TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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3 ただ1人の姉は懺悔する

昨日出会った魔法少女。

……間違いなかった。

 

『聖歌、どうしたんだっきゅ。いきなりキューのこと呼び出して。それも苺には伝えないで欲しいなんて、何があったんだっきゅ!』

 

「………昨日の、魔法少女のことで話しておきたいことがあったの」

 

『苺にはナイショの話っきゅ?』

 

「ええ、そうよ。苺は聞いたらきっと、戦う時にどうすれば良いかわからなくなっちゃいそうだから…。遊美にも話すつもり。あの子にも、関係のある話だから」

 

私達魔法少女には、『夢幻の魔』という、変身すると自動で発動する魔法がある。

この『夢幻の魔』が発動すると、他人から変身前の自分と、変身後の自分を結び付けづらくなるのだ。

 

だから、私を知っている人が魔法少女シャイニングシンガーを見ても、必ずしも=で結びつくとは限らない。

どこかで見たことあるような、まで辿り着ければ相当頑張った方と言えるくらいには、私とシャイニングシンガーが同一人物だと気付くことは難しいのだから。

 

でも、魔法少女ブラックルーイには、あまり強力な『夢幻の魔』がかかっていなかった。

勿論、一般人からすれば、変身前の姿と変身後の姿を見ても、簡単には2つの姿を同じ人物のものであると結びつけることは難しいだろう。

 

だが、私達魔法少女が見れば、魔法少女ブラックルーイの正体を見破ることは、容易かった。

 

苺も、変身前のブラックルーイを見かければ、すぐに昨日出会った悪の魔法少女であると気付くことができるだろう。

 

そして私は……。

 

『昨日のあのろくでもない魔法少女のことっきゅね。申し訳ないけど、キューはあの魔法少女のことは知らないっきゅ』

 

「……でも、私は知ってるの」

 

『……どういうことっきゅ?』

 

「その前に、昔話をしましょうか」

 

私の、かつての過ち。

私の、かつての罪。

 

『昔話っきゅか?』

 

「そう。昔話。とある場所に、2人の姉妹がいました」

 

2人の姉妹はそれはそれはとても仲が良く。いつもお互いにくっついて過ごしていました。

妹は元気で明るく、頭も良く、クラスでも人気者でした。

特にその中でも、とりわけ大人しい子に話しかけて仲良くし、誰とでも分け隔てなく話せる子でした。

 

ある日、姉妹で仲良くショッピングモールで買い物をしていた時のことです。

モール内に、“妖魔”と呼ばれる怪物が、現れました。

その怪物は、人よりも小さな体躯でありながらも、人よりも強力な力を持っており、あっという間にモール内の王者となりました。

 

人々は逃げ惑い、姉妹もまた、大人達が恐怖し、逃げ惑う光景に戸惑い、その場に立ちすくんでしまいました。

 

やがて人々の大半が避難を完了したその時。

モール内に残っていたのは、仲睦まじい2人の姉妹だけでした。

 

“妖魔”は、モール内に唯一取り残されていた姉妹に目を向け出し始めました。

その時、ようやく冷静になった姉妹は、2人で手を取り、共に駆け出して、“妖魔”から逃げることにしました。

 

しかし、“妖魔”はどんどんと姉妹へ迫っていきます。

姉妹は必死に走り、たくさんの距離を走りました。

 

走って走って走って。

 

そうして、ついに姉妹は疲弊し、妹は“妖魔”から逃げていく途中で、転んでしまいました。

 

妹は、姉を呼び、助けを求めます。しかし、“妖魔”はすぐそこまで迫ってきていました。

 

それを見て、姉は……。

 

「私は……」

 

『………』

 

「………必死に叫ぶ妹のことを振り切って、そのまま、ショッピングモールから逃げ去ったの」

 

『それは……』

 

「私はあの時、妹を見捨てたの。必死に私を呼んで、助けを求めていたのに……。だから、私は、妹は死んだものだと思ってた。けど、それが……」

 

『もしかして、昨日の魔法少女は………』

 

そうだ。あの時、私は妹を見捨てた。

妹の死体は、見つかっていない。あの日、ただ行方不明とされて、いまだに家には帰ってきていない。

 

そして、昨日姿を見せた魔法少女ブラックルーイ。

彼女の姿は、私の妹そっくりだった。

 

姿だけじゃない。声や、何気ない仕草。

その節々が、私の妹である、光千夜を物語っていた。

 

「……私の妹は、生きてた。あの日、死なずに……。でも、あの子は……千夜はもう、私の知る妹じゃなくなってた」

 

生きていた。それだけなら、素直に喜べただろう。

実際、今でも妹が生きていたのだという事実に、喜びを覚えている自分がいるのも事実だ。でも、それ以上に。

 

「人々が絶望する姿が好きだなんて、昔なら絶対に言わなかった。千夜は、誰よりも人の幸せを願う子だったから」

 

『……あのブラックルーイが、到底そんな心優しい奴だとは思えないっきゅ。人間違いの可能性も……』

 

「きっと、絶望したのよ。私に見捨てられたあの時に。千夜は、私に懐いていたから。私は、千夜の前で頼れる姉を演じていたから。千夜よりも頭が良いわけでもないのに」

 

浅ましい。私は、実際にはただの臆病者なのに。千夜の前では、かっこいいお姉ちゃんでいたくて、それで。

 

……今、苺に対して、頼れる親友として振る舞っているのも、それに近しい。

いや、それよりも酷い。

私は、苺に無意識に千夜を重ねていた。

いなくなった妹の穴を埋めるかのように、私は、苺にとっての頼れる姉のような存在を目指していたんだろう。

 

本当に、浅ましい。

そんな私の浅ましさのせいで、千夜の未来を滅茶苦茶にしてしまったというのに。

 

『……“妖魔”。一時期、怪人が用いられる前に、組織が使っていた手駒っきゅね』

 

「そう、ね。私と千夜を襲ったのは、“妖魔”だった。怪人ではなく。それがどうしたの?」

 

妖魔と怪人。この区別は、私とキュートしか知らない。

はじめに魔法少女になったのは私で、その時に活動していたのが妖魔。

後から苺が魔法少女になった時には、街で暴れているのは怪人だった。

 

だから、苺は組織が用意した敵=全て怪人と思っていることだろう。

実際には、妖魔と怪人は性質が異なるということは、きっと知らない。

 

が、本当にその話は今必要なのだろうか?

 

私は、千夜のことで頭がいっぱいだというのに。

 

『………少し、疑問に思っていたことがあるんだっきゅ』

 

「…?」

 

『本来、魔法少女の力は魔法少女にしか扱えないっきゅ。それには一つの例外もないはずだったっきゅ』

 

だった?

ああ、そういえば……。

 

「怪人の力も、魔法少女に近しい力、だったっけ? 私が相対した感じだと、基礎は妖魔のように感じたのだけれど」

 

『そうだっきゅ。確かに基礎は妖魔だっきゅ。けれど、魔法少女しか持ちえない性質も、怪人は持ってるんだっきゅ。けれど、その疑問は昨日、解消されたんだっきゅ』

 

「昨日……? まさか……」

 

『魔法少女ブラックルーイが使っている魔力と、怪人の使っている魔力の性質が、完全に一致していたんだっきゅ』

 

魔法少女には、それぞれの魔力の性質というものがあるらしい。

その性質は、1人につき1つ。

それぞれの魔法少女が持つ性質は、決して被ることがない。

だというのに、怪人と魔法少女ブラックルーイの魔力の性質が、一致している。

 

それの、意味するところは…。

 

「怪人は、魔法少女ブラックルーイから生み出された……?」

 

『そういうことになるっきゅ』

 

それじゃあ、千夜が、千夜の生み出した怪人が、街を破壊して回っていると、そういうことになるということ…?

 

私が、見捨てたせいで?

 

千夜に、こんな大罪を負わせることになってしまったというの?

 

『組織は多分、魔法少女ブラックルーイを使って、様々な実験を行ったんだっきゅ。怪人を作り出してしまうくらいの実験っきゅ、きっと、想像を絶するほどの、酷い人体実験を繰り返されたんだっきゅ。そうして、魔法少女ブラックルーイは心を病んで……』

 

……人体、実験……?

 

「そ、んな………」

 

『な、何も落ち込む事はないっきゅ! 今のはただの状況整理だっきゅ! それに、これも仮説で……』

 

「それでも千夜が大変な目にあったのは事実でしょ!? 落ち込まないでいろっていう方が無理よ!!!!」

 

仮説だろうとなんだろうと、私が千夜を見捨てた事実は変わらない。

それに、あの明るくて、誰にでも優しかった千夜が、あんな風に豹変してしまうような出来事が千夜の身に起こったことも事実。

 

一体、組織『ワ・ルーイ』で、どんな扱いを受けたのか。

 

「こんなの、恨まれて当然よ……」

 

きっと千夜は、私のことを恨んでいるだろう。

 

仲良く過ごせていたあの日々はもう、取り返せない。

 

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