TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

50 / 134
47親友魔法少女は自分を律する

 

「千夜、おはよう」

 

「おはよう、遊美」

 

私と千夜は、並びたって、歩く。ところどころで、街には破壊された跡が残っていて……。それを見る度に、千夜は顔を曇らせる。

 

「酷い光景だよね、本当」

 

「……うん、そうだね……」

 

「たくさんの人が亡くなって、たくさんの人が傷ついて……。これをしでかした犯人は、今、何を考えて生きてるんだろうね?」

 

私の言葉に、千夜はぷるぷると震えて、涙を堪えながら、私にバレないようにと、必死に笑顔で取り繕おうとする。

けど、外から見れば、ただの強がりであることは明らかで。

 

「最低な奴だよね。今何をしてるのかは知らないけど。街を好きなだけ破壊し尽くして、好きなように暴れ回った奴が、今ものうのうと生きてるなんて、信じられないな」

 

「そう……だね……」

 

千夜はスカートをぎゅっと握りしめて、私に表情を見せないように俯く。

 

傷付いてるんだろう。私の言葉に。

 

「ねえ、千夜、今まで何考えて生きてきたの? よくのうのうと外を出歩けるよね」

 

「遊……美……?」

 

「千夜って、本当に最低だよね。本当は、一生償って生きていかなくちゃいけない。皆千夜のこと憎んでるよ。こいつのせいで、あいつさえいなければって」

 

「あ……い…や………」

 

何でもできたはずの千夜は、もう何もできない。

私の言葉一つで傷付き、再起不能になってしまうほどに精神は脆く、壊れやすい。

 

「みーんな、千夜のことが大嫌い」

 

「……や……」

 

「千夜のお姉さんも、千夜のせいで壊れちゃったし、お母さんも、千夜のことを思い出したせいで、狂っちゃった」

 

「ちが……わたし……は……」

 

あーあ。可哀想な千夜。

いろんな人から憎まれて、嫌われて。

味方になってくれるはずの肉親は、自分のせいで壊れちゃってて。

 

本当に、可哀想で哀れで。

もう、どうしようもないほどに救いようがなくて。

 

あーあ。終わっちゃったね、千夜の人生。

 

「一生償って生きていかないとね。ごめんなさいって。色んな人に地面に頭を擦り付けながら謝罪して…。踏まれてもみっともなく、謝罪をし続けなきゃね」

 

「ごめん……なさい……わたしの……せいで……」

 

「私だって、千夜のせいで……千夜のせいで、おかしくなっちゃったんだから。責任取ってもらわないと、ね?」

 

私は千夜の体を抱きしめる。

小さくて、無力で、簡単に潰れてしまいそうなほど、弱っちくて頼りない体を。

 

「大丈夫だよ、千夜。私もいるから。どうしようもないほど救いようがない千夜のこと、私は見捨てないから。ほら、だから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

千夜の洗脳映像を見てから解散した翌日。

 

私は、ネットでいろいろな……千夜と似たようなシチュエーションの映像や漫画作品を見漁っては、どうしても満たされきれずに、悶々とした日を送っていた。

 

脳内にあの千夜の映像が焼き付いて離れない。

勉強にも一切集中できなくて、体調が悪いと嘘をついて学校や塾を休むまでしてしまった。

親は普段の私が良い子にしていたからか、疑うこともなく私が休むことを快く許可してくれていた。

 

体調を心配してくれる親に、罪悪感を覚えながらも、私はこの悶々とした感情を発散するために、収めるための行動をする。

 

けど、どれだけ探しても、私の中のそれは満たされない。

 

今日の夢の中には、千夜のことを徹底的に責め立てて、それに悦びを感じてしまうような、醜い私が、いた。

 

わかってる。わかってるんだ

 

「やっぱり…あの映像が……千夜じゃないと……って、違う! 私は、そんなこと……」

 

頭の中では、わかっている。

千夜が……千夜があんな目に遭っているのを見て、私は……。

 

けど、それを否定したくて、別の何かで満たそうとして、けれど満たされなくて……。

 

やっぱり、あの千夜の映像じゃないと、私は……。

 

「駄目だ………違うの、私は……千夜のこと……友達だって……」

 

友達が、親友が酷い目に遭っているのを見て、それで喜ぶなんて、狂ってる。おかしい。

そんな価値観があるから、私は、自分の中にある醜いものを否定したくなる。

 

私の中にある悪魔が、囁く。

 

キュートと協力して、先輩の記憶を消してしまえば、もう、千夜の身を案じる者はいない。苺先輩だって、同じように千夜のことを忘れさせてしまえば……。後は千夜を、私の好きなようにできる。

あの映像と同じように、好きなだけ千夜の脳を弄って、好きなだけ千夜の尊厳を破壊できる。

 

そんな、醜い囁きが。

 

「違う違う……私はそんなこと思ってない。千夜のこと、大事な友達だって、だから…」

 

あの映像を、見なければよかった。そうすれば私は、こんなことには……。

 

千夜の身を案じる、ただ1人の親友でいられたはずなのに。

 

私は、自分で自分が嫌になる。

どうして、こんな醜い欲望を持ってしまったのか。

 

私はただ、千夜のこと、親友として、大切に思っていただけのはずだったのに……。

 

「あーちゃん…」

 

私は、千夜以外のもう1人の親友、あーちゃんに助けを求める。

ここ最近連絡がなくて、どうしているのだろうと思っていたが…。

 

ふと、メッセージアプリを開いてみると……。

 

そこには、既読の文字。

……既読の文字は、私のメッセージを読んでいるということを証明している。

昨日までは、既読なんてついていなかった。けど、今日はついている、ということは……。

 

「電話したら、出てくれるかも」

 

私は、あーちゃんに電話をかけてみる。

 

『……もしもし?』

 

繋がった。

暫く連絡が取れなかった、あーちゃんに。

 

ドイツ人の魔法少女、リーベル=ローゼンベルクに出会ったあの時以降、一切私の目の前に姿を現すことのなかった、彼女に。

 

「あーちゃん、暫く連絡取れなかったけど、どうしてたの?」

 

『あーごめん。ちょっとゴタゴタしてて…。私の方から連絡の話してたのに、何も返事できなくてごめんね』

 

よかったと、心の底からそう思う。

少し、心配してたから。

先輩や千夜のことで頭がいっぱいで、あまりあーちゃんのことに頭を割く余裕はなかったけど。

 

それでも、あーちゃんのことは、大事な親友だと思ってるから。

 

……大丈夫だ。

私はあーちゃんのこと、ちゃんと心配できてる。

あーちゃんが不幸な目に遭うことを、望んでない。

 

あーちゃんの幸福を、心の底から願えてる。

私はまだ、狂ってない。

私はまだ、大丈夫だ。

 

だから……。

 

「ううん。全然大丈夫。それで………あの、また今度、遊びに誘ってもらえないかな?」

 

『え? うん! 勿論良いけど。何する?』

 

「カラオケとか行こうかなって。あーちゃんどんな歌声してるのか気になるし」

 

『カラオケ、いいね! いつ行こっか?』

 

「うん、ちょっと今私の方もゴタゴタしてるから、ある程度落ち着いたらまた連絡しようかなって。それでもいいかな?」

 

『全然大丈夫! それじゃあ、都合が良くなったらまた連絡して! ゆーちゃんからの連絡は、いつでも出れるようにしとくから!』

 

私はあーちゃんと、遊びの約束を取り付ける。

今は、千夜のことを頭から追い出さないと。

 

じゃないと私は、本当に千夜のこと……。

 

「大丈夫、まだ、間に合う……私は、千夜のことを、そんな目で見たりなんかしない。千夜の不幸を、望んだりなんかしないから…」

 

あーちゃんと交流して、親友としての感覚を……純粋に親友を想う気持ちを、取り戻す。

思い出すんだ、映像を見る前の……ただの親友でいられたはずの私のことを。

 

そうすれば、私はまだ、千夜の親友でいられるんだから。

 

苺先輩と一緒に千夜を助けて、それで……千夜におかえりって、心の底から、そう言うために。

 

私は、ちゃんとしないと。

おかしくなっちゃ、いけないから……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。