TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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22ドイツ人少女は葛藤する

 

「………そろそろ、動き出した方が良いかもね」

 

ダウナー系な親友の声が、私の耳に響く。

 

『何度も言っているように、物事は慎重に行うことが大切ですわ。一時の感情に身を任せれば、その先に待っているのは破滅。理解していますわね?』

 

親友の言葉に、確認するように羽の生えた猫のような見た目をしたお嬢様口調の妖精が、問いかける。

 

「大丈夫。私は感情で動くつもりはないから。合理的に考えて、今動くのが最適だと感じただけ」

 

(めい)、本当にいいの? 私達、せっかくこれまでコソコソとやってきたわけじゃない? いまだに情報が足りてないのに、今動き出しちゃ、今までの行動が全て水の泡になってしまいそうな気がするんだけど」

 

私達が、魔法少女という存在になってから、暫くが経つ。

私達は契約したお嬢様口調の妖精、レディの指示に従い、隠密行動を取りながら、悪の組織『ワ・ルーイ』のアジトや計画を探るといった行動を取ってきた。

 

私は、魔法少女に変身すると、自身の姿を完璧に隠蔽する、『インビジブルマスカレード』という魔法を扱うことができる。これによって、私達は怪人と魔法少女達が戦う戦場に潜み、その行動を観察。そして、怪人の出どころなどを探り、奴らのアジトを逆探知するために動いてきた。

 

最近に至っては、『ワ・ルーイ』が魔法少女ブラックルーイという存在を遣わすようになって来ていたり、組織の幹部が戦場に出て来ていたりと、ようやく組織のアジトを逆探知できそうな状況になってきていた。だから、私は親友である鳴に問いかけた。

 

「……まず、直近のブラックルーイの出現において、分かったことがある。それは…。ブラックルーイは、白沢薬深、魔法少女ホワイトポイズナーの存在を認識していたということ。つまり、私達と同じように戦場に潜んでいた彼女の存在に気付けていたのならば、私達の存在にも勘づいている可能性がある、ということ」

 

『可能性は否定できませんわね』

 

「…けど、魔法少女ホワイトポイズナーと違って、私達には『インビジブルマスカレード』があるじゃない。彼女が気付かれたからといって、私達の存在にまで気付くとは限らないと思うんだけど」

 

『そうは言っても、リーベルの存在は既に白沢薬深にはバレていましたわ。そのことを踏まえると、私達の存在に勘づかれている可能性は高いと考えるのが自然ですわ』

 

「ホワイトポイズナーに私の存在が認識されたって言っても、それは同じように戦場で潜伏している立場だからであって、実際に戦闘しながら存在に気付けるかはまた別なんじゃない? 変身もしていなかったホワイトポイズナーとは状況が違うと思うし」

 

「……そうかもしれない。けど、私が行動しようと言った理由はそれだけじゃない。……前回のブラックルーイの行動で、彼女の演技力が高いこと、これもまた判明した。だとすれば、私達が立てていた仮説、これもおそらく、正しいと判断できることにならない?」

 

「私達が立てた仮説? それって」

 

鳴が言っているのはおそらく。

ブラックルーイの正体について、だろう。

私達は、ブラックルーイの出現と同時に、最近この近辺に出没しだしたある少女がいることを知った。

 

広井愛結。

一見、心優しく、元気で明るい普通の少女のように見えるが、容姿はブラックルーイに酷似しており、また、ブラックルーイが戦場に現れる以前は、見かけることなど一切なかった。

 

単に認識していなかっただけだ、と言われればそれまでだが、彼女の容姿ははっきり言ってそれなりに整っているし、一度見かければ多分何となくではあるが覚えはするはずだろう。

 

ここまでの情報だけでも、広井愛結という少女が、ブラックルーイと何かしらの関係があるのではないか、と考えてしまうのは、自然な流れなのではないだろうか。

そして、私達が立てた仮説というのが。

 

「ブラックルーイは、広井愛結である」

 

『……まあ、おそらくその通りだと思いますわ。変身前なので魔力を上手く感じることはできませんが、彼女からは若干ブラックルーイの魔力の残り香のようなものを感じさせられますので』

 

「………その仮説を、正しいとするってことは……」

 

「うん。私達は、広井愛結を襲撃する。拘束して、尋問を行い、組織についての情報を吐かせる」

 

それは、前々から鳴が言っていたことだ。

広井愛結がブラックルーイであったならば、変身前の状態である彼女を狙う、と。

 

………けど、それが本当に正しいのだろうか?

変身前の、あの少女を、拘束して、尋問する。それが本当に、正しい行いだと、胸を張って言えるのだろうか?

 

「ねえ鳴、何も拘束しなくたって、広井愛結を尾行して、アジトの場所を突き止めるとか、そういう方向性じゃダメなの? わざわざ尋問しなくたって…」

 

「ベルは甘い。実際に被害は出ているし、キューティバース達の仲もおそらく上手くいっていない。私達が動かなければいけない状況であることは明白。なら、やることは自ずと決まってくる」

 

『覚悟を決めなさいな、ベル。誰かが汚れ役を買って出なければ、この世界は奴らによって支配されるだけなのよ』

 

 

 

 

 

 

 

……ブラックルーイ……千夜の身に何があったのか……。

それを私は、探らなければいけない。

探らなければいけない、のに……。

 

「ゆーちゃん? どうしたの? 浮かない顔して」

 

「ううん。何でもないよ、あーちゃん」

 

こんなことしている場合じゃない。そんなことはわかってる。

だけど、今だけは、忘れたい。

 

あーちゃんと過ごして、ひとときでも。

 

……実際、ブラックルーイの無力化については、難しいと思う。

今までブラックルーイと対峙してきて、彼女を無力化できたのは、白沢さんが『クールポイズン』で千夜を空中から落としたあの時のみ。

そして、その『クールポイズン』も、どんな手段を使ったのかは不明だが、対策されてしまった。

 

ならば、現状私達にブラックルーイを無力化する手段は、ないと言ってもいい。

 

戦場に幹部が出てくることも増えたし、それは間違い無いと思う。

だから、あまり焦る必要はない。

寧ろ、焦って確信に迫る情報を得られなかったりする方が良くない。

 

こうして息抜きをして、少しでも頭をリフレッシュしておかないと。

これから、千夜を助けるために、色々と模索していかなきゃいけないんだから。

 

「……最近ちょっと悩み事があるんだ。友人関係のことでさ…」

 

「ゆーちゃんが? 友人関係で、かぁ……。友達多そうだもんね、ゆーちゃんって」

 

友達が多そう、かぁ。

そりゃ私、そうなれるように努力したからね。本の虫だった私も、千夜みたいな明るくて、誰にでも分け隔てなく接せれるような優しい人になりたいって、そう思ったから。

 

「……まあ、ね。色々あるんだよ、私にも」

 

「そうなんだ。辛いなら何でも私に相談してね。ゆーちゃんの相談なら、私何でも乗るつもりだから!」

 

「ありがとうあーちゃん。気持ちだけでも嬉しい」

 

自意識過剰でなければ、あーちゃんは私のことが相当好きらしい。まあ、クリスマスも共に過ごしたし、私もあーちゃんと一緒にいると何だか穏やかな気持ちになれるので、あーちゃんも同じように感じているのだろう。

 

だから、あーちゃんが私の相談に何でも乗ってあげる、というのは、社交辞令でも何でもなく、本心なんだろう。

 

きっと私が、今の悩みを打ち明ければ、あーちゃんは一緒になって悩んでくれるはずだ。

けど、私はあーちゃんといる時間は楽しいものにしたい。悩みを聞いてもらいたいという気持ちもありはするが、それはそれ。今は今だと、そう区別しておきたいという気持ちの方が強い。

 

私がこのことをあーちゃんに相談することは、きっとないのだろう。

だから、あーちゃんのその気持ちだけ、私は受け取ることにした。

 

「Entschuldigen Sie, hätte ich einen Moment Zeit?」

 

「へ?」

 

と、そんな風に、私とあーちゃんが穏やかな時間を過ごしていた時のことだった。

突然、私達に聞きなれない言語で話しかけてくる、1人の少女が、私達の目の前に現れた。

彼女の顔は、何だかぼんやりとしていてはっきり認識できないような気がしたが、多分気のせいだろう。

 

「I can‘t speak English!」

 

「あーちゃん、多分今の、英語じゃないと思う」

 

「え、えー? どうしよう……けど多分この人、困ってるよね?」

 

「んーでも、私達じゃどうにも……」

 

私とあーちゃんは、お互いに悩みこむ。

多分、すみませーん、ちょっといいですかーとか、そんな感じのことを言っているんだろうが。はっきり言って私は、彼女が今使った言語が何かすら把握できていない。

おそらく英語ではないのだろう、くらいまでは分かったのだが……。

 

「あ、あ、あー。ご、ゴメンナサイ! えー、マチガッテ、ドイツ語でハナシテシマイマシタ。チョット、ミチニマヨッタノデ、ミチアンナイ、シテホシクテ」

 

すると少女は、拙いながらも日本語で話し出し、私達に道を尋ねたいと、そう伝えてくれた。

カタコトではあるものの、日本語が話せる人で助かった。

にしても、ドイツ語だったんだ。私もあーちゃんも、ドイツ語なんて学んでないし、話しかけられても全く分からなかった。

 

「わかりました! うわーゆーちゃん、私外国人の人に道案内とか初めてするよ、上手くできるかな?」

 

「うん、まあ、最近はスマホという人類の叡智があるからね、最悪わからなくなったら、調べてみればいいし」

 

「道案内してくれるんですね! あ……。えーと、アリガトウゴザイマス」

 

こうして、私とあーちゃんは、道に迷った外国人少女を道案内するという経験をすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと、ここは右に行くといいです……ってあーそっちじゃなくて……!」

 

外国人少女への道案内。これが思ったよりも大変で、彼女は、私達が教えた通りのルートを通らず、わざわざ遠回りするような道を選んだり、全く別の道に行ったりして、その度に私達がルートの修正をしているのだが、まともに私達の指示に従ってくれるのは、数回だけ。

ほとんど独自のルートを行って、目的地からどんどん離れる。といった行動を繰り返される内に、私達は疲れ果ててしまったのだった。

 

「ねえ、あーちゃん。これ、本当に道案内してあげた方がいいのかな?」

 

「……正直ちょっと後悔しかけてたけど……でも、知らない道を通ったりもできたし、何よりゆーちゃんと一緒だから案外悪くないかもって思ってる」

 

けど、あーちゃんは結構ポジティブな考え方をしていて。言われてみれば、私とあーちゃんの初めての共同作業って感じがするし、そう考えてみれば、案外この状況も悪くないのかもしれないと、そう思えた。

 

「そうかもね……って、あの子、また変な路地に入って……」

 

「あれ天然なのかな…?」

 

私とあーちゃんは、人気の少ない路地裏に入ろうとしている少女の背を追う。

少女は暗い路地の中を、臆することなく進んでいく。

 

普通に考えれば、少女の行動は不可解で、怪しすぎるのだが。

散々振り回された挙句、少女の性格はそういうものだと、そう刷り込まれた私達は、少女への不審感を一切持つことなく、ただ路地は危ないから呼び戻そうと、そう思い立って2人揃って路地裏へと誘い込まれてしまった。

 

それが、判断ミスだとも気づかずに。

 

「ごめんなさい。けど、これもこの街の……世界のためなの」

 

路地裏に入った私達は、額に銃を突きつけられていた。

見ると、目の前の少女は、フリフリのドレスに、二丁の拳銃。頭には魔法で形作られた猫の模様がフヨフヨと浮いていた。

 

「魔法……少女……?」

 

あの外国人の少女は、どうやら魔法少女だったらしい。

……考えてみれば、最初からおかしかったのだ。

彼女の顔は、なんだかぼんやりとしているように感じた。

 

感覚的には、そう……『夢幻の魔』が発動している状態の魔法少女を、変身せずに見ていたときのような…。

 

まさか、最初から変身していた?

けど、それなら、魔法少女であることには気づけていたはず……。ならなぜ…。

 

「疑問に思ってるみたいね。巻き込む形になってしまったお詫びに、少し教えてあげるわ。私は魔法少女としては少し特異でね。変身していない時でも、『夢幻の魔』を使用することができるの。変身前の姿を見られるわけにはいかなかったから、『夢幻の魔』をあらかじめ使わさせてもらった、といったところよ」

 

「っそんなことが……」

 

目的は何だ?

何故私達を狙った?

まさか、『ワ・ルーイ』の手先? 

ブラックルーイと同じように、『ワ・ルーイ』に利用された魔法少女が、私達のことを狙ってきた?

 

「目的は、何ですか?」

 

「……そこの、広井愛結という少女、彼女を引き渡してもらう。少し疑念がかかっているのよ」

 

「あーちゃんを……? 組織は、あーちゃんを狙っている…?」

 

「組織…? 悪いけど、私は何の組織にも所属していないわ。……あー。ブラックルーイと同じ存在だと思ったのね。なら安心していいわ。私は、『ワ・ルーイ』の悪事からこの街を……世界を守るために魔法少女になったんだから」

 

……組織の魔法少女ではない…?

そして、ブラックルーイのことも知っている。

 

加えて、あーちゃん狙い、ということは……。

 

……まさか……。

 

あーちゃんのことを、ブラックルーイだと思って、狙ってきた?

確かに、あーちゃんはブラックルーイと容姿がよく似ている。けど、彼女はブラックルーイが先輩達の元に現れた時、私と一緒に行動していた。

一度だけではない。二度もそんなことが起きていたのだ

 

あーちゃんがブラックルーイであるはずがない。

 

けど、客観的にみれば、確かにあーちゃんはブラックルーイとそっくりな見た目をしているし、同一人物だと思われてもおかしくはないだろう。

 

「あの…待ってください! あーちゃんを狙うのは……待って……」

 

「っ……」

 

『ライオネル、覚悟を決めるときですわ』

 

「分かってる!」

 

完全にあーちゃんのことをブラックルーイだと勘違いしてる……。

多分、このまま説得しても、聞く耳を持ってくれない。なら……。

 

「あーちゃん! 逃げて!!」

 

私は、少女の両腕を掴み、銃口を2つとも自身の頭に向くようにする。

私は、彼女の人柄を知らない。だから、もしかしたら、発砲されるかもしれない。

けど、あーちゃんを逃すためなら…。

 

「ゆーちゃん!!!」

 

「逃げてあーちゃん! 私は大丈夫だから!! だから……」

 

「……っ、逃げないよ! ゆーちゃんを見捨てて、逃げられるわけない!」

 

キュートをこの場に呼ぶ必要はあるけれど、私は魔法少女に変身すれば、何とかなる。だから、あーちゃんには逃げてほしい。私は、本当に大丈夫だから……。

 

「………無理よ……」

 

「へ?」

 

「やっぱり……無理よ……。これは、間違ってる。こんなことが正義だとは思えない」

 

そう言って、目の前にいる魔法少女は、私達に向けた銃口を、下ろす。

 

「行って。私は、間違ってた。……2人を見てたら、きっとこれが正解なんだって、そう思ったから」

 

『愚行ですわ』

 

「私は、2人を信じてみる。愚行かどうかは、いずれ分かるわ」

 

……私達が互いの身を案じる様子を見て、考えが変わった、ということだろうか。

 

……だとすれば、この人は、思ったよりも話が通じる人なのかもしれない。

初対面だけど、同じ魔法少女。そして、彼女は、正義を掲げて活動している。なら……。

 

「あーちゃん、先帰っててくれる?」

 

「へ? で、でもゆーちゃん、その人、さっき私達に銃を…」

 

「大丈夫だから、ね? 私、あーちゃんに嘘付くことないから」

 

隠し事はあるけど。

でも、私はあーちゃんには嘘は付かない。隠したいことがあれば、素直に言えないって言う。そういうスタンスだから。

 

「ゆーちゃんがそう言うなら……。あ、でも、心配だからまた明日連絡お願い。会う約束もするから、絶対に危険な真似はしないでね」

 

「うん。分かってる。それじゃあ、またね」

 

「うん。気をつけてね…」

 

あーちゃんは、私の様子に、渋々と言った様子で帰っていく。

けど、目の前の魔法少女が悪い人ではなさそうだということは、あーちゃんも何となく感じ取っていたんだろう。

 

心配してくれていたが、それでも私のことを信じて、この場から去ってくれた。

………それじゃあ、本題に…。

 

「………あーちゃんは行った、かな? ………すみません。少し話したいことがありまして」

 

「……何を?」

 

「……私の名前は山吹遊美。魔法少女ムーンノウシーカーとして、この街を怪人から守っています。単刀直入に言います。私に、協力してください」

 

この人になら、今の現状を……相談できるかもしれない。

一緒に協力して、ブラックルーイを……千夜を助け出す方法を模索してくれるかもしれない。

 

だから私は、彼女に協力を持ちかけることにした。

 

 

 

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