TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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20後輩魔法少女は抱え込む

 

「遊美、来てくれたのね」

 

私は、ブラックルーイについて話し合うために、千夜の姉であり、魔法少女としての先輩である光聖歌の元へと訪れていた。

この話し合いは、ブラックルーイの先日の発言が、嘘なのか、真実なのか、それを共有し、苺先輩やもう1人の新人魔法少女に、どこまで伝えるかを2人で決定するためのものだ。

 

ブラックルーイが、私の親友であり、先輩の妹である光千夜であるということをほぼ確信に近い形で考えているのは、私や先輩、そして妖精のキュートだけだ。他の誰にも、この情報は共有していないし、変に苺先輩に伝えてしまうことで、苺先輩が満足に戦えなくなってしまっては困る。

 

だから、どこまでの情報を共有するのかは、私と先輩、そしてキュートで念入りに考えなくてはいけない。

 

といっても、キュートは苺先輩が私や先輩の元に合流しかねないように見張ってくれているため、今この場で話し合うことはできないのだけれど。

 

「まあ、前に戦った時のブラックルーイの様子は、少し不可解でしたから。今まで以上に慎重に話し合わないと」

 

「そうね。それで……早速なんだけど」

 

ただ、私は先輩に情報を共有するのも、少し不安に思っている。

先輩は、ブラックルーイの行動一つ一つに動揺させられ、精神的なダメージを追い続けている。

親友の私だって、千夜があんな風になってしまっているという事実に、胸を痛めることは多くあったのだ。肉親である先輩は、私以上に辛い思いをしているのだろう。

 

だから、私はこれ以上先輩を追い詰めてしまわないようにしなければならない。

情報を共有するべきかどうかは、慎重に考えていく必要があるだろう。

 

「何から聞きたいですか? 私自身、ブラックルーイの発言の真偽は把握していますが……」

 

私の『公正の魔』は、すべての発言の真偽をはっきりとさせる。そのため、一つずつ発言の真偽を説明しているとキリがないし、そもそも一言一句違わずすべての発言を記憶しておくことなど不可能だ。だから、問われたことに答える、という形で、私は先輩に情報を共有するようにしている。

 

「千夜が、人質を取った理由について。あれは………事実なのよね? 千夜は……人質を取るような子じゃない。あくまであの子が魔法少女だったから、あえて人質にとって正体を暴いただけであって、本当は一般市民を人質に取るような子じゃない、よね……?」

 

先輩は、私に縋るように言う。

先輩は、あの時、ブラックルーイを……千夜の相手を自分がすると言っていた。それは、ブラックルーイが一般人を人質に取るほどに、外道な振る舞いを見せつけていたからだろう。

 

姉として責任を感じた先輩は、自らブラックルーイを討つことを決意したんだ。けど、実の妹を、それも、溺愛していた最愛の妹を、自分で手にかけるなんてこと、先輩がしたいと思うだろうか?

 

そんなはずはない。先輩は、望んでいるはずだ。

もう一度、妹と過ごすことを。最愛の妹を、再び姉として迎え入れるその時を。

 

だから、信じたいのだ。

ブラックルーイは、一般人を人質に取るような卑劣な真似はしないと。

あくまで相手が魔法少女だったから、ああいう手段をとったのだと。

 

ブラックルーイの……千夜の倫理観は、そこまで地の底に落ちているわけではないと。

 

けど……。

 

【私達の目的は………潜伏している魔法少女を、炙り出す事】

 

嘘だった。ブラックルーイの………まるで真意を告げるかのように言ったそれは、真っ赤な嘘だった。

ブラックルーイは……千夜は本当に、自身がピンチに陥ったから、一般市民を人質にとったに過ぎないのだ。

 

それが、真実。

ブラックルーイの、千夜の倫理観は、既に地の底まで落ちている。

 

が……。

 

「ブラックルーイは、嘘を言っていませんでした。あれは、事実です。おそらく、本当に潜伏していた魔法少女を炙り出したかったんだと思います」

 

先輩に、真実を告げることはできない。

今の先輩は、危うい。

少しでも何かあれば、直ぐに瓦解してしまうような。

まさに薄氷の上を歩いている状態なのだ。

 

私が、ブラックルーイの倫理観が終わっているという事実を、先輩に突きつけたらどうなるか。

 

………多分、先輩の心がもたない。

ブラックルーイは……千夜はまだ間に合うと、絶望的なまでに救いようがない存在にまで落ちていないと、そう心のどこかで信じていた先輩の心が、完全に砕かれてしまう。

 

だから私は、この事実を胸に秘めておかなければならない。

 

先輩が壊れてしまえば、その影響は、きっと苺先輩にまで及んでしまう。

 

苺先輩のことだ。親友である先輩が折れても、それでもなお戦い続けるだろうし、完全に折れてしまうことはないと思う。

けど、苺先輩だって人間だ。親友が壊れてしまったという事実を真正面から受け止めて、何も思わずにいられるわけじゃない。

 

……これが最善だ。

この情報は、先輩には共有しない。

私と……キュートだけが知っていれば良い。

 

「そう、なのね……。なら……ならきっと、まだ間に合う。……次にブラックルーイが現れた時………。確実にブラックルーイを無力化して拘束する。そしたら……」

 

ブラックルーイの発言、振る舞い。

それらを見ると、どう考えても、かつての千夜からは考えられないほどに悪辣で、最低で、外道なものだった。

 

………元の千夜と同じだと考えない方がいい。

悪の組織『ワ・ルーイ』に、何かされたと考える方が自然だろう。少なくとも、姉がいない……つまり先輩を姉だと思えていない事実があるわけだから、記憶を失っていたりする可能性は大いにあるだろう。それに、もし組織に何もされていないのだとすれば、あの優しかった千夜があそこまで豹変する理由に説明がつかない。

 

そして、もしその推測が正しかったのだとすれば…。

 

「私は変身を解除して、千夜を説得するわ。………あの日見捨てたことを謝って……今度は絶対に守るって……見捨てないって誓って……もう一度姉妹に戻る……。だから、遊美、そのためには、貴方にも協力してもらう必要があるの」

 

「当たり前ですよ。千夜は私の、親友なんですから」

 

対話は、無意味だ。

いくら変身を解除し、姉である先輩が説得しようと。

 

きっとブラックルーイの心には、何も響かない。

ブラックルーイは、千夜であって千夜じゃないと、そう考えるのが自然なのだろう。

 

ブラックルーイが千夜ではなくて、あーちゃんが千夜だったら……。

それなら、何も思い悩まずに済んだのに。

 

けど、そんなことを考えても仕方がない。

あーちゃんは、あーちゃんだ。

ブラックルーイとよく似ているような気がしたが、この前クリスマスの日に一緒に出かけた時は、確かに似てはいるものの、少し容姿が違うように思えた。

だから、本当に他人の空似だったんだろう。

 

……あーちゃんといると、昔千夜と一緒にいた時のような、暖かい気分になれるのも、きっと気のせいだ。

 

………あーちゃんは、あーちゃんだ。そこに、千夜の陰を重ねたりするわけにはいかない。

分別はつけないと、多分、先輩みたいになってしまうから。

割り切りは大切にしないと。

 

状況証拠的にも、悪の組織『ワ・ルーイ』に攫われた千夜が、ブラックルーイとして街を破壊している、と考えるのが自然な流れなのだから。

 

「遊美、話し合えば、きっと分かり合えるわよね」

 

先輩は、千夜と元の関係に戻れると信じて疑わない。

……いや、そう信じたいというのが正しいのだろうか。

 

千夜と過ごす日々を取り戻せると、そう信じていないと、きっともう心がもたないんだろう。

 

「………そうですね…。きっとこれは、千夜の反抗期なんです。話し合えば……分かり合えるはずですよ。きっと……」

 

だから私は、先輩を刺激しないように。

私の推測は、私の中だけで留めておこう。

 

………千夜を救う方法、それは、私がなんとか考えださないといけない。

 

……次にブラックルーイと出会った時、千夜の身に何が起きたのか、それを探る。

何が起きたのかわかれば、それに対する対処法を考えることもできるはずだから。

 

……私が、私がやらないと。

私が……千夜を救い出さなきゃいけないんだ。

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