TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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38姪っ子魔法少女と幹部な叔母は語らう

 

「頭パンクしそう…」

 

「え、大丈夫? 頭痛いもんね。一旦横になろっか?」

 

「いや、頭痛いとかそういう話じゃないんですけど、ただ、衝撃的な話だったというか……」

 

叔母、叔母……ですかぁ……。

会ったことないんだよね、叔母。そういえば、亡くなったとかそんな話あったっけな…?

正直全然覚えてないや。写真とかあったわけじゃないし。

 

「まあ、突然貴方の叔母です、なんて言われたら困惑するよね」

 

「仮に私の叔母なんだとしたら、滅茶苦茶若く見えるんですけど……」

 

ワンチャン10代でも通用するような容姿してるんだけど…?

本当にジェネちゃん俺の叔母なのか? 全然そんな風には見えませんぜ。

 

「私の外見年齢は20歳でストップしてますからのう! 若くて可愛い叔母がいてルーイちゃんも嬉しいでしょ?」

 

「嬉しい嬉しくない以前に感情が追いつかないんですが…? もしかして実は『ワ・ルーイ』って、私の血縁関係者で構成されてたり? 師匠にも血のつながりが!?」

 

「ぷっ! それはないない。たまたま私が組織に入ってただけだからね〜。ヒンナちゃんはルーイちゃんとは全くの無関係だよ」

 

何でジェネちゃんが俺に優しくするのかは、何となくわかった。

ジェネちゃんからしたら俺は姪っ子になるわけだ。

よっぽど姉との仲が悪いとか、子供が嫌いとかじゃない限り、姪っ子を嫌悪したりする理由はないだろう。人によっては姪っ子とか甥っ子可愛くてしょうがないってタイプもいるだろうし。

 

ただ、なあ……。

 

「あと、検査結果だけど、やっぱり魔法の代償だったね。さて、ラフと契約させるべきか……」

 

「……ジェネちゃんって、その……『ワ・ルーイ』にずっと所属するつもりなんですか?」

 

「うん。やめるつもりはないよー」

 

俺が光堕ちすると決めた以上、ジェネちゃんとは敵対することになる。

その時、やっぱり殺すっていうのはなしだ。叔母だし、俺も彼女のことは嫌いじゃないから。

 

けど、じゃあどうやってジェネちゃんに退場してもらうかが問題となる。

 

普通に倒して罪償ってくださいね〜。のパターンだと、俺にも被害が…。いや、それはいいの。俺は最悪逃げ出すってこともできるし。洗脳デッキで同情買えるからね。

ただ、お姉ちゃんとかが困るだろうなぁと思うと、ちょっとねえ……。

 

俺の場合は、洗脳バリアで情状酌量の余地ありだし、年齢的にまあしゃーないね! 無罪! ってなる可能性もまあなくはない。司法のことよく知らないのでどうなるかは分からないけども。

 

ん、でも待てよ…?

 

【ルーイちゃんが生まれた時には、多分私という存在は世間的に死んでただろうから】

 

「ジェネちゃんって世間的には死んでるんですか?」

 

「ん? そうだね。夏場夕音という存在は、戸籍上死亡したものとされてるよ。だから誰も探さないし、私がここで組織に属そうが何の問題も生じないってわけだね」

 

じゃあ、行けるぞ…?

いや、組織崩壊後、どうジェネちゃんが暮らしていくのかはちょっと問題ありな感じするけど、戸籍ないなら行方もくらましやすいし、俺と一緒にお姉ちゃんの住んでる光家に転がり込めば、組織崩壊後も何とかなるんじゃないか?

 

うん、そうだね。

幹部様は生かす。好きだし。それで、師匠は適当に魔法くらわせまくってボロボロの姿になってもらって、死んだふりでもしてもらおう。痛くても我慢してもらう。

そして、ジェネちゃんは行方をくらませて、こっそり光家に隠居だ!

 

うむ、完璧だ。後は最初にピュアをぶっころ⭐︎して、残りの幹部にもご退場いただいて、仕上げにクロマック君仕留めれば……。

 

完璧だ! 俺はまだ完璧な光堕ちができるぞ!

 

「だからさ、私がルーイちゃんの居場所になってあげるよ。ルーイちゃんは、自分のことを組織のモルモットだって、使い潰されて当然の存在だって思ってるのかもしれないけど」

 

「はい」

 

思ってないよ。光堕ちして組織ぶっ潰す気満々だからねえ。使い潰されるつもりは全くない。むしろ光堕ちシチュの再現に利用させてもらってますよ。

 

「ルーイちゃんは、組織に貢献できることに、喜びを感じているのかもしれない。そう洗脳されてるからね。別にそれは否定しないよ。今のルーイちゃんにとっては、きっとそれが幸せなんだろうから」

 

「そう、ですね」

 

別にそんなことはないんだけどねえ……。組織の役に立ちたい! とは全く。

いやまあ、何の役にも立ててなかったら、正直ごめんなさいな気持ちにはなるよ? 仕事できなくてすみません、もうちょい頑張ります、くらいは思うけども。

 

「けど、少しは自分を大切にすることも覚えて欲しいかなって。楽しいこととか、趣味とか…。組織の誰も、そんなことルーイちゃんに求めてないかもしれない。けど、私だけは、ルーイちゃんの味方だから。組織の誰がルーイちゃんのことを責めようと、私だけはルーイちゃんのことを裏切らないから」

 

ジェネちゃんは、俺のことを優しく包み込むように抱き寄せる。

前に抱き寄せられた時に、母親に抱いてもらった時の感覚に近いなと感じていたが、その感覚は正しかったのだろう。

 

だってジェネちゃんは、母親の妹で、俺の叔母にあたる人だったのだから。

 

……ど、どうしよ。

本当は洗脳されてなくて、光堕ちしたいなーと思って組織に従順なフリしてるだけなんですって言おうかな…。

ジェネちゃん善意100%でこれ言ってるよね? まるで自分の娘みたいに姪っ子のこと扱ってる感じだ。

 

うわーすごい罪悪感。

 

……でも、ここで折れたらダメだ。完璧な光堕ちのためにも、俺の内心を誰かに打ち明けるわけにはいかないのだ。

 

なんか、ワンチャン光堕ちに協力してくれそうな気もしなくはないけど、もし光堕ちしたい旨を打ち明けた場合、組織崩壊後に一緒に暮らすことになるとすれば、お姉ちゃんに「千夜は光堕ちしたいからって言ってて〜」って感じで暴露されるかもしれないし。それは困る。普通にお姉ちゃんには嫌われたくないしね。

 

けど、それはそれとして罪悪感はあるので…。

 

「……ジェネちゃん、心配しなくても、趣味はあります。師匠が、一緒にアニメとか漫画とか、見てくれてますから」

 

洗脳はされてる。けど、ちゃんと自分の趣味とか、好きなものとかはあるよーっていうアピールをしておく。これで組織のためにしか動けませんって言ったら、多分ジェネちゃんは悲しくなっちゃうと思うから。

 

「そっか。ヒンナちゃん……。まあ、ヒンナちゃんはいい意味で分かりやすいというか……裏がない部類な子だからね。組織の中じゃ、信頼できる方だと思うよ。……私もヒンナちゃんと仲良くなりたくて、ヒンナちゃんのミステリアス趣味に理解を示そうとしてるんだけどね〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くしゅっ……! ってわあぁ! 書類が……くっそ……何で私がこんなこと……」

 

幹部ヒンナは、書類の整理を行っていた。

彼女の机の上には、様々な書類が散らばっており、本来おしゃれに装飾されているはずのその一室は、白一色で塗り潰されてしまっていた。

 

そんな彼女の元に、一本の連絡が届く。

 

「はー! こんな時に電話? 私は忙しいのよ…! どうせかけてきたのは私よりも働いてない、暇しているやつに決まっているわ」

 

溜まりに溜まった業務に苛立ちを覚えている彼女は、電話の主にもその矛先を向ける。

が、腐っても彼女は幹部。自身の業務に忙しいからといって、感情のままに連絡を無視するなどという行為は行わない。

 

作業を行っている手を止め、側にあった電話を手に取り、着信相手を確認する。

 

肝心の、電話の相手は……。

 

「げっ、オクトロア……」

 

組織の業務を一旦に担っており、また、彼女のやらかしの尻拭いを行ってくれている触手の幹部、オクトロア。それが、電話の向こう側にいる者の正体だった。

 

流石に、彼の連絡を蔑ろにするわけにはいかない。そう考えたヒンナは、オクトロアからの電話をとる。

 

「もしもし? えーと、用件は?」

 

『もしもし? ヒンナさんですか? ええ、たいした話ではないのですが……。最近少しピュアさんの様子がおかしいので、一応連絡を入れておこうと思いまして』

 

「はあ、ピュアが…?」

 

オクトロアからの連絡は、彼やヒンナと同じ幹部であるピュアの様子がおかしいという内容のものだった。ヒンナからすれば、他の幹部のことなどどうでもよく、様子がおかしいと聞いてもあっそう、だから何? くらいにしか思わないのだが、電話相手は自身のやらかしの尻拭いをしてくれているオクトロアであるため、口には出さない。

 

『自分は関係ないと、そう思っていらっしゃるかもしれませんが、彼はルーイさんに執着しています。何かアクションを起こす可能性がないとは言い切れません。なので、ピュアさんとルーイさんが接触しないよう、貴方にはお願いしたいのです』

 

「ピュアがルーイを?」

 

オクトロアの指摘通り、自分には関係ないと、そう考えていたヒンナだったが、オクトロアがルーイという名前を出したことによって、その態度は急変する。

 

彼女にとって、ブラックルーイは、ただのモルモットだ。

けれど、自身の趣味を共有し、理解してくれている存在でもある。

 

彼女にとって、ブラックルーイという存在の損失は、それなりに痛みを伴うものだ。

だからこそ、気にせずにはいられない。

 

『ええ。彼は以前、マインドライフとも交流していましたしね。ルーイさんを近づけさせない方が良いでしょう』

 

「わかったわ。けど、それなら……」

 

『勿論、ジェネさんとルーイさんの距離が必要以上に近くなるのも避けるようにしてください。貴方をジェネさんの元に置いているのは、そのためでもあるのですから』

 

「わかっているわ」

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