「お姉ちゃん………」
まさか、シャイニングシンガーの正体が、お姉ちゃんだったなんて……。
うっっそでしょ? 俺最初にお姉ちゃん泣かせて……。
あ、あ、あ! そういうこと?
お姉ちゃん、最初に出会った時から俺が光千夜ってわかってて、だから……。
だから泣いてたんだ! 俺が完全に悪堕ちしちゃってたから、それで……。
う、うそぉぉぉ! それ知ってたら! あんなにいじめなかったのに……!!
うわああああああああああ!!!!!!ごめんお姉ちゃん!!!!
そんなつもりじゃなかったの! お姉ちゃんいじめたいとか、そういうのじゃなかったのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!
「……千夜、私が、分かるの?」
「分かる、よ……。お姉ちゃんが、シャイニングシンガーだったんだね……。えと、えと………」
うわうわうわ!
俺はお姉ちゃんの目の前で、今まで何を……。
やばい、今更ながら恥ずかしくなってきた。
俺、お姉ちゃんの前で色々……。
う、うわあああああああああああああ!!!
何やってんだバカヤローーーーーーーー!!!!!!!
「……千夜、だったら、お願い。帰ってきて。……もう、これ以上、貴方が『ワ・ルーイ』で、悪の魔法少女として働かされるなんて、耐えられないの。………もし、貴方にまだ、私を姉だと思う心が残ってるなら……」
劇的な光堕ちがしたかった。けど、お姉ちゃんは縋るような目線で、俺に訴えかけてくる。
………う、ここまで来たら、腹を括るしかない。
お姉ちゃんの存在を知って、光堕ち。そういう路線に持っていくしかない。
「……お姉ちゃん。お姉ちゃんの姿を見たら…………。不思議だね。私の中にあった、悪の心が、なくなっていく気がする……!」
悪の心ってなんだ? って感じだけど、こういうのは雰囲気だ。
あーあー、悪の心がなくなってくぞ〜。お姉ちゃんパワーで浄化されていってるぞ〜。
「………千夜。………3年も、待ってた。ずっと、貴方のこと……」
「お姉ちゃん………ごめん、私………」
「………もしかして、姉の姿を見て、『ワ・ルーイ』の洗脳が……?」
「……いけるかも。このまま押し切れば、ブラックルーイを……光千夜を……」
よし! なんか知らんが良い感じの雰囲気だぞ!
このまま良い感じに光堕ちして、お姉ちゃんとハグしてハッピーエンドだ!
これはこれでエモいだろ!
感動の姉妹の再会! からの光堕ち!
うん! 十分劇的じゃないか? 感動的な光堕ち劇なんじゃないか!
結構俺の光堕ち欲も、満たせる気が…!!
「……ああ、とうとう、ですか」
幹部様の声が、俺の脳内に響く。
……あれ? 脳内? なんで、頭の中から幹部様の声が……。
「ブラックルーイ、いえ、光千夜さん。貴方はずっと、この瞬間を、“光堕ち”できる瞬間を待っていたんでしょうが………。そうはさせません。貴方には、ずっと………」
頭が………痛い……。なに、これ………。急に、頭が……!!
この感覚……! 前にお姉ちゃんの名前を出された時に、頭痛がした時と全く同じ……!
な………ん……で……。
「貴方に、“光堕ち”はできないんですよ」
「あ“……! ぐ………ぅ”……!」
「千夜……? どうしたの!? 千夜!!!」
痛い……痛い……頭が……体が、いた……い……!
「あ……ぐ………い……や………」
「千夜!!」
お姉ちゃんが、俺の元まで駆けつけようとしてくる。
走って、俺に……。
「!? お姉ちゃん……! ダメ!!」
「へ…?」
俺の元に駆け寄ろうとしたお姉ちゃんを、
幹部様のものではない。この触手は…。
「う……そ……千夜……」
俺は『ブラッドテンタクル』という魔法を使わない限り、触手なんて扱えない………はずだった。なのに今、俺の体からは……全身から、触手が生えていて……。
「なんで……千夜ちゃんの体から、あんなものが………」
キューティもホワイトも、俺の体を見て、驚愕の目を向けて、呆然としている。
皆が驚く中、幹部
「……さて、ルーイさん。このまま、魔法少女達を蹴散らしましょうか」
「……へ…?」
「アジトを探り当て、私達『ワ・ルーイ』をここまで追い詰めた彼女達のことです。いくら負のエネルギーを集めるためとはいえ、ここまで来れば彼女達を生かしておくのは危険でしょう。なら、危険の目は摘まないといけません。わかりますね?」
「待って……。幹部様……ダメ……! それ、は……」
「抵抗しても良いですよ。貴方の体に植え付けられた触手は、貴方の意志と関係なく、魔法少女達を襲います。それが例え、実の姉であろうと」
「幹部様……! やめ……て! お願い! 幹部様!!!」
や、やっばい! 駄目だ! このままじゃ俺がお姉ちゃんを殺しちゃう!
それだけは避けなきゃ!
「気づいていますか? 未だに私のことを幹部様、と呼んでいることに。………貴方にとって、私はまだ様付けしても良いだけの存在だということです。違和感を覚えませんでしたか? ルーイさんは、やけに私に対して好意的な感情を持っていました。キュヴァさんを殺されようと、許容しようとしてしまうくらいには」
そう、だ。
確かに、俺はずっと幹部様に対して、疑問を抱かず、不快な感情を覚えることもなくて……。
………待て、俺はいつから、幹部様のことを幹部様って呼んでた?
ピュアもイコルもイグニスも、脳内じゃ呼び捨てで呼んでる。
なのに、幹部様だけは、俺はずっと……。
そうだ、最初は、幹部様のことを、幹部君って呼んでた時代もあったんだ。
けど、いつの間にか、ずっと幹部様のことを、様付けで呼んで……。
気付かなかった。俺はずっと、幹部様のことを……。
「オクトロア! 千夜ちゃんに……! 千夜ちゃんに何をしたの!?」
「脳内に私の触手を埋め込みました。そして………まあ簡単に言えば洗脳を施したんですよ。私に逆らえないように、私に疑問を抱かないように。私に、完全に支配されるように」
「あ………あはは………」
俺はずっと、幹部様の手のひらの上で転がされてたってことか……。
ずっとずっと、幹部様の触手は、俺の脳内に施されていて……。
「ルーイさん」
「幹部様……」
「何故ピンチに陥った時、私がすぐに助けに入ることができたのか。疑問に思いませんでしたか? まあ、そこで気付かなかったのは仕方ないでしょう。しかし、洗脳装置が効かないこと、疑問に思いませんでしたか? 何故か、貴方は『ワ・ルーイ』の洗脳を受けなかった。………それは、私がルーイさんが洗脳されるのを阻止していたからです」
幹部様は俺にだけ聞こえるように、一方的に語る。
ホワイトにボコボコにされて、ピンチに陥ったあの時、確かに幹部様が助けに入ってくるのはやけに早くて……。もしかして、触手を埋め込んでいたから、俺がピンチに陥っていることにもすぐに気付けたのか……?
俺が洗脳されなかったのは、前世の記憶があるからじゃなくて……。
ずっと、幹部様が阻止していたからで……。あれ? じゃあ……。
「か、幹部様が私のことを守ってくれてたんですね……」
「……ふむ。今のが証拠ですね。ルーイさん、貴方は私に洗脳され、私のことを好意的に解釈することしかできなくなっています。私が洗脳装置の効果を無効化していたのは、別にルーイさんのためではないですよ」
「へ……?」
い、いや、ツンデレなんだから〜! ほ、本当は俺のためを思って、洗脳を阻止してくれてたんでしょ? それくらいわかるってば〜。
「ルーイさんを私の支配下に置くためです。他の幹部に対しても好意的だと、私がルーイさんを手元に置く上で困る。そのために、洗脳装置の効果を無効化していたんですよ」
光千夜ゥ! 何故君が、洗脳装置の効果を受けつけなかったのか。
何故君が、幹部様に好意的なのか!
姉の名前を聞いて頭が痛むのかぁ!!
その理由はただ一つ。
世界で初めて、幹部様の触手を植え付けられた魔法少女だからだぁ!!
嘘だ………、僕を騙そうとしている……!
……なんちて。
お前意外と余裕あるな? とか言ってはいけない。
にしても、まじか……。
俺、本当にずっと幹部様の手のひらの上で踊らされてたんだな……。
「まあ、つまりそういうことですよ。ルーイさん、それでは、魔法少女を全滅させてください」
「ま、待って幹部様! 話せばわかる! 一旦考え直そ? ね、ねえ幹部様〜!」
あーやばいやばい! 俺の触手が暴れ回ってる! 魔法少女達蹂躙しようとしてる!
と、止まれぇい! 魔法少女に触手なんて向けちゃならん! 駄目だ! そんなことしちゃめっ!
「お姉ちゃん、逃げてっ!!」
「千夜……!」
今のお姉ちゃんは生身。そんな状態で俺の触手に攻撃されたら……!
まずいまずいまずい! 止まれ止まれ止まれ!!
「無駄ですよ。ルーイさん、貴方はもっと早く気づくべきでした。私に植え付けられた触手を、放置し過ぎたんですよ。もう、貴方にその触手を止めることはできないのですから」
「『インビジブルガンパレード』!!」
「『リジェクトクロー』!!」
ライオネルが、不可視の銃弾で俺の触手を次々と打ち抜き、スターチスが俺の触手を切り裂く。が……。
「キリがないわね……」
「こんなものを、ずっと脳に植え付けられていたなんて………」
ライオネルとスターチスは、俺の現状に顔を曇らせる。
うん、わかるよ。俺も今結構ショックだもん。
うえーん、脳みそに触手とか植え付けられてるよー、ぴえん。
ゴキ◯リとかよりはマシだなとか、最早そういう思考にすら至ってます。うん、そういう風にポジティブに考えてないとやってけないからさぁ……。
はあ………どうしよ。
間話について
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イコルの話(重め。暗め)
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湿島の話(重め。暗め)
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キュヴァちゃんのお話とか(未定)
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間話登場のギャル、南根柚月の話
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いらない。必要ない。(or本編優先)
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その他