オクトロア様のアジトに魔法少女達が襲撃に入ったらしく、もう1人の私、愛結ちゃんが加勢に向かったらしい……けど。
「こんなにいる?」
不在の間、幹部イグニスがキュヴァちゃんを襲わないとも限らない。ということで、護衛を置いておきたい、という話になったんだけど。
紹介しよう!
エントリーナンバー1 ヒンナさん!
組織の幹部で、現状実質的な私達の保護者!
エントリーナンバー2、イコル!
組織の幹部で、ヒンナさんに恋心を抱いてる可愛げのある男の子!
エントリーナンバー3! 光千夜!
組織唯一の魔法少女で、貴重な戦力とオクトロア様からお墨付きをいただいているスーパーハイスペック美少女!
エントリーナンバー4! 湿島さん!
イコルの部下で、執事的な人! 実力知らないけど、なんか結構前に助けてもらったし、強そう!
うん、こんなにいる?
イグニス相手にするための戦力としては、過剰じゃない?
戦えはしないけど、ラフ君もいるし。
私、どっちかというともう1人の私の方が心配なんだけど……。
だって、オクトロア様と私だけでしょ? 向こうにいるの。
大丈夫、なのかなぁ……?
まあ、ヒンナさんが言うには、もう1人の私の方に腕輪型転移魔法機を持たせてるから大丈夫、って話らしいけど……。
「………暇だね」
「……だねぇ。ゲームは?」
「………する?」
「うん。だって暇でしょ?」
「だねぇ。イグニスとかどうせ来ないでしょ。オクトロアも私に謝ってきたし、それで襲ってきたら本当にバカだよ。命令も聞けない能無し。サボってた私より無能だね。もう目も当てられない」
「わお、口悪いねぇキュヴァちゃん」
「向こうも私にこんな感じだからお互い様だよ」
……余裕綽々、なように見えるけど、私にはわかる。
キュヴァちゃんの額に、汗が浮かんでいることくらい。
本当は、不安なんだよね。
イグニスが、襲ってくるかもしれない。その不安は、確かにキュヴァちゃんの中にあって……。
「………キュヴァちゃん」
「ん?」
「大丈夫だよ。私がキュヴァちゃんのこと、守るからさ」
「……ま、まあ……別にそんなに気にしてないけど………。あ、ありがとう」
不安に感じてること、悟られたくないんだろう。キュヴァちゃんは、気にしてないよ、というスタンスを貫こうとしているみたいだ。それでも、私の気持ちを汲み取ったのか、感謝の言葉を述べてくれた。
大丈夫。私と、愛結ちゃんで救った子だもん。
絶対に守り抜く。絶対に……。
「……へぇ、随分大所帯じゃねェか。なんでそんなに固まってるンだ?」
………来た……。
「イグニス、あんた本当に来たのね……」
「……へん。悪ぃかよ。キュヴァはもう組織の者じゃねェんだ。確かにオクトロアはキュヴァに謝罪し、自由の身だと言った。が、もう組織の人間じゃねェなら、オレがいくらキュヴァに手を出そうと関係ねェよなァ?」
なるほど。そう来たか。
確かに、裏切りの件は許された。が、キュヴァちゃんはもはや『ワ・ルーイ』に所属する者ではない。正真正銘ただの一般人の扱い。なら、仮にイグニスがキュヴァちゃんを殺そうと、お咎めはなしというわけだ。
イグニスめ、オクトロア様は多分そんなつもりでキュヴァちゃんに自由を与えたわけじゃないだろうに、上手いこと穴を突いて、そうまでしてキュヴァちゃんを殺したいんだ。
………けど、させない。キュヴァちゃんは、殺させない。
「戦況は不利だよ。イグニス様。キュヴァちゃんのことが気に食わないとは思う。けど、諦めた方がいいんじゃないかな?」
「………あァ、見てェだな。けど、本当に守り切れるのか? そりゃ、戦闘だけで言えばそっちの方が有利だろうよ。だがな、守りながら戦うっていうのは、想像以上に本来の実力を発揮しにくいんだぜ?」
………なるほど。確かにそれは一理ある。
けど、だからこそ。
そのための過剰戦力なんだと思う。
そうか、だからだ。
戦力多過ぎじゃないと思ったけど、キュヴァちゃんを確実に守ろうと思ったら、確かに過剰すぎるくらいがちょうど良いのかもしれない。
「………千夜、あんたはキュヴァについてなさい。イグニスの相手は、私とイコルで……」
うん。確かにそれがいい。イグニスの相手はヒンナさんとイコルでやって、湿島さんと私でキュヴァちゃんを……。
そう、思っていたのだけど……。
「……悪いな、ヒンナ。僕は………イグニスの側につく」
「…………は?」
「ヒンナ様、申し訳ございません。そういうことですので」
………どういう、こと……?
何故か、イコルと湿島さんが、イグニスの側について………。
なん、で……?
イコルは、ヒンナさんのことが好きなんじゃ……どうして裏切って……。
「……! 千夜! キュヴァを連れて逃げっ……」
「させるかよ!!」
逃げようとした私達に、イグニスが立ちはだかる。
………っ、どうしよう……!
「……どうして………キュヴァちゃんのこと、放っておいてくれたっていいじゃないですか!! なんでそんなに……執拗に命を狙うんですか? もうキュヴァちゃんは“魔核”を持ってないです! ただ、普通の女の子として暮らしたいだけなんです! どうして、どうしてそれを邪魔しようとするんですか……? それくらい、許してあげたっていいじゃないですか! なんで、気に食わないからって、そこまで……!」
「こっちにはこっちの事情があンだよ。悪く思うな」
キュヴァちゃんは、ようやく自由を手に入れたっていうのに……。どうしてそれの邪魔をするのか、理解できない…。
本当に、腐ってる! おかしいよ、そんなの。
………絶対にやらせない!
キュヴァちゃんのことは、私が守る。
守り抜いて、見せ……。
「……あ……れ……?」
「あン?」
守り抜くと……そう思っていた。
なのに、私の体は硬直して、動かなくて……。
「どう、なって……」
「千夜……?」
頭が……痛い……。
なに……これ……。どうして、私の頭が痛んで……。
おかしい……体が、思うように動かない………。
どう、なって………。
「マジか………」
「………嘘、でしょ……。オクトロアの奴、ここまで仕込んで……」
私の視界に、複数本の触手が映り込む。
それは、オクトロア様が持っていたそれと酷似していて……。
「なに……これ……」
オクトロア様は、この場にいない。じゃあ、この触手は、一体誰の……?
ヒンナさん……は違う。
イコルでもない。
湿島さんでも、イグニスでも。
ましてやキュヴァちゃんですらない。
じゃあ、これは……この触手は……。
「私……の……?」
私の、触手。
私の体から、直接生えた……。
どうして?
私は、『ブラッドテンタクル』を使った記憶はない。
魔法の暴走…?
こんなこと、今までなかった。どうして今頃……。
それに、この触手……制御できない。
私の意志と関係なく動いてる。なんで……どうなってるのこれ?
「千夜……?」
キュヴァちゃんが、困惑したような視線を私に向けてくる。
私も困惑だよ。どうして急にこんなことに……。
混乱している私の気持ちも知らずに、触手は好き勝手に動き出す。
当然のように、触手は私の意思を無視していて……。
ふと、触手の内の一本が、キュヴァちゃんの方を向いていることに気づく。
それは、明らかに、獲物を定めるかのように、仕留めるために、矛を向けているようにしか見えなくて……。
「っ! 駄目!」
私は静止する。が、触手は止まらない。
ただ獲物を仕留めるために、一直線に向かっていく。
………無防備な、キュヴァちゃんに向かって。
「嘘でしょ!?」
ヒンナさんが止めに入ろうとする。が、間に合わない。イコルが邪魔して、ヒンナさんがこちらに来れそうにない……。
「ラフ君!!!!!!」
私はラフ君に助けを呼びかける。触手からキュヴァちゃんを守ってほしいと、そうお願いする。が……。
「本当に、申し訳ありません」
『放せ! “支配の魔”!』
「効きませんよ」
湿島さんに捕えられて、身動きが取れなくなっていた。
触手を止められるものは、もはや誰もいない。
キュヴァちゃんも、魔法がなければただの人。それどころか、ゲームばかりしているからか、体は鈍っている。
逃げられるわけがない。
「駄目!!! 駄目駄目駄目駄目!!!!!!!!」
止められない。
駄目だ、せっかく救ったのに。私と愛結ちゃんで、救い出したのに……。なのに、私が……私自身が、キュヴァちゃんをなんて。
やだ! 駄目! 止まって!! お願いだから!! 誰でもいい! 誰か!!
「『糊付け』」
「あ……」
私の触手が、キュヴァちゃんの体を貫こうとした、その瞬間。
私の目の前に、1人の少女が現れる。
彼女は……。
「………遊びに参っただけですのに、どうにもきな臭い状況になってますね……。さて、色々と把握できていないことも多いのですが……」
「テメェ………」
「私の友人に、何をしたんですか? …………返答次第では、生きて帰れると思わない方が良いですよ、幹部イグニス」
『よし、いいぞ! そのまま“ワ・ルーイ”を滅ぼしちまえ!!』
「エンシェントカラミティ……!! どうしてここに……!」
「遊びに来ただけ……というのは少々締まりがないですね。そうですね………」
彼女は……。彼女の名は……。
「友人を助けるため、です。………友情ほど尊いものはありませんから」
西織妖愛。
私、光千夜の友人だ。
【悲報】イグニスさん、謂れのない罪着せられがち
間話について
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イコルの話(重め。暗め)
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湿島の話(重め。暗め)
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キュヴァちゃんのお話とか(未定)
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間話登場のギャル、南根柚月の話
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いらない。必要ない。(or本編優先)
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その他