TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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117悪役少女は模造少女と仲直りしたい

 

 

旧トーレストのアジト。今はキュヴァちゃんのアジトとなっているその場所に、訪問する。

 

………まずは、キュヴァちゃんとの仲直りからだ。

 

手荷物は………OK。道中で買った”アレ“は、ちゃんと持ってきている。

 

………拒絶されるかもしれない。だって俺は、どうして急にキュヴァちゃんの態度が変わったのか、全く分からないんだから。

 

心当たりがあるとすれば……。

 

【うそつき】

 

幹部会議の時の、あれくらいだろうか。

 

………まあ、とにかく当たって砕けろだ。

 

俺はキュヴァちゃんの元まで、一直線に進む。キュヴァちゃんのアジトは大きな地下の階段を降りた先にあって、地下に降りるとだだっ広い空間が広がっている。

多分、前の幹部だったトーレストが巨体だったから、その巨体を収められるだけの大きさに設計されているんだろう。

 

俺はまっすぐ進み、おそらくキュヴァちゃんがいるであろう部屋をノック。

返事がない。けど、引き返すわけにはいかない。

 

俺はそのまま、無遠慮に部屋に立ち入る。すると、そこには……。

 

「…………何の用?」

 

………いた。キュヴァちゃんだ。

 

「キュヴァちゃん、話したいことがある」

 

「キュヴァ様、の間違いでしょ。モルモットの癖に、幹部を呼び捨てにしていいと思って……」

 

「私は……! ………キュヴァちゃんのこと、友達だと思ってる。………組織の幹部とか、そういう目を抜きにして。………友達として、キュヴァちゃんと話したい」

 

「っ………」

 

俺の言葉に、キュヴァちゃんは一瞬動揺したような表情を見せる。友達、という言葉に、反応していたようにも見えた。

 

「………お願い、キュヴァちゃん。私は、キュヴァちゃんと仲直りがしたい。また一緒にゲームがしたいし、街の襲撃だって、あんなギスギスした感じでやりたくはない。だから………」

 

「……う……るさい。そうやって、距離を詰めて、絆してしまえばどうにでもなると思ってるんでしょ? 私のことなんて、どうでもいい癖に………善人ぶって、そうやって………」

 

キュヴァちゃんは、俺のことを突き放すかのように言う。

拒絶。だけど、それは、心の底から俺を嫌っているから出たものとは違うように見える。やっぱり……。

 

「………キュヴァちゃん、ゲームしない? ………仲直りするために、ゲーム機も持ってきたんだ。………だから……」

 

「キュヴァちゃんなんて呼び方、許可してない。………私は一度も、私のことをキュヴァちゃんと呼んでいいなんて言ってない」

 

「言ったよ。キュヴァちゃんでいいって。幹部になる前に」

 

「……冗談抜きで、言ってない。私は、キュヴァで良いって言っただけで、キュヴァ”ちゃん“で呼んで良いとは一言も言ってない。記憶を捏造しないで」

 

「あれ? そうだっけ?」

 

「うん。そうだよ。証拠は残ってないけど、確かに私はキュヴァで良いとしか言わなかった」

 

………えーと。言われてみればそうだった気がしなくもないような……?

 

え、じゃあ俺、本当に勝手にキュヴァちゃん呼びしてただけだったの?

無許可だったの? あ、あれあれあれぇ?

 

「………やっぱり、ルーイは嘘つきなんだね。そうやって私を騙して、懐柔して。都合の良いように使いたいんだ。………私との思い出とか、どうでも良いと思ってるんでしょ。……だから、私との会話も、曖昧な形でしか覚えてないんだよ」

 

「ち、違うって。私は、キュヴァちゃんと過ごしてて楽しかったし、キュヴァちゃんとの思い出は大切なものだって、そう思ってるから! だからここに来たし、仲直りしたいと思って……!」

 

「本当に私と仲が良いと思ってるなら、何で隠し事なんてしたの?」

 

「え……?」

 

「ジェネシステネーブルの件。私は一切知らされてなかった。後から、ヒンナを問いただして事情を把握しただけで、ルーイからは一切、ジェネシスの話を聞かなかった。………話してくれるかなって、待ってたのに……」

 

「それは……」

 

確かに、そうだ。ジェネちゃんの一件を、俺はキュヴァちゃんに話してなかった。

キュヴァちゃんだって、ジェネちゃんのアジトにちょくちょく通ってきてたくらいだし、交流はあったんだから、報告するのが自然な流れだっただろう。

 

なのに俺は、キュヴァちゃんに何も……。

 

「ごめん。それは……確かに私の落ち度だよ、ジェネちゃんの件、キュヴァちゃんにも、私の口から話すべきだったと思う」

 

「皆………私を裏切るんだ……。ラフ君も、ジェネシスも……ルーイも………皆、皆……!」

 

キュヴァちゃんは、頭をくしゃくしゃと掻きながら、冷静さを失った、焦ったような声を漏らす。………その様子は、まるで癇癪を起こした子供みたいで。

 

「キュヴァちゃん……。本当にごめん。騙すつもりはなくて、ただ……」

 

「………うるさい。皆、私を利用することしか考えてないんだ。………ラフ君も、一緒にゲームしたのに……結局私を支配することしか考えてなかった! ……ジェネシスも、私を利用するだけ利用して……。イコルだってそうだ。一緒に戦ったことだってあるのに、私のことを一切信頼してなかった。……皆、皆……」

 

…………そっか。

もしかしたら、キュヴァちゃんは。

 

………孤独だったのかもしれない。

悪の組織に生み出されて、クロマック君は、自分を利用することしか考えてなくて。

 

ラフの件はよく知らないけど、ジェネちゃんの一件で、誰も自分に情報を教えてくれなくて、幹部会議で初めて知ることになって。

 

自分の味方がいないんじゃないか、良いように使われてるんじゃないか、とか、段々とそういう思考に支配されて………。

 

それで、俺のことも敵とみなすことしかできなくなったんだろうな。

 

「キュヴァちゃん……」

 

俺は、キュヴァちゃんの体を抱きしめる。

俺は、キュヴァちゃんの味方だと示すために。

 

かつてジェネちゃんが、俺の体を抱きしめてくれた、あの時のように。

 

今度は俺が、キュヴァちゃんを。

 

「はなして………」

 

「………私は、キュヴァちゃんのこと、裏切らないから。………キュヴァちゃんの味方だから。……だから……」

 

「………じゃあ………じゃあ、何で……何で嘘をついたの……?」

 

キュヴァちゃんは、縋るような口調で言う。まるで、親に置いて行かれた子供みたいな口調で。

 

「へ?」

 

「幹部会議の時……どうして、ジェネシスの正体を知らなかったって……言ったの…?」

 

そっか。

あの時から、キュヴァちゃんの様子はおかしくなってた。

あれがきっかけで、俺がキュヴァちゃんの味方じゃないって、そう思わせちゃったんだ。

 

「………ごめん、そんなつもりじゃなかった。その……あの時は他の幹部もいたし、当たり障りのないように回答しなきゃと思ってたから。……あと、そこまで嘘もついてなかったような気がするんだけど……」

 

「………いや、嘘はついてた。『公正の魔』が反応してたから」

 

「? 何それ?」

 

「………何でもない」

 

嘘、ついてたっけなぁ。

あの時、何て答えたっけ。

確か……。

 

【……知らなかったよ。私がジェネシス様がマインドライフだったって知ったのは、ししょ………ヒンナ様が彼を始末した後のことだったから】

 

………あ。

そっか。嘘、ついてる。

 

俺がジェネちゃんの正体を知ったのは、ジェネちゃんは死ぬ前だった。

ジェネちゃんが死んだ後じゃない。それに、師匠がジェネちゃんのことを始末したわけでもなかった。

 

………嘘、ついてんじゃーん。何で気づかなかったんだろ?

というか、知らなかったよ、でとどめてたら、嘘じゃなかったくない?

 

あほなん?

いや、そりゃ嘘判別する方法なんてないだろうから、大丈夫だろうけどさ。でも、実際キュヴァちゃんには嘘ついてると思わせてしまったわけで……。

 

「ごめんキュヴァちゃん、嘘ついてたっぽい……。本当に、騙そうとか、そんなつもりじゃなくて……」

 

「………だったら、隠してること、全部話して」

 

「へ?」

 

「隠し事、今、この場で、全部私に話して。私の味方なら、私に秘密を全て打ち明けてよ。………もしできないなら、ルーイは、私の敵だから」

 

隠し事、全部かぁ……。

 

俺、何隠してるっけ。

まず、光堕ちするってことは隠してたね。んまあ、これくらいならジェネちゃんにも話してるし、まあ……。

 

他は、あるかな?

 

……………基本隠してないと思うけど、どうだろ。

 

そういえば、前世の話とかはしてないなぁ。でも、変にこれ言って嫌われたりしたら…。

 

……………………いや、何考えてるんだ。

キュヴァちゃんは、全部話してほしいって言ってるんだ。

それに対して、誠実に応えなきゃ。じゃないと、キュヴァちゃんに対する裏切りになる。

 

全部話すべきだ。もちろん、後でもう1人の俺には説明しなきゃだけど。

 

「………えと、まず、私には前世の記憶があります」

 

「…………前世の、記憶……?」

 

「魔法少女アニメ好きの男性でした。魔法少女大好きだったんだよ。けど、アニメ視聴中、とあるキャラが光堕ちする姿を見て、あまりの興奮に尊死してしまったんだよね」

 

「…………あ………えと、まず、前世があるのは分かった。別にそれは良い。けど…………光堕ちって何? 尊死って?」

 

「光堕ちっていうのは………」

 

俺は、キュヴァちゃんに光堕ちについてと、尊死について全て説明する。

時折キュヴァちゃんがは? みたいな顔をしていたが、一応は納得してもらえたみたいで…。

 

「………わかった。そんなこと、隠してたんだ。…………びっくりした」

 

うん、ちょくちょく、光堕ち………尊死……みたいに呟いてて、まだ咀嚼しきれてないんだろうなって感じはするけど、一応は納得してくれたみたいで。

 

「じゃあ、キュヴァちゃん。仲直り、してくれる……?」

 

「…………………うん。わかった。いいよ。仲直り、する。けど………」

 

「けど………?」

 

「………その代わり、光堕ちは諦めて」

 

「え?」

 

「光堕ちか私。どっちか選んで。………もし、光堕ちを選ぶなら、仲直りはできない」

 

ど、どうしよう………。

普通に考えたら、キュヴァちゃんを大切にするべきなんだろうけど……。

 

 

 

 

やだ。

やだやだやだ!!

 

オデ、ヒカリオチ、シタイ。

ユメ、アキラメタクナイ。

 

光堕ちを諦めるなんて無理だよ!! だって俺光堕ちのために生きてるんだから!

光堕ちエネルギーがなかったら、枯れて萎んでまう! 無気力になって死んでまう!

 

く、キュヴァちゃんを裏切る、とか、そういうので正直に前世の話とかしちゃったけど………。でもここは譲れないんだ! ごめんキュヴァちゃん!

 

「わかった。光堕ちよりも、キュヴァちゃんを大事にするよ」

 

「……うそつき」

 

何でぇ!?

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