【本編完結】TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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アルカナの光堕ちで浄化されて闇堕ちをかけなくなったので続きません。これが実質ラストエピローグ。

プロローグという名のエピローグです。

冗談抜きにここまでで完結となります。


それはそれとしてキュアアルカナが素敵すぎて浄化されて、今は仏の心を持っています。穏やかだ。


Re:TS魔法少女は光堕ちしたい
プロローグ:ネロ=ジェネシスルーイ


 

 

私は、適当に買ったサンドイッチ片手に、喧騒に包まれる教室で過ごす。

特別仲の良い友達なんていない。余所者が、既に出来上がっているコミュニティに入り込む余地なんてないのだから。

といっても、私は周囲の人間関係には恵まれているといえるだろう。裏の顔は知らないが、少なくとも表面上は愛想よく、親しく接してくれる子ばかりなのだから。

 

まあ、とはいっても、深い仲になることはない。

私自身、それを望んでいるわけでもないし、相手も相手で、すでに出来上がった交友関係で満足しているだろうから。

 

だから、ほどほどに愛想よく振舞って、ほどほどに交流する。それがお互いのためだ。

 

なんて、きっとそれは言い聞かせているだけに過ぎないのかもしれないけど。

 

「はぁ……。今日テンション低めだな。ちょっと外散歩しよ」

 

私はコンビニで買ったサンドイッチを口に放り込み、胃に流し込む。

そのまま、教室から出ていこうとしたところ、数名のクラスメイトにどこいくのー?なんて尋ねられたが、素直にちょっと散歩、と答えておいた。クラスメイト達は、さして私の行動に興味がなかったのか、ふーんと適当な声を漏らしながら、じゃあねーと、私とすれ違うようにして教室へと入り込む。まあ、私に話しかけたのは社交辞令みたいなものなのだろう。

 

相手の態度に、私も特に気にすることはない。お互いそういう関係であることは理解しているし、その関係性に不満を感じてもいない。

 

「さて、どこに行こうか」

 

別に、行きたい場所があるわけではない。ただ、今日はちょっと思考が後ろ向きな気がしたから、気分転換をした方が良いな、と思っただけなのだから。

 

『回転寿司でも行かないかにゃー? サンドイッチだけじゃ足りないにゃー』

 

「ニャー太郎、回転寿司はこの前食べに行ったから、もういいでしょ」

『サンドイッチ1個じゃ足りないにゃー! 寿司をたくさん食べて、エネルギーをたくさん補給しなきゃいけないにゃー!』

 

「私はサンドイッチ1個で十分お腹いっぱいだから。それに、ニャー太郎は自分が回転寿司を食べたいだけでしょ」

 

空中にふよふよと浮くというファンタジーな存在でありながら、回転寿司なんて妙に現実的な話をしているこの猫の名前は、ニャー太郎。どうにも、妖精というらしく、人間の幸福のために動いているんだとか。

 

そして、ニャー太郎は、私に一つの力を与えてくれた。それは。

 

「ところで。今日は”悪の組織”は動いていないの?」

 

『んーにゃ。少なくともオイラが観測できる範囲での悪の組織の活動はないにゃー。にしてもリョウは、そんなに魔法少女に変身したいのかにゃー?』

 

魔法少女に変身する力。

人知を超えた身体能力に、この世の物理法則を覆す、”魔法”を手に入れることができる。そんな力だ。

 

私は、この力を使い、日々”悪の組織”と戦っている。全ては、悲劇を繰り返さないために。

 

『にしても、最近は悪の組織の活動も縮小してきているような気がするにゃー。前まで戦ってた”未来創造団”も、いつの間にか魔法少女らしき存在に壊滅させられたからにゃー』

 

「あの組織、完全に狂ってたし、壊滅して清々したな。赤子を攫って戦闘員に育て上げようとするなんて、胸糞の悪い。まあ、一応全部事前に防げていたから、よかったけど」

 

『リョウが知らない間に攫われている子がいるかもしれないけどにゃー』

 

「それは……」

 

『まあ、そんなに気に病む必要はないにゃー。”未来創造団”は壊滅したし、きっと攫われた赤子たちも、元の日常に戻れているはずにゃー』

 

そんなことは私だって理解している。組織によっては、かつて大虐殺を行ったような悪辣な集団がいることも知っている。

けど、私はどうしてもだめなのだ。

 

組織による一般人の誘拐、私は、それに関しては絶対に許してはいけないのだ。

 

だって、私は……。

 

『リョウが人さらいにトラウマがあるのはわかるけどにゃー……。オイラ的には、きっともうリョウの友達は解放されてるんじゃないかって思ってるんだにゃー』

 

「そんなの、希望的観測でしかない」

 

『どうなんだろにゃー』

 

私には、かつて友人と呼べる存在がいた。

彼女は、荒れていた私に声をかけ、手を差し伸べ、周りから煙たがられていた私のことを救ってくれていたのだ。

いつしか、私は彼女と遊んでばかりいた気がする。彼女の隣には、いつも本ばかり読んでいる大人しい子がいたけど、

彼女と遊びたいがために、その子とも自然と交流するようになった。

 

といっても、本好きの子と個人的に遊ぶことはなかったから、あくまで友達の友達、という関係性でしかなかったんだけど。

でも、両親を失って、何もなかった私に、生きる活力を与えてくれた、あの子に。光そのものみたいに底抜けに明るかったあの子に。

 

きっと私は救われていたのだろう。

荒れていた私は、彼女の影響で、真面目に学校に通いだしたくらいなのだから。

 

けど、幸福な時期というのはそう長く続かない。日常というのは、突然奪われる者なのだから。だってそうだろう。もし日常が永遠のものであるのなら、そもそも日常という言葉が生まれることなどないのだから。

 

私を救ってくれたあの子は、悪の組織によって拉致された。

それは希望的観測かもしれない。けれど、遺体が残っていないのだから、そう思うしかない。

 

私は、何もできなかった。だって私は、あの子の一番の友達じゃなかったから。数多くいる、友人の1人。ただそれだけでしかなかったのだから。あの子の一番は、いつも本好きの少女が担っていたから。

 

それに、私にできることなんてなかった。両親の死を契機に、元々住んでいた家に長く住んでいくことは不可能で。

親戚の家に引き取られるという話が出てしまったから。

 

だから私は、何もすることなく、親戚のいる遠い場所へと引っ越すことになったのだ。

 

それ故に、私はあれ以降、攫われてしまったであろう彼女とも、本好きの少女とも出会っていない。

携帯電話も持っていなかったから、連絡先なんてものも交換できていない。

 

だから、これは自己満足だ。私は、悪の組織による拉致被害者を減らすことによって、私が救えなかった彼女への贖罪としている。

 

まあ、私が何か悪いことをしたのかと言われれば、別にそんなことはないと思うのだけど。ただ、助けられなかった、という罪悪感と喪失感は、私の中に残り続けているのだから、それを解消するための方便なのかもしれないな、と思っている。

さて、そんな風に過去の思い出を頭に思い浮かべながら、ぼーっとしていた、その時だった。

 

『……! リョウ! 怪人の反応が出たにゃー!!』

 

「っ! わかった。いくよニャー太郎」

 

『オッケーにゃ!』

 

私はすぐに駆け出し、学校から飛び出す。幸い、私のことを気にかけるような友人はいない。学校を抜け出していても、誰かが私を心配することはないだろう。

 

「時間が惜しいから、さっさと変身済ませるよ」

 

『わかってるにゃ!』

 

私は現場に向かいながら、魔法少女への変身を果たす。

魔法少女ビアンカリジェネ。それが私の魔法少女名だ。

 

私が変身完了して数分。現場には既に怪人がいた。

最近の怪人は質が高い。『未来創造団』の時よりも明らかに戦闘能力が向上している。

 

といっても、私は『未来創造団』の幹部クラスを1人撃破している。いくら強くなったとはいえ、怪人程度で苦戦するほど、私は落ちぶれていない。

 

私は怪人を軽くひねり、討伐を済ませる。強化されているとはいえ、私だってこれまで何度も修羅場をくぐってきた。

経験値の差が、私と怪人の勝敗を決したのだ。

 

「ふぅ。これで終わりっと。ニャー太郎。帰るよ」

 

『待ってほしいにゃ。これは、この気配は…………!』

 

一仕事終えたと、そう思い、学校へと戻ろうと考えていた私だったが、そんな私に、ニャー太郎の焦った声が聞こえてきた。

 

「ニャー太郎、どうしたの?」

 

『幹部クラスが3名ほど、こちらに向かってきてるにゃ! 流石に3対1は勝てないにゃ! 撤退した方がいいにゃ!!』

 

ニャー太郎は、青ざめた表情で私にそう告げる。確かに、幹部クラス3名がこちらに向かってくるのは、厳しいだろう。けど…………。

 

「私が戦わないと、奴らに好き勝手させることになる。また、被害者が出ることになる。だから引けない。私が戦わないと」

 

『ビアンカ……。でも…!』

 

「ニャー太郎。悪いけど、私のわがままを通させて」

 

私の意思が固いと見たのか、ニャー太郎はそれ以上何も言ってくることはなかった。

こういうことは、これまでも何度かあった。幹部を初めて撃破したときも、ニャー太郎は同じようなことを言って私のことを止めていたっけ。

 

けど、私は止まるわけにはいかない。

彼女に報いるためにも、私は……。

 

「なぁに考えてるのぉ? こっちみなぁよ。ほらほらぁ」

 

決意を固めている私の背後から、気配を感じる。その気配は、私の耳元で、甘い声で囁いていた。

 

…気づかなかった。まさか、背後を取られているなんて。もしかして、幹部クラスか。

 

「何者?」

 

「あはぁ~! わっちはね~。『ユートピア』の幹部、ワスプちゃんだよぉ。気軽にワーちゃんって呼んでね~」

 

ワスプと自己を称している彼女は、その名の通り、腰に蜂のしっぽのようなものがついており、目は複眼で真っ黒、手足は細長く、背中のしっぽには毒針のようなものが生えていた。

 

「幹部、か。厄介な……」

 

「そりゃ悪かったな。だが、こちらも手加減する気はねぇぜ。やるからには全力がいいからな」

 

幹部ワスプと対面している私の背後から、低く、渋い男の声が聞こえてくる。

私は急いで横合いへと飛びのき、幹部ワスプと、低音ボイスを持つ男の2名を見据えることのできる立ち位置を陣取る。挟撃は避けなければならないし、敵の正体は把握しておくべきだと考えたからだ。

 

渋い声をしていた男の正体は、骸骨だった。彼には、肉も臓器も、眼球も。何もついていない。

ただ真っ白な、骨。申し訳程度に黒い布をまとってはいるが、その黒い布もボロボロで、ファッションに無頓着であるということは確かだった。

 

白骨の彼は、その手に大剣を握りしめている。かなり重量がありそうな剣だが、彼は片手でそれを持ち上げていた。

どこにそんな筋力があるのだろうか。イマジナリー筋肉でどうにかしているのだろうか。

 

仕組みはわからない。魔法の世界とはそういうものだ。

 

「貴方は……?」

 

少し観察の時間を取りつつも、私は彼の素性を尋ねるべく問い詰める。まあ、十中八九。

 

「ああ、失礼。自己紹介が送れたな。オレの名前はスケルトン。『ユートピア』の幹部スケルトンだ」

 

「また、『ユートピア』」

 

『未来創造団』が壊滅したと思ったら、今度は『ユートピア』と来た。

言葉だけ見れば、ポジティブな意味に捉えられそうなものだが、その実態は悪の組織だ。悪辣外道で、許しがたい汚点だ。

 

彼らの被害は、私が食い止めなければならない。

 

「悪いな。最近できた組織なもんで、やる気に満ち溢れてんだ。本当は1対多数なんて卑怯な真似はオレの趣味じゃあねぇんだが……。初めてで舞い上がってるってことで許してくれ」

 

「建前だけの言葉はどうでもいい。来るなら来い」

 

「そうか、なら、こちらから……」

 

長引かせるのはあまりよくない。観察の時間を相手に与えるべきではない。手札がバレていないうちに、早急に決めなければ。

私はそう考え、幹部スケルトンを挑発する。狙い通り、幹部スケルトンは私に向かって突撃してきたのだが……。

 

「ちょーっとストップ。スケルトン、まだ役者がそろっていないよ」

 

私に向けて直進していた幹部スケルトンは、突如眼前に差し出された黒い鎌を見て、静止する。

確か、ニャー太郎は幹部は3名といっていた。ということは……。

 

「初めまして。私の名前は、ネロ。『ユートピア』所属の、幹部ネロ」

 

そう告げたのは、私と同い年くらいの少女だった。

 

『ビアンカ! あいつはやばいにゃ! 早急な撤退を!』

 

「う……そ……」

 

その少女の見た目は、何故か、私の良く知る者だった。

 

「ああ、それとも、こう名乗ったほうが良いかな?」

 

その声は、何度も聞いたはずのモノだった。

 

「なんで……うそ……うそだ……うそだ嘘だ!」

 

だって、彼女は……。

 

「魔法少女ジェネシスルーイ。君と同じ魔法少女だよ。ただし、私は君と違って、悪の、って枕詞がつくけどね」

 

かつて私の心を救ってくれた。

 

光千夜という、たった1人の少女だったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は静かにほくそ笑む。

たった一人で、悪の組織に立ち向かい続けているという魔法少女の噂。

 

どうやらそれは、真実だったらしい。

街の人々のために、味方のいない、孤立した状態で、孤独な戦いに身を投じる少女。

 

確定だ。彼女は光に満ち溢れている。

他者のために自己を犠牲にするほどの善性。そこまでできる存在に、光が備わっていないはずがない。

 

丁度良い子を見つけたと、俺の胸は高鳴った(といっても、俺の胸にあるのは心臓ではなくて”魔核”なんだけどね)。

彼女の元になら、最高の光堕ちができるかもしれない。彼女の元でなら、俺は満たされるのかもしれない。

 

だから、彼女の障害になりそうな『未来創造団』は潰しておいた。やってること最低だったし、イコルとの約束もあったからね。ついでに、他の組織から幹部も何名か引き抜いておいた。幹部ワスプも幹部スケルトンも、悪の組織特有の倫理観の欠如みたいなものは感じられなくて、比較的まともそうだったから雇ってみたというわけだ。

 

ちなみに、夜風が表舞台に出てくることはない。ので、『ユートピア』の対外的な首領とかは特に決まっていない。

まあ、困れば最悪クロマック君が全ての元凶ってことにして全ての罪を擦り付けようかなぁって考えてる。大丈夫でしょ。どうせあの人ビビッて表に出てこないだろうし。

 

まあ、そういうわけで、俺はなんだかんだで悪の組織の幹部として日々を謳歌しているというわけだ。

 

話がそれたが、目の前にいる魔法少女。妖精の発言から察するに、ビアンカというのだろうか?

彼女は素晴らしい魔法少女だ。3名の幹部の存在を妖精に伝えられ、引いた方がいいと伝えられてなお街のために立ち向かおうとするその精神。

 

光そのものといって差し支えないだろう。

 

さあ、再び始めようか。

楽しい楽しい、光堕ちロードを。

 

「君の力を見せてよ、ビアンカ」

 

「そんな……そんなのって……」

 

君の光の輝きを見せてくれ。

君の光が強ければ強いほど。

 

俺の光堕ちは、より素晴らしいものになるから。

 

そうさ。俺は、光堕ちがしたいんだ。

 

だから、提供してくれ。

 

俺に最高の、光堕ちを!!!




というわけで、正真正銘のラストです。完結です。今後は不定期に間話とかが投稿されたりされなかったりされなかったり、大抵は更新されないと思っておいてください。ということで本当にラストです。


今まで感想を下さった皆様、また、誤字報告を下さった方々(特に複数の誤字報告を見逃さずに送ってくださった方々)、本当にありがとうございました。

また、感想等は書いていないけど最後まで追ったよという読者の皆皆様も、本当にありがとうございました。
完結まで持っていけたのは読者様のおかげ様です。

それでは、またどこかでお会いできたら、その時はお願いします。

さらば。
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