TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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99親友少女は夜の風を探る

 

 

“喋る羊”の噂を探り、夏場夜風という少女と出会った私は、彼女と連絡を交換し、定期的にお互い情報交換を行うことを約束していた。

 

向こうには、私は“組織に拉致洗脳された親友を取り戻したい少女”という風に伝わっている。

まあ、半分正解ではあるんだけど、その裏に私の欲望が渦巻いていることには、向こうは気付いていない。

 

そして、聞く話によると、彼女はどうやら“ある人”が自分達の情報に釣られてやってくることに期待して“喋る羊”の噂を流したらしく、その人物については、私に教えられることはなかったが、街の襲撃がある度、誰が襲撃にやってきたのか、情報を送ってほしいと伝えられた。

 

まあ、そんな話をしてくるということは、釣りたい人物は、幹部クラスの誰かなんだろうけど。

 

「………とは言っても、戦場の情報収集は今の私には不向きなんだよね……」

 

キュートが一時的に力を失っている今、私と苺先輩は魔法少女に変身することができない。戦場に出れるのは、リーベル、友崎鳴、先輩、白沢薬深の4人だ。

 

先輩もキュートと契約して魔法少女に変身しているけど、どうやらピュアと戦闘したあの一件以来、妖精なしでも変身することが可能になったため、単独で戦場に出ることができるようになったらしい。

 

ピュアに刺された注射が原因だとか何とか、そういう説も出ていたが、実際のところどうなのかは分からない。もし、本当にその注射によって妖精なしでも変身できるようになったというのなら、是非私にも注射を行ってほしいものなのだが。

 

さて、そんな私は、今日も夏場夜風と待ち合わせの約束を交わしている。

彼女にはまだまだ聞きたいことがあるし、何より、彼女も私からの情報を待ち望んでいるのだから。

 

私は、約束の時間の5分前に、約束の場所へと足を運ぶ。

そこには既にそばかすが特徴的な緑髪の少女が佇んでいて…。

 

「………いつから待ってたの?」

 

「ちょうど5分前くらいかな。遊美ちゃん、前も早めに来てたっぽいし、私も早く来たほうがいいかなと思って」

 

待ち合わせの10分前には来てたみたいだ。……まあ、5分なら誤差だろう。そこまで待たせてしまったことに罪悪感を抱く必要はない。

 

「そっか。待っててくれてありがとう。それじゃあ、行こっか」

 

最近、あーちゃんと遊べていないな、なんて、そんな風にぼーっと考えながら、私は夏場夜風と共に歩む。

 

しばらく歩いて、人通りの少ない場所へと移動したところ、夏場夜風が、手に付けているブレスレットに触れ出した。

 

……正確に言えば、ブレスレット型の転移魔法機。

どんな場所にいても、『ユートピア』のアジトに一瞬で転移できる、便利な魔法道具だ。

この道具は、彼女自身が発明したものではないらしいのだが……。

 

「………それじゃあ、行くよ」

 

夜風が私の腕を掴み、ブレスレットの転移魔法を発動させる。

視界が歪み、体が浮遊する感覚を覚える。

 

次の瞬間には………。

 

「わぁ!? 急にくるなって、びっくりするだろ!!」

 

「ひ、ひぃ!? また来たんですかぁ?」

 

小人の少年に、喋る羊の姿が、私の視界に入ってきていて…。

 

「ただいまっと、そんじゃ、情報共有と行きますか」

 

夜風は、当たり前のように石の上に腰掛ける。

 

……『ユートピア』のアジトは、建物の中にあるようなものではない。

内装は、洞窟のような見た目になっていて、そこまで広いわけではない。天井からは水が垂れてきている箇所もあるし、地面には草が生えている箇所だってある。

 

本当に、ひっそりと暮らしているみたいだ。まあ、秘密のアジトといえばしっくりくるような見た目のものだった。

 

「………さて、先日は自己紹介を済ませたわけだけど、今日は何が聞きたいのかな?」

 

「………私の目的は話した。けど、そっちの目的をまだ聞いてないから」

 

利害が一致している、と言っていただけで、具体的に何が目的なのかは、そこまで話していなかったように思える。メェナの目的は、自己紹介の時に聞いた。

 

『……えへへ……えーと、復讐、ですよぉ……。だって、皆私のこと弱いって……だからいらないって……バカにするんですぅ……。だから、痛い目見せてやるんですぅ、馬鹿にしていた相手に踏み躙られて、バカにされるあいつらの姿を想像したら………ひひっ! 絶対気持ち良いですよぉ………!』

 

頬を赤らめながらそう言う彼女は、どう見ても変態にしか思えなかったが、結局は復讐したい、が原動力だった。

だから、他の2人も、大方、組織への復讐、とか、そんなところだろうと思うのだが……。

 

「オイラは、小人をバカにするあいつらのことを見返してやりたいって気持ちが大きいな…。ま、オイラのことをバカにしていたあいつらを全員引き摺り下ろして、クロマックにオイラの実力を認めさせてやりたいってのが目的だ。………今度こそ、オイラが幹部に……」

 

なるほど。ドーンの目的は、もう一度悪の組織『ワ・ルーイ』に所属し、幹部クラスにまで成り上がることのようだ。復讐、とは少し違う動機だったが、私からしてみれば、どちらも大差ない理由だった。

 

「えぇ……クロマックなんて、玉座に座ってのけぞりかえってるだけのくせして偉そうにしてる奴じゃないですかぁ……そういうやつこそボコボコにしたくなりますぅ……」

 

「クロマックはオイラのことバカにはしてこなかったからな。ヒンナもオイラのことバカにしてきたりはしてこなかったけど……1番ムカつくのはイグニスとトーレストだ! あいつら、オイラがチビだからって……」

 

ドーンとメェナは悪の組織の愚痴トークに夢中になり出したらしい。

正直、愚痴なんて聞いても何の面白味もないし、組織についての情報を知りたいなら、後で改めて尋ねればいいだけだ。となれば。

 

私は夜風の方に視線を向ける。

彼女の動機、それが知りたい。おそらく、1番私が協力関係を築くのは、彼女になるだろうから。

 

「ん? 私の目的?」

 

「……そう。夜風の目的を、1番知りたいなって」

 

「………あー……」

 

夜風は、髪の毛をくるくると弄りながら、何と答えたものか、という表情をしながら、言葉を紡ぐ。

 

「……んまあ、復讐、になるのかなぁ? ……ぶっちゃけ、捨てられたことに関してはどうでもいいと思ってるんだけどさ」

 

「……でもだったらこんな風にドーンやメェナとは協力しないんじゃないの?」

 

「……まあ、義務みたいなもんなんだよ。ぶっちゃけ、捨てられて親戚に育てられてからの待遇めっちゃ良かったから、不満とかなかったし、むしろ捨ててくれてありがとうって思ってるくらいなんだよね。ただ……」

 

まあ、組織にいる時の方が待遇酷いのは当然といえば当然なのかもしれない。

千夜もたくさん酷い目に遭ったんだろうか……。心配だ。

確かに、千夜が精神的に参ってる姿は是非見てみたい、けど、私の知らないところで千夜が精神的に参ってしまっていたとして、何が嬉しいものか。

 

私は千夜の親友だ。普通に千夜が嫌な目にあっていたら嫌な気持ちにはなるのだ。

それが私の目の前であれば、私の欲が満たされるし、本当に千夜が危なくなったら私がセーブするなり何なりしてカバーすればいい話だからいくらでも許容できるというだけであって…。

まあ、そんな話はどうでもいい。今は夜風の話に集中しよう。

 

「……やられっぱなしってのも腹立つんだよね。私のこと勝手に生み出しておいて、都合が悪くなったらポイってさ……。………ま、ある意味敵討ちでもあるしね」

 

「……敵討ちって、誰の…?」

 

「んー? 親の? かなぁ」

 

親の……。

捨てたのも親なら、親の敵討ちのために親を討つというのは、何というか……。

 

「………父親か母親……どっちかの敵討ちとか、そういうこと?」

 

「………んー。そうだね。まあ、母親の敵討ちかな、強いていうなら。んで復讐対象は父親、とか? そうとも言える」

 

どうにもフワフワとした回答しかしてこない。

……まあ、釣りたい人とやらを私に告げない時点で、詳細を語るつもりは一切ないのだろうけど…。

 

……結局、夜風の動機はわからないまま、か。

 

『クッポー! クッポー!』

 

そんな風に私と夜風達が会話を交わしているところに、緑色の鳥がやってくる。

この鳥は……。

 

「……私の契約妖精、ハトッポだよ。空が飛べて、諜報もできるから便利なんだよね。……それに、私しか意思疎通できないからね」

 

………ハトッポは、バサバサと翼を羽ばたかせて、まるでジェスチャーでも行うかのように、夜風に何かを伝える。

その意図を汲み取ったのか、夜風の表情は段々と変化を見せていた。

 

具体的にいえば、口角は上がっていて、心なしか、表情に喜の色が混ざっているように見えて……。

 

「………やっとだ。やっと来た!!」

 

「夜風…?」

 

「………ついにあいつが、表舞台に顔を表したみたいだ。……あは………やっとやっとだ。やっと来たんだ、この時が…!」

 

夜風は満面の笑みを浮かべながら、興奮したように言う。

 

「………さあて、それじゃあ私も行くとしますか……。遊美ちゃんも来る?」

 

「……私は……」

 

「離れたところで見ているだけでいいよ。私は……私の復讐を果たすだけだからさ!」

 

そう言って、夜風は全速力で駆け出していった。

 

………彼女の探し求めている、おそらく幹部であろう何者か、それが誰なのか、私にはわからない。けど……。

 

彼女の協力が欲しいなら、知っておいて損はないだろう。

 

「……もしもしリーベル。うん、うん。そう、だから、私に『インビジブルマスカレード』をかけて欲しい。……うん、ごめんね」

 

なら私も、戦場に向かおう。

戦えなくとも、情報は得られるはずだから。

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