1突如現れし悪の魔法少女
私、
街に現れた怪人の襲撃に逃げ遅れたところ、突如現れたマスコット、キュートに促され、魔法少女に変身したのをきっかけに、以降は街を守るヒーローとして、密かに怪人と戦っている。
初めの頃は、成り行きで、ズルズルと戦っていた。けど、今は私は、確固たる意志を持って魔法少女に変身している。
私は、守りたい。この街を、家族を、友達を。そして、この街を守ろうとしている、親友を。
「苺、おはよう。昨日はよく眠れた?」
「聖歌、おはよう。うん、快眠。なんて言ったって昨日の怪人との戦闘は大変だったからね〜。疲れてぐっすり」
今私に話しかけてきたのは、
私の親友には、かつて妹がいた。けど、怪人の被害に遭って、それで……。
それ以降、聖歌は、2度と妹のような目に遭う子を出さないために、魔法少女として日々、街の人々を守っている。
「………ぐっすりって、苺、課題はやったの?」
「………あ……」
「はぁ……。全く、後で見せてあげるから」
「う〜ありがとう〜聖歌ぁ……」
聖歌は優しい。私が困っていたら、いつも助けてくれる。勉強もできるし、スポーツも万能。本当、自慢の親友だ。
そんな聖歌だから、私も力になってあげたいって、そう思ったんだし。
『聖歌、あんまり苺を甘やかさないで欲しいっきゅ。苺も、いつまでも聖歌に甘えているから、成績が伸びないんだっきゅ』
「うっ、でもねキュート、私、前に聖歌と勉強会したときは、テストの点数良かったよ?」
「そうね。苺は苺なりに、努力はしてる。だから、そんなに責めないであげて、キュート」
『聖歌は苺に甘すぎるっきゅ。苺、キューは苺の将来のために言ってるんだっきゅ、少しは耳を傾けて欲しいっきゅ!』
「わ、分かったよキュート。ごめんね聖歌、とりあえず、今日は私、自分で頑張ってみる!」
まだ提出まで時間はある。だから、それまでに自力でやれば何とか……なるかなぁ…。
「大丈夫? 昨日の課題、量はそこそこあったけど……」
「えっ、じゃあやっぱり……」
『甘えちゃダメっきゅ』
「……がんばります……」
まあ、仕方ないかぁ。
全く、キュートは私のお母さんか何かなんだろうか。魔法少女として街を守るとは言ったけど、別にキュートに面倒を見て欲しいなんて頼んだ覚えはないんだけどなぁ……。
『きゅ! これは……!』
「どうしたのキュート? 大丈夫だよ、ちゃんと課題は自分でやるから」
『違うっきゅ! 課題は今どうでもいいっきゅ! 苺、聖歌、変身するっきゅ! 怪人がでたっきゅよ!』
え、こんな朝っぱらから!?
う〜、せっかく課題やろうと思ってたのに……。
でも、街の平和の方が大切だもんね。
間に合いそうだったら、後で聖歌に写させてもらおうっと。
「苺、行くわよ!」
「うん、分かった!」
「暴れてんなぁ……」
俺は今、街の家の上から怪人の暴れっぷりを眺めていた。
悪の組織『ワ・ルーイ』の目的は、人々の絶望や悲しみなどの負の感情をエネルギーとして入手することにある。
絶望エネルギーやら悲しみエネルギーやらを何とかエレメンツに変換するなりなんなりして、世界征服するぞー的なあれだ。
ぶっちゃけ設定的なのはどうでもいい。俺は光堕ちしたいだけだし。
ただまあ、やりすぎは咎めないとな。まあ、道路の破壊とか、そういうのはしゃーない。どうせ戦ってたら荒れちゃうわけだし。だからまあ、怪我人とか、そういうの出ない程度に見張ってやりゃそれで十分かなって思ってる。
怪人に何もさせなかったら、俺が洗脳できてないって『ワ・ルーイ』の連中にばれちまうしな。
「そこまでよ! これ以上この街を好きにはさせないわ!」
と、そんな風に屋根の上から覗き込んでいたら、正義の魔法少女達がやってきていたらしい。
二人組、だね。いいね〜王道だね〜。
片方はピンク色。苺の髪留めに、フリフリの桃色ドレス。白との配色がベストマッチでいいね〜。
一見ふわふわな雰囲気だけど、手に持つステッキは、白蛇が杖にグルグルと巻き付くような造形となっていて、ステッキだけ見れば結構物騒な魔法少女だと思わせてくれるかもしれない。
そしてもう片方。青色だね。こちらは可愛いというよりも美しいが勝っている感じかな。シンデレラのようなドレスに、まるで氷のようにキラキラと光る結晶のような装飾が施されていて、結晶みたいな装飾と同じような素材で、ドレスに♪マーク。頭にはト音記号の装飾が付いている。
音楽系魔法少女なのかな? 手に持つステッキは、フルートのような横笛の形を取っていた。
少女達は、怪人と対峙する。
「『フルーツ・パラダイス』!!」
「『リズライド』!!」
2人の少女は詠唱する。ピンクの少女が詠唱した『フルーツ・パラダイス』は、さまざまなフルーツの形を取った魔法弾が怪人を襲う、という効果のものだろう。だが、沢山あるフルーツはどれも指向性を持たず、あっちこっちへ散らばっている。
それを、青色の少女の『リズライド』が補助しているって感じだね。『リズライド』は譜面みたいなのが空中に出てきて、その上にフルーツ達を乗せて、まるでレールのように怪人へとフルーツを運んでいく。
……お客様に提供してるともいえるかな。
ともかく、2人の少女は互いの魔法を上手いこと扱っているらしい。
うーん、これは仲良しに違いない。
早く光堕ちして混ざりたいな☺︎
ん? 百合の間に挟まるなって?
うるせぇ! 今は俺も女なんだよ! 俺も百合の一部なんだよ!
はい論破。俺の勝ち。何で負けたか、明日まで考えといてください。
お、そんなどうでもいい思考を巡らせているうちに、どうやら2人の魔法少女、怪人を仕留めそうになってるみたいだ。
さて、そろそろ、かな。
行くか、ロールプレイのはじまりだ。
私は、聖歌と一緒に怪人にとどめを刺そうとする。
が、私たちの攻撃が、怪人に届くことはなかった。
私たちの攻撃が、何者かによって防がれたのだ。
『誰だっきゅ!!』
キュートが警戒する。怪人ならば、キュートはその存在に気づけるはず。つまり、私達の攻撃を阻止したのは、怪人ではない。
となれば、『ワ・ルーイ』の幹部級? でも、幹部クラスはこの前皆で叩きのめしたし、しばらくは動けないはず。じゃあ…一体……。
「困るんだよね……。こいつ倒されると」
聞こえるのは、少女の声。
『ワ・ルーイ』には、怪人や幹部が所属している。が、幹部は全員大人だし、怪人は言葉を発せない。少女は、いないはずだ。
「あ……え………そ、んな……」
聖歌が狼狽えている。普段は冷静沈着な彼女が、一体何を見たのだというのだろうか。
私は、聖歌が視線を向ける先に注目する。
そこにいたのは、私達と年が近そうな、漆黒の魔法少女の姿だった。
「あれ? 混乱してる? それもそうだよねー。だって私達、同じ魔法少女なんだもん。でも残念、私は、街を守る正義の魔法少女なんかじゃありません」
「……どういうこと…? どうして、怪人を守ってるの? その怪人は、街を滅茶苦茶にするんだよ? 倒さないと、街の皆が!!」
魔法少女は皆、街を守るために動いているんじゃないの?
どうして、怪人を…。
「まずは互いに自己紹介からはじめようか。はじめまして、私は魔法少女ブラックルーイ。悪の魔法少女として、この街の人達を絶望に染め上げるために、この世に生を受けました。以後よろしく」
少女は、ブラックルーイは、邪悪な笑みを浮かべながら、そう告げた。