「まずは私から。………組織の内部に関しては、愛結ちゃん………もう1人の私の方が詳しいだろうから、そっちに任せることにして、私は外部の助けを借りることにしたんだ。それで、頼ったのが……」
「私、ですね」
千夜ちゃんは隣にいる、丁寧な言葉で話す少女に目を向ける。
『雲外鏡』を用意してくれたのはこの子なんだろう。……この子がいなければ、きっと今頃キュヴァちゃんは……。
「……あの、ありがとうございました。………おかげで、キュヴァちゃんの命を繋ぎ止めることができたので。えーと……」
名前、なんだっけ?
そもそも自己紹介とかされてたっけ? されてないような気もする……。
「………あー、そういえば、自己紹介がまだでしたね。私の名前は西織妖愛。魔法少女エンシェントカラミティとして、好きなように活動させてもらってます」
「西織妖愛……」
「いつも私の足を引っ張る無能なパートナー妖精の名はスマイルです」
『誰が無能だ馬鹿者!』
「スマイルって名前なのにいつもキレてます。怖いですね」
『それはお前が……はぁ……いいや、付き合うのも面倒だ』
「あはは」
ふむふむ。
うん、良い子そうじゃん。キューティとかと一緒に活動したりはしてないっぽいし、多分別の地域の魔法少女なのかなぁ?
まあ、別の地域で必死に街を守ってる、立派な女の子なんだろう。偉いよね、本当。給料とか出ないのに頑張ってて。尊敬しかないよ。俺は光堕ちのためにしか頑張れないのに。
「妖愛ちゃんは色んな妖怪を召喚できるから、色々な状況に対処できるかなと思って、それでお願いしてみたんだ」
「色々な妖怪とは言いますが、大半は戦闘しか行えませんよ? 勿論、『雲外鏡』など、便利なものはありますが……」
「移動手段があるだけで十分だよ。それに、妖愛ちゃんの人脈も利用させてもらうことになったからね!」
「人脈?」
「人脈とはいっても、友人に頼ってみたというだけですが……。詳細は伏せたものの、私の友人に1人、大金持ちの娘がいるので、彼女に頼んでみました。助けたい人がいるから、もし何かあれば、資金を援助してほしい、と」
なるほど。財閥のお嬢様的なのと関わりがあるわけね。それで、キュヴァちゃんを助けるために、もし大量のお金が必要になったときは、その彼女を頼れば良いというわけだ。
「……それは、何かお礼をしないとね」
「私が体で支払いますよ」
「え……?」
か、体で……?
それって、え、えっちなやーつ? 自分の身を売る的な?
いや、いやいやいやいや!
「だ、ダメでしょそれは! 自分の体は大事にしないと!」
「? はい? 私は滅多なことでは負けないので、問題はないと思いますよ?」
「へ?」
………ん?
滅多なことでは負けない?
あれ、そういえば、金持ちの友達って、女の子……だよな?
女の子に体で支払う? ………あれれ?
「えーと……」
あーと、体で支払う、負けない……戦い?
………えー……。
「愛〜結ちゃん、何赤くなってるの?」
「い、いや、なんでもな」
「もしかして、何か変なことでも想像した?」
「sしtあてにゃいよ!?」
「なんて?」
「してにゃいよ!?」
噛み噛みザウルス……。
変な想像しちゃった………。ち、違うんですこれは! 別に俺が変態だとかそういうわけじゃなくてですね…! 言い方も悪いと思います! ほんと、もうちょっと別の言い方あるでしょ、ほら、力を貸します的な言い換えとかできなくはないしさぁ……。
「そっかぁ、してにゃいか〜。私の目には、何かイケニャイ想像をしてるように見えたけどにゃあ〜?」
千夜ちゃんはニヤニヤと揶揄うような表情をしながらそうコソコソと話してくる。
………分かっててやってるなこいつ……。本当に俺と同じ存在かよ……。
このっ、メスガキが!!
「……それじゃ、次は私ね。私は、魔法科学の研究を駆使して、どうにかキュヴァを延命する方法を……生命維持装置を作っていたわ。といっても、ある程度できてはいたんだけど」
キュヴァちゃん光堕ち計画って始動したのつい最近のことなんですが……。そんなすぐすぐ作れるようなもんなんですか?
「えーと、生命維持装置ってポンポン作れちゃう感じなんですか…?」
「いいえ、大分掛かるわよ。ただ、元々、夕音を何とか延命できないかって、そう思って作ってたから、大元はできてたのよ。それがあったから、キュヴァの延命も間に合ったってわけ」
そっか。師匠は師匠で、ジェネちゃんを助けられないかって模索していたわけだ。
………多分、ジェネちゃんの時には間に合わなかったんだろう。仮に間に合ったとして、永遠のものではないから、また新しい体を用意しない限りは、ジェネちゃんを生かすのはどの道難しかったんだろうけど。
ともかく、ジェネちゃんのおかげで、キュヴァちゃんの延命も間に合わせることができたわけだ。
「今日キュヴァちゃんに施したのは、その生命維持装置ってわけですね」
「まあね。とはいっても、一時的に生命を維持するだけのもので、恒久的なものではないわ。だから、キュヴァの余命が伸びたわけじゃないってことは理解しておくことね」
なるほど。各々、キュヴァちゃんを助けるために色々と模索してくれていたみたいだ。
「それで、ルーイは?」
「へ?」
「だから、ルーイは何かしたの?」
えーと……。
俺がやったのは………あ、そう!
「ラフにお願いしたよ。キュヴァちゃんを助けるために協力してくれ〜って」
「そう、それで?」
「オッケーって。何でも協力するよって言ってくれたよ」
逆に言えば、ラフに頼んだ、ぐらいしかしてないんだよねぇ……。思うと、俺の人脈って組織内でしか機能しないわけで。
組織の外に目を向けると、事情を知らないゆーちゃんとか、その辺りになっちゃうから、頼ろうにも頼れないっていうか……。
……駄目だな。キュヴァちゃんを救うって言ったのに、肝心の俺が何もできてないんじゃ、ただの口だけ野郎になってしまう。
本当にキュヴァちゃんを光堕ちさせるんなら、もっと俺が動かないと。
「……ごめん、全然動けてなかったです。……私がキュヴァちゃんを救うって、そう言ったのに……」
「別に私は気にしてないわよ。元より、ルーイに出来ることってしれてるしね」
うっ………。そう言われると何も言えない……。…うーん、やっぱ俺も頑張らないとな。口先だけじゃ駄目だ。何か行動しないと……。
「……そんなこと、ないよ」
「へ?」
「私は、ルーイが、私のことを救ってくれるって言ってくれて、嬉しかった。私とまた一緒にゲームしたいって、そう思ってくれてて、嬉しかった。…………私はもう、十分救われたよ。ルーイのおかげで、十分……」
キュヴァちゃん………。
そんな風に思ってくれてるなんて……。
頑張らなきゃいけない理由が増えた。キュヴァちゃんがそう思ってくれているのなら、俺はキュヴァちゃんのために、全力で光堕ち計画を実行しなければならない。………けど……。
「キュヴァちゃん、何かそのセリフ、死亡フラグ感醸し出てるから、もうちょっとなんかこう……ない?」
「え? そんなこと言う? 私は結構恥ずかしいセリフを吐いたつもりなんだけど、それを茶化すの? ………ルーイって、罪な女だね。あーあ、私の純情弄ばれた〜」
「い、いや、そうじゃなくてさ、ほら、あれだよあれ。えーとなんて言うの? ほら、なんか、キュヴァちゃん死んじゃやだな〜っていう、そういう気持ちのあらわれというかさ」
「言い訳無用〜。私の純情を弄んだ罪な女のレッテルは消えません。猛省しなはれ」
「く、そこを何とか…!」
「駄目」
「ぐぬぅ………」
………まあ、でも。
キュヴァちゃんの様子を見てると、元気そうで良かったなって思う。流石にさっきまで胸に穴あけられて瀕死だったからか、横になったまま動けてはないみたいだけど。
正直、血まみれのキュヴァちゃんを見た時は、こう、生きた心地がしなかったというか。
………はぁ、本当幹部様は心臓に悪いことをしてくる。トラウマかもしれない。割と本気で過呼吸になりかけたよ。てかなった。
「…………にしても、幹部様って結局何が目的なんだろう? キュヴァちゃんの中の“魔核”を取り出して、それでどうしようと……」
「………私の中にあった“魔核”には、ありとあらゆる魔法を模倣することができる『模倣の魔』が備わってる。多分オクトロアは、それを欲しがったんだと思うけど……」
そっか。キュヴァちゃんのコピーって、キュヴァちゃんそのものの力というよりかは、キュヴァちゃんの“魔核”に宿ってる力だったんだ。
ん? 待てよ。それじゃあ……。
「もしかして、今のキュヴァちゃんって……」
「……うん。戦えないよ。”魔核“が取られた時点で、私は何の魔法も行使することができない。ただの無力な少女に成り下がったから」
なるほどなぁ……。じゃあ、今は幹部様が『模倣の魔』を所持している状態ってわけか……。
にしても、『模倣の魔』が欲しいなら、俺とキュヴァちゃんに直接言えば良かった話なのに。別に、キュヴァちゃんも『模倣の魔』そのものにこだわりはなかっただろうし、むしろ、”魔核“のせいでクロマック君に命を握られてしまっていた訳なんだから、代わりの心臓さえ見つかれば、喜んで”魔核“を譲ってくれただろうに。
「オクトロア様にはオクトロア様の事情があるのかもね。組織の業務とか、ほとんどあの人がやってるみたいだし、業務の効率化のために、『模倣の魔』が欲しかった、とかかもしれないしね!」
「まあ、幹部様忙しいからねぇ。………けど、流石にキュヴァちゃんの命を脅かすのはやめて欲しかったかな。いくら幹部様といっても、やりすぎというか……」
「だねぇ。オクトロア様しごできだけど、やっぱり幹部が2名も欠けてる状況じゃ、手が足りないのかな?」
「触手はたくさんあるけどね〜」
「まあ、ちょっとかっこいいなって思うこともあるけどね、あの触手も」
俺と千夜ちゃんは、幹部様トークで盛り上がる。
キュヴァちゃんの命を狙った。そのことに関しては、怒りしか湧いてこないし、謝罪して欲しいなと思う。
けど、幹部様は幹部様で激務で苦労してるし、忙しい中頑張ってる部分もあるだろうから、その点はリスペクトしているっていうか……。
「………お二人とも、何の話をされているんですか……?」
そんな風に、2人でトークに花を咲かせていたところ、どうやら西織妖愛ちゃんが俺達の会話についてこれなかったようで、何の話をしているのかと尋ねてくる。
そっか、妖愛ちゃんは幹部様とそんなに面識がないから、詳しくないのかな?
「……触手の人型幹部、いるでしょ? その幹部様の話をしてたんだよ」
「妖愛ちゃんも今日会ったでしょ? キュヴァちゃんに酷いことした幹部だよ。……まあ、オクトロア様にも事情はあったと思うんだけどさ……」
「いえ、そういうことではなくて……」
妖愛ちゃんは、困惑した表情を俺たちに見せる。
……んまあ、大して知らん奴の話されても、困るよねぇ。半分身内トークみたいなもんだし……。
「…………妖愛、だっけ? ………事情は後で説明する。何でルーイが、彼に対してああなのか。それには理由があるから」
「………予想はしていたけれど、まあ、案の定ね」
キュヴァちゃんと師匠が、呆れたような目を俺達に向けてくる。
………へ? 何? なんかおかしなこと言った…?
「……オクトロアの話はおしまいよ。とにかく、今後の方針は、キュヴァの心臓を探し出すこと。いいわね?」
ん。そうだね。幹部様の話に花を咲かせている場合じゃなかった。
今大事なのは、キュヴァちゃんだ。キュヴァちゃんの光堕ちのために、俺は動かなくちゃいけないんだから。