TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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128有能幹部はアフターフォローを欠かさない

 

 

 

キュヴァちゃんを救い、そのまま師匠のアジトに滞在しようかな、なんて、そんな風に考えていた、その時。

 

何やら、師匠のアジトに訪問者がやってきたようで……。

 

師匠とキュヴァちゃんの方を伺うも、何か会話を交わしているので、俺は2人をそっとしておきつつ、訪問者の様子を伺う。

 

さて、来訪者の正体は……。

 

「あ、幹部様」

 

「こんにちはルーイさん。やはりここにいましたか」

 

幹部オクトロアこと、幹部様だった。

……そっか、そういえば俺、幹部様のアジト(ピュア? そんな奴は知らん)で面倒見てもらうって会議で決定してたんだった。

 

じゃあ、これはお迎えってことなのかな?

 

うん、それなら、着いて行こうか。実際、組織的にはその方が良いんだろうし。

あ、でもその前に……。

 

「幹部様、キュヴァちゃんの件、あれは流石に謝ってもらえませんか?」

 

「……ほう」

 

「“魔核”が欲しいのなら、素直にそう言ってくれれば良かったじゃないですか。………別に、キュヴァちゃんだって、心臓の代わりさえ見つけてくれれば、“魔核”もすぐ譲ってくれていたと思うし………」

 

「………その通りですね。そこは私のミスです。申し訳ありませんでした、ルーイさん。どうしても焦っていたものでして……」

 

まあ……幹部様多忙だもんね。仕事たくさん押し付けられたら、そりゃ心の余裕とか、色々なくなってくるだろうし。

仕方ないかぁ。

 

………さて、キュヴァちゃんの方に謝らせに行かせ………って。

 

ダメダメ。まだただ単に幹部様がキュヴァちゃんを殺したかったって可能性も捨て切れないんだから、キュヴァちゃんが生きていることを幹部様に知られると困る。

 

「幹部様、それじゃ帰りますか? アジトに」

 

「いえ、その前に気になることがあるので」

 

「え、ちょ! 幹部様!!」

 

幹部様はそのままズカズカと、師匠のアジトの中に入っていく。俺はそんな幹部様を止めようとするが……。

 

「お邪魔しますぅ……」

 

「あ? ルーイか。邪魔だ。どけ」

 

「あ、イグニス様……」

 

ふわふわした少女と、幹部イグニスに押し切られる形で、アジトへの侵入を認めてしまう。

そのまま3名は、師匠とキュヴァちゃんが話をしている場所へと移動して行って……。

 

「ヒンナさん、突然の訪問失礼します。実は………」

 

「ハッ! 死ね、クソガキ…!!」

 

幹部様が師匠に話しかけた、その瞬間。

幹部イグニスが、火の弾をキュヴァちゃんに向かって投げつけて……。

 

「っ!? 『雲外鏡』!!」

 

咄嗟に、妖愛ちゃんが『雲外鏡』に火の弾を吸い込ませることで、キュヴァちゃんにイグニスの攻撃が届くのを防いでくれた。

 

……そうだ。今、キュヴァちゃんはただの普通の少女。

どんなに軽い魔法でも、当たれば致命傷になり得る……。

 

やらせるわけにはいかない。キュヴァちゃんを殺すことが目的なら、たとえ幹部様相手でも……!

 

「イグニスさん、静まってください。今日、私達が何故この場にやってきたのか。その目的をお忘れですか?」

 

「あ……? なに言ってンだ? 裏切り者を殺す。それが目的だろォ? 大体、ヒンナのアジトに魔法少女がいることが確定したんだ。裏切りは明白じゃねェのか?」

 

「いいえ、裏切りは明白、とは言えませんね。でしょう? ヒンナさん」

 

幹部様は、どうやらキュヴァちゃんを殺すことが目的ではないみたいだ。じゃあ、一体何をしに……?

 

「幹部様、あの……」

 

「……オクトロア、あんたのしたいことが、全く理解できないわ。私に説明を求めてるようだけど、何を回答して欲しいわけ?」

 

「……仕方ありませんね。相変わらずヒンナさんはコミュニケーションが取りづらくて困ります」

 

「んなっ……」

 

「ミステリアスだとか言って、訳のわからない専門用語を使い、解読に時間を要する話し方をされていた時と比べれば、幾分かマシですが……」

 

また師匠がディスられてる…。

まあ、師匠は良くも悪くもミステリアス一筋だからね。

師匠のミステリアス学を専攻するか、しないか。これによって、師匠への見方は180度変わると言っても過言ではない。

 

師匠はポンコツ。これは事実。だけれど、師匠はミステリアスに情熱を持って接している。これもまた、事実なのだから。

 

って、そんな話はどうでもよくて。

 

そもそも、どうして幹部様はこのアジトに来たのか。師匠に、何を言わせたかったのか……。

 

「……仕方ありませんね。私から説明しましょうか。………まず、この場にいる魔法少女、エンシェントカラミティは、我々の敵ではありません」

 

「はぁ? 何言ってンだ? オレはこいつと何度も戦ってきた。だから知ってるが、間違いなく組織の敵だ」

 

「ええ、そうですね、ですが、ジェネシス……幹部マインドライフが、何を得意としていたか、お忘れで?」

 

「あン? お前まさか、エンシェントが洗脳されたとでも……」

 

「そのまさか、ですよ。ヒンナさんは、マインドライフが残していた洗脳装置を使用し、エンシェントカラミティを洗脳して手駒に加えたのですよ。ですから、彼女がここにいるのは、何らおかしいことではありません」

 

妖愛ちゃん、洗脳されとったんか……。ん? いや、おかしくない? 何で師匠が洗脳なんて………。

 

俺はもう1人の俺こと千夜ちゃんの方へアイコンタクトを送る。

 

“妖愛ちゃん洗脳されてるのー?”

 

“絶対ないよ。私が協力してってお願いしただけだもん。何なら、ヒンナさんと妖愛ちゃん、会ったの夕音叔母さんが亡くなったあの時くらいだったし”

 

と、そんな感じの返答が来ましたよと。

ん? しゃべってるのかって? 違う違う。アイコンタクトだよアイコンタクト。不思議と、千夜ちゃんの言ってること、言わんとしてることって何となく、雰囲気だけど伝わってくるんだよね。

 

俺はその雰囲気を和訳して、自身の脳内に言葉として落とし込んでるってだけ。まあ、一言一句千夜ちゃんがああ考えてる、ってわけではないけど、意訳はできてると思ってもらって結構だぜ。

 

……にしても、妖愛ちゃんが洗脳されていないっていうなら、幹部様は尚更どうして、エンシェントカラミティが洗脳されている、なんて嘘を……。

 

…………もしかして。

 

「ちょっとオクトロア、あんた何言って……!」

 

「ヒンナさん、証拠は残っていますよ。洗脳装置を無断で、個人的に使用したこと、これがバレては困ると感じ、隠していたのでしょう? 安心してください。この程度のことで罰は科しません。この程度のことでヒンナさんを罰していたら、キリがないですからね」

 

「だから、私は……」

 

「許しますよヒンナさん。言い訳は無用です。いいですね?」

 

頭に?マークを浮かべながら話す師匠に対して、幹部様は圧をかけ、黙らせる。

 

うん、そうだ、やっぱり……。

 

幹部様は、俺達のことを庇おうとしている。

より厳密に言えば。

 

裏切り者であると、そう思われないように。

イグニスや隣にいる少女を、騙していると、そういうことなんじゃないだろうか?

 

……そっか。幹部様、やっぱり俺を守るために……。

 

「……さて、本題に入りましょう。今回訪れたのは他でもない。キュヴァさん、貴方に謝罪をするためです」

 

「……私に、謝罪…?」

 

言いながら、幹部様はその場に座り込み、見事なまでの土下座を披露する。

 

「申し訳ございませんでした。“真核”欲しさに貴方の命を危険に晒し、ルーイさんやヒンナさんにも、悪いことをしてしまいました。……危うく私は、同僚であるキュヴァさんの命を奪ってしまうところでした。……キュヴァさんは勤勉に幹部としての務めを果たしていたというのにも関わらず……。私の()()()で、貴方を裏切り者だと冤罪をかけてしまうことになったこと、深くお詫び致します」

 

物腰丁寧で、仕事をそつなくこなす。

誰から見てもストイックで、かっこいい幹部様が……。

 

頭を地べたに擦り付けて、キュヴァちゃんに、心の奥底から、謝罪をしている。

 

驚きだった。幹部様に、そんな………そんなことができるなんて。

恥も、何もかも捨てて。

 

誠心誠意謝罪をするなんて……。

 

………やっぱり、幹部様は凄い。

勘違いだったって、それを素直に認めて、自分のミスも包み隠さず話す。

 

……うむ、こんな理想の大人の体現者がいるとは。実際、結構隠蔽したり、他責したりする奴いるだろうからね……。

 

「な……ンだよ……それ……」

 

「何で私達が謝るんですかぁ? 裏切り者っていうのが勘違いっていうのはいいんですけどぉ……でも、私達はちゃんと、組織のために裏切り者を排除しようと働いていただけでぇ、何にも悪くないじゃ…」

 

「メェナさん、謝罪しなさい」

 

「ひぇ………」

 

「貴方はキュヴァさんに何をしましたか? 彼女の身につけていたヘアピンを破壊し

、罵倒し………。いくら何でも、あそこまでする必要はなかったでしょう。それに、結果的に彼女は裏切り者ではなかったわけですから。冤罪をかけてしまった我々には、謝罪を行う義務があります」

 

「おい、何言ってンだ! キュヴァは確かに裏切ろうとしていた! そりゃ事実だろうが!!!」

 

「違いますよ。あれはクロマック様からの指示です。魔法少女へ協力するフリをし、彼女達の素性を探るのだ、と。しかし、普通にやってもバレてしまう。そこでキュヴァさんは、リアリティを演出するために、あえて私達に裏切り者に見えるように振るまったのですから」

 

「な……」

 

「事実ですよ。私は直接クロマック様と連絡を取りましたからね」

 

「………チッ。癪だが仕方ねェ」

 

幹部様に言われたからか。

イグニスとふわふわ少女は、それぞれ土下座をして、キュヴァちゃんに謝罪をする。

 

「す、すみませんでしたぁ……許してくださいぃ……私命令されてただけなんですぅ……逆らえなくてぇ………私の地位低いからってぇ、好き放題こき使われててぇ、辛くてぇ……」

 

「メェナさん?」

 

「ひっ……! ち、違います! 私が悪いですぅ! ごめんなさいぃ……」

 

「………気に食わねェからって、裏切り者だって決めつけて……悪かった」

 

「………え……?」

 

謝罪をされた当の本人はというと……。

状況に納得いってなくて、困惑してるって感じだ。

 

まあ、そりゃそうだよな。いきなりこんなこと言われたら、困惑しかないよな。

 

……けどまあ、少なくとも、幹部様はキュヴァちゃんを殺したいとか、そういうわけではないみたいだ。

 

「さて、それでは私達はこれで失礼します。キュヴァさん、本当に申し訳ございませんでした。……今後、貴方の身柄は自由となります。好きなように生きていただいて結構ですよ。そして……」

 

幹部様は、俺の元まで歩いてきて、向き合う。

 

「ルーイさん、私には、貴方に合わせる顔がありません。………こんな私に、ルーイさんの面倒を見る資格など、ないのでしょう。ですから……。しばらくは、ヒンナさんのアジトにいてください。私は少し、頭を冷やすことにします」

 

心底申し訳なさそうに、幹部様は言う。

……やっぱり、幹部様には幹部様の事情があったんだ。

 

師匠、あの時呆れた顔してましたけど、やっぱり幹部様ってそんなに悪い人じゃないんじゃないでしょうかね?

とにかく、幹部様は俺に一言告げ、そのまま他の2人を連れてアジトから去っていった。

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