TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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12純白魔法少女は容赦しない

 

空中に避難だ!

 

逃げろ逃げろ逃げろ! こんなところでやられてたまるかー!

 

「クール」

 

『クル。要望は何クル?』

 

「『浮遊の魔』」

 

『了解クル』

 

純白の魔法少女の隣に、白熊のような見た目をしたマスコットが現れる。

……名前はクールでいいのかな?

マスコットって複数体いるんだ。まあ、それもそうか、魔法少女が複数いるんだから、マスコットだって複数いてもおかしくはない。

 

というか、たった1匹で3人魔法少女従えてるキューティバース達のマスコットの方が稀有な例なのかな?

 

「逃がさない……」

 

ひえ……。

何であの子あんなに殺意マシマシなの?

そりゃ悪役外道ムーブかましましたけども、あれ空中だったし会話聞こえてないはずだよね?

 

怖いんですけど……。

 

……空飛べる妖魔、持ってきてたっけな………。

俺は懐の中を調べ、妖魔を生み出す元になる闇の塊を探る。

 

「『マジックギフト』」

 

……あった。性能そこそこ良くて飛べる妖魔達!

こいつらで時間稼ぎだ。俺がゴソゴソしてる間になんか魔法使ってたっぽいけどどんな効果があるかは知らん!!

とにかく、妖魔達よ! 俺が逃げるために尽力してくれー!!

 

「いけー!」

 

俺は空中に妖魔達をばら撒く。

 

ずっと飛び続けていると、微量ながらも魔力は消費し続けてしまう。

加えて、妖魔達を処分するためにも、多少なりとも魔法を使い、魔力を消費するはずだ。

そうすれば、俺を追うスピードも自然と…。

 

「『ポイズンベア』」

 

純白の魔法少女は、右手に熊の手のようなものを装着し、空中を自由に飛び回る妖魔達を次々と薙ぎ払いながら、こちらに向かってどんどん加速していく。

 

妖魔が役に立たない!! 

 

「ちぃ……こうなったら…!」

 

魔力はあまりない。けど、何もしなければこのまま純白の魔法少女こと白沢さんにやられてゲームオーバーだ。

 

なら……。

 

「『闇の炎』!!」

 

残った魔力を使って、魔法を行使しながら逃げるしかない。

 

「あれ、なんか威力が………」

 

が、普段よりも少し火力が落ちている気がする。

魔力を消費しすぎた? 

 

「……邪魔」

 

俺の放った『闇の炎』は、純白の魔法少女の熊の手にいとも容易く弾かれてしまう。

やっぱり、いつもより火力足りてないよねぇ……。

 

『“マジックギフト”は相手が魔法を行使するたびに、相手の使用した魔力の4割が自身に吸収される魔法クル。単純に相手の魔法の威力が4割減するということでもあるから、君の魔法も弱体化しているクル』

 

なんだそれズルだろ!!

何でそんな魔法使えるんだよぉ……。

 

クッソ! どうしよ!?

何で俺前幹部と話してた時、【大丈夫だよ。仲間がいなくても、私なら上手くやれるから。だから、安心して見てなよ】なんてほざいてしまったんだろうか。

 

俺は今、モーレツに仲間が欲しい!!!

この絶望的な状況から、俺を助けて欲しい!!

 

「追いついた」

 

「ひえ……」

 

「キューティバースの良心を利用し、卑怯な手を使おうとしたこと。魔法少女でありながら、『ワ・ルーイ』に加担しようとしたこと。そのどちらも、重罪。死んで償え。『クールポイズン』」

 

まずい、何とか抵抗を……。

 

「うっ………」

 

体が……動かない……。な……んで……。

 

『”クールポイズン“は体の神経を麻痺させる魔法クル。一度くらって仕舞えば、しばらくは動くことも、魔法を行使することもできないクル』

 

「じゃあね。さよなら、外道」

 

動くことも、魔法を行使することもできない?

それじゃ、それじゃあ俺は……。

 

「うわああああ!! おちるううううううううう!!」

 

魔法を行使できない。それすなわち、浮遊魔法を継続できないということを意味する。なんなら変身も解けてる!?

 

やばい死ぬ死ぬ死ぬ!!!! 本気で死ぬ!?

 

助けて!! 誰でもいいから助けて!!

ひいいいいいい!!! 死んじゃううううううううううううう!!!!!

 

あ! やばい! 背中に何か触れた!?

地面か? 地面だなこれ!?

うわ、このまま俺、ミンチになって死んじゃうんだ。

地面に叩きつけられて、見るも無惨な姿になって死んじゃうんだ。怖くて目も開けられない。

 

ああ、光堕ち、できなかったな。

心なしか、世界がスローモーションになっている気がする。

全然落ちる感覚がしないし、ああ、これが死ぬ瞬間って奴なんだ。

 

神様、俺なんか悪いことしたかな?

街破壊したり、洗脳されてないのにされてるふりしたり、人質取ったり……。

 

悪いことしてるやんけ。言い訳できないや。

 

あーあ。どうせなら、光堕ちしてから死にたかったな。

 

………ああ、一度死んだはずなのに……。

 

「死ぬのが……怖い……」

 

「………大丈夫だから」

 

「へ?」

 

俺は、恐る恐る目を開ける。

俺が目を開けて、最初に視界に入ってきたのは…。

 

黄色い魔法少女。

 

俺が背中に感じた地面だと思っていたものは、彼女が俺を受け止めるために差し出した、両の腕だったのだ。

 

「あ……はは………ははは………」

 

俺の命は、彼女の手によって救われた。

 

ありがとう、ありがとう……。まじでありがとう。本気で怖かった。死ぬかと思った。

 

そうだそうだ。俺、彼女の好感度は今回下げてなかったんだ。キューティバースからは嫌われても、彼女からはまだそこまで嫌われてなかった。

だから助けてもらえたんだな!

 

「ムーンちゃん!!」

 

そんな俺と黄色い魔法少女の元に、キューティバースがやってくる。

どうしよ。顔合わせづらい。

というか、せっかくあんな悪役ムーブかましたのに今やこれって…。

 

ああああああ! 穴があったら入りたい!

対立する敵役ポジで、ある程度風格は保ちたかったのに!

こんなみっともない姿を晒してしまうなんて……。

 

そんな風に恥ずかしくて顔を伏せたい俺に、殺意を飛ばしながら、純白の魔法少女もやってくる。

 

「邪魔しないでムーンノウシーカー。そいつは、組織に加担する邪悪な魔法少女。いや、魔法少女と呼称するのも憚られる。そいつは、この世界に害をもたらす“魔女”だ。生かしてはおけない」

 

「貴方の言い分も、理解できる部分はあります。ですが、殺す必要まではないでしょう? 対話で分かり合えなくても、彼女も同じ魔法少女で……」

 

「同じ? 違う。そいつは“魔女”。街を守るため、立派に正義を遂行する魔法少女とは、全く似つかない害悪」

 

黄色の魔法少女と純白の魔法少女で、言い争いが始まる。

………こんなはずじゃなかった。

最初敵対して、終盤にこう、話し合えばきっと分かり合えるよ! な展開に持っていくはずが……。

 

「……うん。そうだよ。ブラックルーイは、私達とは相容れない。魔法少女じゃない。“魔女”だよ」

 

「キューティ先輩、何を……」

 

「分かり合えないんだ。私達とブラックルーイは。殺すのは、やり過ぎだけど……。それでも、ブラックルーイの思想や行動は、私達が許容できる範囲を超えてる」

 

そう思ってくれるのはいいんだけど。

……俺が黄色い魔法少女に守られる形になっているのが、なんとも……。

それに、このままじゃ俺、魔法少女達に捕えられて悪役としての役割をこなせずに終わっちまう。

 

けど体麻痺してて動けない。

どうしよ。

 

「ブラックルーイは、ここで拘束しようと思う。妖精を探し出して、身元を割り出して、2度とこんなことができないように、変身できないようにする。分かり合えない。けど、だからって彼女の存在を否定していいわけじゃないから」

 

キューティバースは割と理性的な判断を下している。

人によっては、こんな悪は殺してしまえ!って論調の人もいるだろうに、根が優しいんだろうなぁ……。

 

どうする? 俺は、どうやってこの場から……。

 

「心配して様子を見にきてみれば、案の定、ですか」

 

この、声は……。

 

『きゅ!? お前は…』

 

「幹部……様……!」

 

普段俺が滞在しているアジトで仕事している触手の幹部。

俺を助けにきてくれたのか?

 

それとも、“貴女は用済みです。さようなら”されちゃう?

やめてね? 幹部様と俺の仲だよね? 俺、幹部様に初めて捧げたんだからね? 脳くちゅの。責任とってね?

 

「魔法少女さん方、彼女は我々の貴重な戦力です。返していただきましょうか」

 

「黙れ! 黙れ黙れ黙れ!! お前は……! お前は…! 絶対に許さない!! お前のような奴を、私は………!!」

 

どうやら俺が心配していた事態にはならなかったらしい。純白ちゃんが幹部君にめっちゃブチギレてるが、そこ因縁ある感じです?

 

ともかく、幹部君が来てくれたのなら安心だ。キューティバースは消耗しているし、純白ちゃんも多少は消耗してる……と思う。

万全なのは黄色い子だけ。幹部君の実力なら、俺を回収して逃げる事も難しくはないだろう。

 

「ムーンちゃん!」

 

「書よ! 私に力を…!」

 

「させませんよ!!」

 

幹部君が触手で魔法少女達を薙ぎ払う。

キューティバースは後方へ投げ飛ばされ、黄色い魔法少女は幹部君にしがみつくが、同時に俺のことを手放してしまう。

 

「待って! 千夜!!」

 

「ブラックルーイさんはいただきますよ」

 

俺は幹部君の触手の腕に抱かれる。それを見た黄色い魔法少女が、何か叫びながら幹部君から俺を取り返そうと、手を伸ばすが……。

 

「無駄ですよ」

 

幹部君がもう一度触手を振るい、黄色い子を地面に叩きつけてしまう。

 

「あ……はは……幹部様、最高………。……今回はボロ負けだけど………次は……容赦しない……から……」

 

一応捨て台詞を吐いておく。やっぱりこいつ悪者だわって思わせとかないと。守られてるだけの少女だと可哀想的な見られ方しちゃいそうだし。

 

「『スピア』」

 

最後に残るは純白の白沢さんだ。彼女は魔法を行使し、幹部君の触手に傷をつける。が……。

 

「好都合です。『ブラッドテンタクル』」

 

幹部君は傷から溢れ出た血を利用して、魔法を行使する。

傷口から出る血が、次々に触手の形へと変容していき、増幅していく。

 

「くそ! 逃げるな!!」

 

『この量の触手を無視して突っ込むのは危険クル。冷静に、クーの言う通り、一つ一つ対処するクル』

 

「そんなことしてたら……あいつが…!」

 

『ホワイトの実力なら、いつでも倒せるクル。今は冷静になるクル』

 

「……っ。わかった」

 

「ふむ。以前のキューティバース達なら、私もここまで圧倒できなかったでしょう。今日は調子が悪いようですね?」

 

幹部君は、魔法少女達を圧倒し、俺を窮地から救ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、いうわけで、俺は幹部君にお姫様抱っこされながら、上空を飛んでいた。

気分はさながらシンデレラ! というわけではないが、今の俺に取っての幹部君は王子様みたいなもんだ。

俺が女だったら惚れてたぜ。いや、今女の子なんだけど、そういうことじゃなくて。

 

……とにかく、もう少し慎重に立ち回ったほうがいいな。それが今回の反省点。

 

「全く。だから言いましたよね? 仲間が必要では? と」

 

「うっ……ごもっともです、幹部様」

 

「魔法少女の戦力は私達にとって貴重なのですから、あまり危ない綱渡りをするのはやめてもらいたいものです。……とにかく、戦力増強については、他の幹部と連絡して策を練ることにします。暫くはルーイさんも休暇にしますから、ゆっくり療養してください」

 

あらやだイケメン。これは理想の上司。俺が女だったら惚れてるね。

 

「はい……。申し訳ありません、幹部様……」

 

至れり尽せりだ。

全く不甲斐ない。

幹部様のためにも、もっと頑張らないと。

 

光堕ちのチャート、やっぱちゃんと練っておくべきかもしれないなぁ…。

 

 




怪人対処に夢中で妹の危機にも仲間の危機にも対処できないシャイニングシンガーさん。

姉にはなれず、何も得ず。
実に空虚じゃありゃせんか?
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