毎日投稿の弊害で他の作品読めてないので()
というのは冗談で、ちょいと忙しくなるので、投稿頻度ゆるめますよ、という話でした。
「ジェネちゃん、話をしにきたよ」
俺はジェネちゃんの方へ、ゆっくりと歩みを進めていく。
「ダメ! 愛結ちゃん! そいつに近づかないで!!」
もう1人の俺、千夜ちゃんが俺のことを止めようとするが、構わない。
俺はジェネちゃんと話さなきゃいけないことがあるんだから。
「違う……違うのよ。夕音は……夕音は本当は……」
「……………な、何でナイトルーイが2人…? げ、幻覚…? ど、どういう……? と、友達が増殖しました。どういうことでしょうか? と、ヤッホー知識箱で投稿……」
『……はは…そういうことか…! オレ達が最初に見たのは、間違いなくブラックルーイで……それじゃ、妖愛が写真をとったのは、こいつの方ってことで……』
見知らぬ魔法少女と妖精がいるんだけど……。それに、何これ? 狐の妖精? にしてはデカくない?
ま、いいか。ともかく、俺はちゃんと話さないといけない。
悪ぶって、勝手に1人で死のうとした、馬鹿な叔母に、一言言ってやらないといけない。
「………私の研究資料、見たでしょ? ………いないんだよ。夏場夕音なんて。君が叔母だと思って話していたのは、最初から……」
「……どうでもいいよ、そんなこと。……いや、どうでも良くはないんだけどさ……」
……そんな振る舞い、しなくてもいいのに。
ジェネちゃんが死んだら、そりゃ悲しいよ。けど、ちゃんと前に進むから。だから……自分をそんな、悪みたいに扱うの、やめてほしい。
誰にも看取られずに寂しく死のうなんて、そんなことされた方が、後悔しか残らないんだから。
「………私は千夜ちゃんの体を乗っ取ろうとした。千夜ちゃんに優しくしてたのも、全部そのためで……」
「じゃあ何で、代償を克服するための方法を探ってくれてたの?」
「それは……私が妖精嫌いだから、だからその研究をしてただけで」
「じゃあ、どうして今、ラフと一緒に戦ってたの? ラフがいなくても戦えるようにしたかったんなら、今ラフと一緒に戦ってるのは、おかしいよね。だって、妖精なしで魔法少女に変身する研究は、もう完成してるのに」
「それは……」
全部知ってる。
ジェネちゃんが研究してきたもの、全部見てきたから。
師匠から、“本当の”ジェネちゃんのこと、全部聞いたから。
だから、俺は全部知ってる。
「……知ってるよ。ジェネちゃんが、私のことを大切にしてくれてたことくらい。ジェネちゃんが、実の娘みたいに、可愛がってくれてたことくらい」
「…………けど私は……幹部マインドライフだ。君の叔母じゃない」
「……だとしても、私のことを大切にしてくれてたのは事実だから。それに、叔母じゃない、なんて言ってるけど……そうとも言い切れないんじゃないかな? ね、師匠」
確かに、幹部マインドライフは夏場夕音の死体を乗っ取り、利用していた。
けど、夏場夕音の体には、残っていたんだ。
夏場夕音の、意識の残滓が。
「……そうよ。あんたは、幹部マインドライフであると同時に、夏場夕音でもあった。あんたには、幹部マインドライフとして生きてきた記憶も、夏場夕音として生きてきた記憶も、どちらもあったんだから」
「………だから、何? 私が千夜ちゃんのことを利用しようとしたことに変わりは……」
「だとしても、だよ。………ジェネちゃんは、私が妖精なしで魔法少女に変身しても大丈夫なように、研究してくれてた。私の身を案じて、本気で心配してくれてた。……その事実だって、変わりがないことなんだから」
ジェネちゃんのおかげで、組織での暮らしは快適だった。ジェネちゃんのおかげで、俺は代償の心配をしなくて良くなった。
…………俺はずっと、ジェネちゃんに感謝してたし、ジェネちゃんのことが大好きだったよ。
「…………ヒンナちゃん……どうして、言っちゃったの……?」
「……っ……」
「こうなるのが、嫌だった。………千夜ちゃんに、私の死を背負わせるのが、嫌だった、なのに………」
「………………私だって、嫌だったのよ……!」
そうだ。師匠は、ずっと抱え込んでた。
ジェネちゃんのこと、俺に告げるかどうか、ずっと迷って。
………俺ともう1人の千夜ちゃんに、ジェネちゃんの死を覚悟しておけって言ったのも、全部この時のためだったんだ。
……ジェネちゃんが、悪役としての最後を飾らなくていいように。
俺達が、ちゃんとジェネちゃんとのお別れができるように。
そのために、師匠は、俺達に心の準備をさせようとしていたんだ。
「あんたが死んだら……夕音は……夕音は本当に死ぬことになるじゃない……! ………嫌……だったのよ。夕音が、今度こそ本当にいなくなってしまうのが……。夕音のことを、私だけがちゃんと覚え続けるのが……嫌だったのよ……」
俺のかつての予想は、合っていたらしい。
師匠はかつて、ジェネちゃんとライバル関係にあったらしい。
悪の組織の幹部と、街を守る魔法少女として、お互いに戦って、心の奥底で認め合っていたらしい。
………だから、ジェネちゃんが……夏場夕音が一度死んだと聞いた時、師匠はかなり動揺したんだとか。
「……ヒンナちゃん、そんなに私のこと、好きだったの……?」
「……ええ、好きよ……。認めるのは癪だけど……ずっとあんたと闘ってきて……あんたのこと、認めてたのよ……。私は……あんたのこと、ライバルとして、好きだったわ……」
いつもツンデレだった師匠が、ついにデレた。
………きっと、ジェネちゃんに送る最後の言葉だから。自分の気持ちを、素直にぶつけようと、そう思ったんだろう。
「………何で……なんで……今日はやけに素直……なの……。いっつも、嫌いっていう癖に……」
「あんたが……悪いのよ……。あんたが……勝手に逝こうとするから……」
2人は、互いに涙を流す。
………やっぱり、お互いに、大切に思う感情はあったんだなって、あらためてそう思う。
……ずっと師匠がツンツンしてたから、全然そんな風には思えなかったんだけどさ。
「………ヒンナちゃんのばか」
「……ばかでいいわよ。それで、あんたの側にいてやれるなら」
「……ばか……ばか……バカバカバーカ!!」
「ちょ、何よ!」
「バーカバーカ! ヒンナちゃんのバーカ! 私頑張って隠してたのに! 悪役ロープレしてたのにぃ!」
「なっ、知らないわよ! 大体、あんたが悪いんでしょ! 私の気持ちも知らないで……勝手に……!」
2人は互いに言い争い合う。
その光景を見てると、なんだかいつもの2人に戻ったみたいで。
「………じゃあ、もしかして……私のって勘違い?」
「……うん、そうだね。ジェネちゃんは最初っから、私達のことを思って動いてくれてたんだよ」
「う、うそ……そうだったんだ…。ごめんなさい、夕音叔母さん……」
もう1人の俺、千夜ちゃんがしゅんとしてしおらしくなっちゃった。
仕方ないよ。俺だって師匠に言われなかったら、騙されてたんか……ってなってたもん。
「ナイトルーイは双子…? では、私が最初に勘違いして名前を覚えていたのは、そういう……? ふ、双子で悪の組織の魔法少女を!? ……話を聞くに、夕音さんという方は、2人の叔母に当たる人物で………あ、悪役一家…?」
後ろで困惑してる魔法少女がいるんだけど、この子誰なんですかね…?
別の地域で活動してる魔法少女なのかな? そもそも何でここにいるの?
「………あー。妖愛ちゃんのこと気になるの?」
「え、うん。誰かなぁって」
「この前私がイコルのところで出撃したことあったでしょ? その時にあった子で、友達になったんだ。それで、協力してほしいってお願いして」
「へ〜」
魔法少女と仲良くなってたんだ。俺なんて最初魔法少女泣かせたくらいなのに。
まあ、悪役ロールプレイしてたからなんだけどさ。
「………そろそろ、かな……。ね、千夜ちゃん、2人っきりで話さない? ……いや、3人きり、かな」
ジェネちゃんは、師匠とひとしきり言いたいことは言い終わったのか、俺ともう1人の俺、千夜ちゃんに話しかけてくる。
「…………そうね、私は言いたいことは言い終えたわ。……最後に、2人が話したいこと、話しておきなさい。……多分もう、長くないから」
そう言って、師匠は絶賛困惑中の後ろの魔法少女と妖精を連れて、この場から立ち去っていく。
残されたのは、俺ともう1人の俺、そして、ジェネちゃんだけになった。
「………あーあ、まさかバレちゃうなんて。計画が台無しだよ」
ジェネちゃんは、そうやってため息をつくように笑う。
けど、その顔は不思議と穏やかで。
「………ね、千夜ちゃん、光堕ちは順調に進んでそう?」
そう、穏やかな口調で、俺達に語りかけてくる。
「………は?」
その言葉に、俺は何の違和感も抱かなかったけど、千夜ちゃんからすれば、衝撃的だったみたいで。
「な、ななな、何で知ってるの…?」
「へ?」
「何で光堕ちのこと知ってるの? わ、私達、話してないよね…?」
そっか。光堕ちについて話したこと、千夜ちゃんに共有してなかったんだっけ。
てっきり共有したつもりになってたんだけど……。
「ごめん、私が言っちゃった」
「なにしてんのぉぉぉぉぉぉぉお!?!?!?」
「え、い、いやーいっかな……って」
「いや! 言うにしてもさ! 一回私に許可とってよ! びっくりしたよ! 心臓止まりかけたよ! 夕音叔母さんが、本当に幹部マインドライフでしかなかったらどうしてたって話なんだよね!」
「ご、ごめん。でもいいじゃん? ほら、結果的にジェネちゃんはジェネちゃんだったわけだしさ」
「…んまぁ、私も身内にだったら光堕ちのこと言ってもいいかなぁとは思ってたけどさ……」
ほらね。俺と千夜ちゃんは一心同体、考えてることは同じなんだ!
つまり、俺がジェネちゃんに光堕ちのことを話したのは、特に問題ナッシングだったってわけ。だって、同じ状況なら千夜ちゃんだってそうしてるもんねぇ。
「あはは! 本当に面白いや。光堕ち、本当にするつもりだったんだね」
「そりゃまあ、ねぇ……」
「……なんか、ちょっと恥ずかしい……」
まあ、千夜ちゃんからしたら正に身内に趣味バレた時、だもんなぁ。そりゃ恥ずかしいわ。
「…………はぁ。でも、よかったかも」
「ん?」
「最後に、千夜ちゃん達と、こうして話せるって、いいなと思って。……敵意を向けられて、憎まれたまま死ぬなんて……やっぱり寂しかったから」
そっか。だったら、ここに来てよかったなって思う。ジェネちゃんの思いを尊重するなら、ここに来ない方がいいかもしれないなんて、そんな考えもちょっぴりあったから。
「ジェネちゃん………」
「最後にこんな話をするのも何なんだけどさ……。オクトロアと、キュヴァちゃんには気をつけてね」
幹部様とキュヴァちゃんに? 何で?
「ジェネちゃん、それってどういう……」
「オクトロアに関しては…………うん、言ってもしょうがなさそう。……そうだね、キュヴァちゃんに関してだけど………あの子、多分……」
「?」
「うん、渋ってもしょうがないよね。……キュヴァちゃんは、クロマックの差金。多分、私達幹部が裏切らないかどうか、その動向を探るために派遣された子だよ。だから、千夜ちゃんも、あの子のことは警戒しておいた方がいいと思う。少なくとも、あの子の前で光堕ちの話はしない方がいいかな」
え、そうなの?
あのゲームばっかしてるサボり魔が??
キュヴァちゃん、人の監視をする前に、自分の怠慢を直した方がいいと思うけどなぁ。
ま、いいか。ジェネちゃんは嘘をつくことはもうない。ということは、クロマックの差金、と言う部分は事実なんだろう。
キュヴァちゃんに他者を監視できる能力があるかどうかは別として。
「……言っておいた方が良いのは、これくらいかな。…………ヒンナちゃんは味方だから、安心して頼って良いよとだけ。………あは……やばいな………思ってたより、限界、来てるかも……」
ジェネちゃんの顔色が、どんどん悪くなっていく…。
やっぱり、もう限界だったんだ。
体にガタが来てて、だから、思い切ってあんな大胆な行動、取ってたのかな……。
「ジェネちゃん……」
「悲しい顔しないで。それが嫌なの、わかるでしょ?」
ジェネちゃんは、笑顔を作って、俺達を心配させまいと、必死に取り繕っている。
……そうだ。ジェネちゃんのことを思うなら、不安そうな顔をしちゃいけない。
「………ねぇ、千夜ちゃん……」
「何、ジェネちゃん」
「千夜ちゃん達が光堕ちできるように、私、見守ってるから。……だから、負けないでね」
………負けないよ。
誰にも、何にも。
俺達は、絶対に光堕ちするんだから。
「………うん、絶対に光堕ちする、約束するよ」
「……はは、何その約束……。ふふっ……おかしい」
ジェネちゃんは穏やかに笑う。
死が目前に迫っているというのに、全くそんな素振りは見せてなくて……。
「ねぇ、千夜ちゃん」
「……どうしたの?」
「………愛してる」
…………。
うん、そうだね。ジェネちゃん……。
「私も、愛してる」
俺がそう返すと、最後にジェネちゃんはニコリと、穏やかに微笑んで。
そしてそのまま……。
静かに息を引き取った。
………夏場夕音という女性の人生は、今ここで、幕を下ろした。
「………ねえ、愛結ちゃん」
「……なに?」
「私達、絶対に光堕ちしようね。夕音叔母さんのためにも」
「……うん、そうだね」
ジェネちゃんの死は、無駄にしない。
俺達は、絶対に光堕ちする。
俺と千夜ちゃんは、そう誓って。
幹部ジェネシステネーブルと……夏場夕音と……。
幹部な叔母との、別れを告げた。
意図したわけではないんですけど、カクヨムの方だと昨日がジェネちゃん初登場回なんですよね。昨日初登場で今日退場とはこれいかに。これも運命か…。
ジェネちゃん、今までお疲れ様でした。ヒンナちゃんとの絡み、書いてて楽しかった。R.I.P.