TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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30幹部な魔法少女のアジト事情

 

さてさて、新アジトにやって参ったわけなんですけども……。

 

「うわぁ………前いたアジトと全然違いますねーこれ」

 

「管理する幹部によって、アジトの様相は変わるからね〜。ヒンナちゃんが過失で壊しちゃったアジトは、オクトロアが管理してたからね。結構殺風景だったんじゃない?」

 

言われてみれば、前のアジトは殺風景だったような気もする。

今回のアジトは、結構オシャレな雰囲気で、言われなければ悪の組織の根城だとは到底思えないほどに、良い感じの雰囲気だった。

 

「…それで、個室とかもあるからね。ルーイちゃんとヒンナちゃん用の個室もちゃーんと用意してあるよー」

 

「おー! 個室!」

 

前のアジトでは個室なんて与えられなかったからね。

寝る時も幹部様が用意した特製触手ベッドで寝てたし、個室が欲しいって言ったら、多分触手で壁作ってこれで我慢しなさいって言われてたと思う。

まあ、幹部君は多忙だからね。個室用意するような時間があったら、組織の業務に取り掛かりたいんでしょう。

 

「ないとは思うけど、隠しカメラとか置いてあったりはしないでしょうね?」

 

え、ジェネちゃんそんなえげつないことするタイプの人なんですか…?

いや、俺にも羞恥心なるものはありましてね、裸を見られるのは流石にやだよ?

 

「おー凄い疑惑。私ヒンナちゃんの裸に興味ないよー」

 

「それはそれでなんか腹立つわ」

 

「わ、私の裸は…?」

 

「裸に興味はないかなー。安心してよ。私はルーイちゃんともヒンナちゃんとも、普通に仲良くしたいだけだからね!」

 

ほっ、変態レズさんではなかったようです。安心安心。俺にとってジェネちゃんが第二のピュアになることはなかった。

 

「というか師匠、ジェネちゃんにどういう印象を抱いてるんです?」

 

「……わかんないわ。変人ってことだけ。だから何してくるか本当にわかんないのよ。気持ち悪いし」

 

「えーんひどーい! ヒンナちゃんが悪口言うよ〜! ルーイちゃーん!」

 

「あー師匠泣かせたー! かわいそー!」

 

「ちょ、ルーイ、何でそっち側なのよ!?」

 

いやだって、あまりにも師匠があたふたし出すものだから、面白くって。

師匠って結構からかいがいがあるんだよね。普段なら俺と師匠だと、師匠の方が立場が上だからそこまでからかえないんだけど、今回は同じ幹部の立ち位置にいるジェネちゃんがいるのでね。いくらでもからかえるというわけです。

 

「じゃ、とりあえず私のアジトを順に紹介していこうかな」

 

そう言って、ジェネちゃんは俺と師匠を連れながら、アジトの中へとどんどん足を進めていく。

所々に扉があり、パスワードのようなものが設定されていていたが、ジェネちゃんはその全てを知り尽くしているのか、次々とパスワードを入力し、扉を開けていく。

 

やがて、扉を進んだ先、行き止まりの末にあったものは……。

 

「これは……」

 

「……んー。妖精観察キットってとこかな。前も言ったけど、私って魔法少女だからさ。妖精がいないと変身できないの。かといって、妖精に好き勝手に行動させるわけにはいかないでしょ? だから閉じ込めてるの。まあ、妖精がその場にいないと変身できないから、結局私が戦場に出ることはできないんだけどさ」

 

ジェネちゃんが見つめているその先には、前面窓……ガラス張りにされ、閉じ込められている妖精の姿があった。

ガラス張りにされたその中には、子供に与えるようなおもちゃがたくさんあり、ゲーム機なども常備されているようで、監禁こそしているが、娯楽を一切与えていないというわけではなさそうだった。

 

『あー! 夕音(ゆうね)! かえってきたの?』

 

「ラフ、人前だから名前で呼ばないで。ジェネシスとか、魔法少女名で呼んでくれって言ったよね? ……今夜はゲーム機没収かな」

 

『ちょ、ちょっと待ってよ! 今日でぼく、ようやくラスボスを倒せそうなんだ! だから…!』

 

「獣風情が口答えしないでくれる? 立場をわきまえてよ。ゲーム機って高いんだよ? それをわざわざ買い与えてやってるんだから、そこにあるのは感謝だけでしょ」

 

『ご、ごめんね…! ぼ、ぼくが悪かったよ……』

 

妖精……ラフという名前なのだろうか。

おそらくラフは、ジェネちゃんに完全に主従関係を刷り込まれているのだろう。

ジェネちゃんの言うことに、ビクビクしながらも従っている様子からも、それは伺える。

 

「これ、一応私が契約してる妖精ってやつね。まあ、見ての通り幼稚で、何もわかっていない哀れな獣だよ」

 

「わお……お口がお悪い」

 

「ごめんねルーイちゃん。でも、妖精と仲良くってのはちょっと無理だから」

 

まあ、妖精って悪の組織『ワ・ルーイ』と対抗してるっぽいし、本来なら敵になるはずだから、こういう扱いになるのも納得ではあるかな。

 

俺達は妖精のいた部屋から立ち去り、別の部屋へと移動するために廊下を歩いていく。

 

「妖精を捕まえてたなんてね。あんた、そんなこと一言も……」

 

「これ、オクトロアにも言ってないからね。ヒンナちゃん、内緒にしててよ?」

 

へー。幹部君にも言ってないんだ。でもそれって大丈夫なのかな?

 

「あの、いいんですか? 幹部様に内緒にしてしまって」

 

「幹部は各々の研究内容を詮索しないって決まりがある。共有するかどうかは、それぞれの幹部の意思に委ねられてる。だから、私がオクトロアに報告しなくても、何ら問題はないんだよね」

 

そうなんだ。まあ、各自の研究内容まで把握してたら、流石にキリがないしね。それに、仮にも幹部君と同格の存在なのだ。ある程度自己管理はできて然るべきだろう。

 

うん、そう考えたら、別に何の問題もないのかもしれない。

 

「私にバラしたのも、助けた恩がある以上、私が他の幹部に口外する危険がないって判断したからでしょ? 本当腹黒だわ……」

 

「まあ、正解だよ。ヒンナちゃん。でもねえ、私の研究は、ルーイちゃんのためでもあるんだよ?」

 

「へ? 私のため?」

 

なんで?

 

「ルーイちゃん、今契約してる妖精がいないでしょ? 魔法少女ってのは本来、妖精と契約して力を行使するものなの。だけど、ルーイちゃんにはそれがない」

 

確かに、言われてみれば、俺って契約してる妖精とか一切いないよな。

今まで何の疑問も持たずに魔法少女に変身してたけど、キューティバースちゃん達は妖精いたのに俺にはいないのってなんかおかしいような気がする。

 

「言えばルーイちゃんって、無理矢理魔法少女に覚醒させられた状態なんだよね。妖精がいなくても戦えるけど、その代わりに代償を支払い続けなきゃいけない。だから、妖精と契約しないと、そのうち死んじゃうってわけ」

 

「は、はぁ? どういうこと? ルーイって、放っておけば死んじゃうの?」

 

「そうなるかな」

 

「え………まじですか…?」

 

お、俺死んじゃうの…?

ま、待ってくれ……それは聞いてない。

光堕ちしたいのに、死んじゃったら意味ないじゃないか!?

というか、光堕ちできても、結局力尽きちゃって……。普通に敵役として、“最後だけ分かり合えた少女”として消えていくことになるわけでしょ?

 

やだやだやだ!

そんなの俺の求めていた光堕ちじゃない!!

光堕ちしてキューティバースちゃん達と一緒に組織を潰したいのにー!!

 

「そんなに不安そうな顔しないでよ。……ルーイちゃんが死なないために、私は今研究を続けているんだから」

 

「……私が、死なないために…?」

 

「そ。私の研究分野は魔法少女。魔法少女の性質とか、特徴、魔法について、研究しているんだよ。それで、私の最終的な研究の終着点は……妖精の力を借りずに、魔法少女の力を使えるようになること」

 

妖精の力を借りずに魔法少女……今の俺みたいな状態のこと?

けど、俺みたいに妖精の力を借りずに変身してると、死んじゃうんじゃ…?

いや、もしかして…。

 

「……代償を支払わずに、かつ妖精の力も借りなくて良い。それを目指してるってことですか?」

 

「正解! ルーイちゃん賢いね〜!」

 

ジェネちゃんは、妖精を敵視………あまり快く思っていないようだった。だとすれば、妖精の力を借りたくないというのも納得できる。

 

だからと言って、死のリスクを背負ってまで魔法少女になりたいかと問われれば、まあ、いやだろう。

それを解消するために、魔法少女に関する研究を進めて、ノー妖精ノーリスクな魔法少女を目指してるということか。

 

「……でも、今の私って結局、魔法少女に変身し続けるといつ死んでもおかしくない状況なんですよね?」

 

「まあ、そうだね。ただ、すぐに死ぬわけじゃないよ。変身解除して、何日か経過した時に症状が現れ始める感じだと思う」

 

……まあ、どっちにしろ現状のままじゃ俺は死ぬリスクを抱えているってわけだな。

変身する時は、常に死に怯えながらやらなければならないと。

……やだなぁ。変身してブラックルーイになりたいんだけど、それで死んだら本末転倒だしなぁ……。

 

「ルーイの休暇って、確か今日までよね? 明日からは、また街への襲撃を再開する……そうなったら……」

 

「魔法少女に変身しないといけないですね。うーん……変身しちゃうと、死んじゃうかもしれないんですよねー……」

 

俺と師匠は、頭を悩ませる。

明日から俺は、再びブラックルーイとして活動を再開しなければならない。

これは、幹部君の命令でもあるし、今まで敗戦して惨めに逃げ去ったり、許可せずにミステリアスムーブしに行ったりしていることから、これ以上命令に背いたりするわけにもいかない。

さて、どうしたものか……。

 

「あはは! 2人とも、そんなに心配しなくても大丈夫だって〜」

 

「はぁ? あんたからしたら、ルーイはただのモルモットなのかもしれないけどね……ルーイは、ルーイは……」

 

「ルーイちゃんは? なに? なにかなヒンナちゃん? ヒンナちゃんにとって、ルーイちゃんってどんな存在? 教えてほしいなー!」

 

「う、うるさいわね! 何でもないわ。モルモットよモルモット。それ以上でも、それ以下でも……」

 

「相変わらずツンデレなんだから〜! このこの〜!」

 

「うっざい………」

 

師匠からしたら、一緒にアニメ見たり、漫画読んだり、ミステリアスムーブしたりしてくれる存在がいなくなるわけだからね。そりゃ寂しいか。師匠って意外と構ってちゃんだからなぁ……。

 

「まあ、とにかく、そんなに心配しなくて良いよ。私がちゃんと、ルーイちゃんが死なないように考えてあるからさ」

 

「今のままじゃ、ルーイって死んじゃうんでしょ? どうするっていうのよ」

 

「……まあ、今のままじゃ確実に、いつかは死ぬね。けど、私が研究を進めて、ルーイちゃんのリスクを完全に取り除くことができれば……」

 

「そんなたらればの話で…」

 

確かに、ジェネちゃんが研究を進めて、俺が魔法少女に変身するリスクを取り除いてくれれば、何も気にすることはないんだけど……。

 

「でも、結局間に合わない可能性だってあるわけですよね? ジェネちゃん的にはその辺どう考えてるんですか? 私がモルモットなので、最悪死んじゃっても仕方ないかーとか、そういう感じですかね?」

 

「ちょっとちょっと! そんなに自分を卑下しないで! 大丈夫だから! 私ちゃんと考えてるし! ……あのね、確かに、私は妖精の力を借りたくないし、妖精なしで変身できるようになることを目的としてるよ? けどね…」

 

ジェネちゃんは、急に俺の方へと近づいていき、俺と目線を合わせて、その両の手を俺の腰あたりに回して、まるで子供をあやすかのように優しく包み込む。

 

「なっ……!」

 

簡単に言えば、ジェネちゃんは俺に抱きついている状態だった。

その光景を見て、師匠が動揺している様子が、俺の視線からはよく読み取れた。

 

「ルーイちゃんの体の方が、大切だから。……だから、もし本当に、ルーイちゃんの命が危うくなりそうだったら………私が監禁してる、ラフと契約させる。そうすれば、とりあえずルーイちゃんが変身して死んでしまうリスクは取り除けるから」

 

抱きつかれていると、結構温くて気持ちが良い。

それに、この感覚………。

どこかで……。

 

「けど、オクトロアはルーイを対魔法少女戦における駒として使うことを目的としてるわ。ルーイが契約すれば、監禁されてるラフを解き放たない以上ルーイが戦場に出ることはできない。そうなれば、オクトロアがルーイを生かしておく理由なんて……」

 

「その時は仕方ないよ。ラフを解放する。ルーイちゃんが死ぬよりかは、マシだからさ」

 

「あんた……どうしてそこまでルーイを……」

 

ああ、そうだ。

思い出した。

 

この感覚、今世において、はじめて生まれたその時に……。

 

「同じ魔法少女なんだもん。仲良くしないと、ね?」

 

「………本当に気持ち悪いわ。得体が知れなくて、何考えてるのか全くわかんない」

 

お母さんに抱かれたあの感覚。それに近いんだ。

 

ジェネちゃんは、お母さんなんかじゃない。

お母さんは今も、お姉ちゃんと一緒に暮らしているんだろう。

 

だけど……。

 

「あったかい……」

 

「でしょ? 普段から体あっためてるからね〜」

 

母親に抱かれるような感覚。

それは、なんだか久しぶりの感覚で……。

 

意外と、悪くないものだなと。

なんとなく、そう思った。

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