生命体であり、その目的は……希望エネルギーを集めること?」
どうやら、人間が住む世界とは別に、妖精界なるものが存在しているらしい。
その世界には、現実世界でいう電力等のエネルギー問題と同様の問題が生じているらしく、エコで効率的なエネルギーとして、人間の希望のエネルギーが最適だという結論に至ったらしい。
「……ふーん、それでそれで?」
妖精の目的は、希望エネルギーを集めること。そのために、人間界へと降りてきて、人々を幸福にし、希望に満ち溢れさせて、希望エネルギーが無限に取れるようにしたいらしい。
「なるほど、人間はハッピーになるし、妖精は希望エネルギーで電力供給やら何やらができると。Win-Winだね」
けど、それを邪魔する存在がいた。
……うん、俺達だね。悪の組織『ワ・ルーイ』。
本来妖精は、希望エネルギーを集めるために人間界へと降りてきた。けど、悪の組織は、人間を絶望させて、負の感情を生じさせることが目的だった。
妖精とは、正反対の目的。ま、だからこそ少女と契約して魔法少女に変身させ、その脅威を排除しようとしてるってわけだね。
「なるほどなぁ。それで、ラフの研究結果はっと……」
研究対象:妖精ラフと書かれた項目があったため、それについてよく目を凝らす。
……ああ、これか。
ラフの項目には、妖精と契約せずに魔法少女に変身する方法についての研究報告があった。
代償についての項目も、当然置いてあった。
そこには……。
「魔法少女には、変身において必要とされ得るものが3つある。希望のエネルギーと、本人の素質……そして……妖精の魂に宿る、生命エネルギー……」
“妖精の生命エネルギーは、莫大な力を持つ。魔法少女は、希望のエネルギーをその生命エネルギーと掛け合わせることで、人智を超えた力を手に入れる。”と。
“素質は、適性のようなもので、これは、人によって違う。
妖精と人との相性によっても変わるので、Aという妖精と契約して変身できたからといって、Bという妖精と契約して変身できるとは限らない。“ともあった。
あと、複数の妖精との適性を持つ少女は稀らしい。
”では、妖精を経由せずに魔法少女に変身するには、どうすれば良いか。
1つは、魔法少女に変身させたいものの魂を、妖精の生命エネルギーの代替手段として用いること。
この場合、妖精の魂と違い、少女の魂には生命エネルギーは宿っていないため、変身者には過剰な負荷がかかる。魂そのものを削って、無理矢理生命エネルギーを捻出している状態だからだ。“
「……え、怖……俺ずっと魂削りながら戦ってたの…?」
さてさて、それじゃあ、もう一つは……。
「……妖精の魂の一部を、変身者の魂に埋め込む…?」
“これにより、変身者は生命エネルギーの一部を入手することができる。
が、妖精から魂を取りすぎると、妖精が死んでしまうので注意が必要。”か。
……それじゃあ、もしかして解決策っていうのは…。
「ラフの魂を一部頂戴するってこと…?」
ラフに頼んで、『ちょ、魂分けてくださいよw』すればいいのか。そうすれば、俺は代償を支払わずに魔法少女に変身することができる、と。
魂とやらがどういうものなのかはちょっと存じ上げないけども、そこら辺はジェネちゃんがよく分かってるんでしょう。
……まあ、代償については大体分かった。
そんじゃ、次は……。
「………擬似魔法少女?」
次に目に入ったのは、擬似魔法少女、なるものだった。
書き出しは、“男性でも魔法少女に変身できるのか”と言うところから始まっていて……。
「あー……できなくはない、けど、何度も変身できるわけじゃないし、どっちにしろ素質は必要になる、と……」
“色々工夫を凝らして、妖精と合体して無理矢理の変身で精々一回が限界だろう”とのこと。
んー俺の前世は男だけど、今は光千夜という少女だからね。このケースには当てはまらなかったっぽい。
まあ、擬似魔法少女は現実的じゃないってことだね。
そんじゃ、次……。
「あ、分身魔法についての研究もある!」
日付を見てみると、俺の分身魔法がちょうどバレた時以降の研究であることがわかった。
つまり、俺の分身魔法についても、ジェネちゃんは調べていてくれたということになる。
「えーどれどれ……」
”分身魔法は、魂を真っ二つに分けることで、自身の存在を2つに分ける極めて危険な魔法である。理論的には魂を二つに割れば分身できるのだが、魂が半分になれば普通生きていけないので、行使が現実的な魔法ではない。“と書かれている。
ただ、下の方を見ると、何故俺が分身魔法を行使できるのか、長々と考察している文章があった。
“魂には入れ物があり、人はその器ともいうべきものを1人1つずつ持っている。魂の量は、魔法少女などである場合、魔力量と=の関係にあるため、魔力量が多いものは魂の総量が多いといえる。しかし、総量が多いから人より優れているとか、そういうわけではなく、その総量がないと、生命活動を継続することが困難であるというだけなので、多いから良いとは一概には言えない。”
「ふーん。なんかよく分からんや」
とりあえず読み飛ばす。
「……結論、千夜ちゃんには器が2つある? どゆこと?」
“………どういう理由かはわからない。が、千夜ちゃんには人2人分の器が備わっているのだろう。理屈は不明、しかし、そうでなければ分身魔法を用いても死亡に至っていない理由に説明がつかない。
そして、考えられるパターンは2つ。1つは、別々の人格と、別々の魂、それに対応する別々の器で、それぞれ2つずつ存在するパターン。2つ目は、その体に必要な魂の量は相当低いが、何らかのバグで魂の総量が大きくなってしまい、その応急処置、もしくはそちらもバグで器が2つになってしまったパターンだ。”
とかなんとか書いてあった。
んー? 前世の俺と今世の光千夜としての俺で器が2つあるってことなんかな?
でも別に前世の俺と今世の俺って一緒だからね。別人とか、そういうわけじゃないと思うんだよね。
魂的に同一存在だと思うんだよ。だから、この理屈で本当に合ってんの? って疑問なんだけど……。
「……魂的には同一、けど、器だけ2つある、とか…?」
前世の俺の分の器ごと魂が移動してきた、とかなのかな。それで、光千夜の体はそこまで魂の量が要求されないタイプの体だったから、前世の俺の魂量で何とかなってる、とか。
その理屈なら、魂が2つあるって言われてもしっくりくる気がするな。
「……まあ、その辺はジェネちゃんにまた今度聞いてみようかな」
ジェネちゃんの命がどこまで持つのか、俺は知らない。なるべく早く相談したほうが良いかもしれないね。………今更だけど、ジェネちゃんがいなくなるのは、やっぱり寂しいな。…………仕方のないことなんだろうけどさ。
俺はまた、有用な情報が載った資料はないか探ってみる。
すると、一つの気になる資料が、俺の目に入る。
「魔法少女ジェネシステネーブルの研究結果について…?」
……ジェネちゃん自身の研究報告書、だった。
………そっか、そういえば、俺がいない時、魔法少女としての実験対象は、ジェネちゃんだけだった。
じゃあ、ジェネちゃんは、自分で自分自身を研究対象にしていたってことになる。
そして、今俺の手元にあるのが、その、自分自身を研究した結果のもの、なんだろう。
もしかして、この研究の結果、寿命が縮んだとか何だろうか。
その可能性もあるし、そうじゃない可能性もあるのかもしれない。
俺は恐る恐る、『魔法少女ジェネシステネーブルの研究結果について』の資料を開く。
そこに書かれていたのは……。
「え……?」
衝撃的な事実の数々だった。