TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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127模造少女は周囲に感謝する

 

 

 

あっという間だった。

ルーイが私を救うと決意して、それから。

 

私が、救われるまでは。

 

「お疲れ様キュヴァちゃん。どう? 違和感とかない?」

 

ルーイは、平気そうな顔で、何でもないことのように言う。

私を救うための実験、それは、ルーイにとって苦痛を伴うものだった。

 

近くで様子を見ていた私にも、その苦しみが伝わってきて。

私が救われる側のはずであるのにも関わらず、ルーイがあまりにも苦しい思いをしているものだから、止めに入ろうかと思ったくらいだった。

 

でも、きっとルーイは、そんな苦痛にも。

私を救うために、耐えてくれたのだろう。

 

私が救われるのであれば、多少の自己犠牲は厭わないと。

そう決意してくれていたのだろう。

 

だから私は。

 

「……うん。滅茶苦茶元気だよ。……ルーイのおかげ。本当に、ありがとう」

 

最大限の感謝を、彼女に伝える。

 

「うん、どういたしまして」

 

それにルーイは、なんてことないかのように、当たり前のように、答える。

……感謝しても、足りないくらいだ。

 

「……無事、成功したみたいですね。………私の妖怪が何の役にも立たなかったのは、ちょっぴり残念ですが……」

 

『だからやめとけって言ったんだ。はーあ。オレの言う通り、妖怪を実験に使わなきゃよかったのに。そしたら無駄な時間を使わずに済んだんだから』

 

「……おやつ抜き」

 

『は!? せめて期間を提示して!?』

 

「永久に」

 

『独裁政権断固反対!!』

 

……千夜の方……もう1人のルーイの友人である魔法少女とその妖精は、仲が良いらしい。妖精と人、手を取り合えてるのは、良い事なんだろうなと思う。

 

私も、ラフ君とはそうなりたかった。

 

「………ラフ君」

 

『……キュヴァちゃん、よかったね』

 

………ラフ君は一度、私とルーイを裏切った。だから、もう仲良くなれない。

そう思ってた。けど。

 

………ラフ君は、今はルーイのために行動しているように見える。

ジェネシスに頼まれたから、というわけでもないだろうし、何故ルーイに好意的なのか、さっぱりわからないけど。

 

………今からでも、きっと遅くないよね。

ラフ君と、また一緒に仲良くゲーム、しても良いよね。

 

この前だって、もう1人のルーイ、千夜の方と一緒に、ラフ君とは話してた。

だから、多分大丈夫。私は、もう一度。

 

ラフ君と友達になれる。

 

「ラフ君、また一緒にゲームしようね」

 

『え、う、うん……』

 

「………『支配の魔』の件は、もういいよ。……私、もう一度ラフ君と仲良くなりたいから」

 

『キュヴァちゃん………。ごめん……。ぼく、あの時は……。……プライドなんて、捨てるよ。ぼくに寄り添ってくれる人が、こんなにいるのなら。ぼくも、それ相応の態度を取らなくちゃね。………これから、よろしくね、キュヴァちゃん』

 

私はラフ君と握手を交わす。

良かった。もう一度、ラフ君とはゲーム仲間に戻れそうだ。

 

「………キュヴァちゃん、良かったね」

 

「うん。千夜も、ありがとう。私のために動いてくれて」

 

「どういたしまして!」

 

もう1人のルーイ、千夜にも、世話になった。彼女が友人の魔法少女を連れて来なければ、私は今頃オクトロアの触手によって、死んでいただろうから。

 

それに、彼女とのゲームは楽しい。ルーイの方より、彼女の方がゲームが上手だから。

 

………一応同一人物なのに、微妙に差がついているのは何故なのだろうか。

もしかしたら、ラフ君がゲームを教えているか、教えていないか、その差が大きいのかもしれない。

千夜の方は、ラフ君にゲームを教えてもらっているらしいから。

 

そして。

 

「ヒンナ、ありがとう」

 

「………やっぱり呼び捨てなのね」

 

「私も幹部だから」

 

幹部ヒンナ。彼女がいなければ、私の命を繋ぎ止めることはできなかっただろう。だって実際、あの時点での私はもう虫の息で、いつ死んでもおかしくないような状況だったから。

 

「……まあ、良かったわ。何ともなさそうで」

 

「おかげさまで。………あとは、ルーイだね」

 

「………ああ………そうね」

 

私は、ルーイに救われた。だから、その恩返しとして。

今度は私が、ルーイを救いたい。……この、組織から。

 

ヒンナも、きっとそれには賛成してくれるだろう。

少なくとも、ジェネシスはそのつもりだっただろうし、そのジェネシスから、ヒンナへ、意思は受け継がれているはずだから。

 

「………ルーイを救う方法、思いついた?」

 

「……まあね。要は、ルーイを魔法少女に押し付ければ良いのよ。向こうもルーイのこと、救いたがってるみたいだから」

 

「……まあ、私もそれで良いと思う。魔法少女にコンタクトを取った時も、その意思は変わってなさそうだったから。ルーイの受け入れ先として、魔法少女側は安泰だと思う。ただ、分身をどうするか。それだけが気がかり」

 

今、ルーイは千夜とルーイの……組織に拉致される前の記憶を持つ、拉致前ルーイと、拉致された後の記憶を持つ、拉致後ルーイの2人が存在してる。

 

最初は、2人を融合させ、元の存在に戻すのもありかと考えていたが……。

 

「あれ、もはや別人よね。まあ、根本的な性格は同じみたいだけど。……ここまで来ると、もはや双子だわ」

 

2人は、各々で人格を確立してしまっているように思える。だから、融合というのは、どちらの存在も残すようでいて、どちらの存在も消す選択になりかねない。

 

「……本当にどうしよう。分身魔法でケロッとしているのも意味がわからないし……」

 

「ま、光千夜の実家に2人ともぶち込めば良いんじゃない? 組織の実験の結果ですとか何とかいえば良いでしょ。戸籍とかの問題は私は知らないわ。専門外だし、親がなんとかするでしょ」

 

「ヒンナは相変わらず無責任だね。仕事も部下に丸投げしたりするし。何で幹部やれてるの? 親のコネ?」

 

「…ま、そんなところよ。……仕事、ねえ。まあ、やるべきことやればそれで良いんじゃないかしら」

 

少々煽ってみたけど、ヒンナはそれをさらりと交わしてみせる。

な、なんだと、これが大人の余裕というやつか……!! ヒンナの癖に……。

 

「……まあ、ルーイが分身魔法を使ったんだし、その辺は全部ルーイに任せようかな。分身魔法の件で悩んでも、それはルーイの責任だから」

 

「ま、そうね。分身問題は自分でどうにかしてもらうしかないわ。……私達が干渉しなくたって、死にはしないし。ルーイが魔法少女側へ寝返るプランも、もう用意してあるから」

 

……なんと。ルーイの光堕ち計画、まさかヒンナが担当だったの?

………いや、ルーイはルーイで、光堕ち計画を進めているはず。だって、ルーイの光堕ち癖は、ヒンナには打ち明けていないはずだから。

 

「そのわくわく寝返りプランの詳細求む」

 

「何で勝手にわくわくしてるのよ……。まあ、たいしたものではないわ。私とイコル、まあ、あとはイコルのとこの湿島を連れて、魔法少女を襲撃する」

 

「……何故?」

 

別に、魔法少女を呼びたいのなら怪人で十分だと思うけど。魔法少女に引き渡すだけなら、別に普通に魔法少女を呼んで、魔法少女にルーイを渡せば良いだけだ。ヒンナが懸念するのは、オクトロアの件だけで良いはず……。

 

「……何故って……。魔法少女を呼ぶため。それと、無条件で向こうが受け入れてくれるとも限らないしね。私達幹部が魔法少女を痛めつけて、ピンチになったところを、組織を裏切ったルーイがボコボコにして撃退する。そういうシナリオにするつもりよ」

 

……?

何でそんな工程を挟むのか、いまいちよくわからない。

やっぱり、ルーイがこっそりヒンナにも光堕ち癖を打ち明けたんだろうか。

 

……秘密を知っているのは私だけ、とは、とんだ思い上がりだったみたいだ。まあ、別に良いんだけど。

 

「……まあ、ルーイのためにはなるだろうけど。幹部3名撃退は、やらせを疑われるのでは?」

 

「ええ、そうね。やらせを疑われる危険性大よ。けど、この点もちゃんと考えてあるわ」

 

ほほう。

なら、見せてもらおうか。ポンコツヒンナの、ワクワク! ルーイ光堕ち大プランを!

 

私にプレゼンしてみせるのだ!

光堕ち射程圏内兼光堕ち先駆者たる私が、品定めをしてしんぜよう…。

 

「私が死ぬのよ」

 

…………………は……?

 

「……ヒンナ、どういう……?」

 

「私が死ねば、流石にやらせは疑われないわ。……湿島とイコルが死ぬのは、やり過ぎだからないとして……。とにかく、私が死ねば、ルーイは魔法少女達に疑われることもなく、魔法少女達の仲間入りができるし」

 

……何でもないことのように、言う。

私を助けた、ルーイのように。

 

けど、流石のルーイも、命までは投げ出さないはずだ。

いや、わからないけど。

 

「……ヒンナ、別に、他の方法でもよくない? わざわざ自己犠牲を行う必要は……」

 

「より確実な方が良いわ。オクトロアの件があるから、それが片付いてからにはなるでしょうけどね」

 

何も、考えていないのだろうか。

だって、ルーイは、ヒンナに対して、それなりに好感を持っているはずだ。

 

そんなヒンナを、ルーイ自らが仕留める。

そんなの、誰も望んでない。ルーイだって、したくないだろう。なのに……。

 

いや、まさか……。

 

「……ヒンナ。どうして、死のうとしてるの? まさか、ジェネシスに会いに行こうとでもしてるの?」

 

「……………ああ、それはそうよ。私が死ねば、ルーイは魔法少女側に寝返れるし、私は夕音に会いに行ける。……どう? 私的には、良い計画だと思うんだけど」

 

…………ルーイに、今のヒンナの状態を、どう説明すれば良いのだろう。

 

私は、気付いてしまった。ヒンナは、光堕ち計画を考えていたわけじゃない。

多分、ジェネシスが死んでから、ずっと。

 

ヒンナは、希死念慮を持ち続けてる。

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