TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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113親友少女は破られた紙を手に入れる

 

 

「………くそ……あれから姿を見せない…。どこ行ったんだ、幹部マインドライフ……」

 

夏場夜風は、夏場夕音……幹部マインドライフと出会ってから、ずっとこの調子だ。復讐を遂げる事。自身のことを勝手に生み出した親を、その手で葬り去ること。それが今、彼女の頭の中を支配しているようで。

 

「……………スターチスから受け取った発信機は、確かに奴につけた……。なのに、動きがない。まさか……バレたのか…?」

 

「その発信機のある場所が、組織の別のアジトだったりはしないの?」

 

「一度確認したけど、何もなかったよ。人っこ1人いなかった。小さなラボのようなものは見つけたけど……」

 

話を聞く限り、発信機の存在がバレて、そのラボのようなものをブラフにしたとしか考えられないんだけど。

 

……まあ、そんなことはどうでもいい。私にとって大事なのは、千夜のことだ。

 

夏場夕音こと幹部マインドライフが、千夜を組織に縛り付けている、という話を聞いたため、確かに私にとっても、マインドライフの始末は早急に行うべきだろう。

 

……けど、幹部マインドライフには、不自然な点がある。

 

まず、何故わざわざ、ブラックルーイを組織に縛り付けている、なんてことを魔法少女に対して告げたのか、という点だ。

魔法少女達を絶望させるため、という理由付けはできる。が、それをするなら、最初からブラックルーイを組織の被害者として、魔法少女にアピールするべきだった。

 

実際は、私達にブラックルーイは悪人、と思わせるだけに留まっており、彼女が被害者であるなんて情報は、こちらに示すことは一切なかった。

 

………もしかしたら、最初は敵対させ、後に被害者である事が判明することにより、気付けなかったという罪悪感で私達をより深く絶望させようとしている、という線もなくはない。……のだが、もしそうなのだとしても、組織が計画的にそれをやっているようには見えなかった。

 

とすれば、考えられる可能性は1つ。

………幹部マインドライフが、幹部マインドライフではなく、夏場夕音だった可能性だ。

この仮説を証明するには、夏場夜風の存在がノイズになる。だって、この説が正しいのなら、夜風の証言は全て嘘になってしまうのだから。

 

けど、こうも考えられはしないだろうか?

 

夏場夕音の体を、確かに幹部マインドライフは乗っ取った。けど、そこに夏場夕音の意識が残っていた、とか。

あるいは、千夜と触れ合ったことで、夏場夕音の意識が浮上し、幹部マインドライフの意識が精神の奥深くに潜り込んだ、とか。

 

そして、もし、その仮定を正しいものとするのであれば、夏場夕音が、千夜の身を案じ、魔法少女達に千夜が被害者であるというアピールをしたとしてもおかしくはない。

 

今までそれをしなかった理由にも説明をつける必要があるのだけど、それは単純に他の幹部に邪魔されたから、とかでもいい気がする。

何にせよ、私にとって夏場夕音は敵ではない可能性があるということだけ頭に置いておいた方が良いかもしれない。

 

私だって、いつまでも千夜の身を『ワ・ルーイ』に置いておくつもりは毛頭ないのだから。

 

「もぉ……せっかく私達の復讐の時が来たと思ったのにぃ……肝心のマインドライフが見つかんないんじゃ、やろうにもやれないじゃないですかぁ………」

 

「仕方ねーよ。どのみち、オイラ達だけじゃ幹部に勝てるかなんてわかんねーしさ」

 

………千夜を『ワ・ルーイ』から救い出すためにも、彼女らの力は必要だ。

ドーンとメェナ。『ワ・ルーイ』から追い出された、反逆者。

 

……千夜を私の手で制御する上で、彼女らの存在は大いに利用できる。それに…。

 

「復讐って、具体的にどうしたいんですか?」

 

「決まってるじゃないですかぁ。私達のことを馬鹿にしてきた連中を、ゴミみたいにこき下ろしてぇ……あ、そうだ、糞尿を撒き散らしてやるのもいいですねぇ………。親しい方を目の前で殺す、とかぁ? イコルの目の前でヒンナを殺したりとかしたいですねぇ………」

 

ああ、本当に都合が良い。こいつらは、どこまでも。

 

「ボコボコにするだけじゃ気がすまねぇな。ま、女はオイラの奴隷にして、男は四肢切断して観賞用のモルモットにする。そうすりゃ、追い出されたオイラ達の鬱憤も少しは晴れるってもんだ」

 

性根が腐っていて、利用する上で罪悪感が全く湧かないクズなんだから。

 

「そんなに酷いことされたんですね」

 

「あったりまえよ! オイラの能力が足りない、お前は必要ないって追い出しやがって……んだよ……。ちょっとサボるくらい許してほしいんだよな」

 

「私も、ミスで何千匹もの妖魔を台無しにしちゃった事があるんですけどぉ……それって、妖魔を製造した組織が悪いじゃないですかぁ? だって、そんな簡単に台無しになっちゃうような製造の仕方をしているせいで、私がミスしたみたいになっちゃったわけじゃないですかぁ………」

 

「……幹部トーレストを間違えて殺しかけたこともあったけどよぉ……それだって、トーレストは笑って許してくれてたんだぜ? だったらいいじゃないか。未遂なのに、それで追い出されるなんてオイラは納得いかないぞ」

 

「確かに、当事者が許してるなら別にいいですよねぇ。………でも私はもっと酷いんですぅ……私何にも悪いことしてないのにぃ………勝手に組織が私を無能扱いして追い出したんですぅ……! 酷いと思いませんか? 殺されても文句言えないですよねぇ?」

 

「夜風も殺しかけてたからなあ。ガキ殺すのが1番気持ちよさそうだったし。ま、今の関係考えたら、殺さなくて正解だったわけだが」

 

「……うわぁ、ドーンってやっぱり最低ですねぇ……。トーレスト殺しかけたのとは訳が違いますよぉ。快楽のために命を奪うなんて。私も夜風のことは殺しかけたけどぉ、それは夜風が夜泣きしてうるさくてぇ、私が眠れなくなっちゃうから、仕方なく息の根を止めてやろうと思っただけでぇ……」

 

他責思考で、自分が悪かった可能性なんて1ミリも頭に思い浮かべる事がない。本当に救いようがなくて、どこまでも外道で。

 

追い出された理由も、聞く限り真っ当なものだ。そりゃそうなるでしょと、そう思わざるを得ないようなものばかりだった。

 

だからこそ、私は心置きなく彼女達を利用できる。

夏場夜風に関しては、被害者といってもいいので、ドーンやメェナのようにはいかないけど…。

 

なんなら、乳幼児の頃に殺されかけてるみたいだし……。本当に大丈夫? こいつらと組んで。また命狙われない? ……なんて思わなくもないけど。

 

まあ、こいつら2匹に関しては、私がいくら利用しようが、文句は言えないはずだ。

擁護のしようがないくらい、終わっている連中なのだから。

 

更生の余地も、全くといっていいほどないわけだし。

 

「けど、1番ムカつくのはオクトロアの奴だよなぁ。あいついっつもスカした面しやがって………。オイラ達のこと見下してんのが見え見えってんだ」

 

「確かにオクトロアはムカつきますぅ……。あいつなんて自分は有能ですって顔してぇ……。私に無能のレッテルを貼り付けるようなゲロキモ勘違い男ですからぁ……」

 

ドーンとメェナの陰口トークは止まらない。

………こいつらの会話を聞いていると、私の性格までひん曲がってしまいそうだ。

勝手にしゃべらせておいて、利用できそうな時に利用するくらいが丁度いいか。変に関わると私もこいつらのような外道になってしまいそうで怖い。

 

夜風の方に話しかけよう。彼女は別に外道でも何でもない。明確にただの組織の被害者だし、ドーンやメェナよりも話が通じるから。

 

そんな風に考え、夜風の元に駆けて行こうとした、その時だった。

 

「誰がゲロキモ勘違い男だと?」

 

聞き覚えのある、丁寧な口調。

覚えている。

一度私の腕に収まった千夜を、私から奪った、忌々しい幹部の男……。

 

「オクトロア……」

 

人の形を模した、触手のような男。

それが今、私達の目の前へと現れていた。

 

「さて、見慣れない少女が2人ほどいますが……見逃しておきましょう。無駄な殺生は好みませんので。………本題に入りますと、メェナさん、貴方には組織に戻って欲しいんですよ」

 

「……ふぇ? わ、私ですかぁ?」

 

「現在、我々は深刻な戦力不足を抱えておりますので。以前組織に属していたメェナさんには、我々の力になって欲しいんですよ」

 

「ち、力に……。わ、私の力が必要ってことですかぁ?」

 

「おいメェナ! 抜け駆けはゆるさねぇからな!! 大体、忘れたのかよ、こいつらはオイラ達のことを不当に評価して、追い出しやがったクソ野郎共何だからな!」

 

「有能な戦力はいくらあってもいいですからね」

 

「え、えへへ〜。そうですよねぇ……。やっと気づいたんですかぁ。私の存在の大切さにぃ……。私ってぇ、有能なんですよぉ? あははぁ。そっかそっかぁ。ようやく私も、真っ当に評価される日がきたんですねぇ……」

 

私は今、魔法少女に変身できない。頼れるのは、夜風と、ドーンだけ。メェナは既に絆されてる。

 

とすると、2対2。

 

………どうする?

 

私は、そういう視線を夜風に向ける。が、夜風は首を横に振る。

応戦するつもりはない、とでもいいたげで……。

 

………そうか、幹部に変身前の姿を知られることを恐れているのか。てっきり、夜風の顔は組織に知られているものとばかり思っていたけど、そうでもないらしい。

 

「おいメェナ!! テメェ裏切りやがったな!! クソ……! オクトロア! お前、オイラのことは引き抜かないのかよ!!」

 

「味方を殺しかねないような存在をスカウトするとでも? たとえ有能でも、味方を殺すような存在は必要ありませんからね。ああ、失礼。貴方には何の能力もありませんでしたか」

 

「て、めぇ!!!!」

 

「それでは、私はこれで失礼します。さて、いきましょうかメェナさん」

 

「はいぃ! 私、頑張って働きますねぇ〜♪」

 

こうして、オクトロアとメェナはこの場を去っていった。

利用できる駒を失ったのは痛い。けど、命を失わなかっただけマシ、と捉えるべきか。

 

……緊張の糸が抜けたからか、私はその場に座り込んでしまう。

下を向いて、汗を流して……。

 

すると、地面には何か紙のようなものが落ちていて……。

 

「…………これは……?」

 

さっきまではなかった。それじゃあ、もしかして、オクトロアが…?

 

その紙は、途中までが破られていて、上の部分は何が書いてあるのかわからなかった。けど、下部の、紙がちぎられていない部分に書いてある文字は、かろうじて読む事ができて…。

 

「ブラックルーイは、容姿が似ている広井愛結という少女を利用している?」

 

そこに記されていたのは、私の親友の名前だった。

 

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