TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

34 / 138
31正義の少女は臆病少女と共に行く

 

 

チャイムが鳴る。

その音と共に、生徒達が一斉に席から立ち、礼を行い、各々が好き勝手に言葉を発し出す。

昼食の時間になり、持参した弁当を開けたり、購買で昼食を購入しに行ったりと、各々で空腹を満たすために、食を求める。

 

私は、朝作った自家製手作り弁当を机の上に出す。

…けど、今日の私は、その弁当を食べきれそうにもなかった。

 

「薬深ちゃん、一緒にご飯食べよ?」

 

「あ……苺ちゃん……うん……わかった……」

 

私は、最近同じ魔法少女であることが判明した、同じクラスの白沢薬深ちゃんに声をかける。

そのまま、薬深ちゃんの席と、私の席をくっつけて、私が持参した弁当をその上に広げる。

 

「いただきます!」

 

「い、いただきます…」

 

これが最近の私の日課。

薬深ちゃんと、2人でご飯を食べる。

少し前までは、そこに聖歌も加わって、3人で食事を取っていた。けど、最近の聖歌は学校を休んでいて……。

 

「……光さん……今日も来てないね……」

 

「うん。そうだね…。せっかく沢山作ってきたのに、これじゃ食べきれないや」

 

薬深ちゃんの食事事情が、結構深刻だったことが判明してから、私は、薬深ちゃんに手作り弁当を作ってあげることになった。

そのついでとして、せっかくだからと、聖歌の分も作って来ようと思ったのがきっかけで、私の手作り弁当は誕生した。のだけど。

 

最近は、その聖歌が学校に来ないせいで、弁当のおかずがあまりがちになってしまっていた。

 

仕方なく、私が帰ってからお母さんやお父さん、1つ下の弟と一緒に、夜ご飯のおまけで食べたりしているんだけど…。

 

「光さん、今日も来ていませんね」

 

「……紫暮(しぐれ)さん?」

 

紫暮(しぐれ)律華(りっか)。私のクラスの学級委員長で、曲がったことが許せない正義感の強い人。

 

一時期は、授業をサボりがちな私や聖歌に対して、口うるさく言ってくるような人だった。のだけど、聖歌が最近学校に来れておらず、また、聖歌が学校に来ないことで、少し気に病んでいる私の様子を見たからか。

普段の態度からは考えられないほど、私に対しての彼女の対応は甘くなっていた。

 

「……普段からしばしば授業をサボってはいましたが、欠席ということは今までありませんでした。成績も良く、課題も期限を守っていた。そんな彼女が、ここ数日、貴女に何の連絡もなしに休むなんて……。何かあったのでは?」

 

「うん、そうだね。……いつもの聖歌だったら、休むにしても、私に連絡くらいはくれたと思う」

 

聖歌が来なくなって、当然私は心配したんだけど、遊美ちゃんが様子を見ててくれてるっていうから、とりあえず私は、薬深ちゃんと仲良くすることにしようと、そう思って学校生活を送ってきた。

 

……けど、数日経っても学校へやってこないことから、只事ではないことが起こっていることは確かだ。遊美ちゃんは、絶対に大丈夫だから、全部任せてほしいと、全て解決できる算段が整っているんだと、そう私に言っていた。

 

けれど……聖歌は私の親友なのだ。

いくら遊美ちゃんが見てくれるからといって、親友の私が何もしないというのは、薄情だろう。

 

「……今日、聖歌の家に寄ってみる。どうしてここ数日休んでいたのか、聞けそうだったら聞いてみるよ」

 

「……分かりました。では、今日のプリント類は一つ下の彼女ではなく、桃乃瀬さんに渡しておきますね」

 

「うん。ありがとう紫暮さん」

 

紫暮さんは、私の言葉を聞いて、とりあえずは大丈夫そうだと思ったからか、自身の座席について弁当を取り出し、昼食を食べ出した。

 

…聖歌の身に何が起こったのか、それは分からない。

……どうして、何も言ってくれなかったんだろう。どうして、私に何か隠し事をしていたんだろう。

 

一言でも言ってくれれば、私は……何でも聖歌の力になってあげたのに。

 

「い、苺ちゃん……。それって、私も……」

 

「……薬深ちゃんも行きたいの? 別にいいけど…」

 

聖歌と薬深ちゃんは、別にそれほど仲が良いというわけでもない。

私と薬深ちゃんは、ここ数日でそれなりに交流をしてはいるが、聖歌は薬深ちゃんとほとんど接点がないのだ。

 

そんな状態で、薬深ちゃんが家へやってきたところで、聖歌は応じてくれるのだろうか。

……少し不安が残る、けど、もし聖歌が嫌がったら、その時は、申し訳ないけど薬深ちゃんには帰ってもらおう。

 

『………』

 

「どうしたの? クール」

 

『別に何でもないクル。……薬深は、光聖歌と仲良くしたいクルか?』

 

「……苺ちゃんの友達だから。私も、仲良くできたらいいなって…」

 

薬深ちゃんは、確かにはじめて、魔法少女だと判明した時は、かなり過激なように思えた。

ブラックルーイを“魔女”と称し、親の仇かのように憎悪して、殺意を込めて戦う様は、まるでバーサーカーのようで、同じようにブラックルーイに不快感を覚えていたあの時の私ですら、少し引いてしまうほどに、彼女の気迫はすごかった。

 

けど、実際に接してみると、それは彼女の一側面。何なら、本来の彼女ですらなかったんだなと感じさせられた。

 

彼女の本質は、臆病で、人と接するのが怖くて。

けど、誰かと仲良くしたい。そんな、ちょっと寂しがり屋なかわいい女の子だったのだ。

 

私が少し話しかけただけでも嬉しそうにはにかむ様子からは、魔法少女として戦っていたあの時の様子など、微塵も連想できないほど、彼女は可愛らしく、それでいて守ってあげたくなるような、そんな子だった。

 

「私も、薬深ちゃんと聖歌が仲良くなってくれたら、嬉しいなって思う。けど……」

 

「わ、わかってるよ。……私は、光さんとは仲良くないから…。でも、何もしないのは、嫌なの…。いつまでも、臆病なままじゃ……駄目、だと思うから。……苺ちゃんが私に話しかけてくれたみたいに、私も…」

 

元々卑屈な考え方をしがちだったらしい薬深ちゃんだったが、最近は私と接していくうちに、それなりに前向きに生きていくことを心がけ出したみたいで。

 

「そっか。……きっと、聖歌も喜んでくれるよ」

 

そんな彼女の思いを、あまり無碍にはしたくない。だから私は、彼女の同行を快く許可することにした。

 

…聖歌が、どんな状態かは分からない。だから、あまり考えなしに薬深ちゃんと聖歌を会わせてしまうと、2人とも傷つけてしまう可能性がある。

 

だから、初めは私が聖歌と話して、慎重に、薬深ちゃんがいても大丈夫か、確認を取ろう。

 

遊美ちゃんにも連絡して、先に先輩に話を通しておいてもらうのもいいかもしれない。

そうと決まれば……。

 

『……これからも光聖歌や桃乃瀬苺と交流を続けていきたいのなら、伝えておきたいことがあるクル』

 

「クール?」

 

「……どうしたんですか?」

 

『……怪人が出たクル』

 

「え、そんな! それじゃ、はやく向かわなきゃ!」

 

「あ、私、も……」

 

薬深ちゃんについていた妖精、クールが、怪人の出現を報告してくる。

今、私の近くにはキュートがいない。だから、私が今から戦場に向かおうにも、変身する手段がない。となれば……。

 

「薬深ちゃん…」

 

「……あ………私……は……」

 

薬深ちゃんの体は、ブルブルと震えている。

この前の戦闘で、ブラックルーイにやられたことを思い出したのだろう。

元々、彼女は臆病な性格だ。

ブラックルーイに敗北した時のことを思い出せば、怖くなってしまうのも当然なのかもしれない。

 

……なら…。

 

「大丈夫だよ、薬深ちゃん、私、1人でもやれるから」

 

私が行くしかない。

多分、キュートだって怪人が現れたなら、現場に向かうはずだ。

 

絶対にキュートがその場にいるという保証はない。

けど、今動けるのは、私だけなのだ。

遊美ちゃんだって、魔法少女としての活動は、そこまで積極的なわけじゃないし。

 

だから………。

 

「私も! ………私も、行く、から…」

 

「薬深ちゃん……」

 

「……苺ちゃんと、せっかく仲良くなったんだもん……。私も……私も苺ちゃんの力になりたい…。臆病なままは、嫌なの……」

 

『……それが薬深の答えクルね』

 

「うん。だからクール、力を貸して」

 

『了解クル』

 

薬深ちゃんは、怯えながらも、立ち向かうことを選んでくれた。

 

なら、私も…!

 

「行こう、薬深ちゃん!」

 

「うん」

 

私と薬深ちゃんは、急いで教室を出ていく。

 

「ちょ、ちょっと! 桃乃瀬さん! 白沢さん! もうすぐ数学の授業が……! ……まったく……光さんのことがあるからと、優しめに対応しておけばこれですか…!!」

 

学級委員長の言葉は聞こえなかったことにして、私と薬深ちゃんは、駆け足で戦場へと足を運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。