「おはようルーイちゃん! 幹部会議ぶりだね」
「お久しぶりですピュア様、今日はどういったご用件で…?」
俺は現在、ピュアのアジトへと出向いていた。
ピュアのアジトのロビー的な場所に立たされている俺は、対面するピュアは視界に入れずに、俺は周囲を見渡して、ピュアのアジトがどういう内装になっているかを確認する。
色々な絵画が飾られていて、モナリザ的な女性像を描いたものもあれば、人々が醜く争う戦争や合戦の様子が描かれた絵画などもあって、その種類は多岐にわたる。
全くもって興味ないが、ピュアは意外と芸術好きなのかもしれない。
ちなみに、師匠はアジト破壊の件で業務にかかりっきり、ジェネちゃんはついてこれない、キュヴァちゃんもなんか予定あるらしくて来れない、みたいな感じで、見事に孤立状態でピュアの元へと送られることになったんだけど。
「街の襲撃ってやつをしてみようと思ってさ。それでルーイちゃんの予定も空いてるっぽかったし、せっかくだから一緒にどうかなぁと思って」
……師匠の言うとおり、幹部様の指示ではなく、自分で勝手に思い立って襲撃の計画を立てたようで。
……うん、ならまあ、俺が裏切っても幹部様は文句言わないでしょ。
「そうなんですか」
「うん。他に一緒に行ってくれそうなのがいないしね。イグニスは別の地域の魔法少女と戦闘してるらしいし」
別の地域の魔法少女……か。
そっか、何もキューティバースちゃん達だけじゃないもんね、魔法少女って。
というか、幹部イグニスってちゃんと活動してるんだな。まあ、それもそうか。
キュヴァちゃんに突っかかったり、幹部の欠員を嘆いたりしてたんだ。そりゃ自分の業務はしっかりこなすタイプなんだから、やってない奴らに噛み付きたくもなるってものだ。
逆にしっかり職務をこなしてる幹部様に対しては、遮って悪かった的なこと言ってたりしてたし、なるほど、あんな態度してるけど、割と真面目な方なんだな。
「幹部様くらいかと思ってました。真面目にやってるの」
「確かに先輩は真面目だけど、まあ、イグニスさんも頑張ってる方だと思うよ。基本4人組? の魔法少女の相手をしてるらしいけど、1人強い子がいるらしくてね。キュヴァちゃんとか、たまにイコル様も連れて、何とか対応してるらしいけど」
「へー」
キュヴァちゃんと仲悪そうなのに、戦闘は一緒にするんだ。ビジネスパートナー的な感じなのかな? というか、キュヴァちゃんって別の幹部の部下なんじゃないっけ? イグニスの部下じゃないはずだよね?
そんなこと言い出したら俺が襲撃する時にサポートとして付いてきたのは何でって話になっちゃうんだけど。
イコル様ってのが多分集合会議の時に欠席してた幹部の名前だろうから、その人の部下がキュヴァちゃんでってことなのかもしれない。
というか、相手が魔法少女4人とはいえ、幹部2人とキュヴァちゃんで対応しなきゃいけないレベルって結構強くない?
いや、イコル様って幹部はたまにしか連れて行ってないのかもしれないし、キュヴァちゃんも毎回連れて行ってるわけじゃないんだろうけどさ。
怪人もいるわけでしょ? 場合によっては妖魔も使うわけで……。
んー、案外、『ワ・ルーイ』の戦力も十分ってわけじゃないのかもしれないね。
俺は知ってる魔法少女のことしかわかんないから、戦力十分足りてるように見えてたけども。
……まあ、多分今後イグニスと関わることなんて皆無に等しいだろうし、そんな気に留めておくことでもないか。
今考えるべきことは、今回の襲撃について、だ。
「まあ、大体わかりました。今から行きます?」
「んーそうだなぁ。本当はルーイちゃんと一緒に行きたいところなんだけど、俺、準備があるからね。先行っててよ」
「? わかりました」
? 呼んでおいて1人で襲撃しろと?
よくわからないけど、まあ、ピュアと一緒に街の襲撃したいかって言われたらそんなことないしね。
……何でだろうなぁ。基本『ワ・ルーイ』で実験されてる時に、面倒臭さとか、実験による身体的な疲れとか、そういうのは確かにあったんだけど、別に嫌だとか、そういう感情はなかったんだよな。
しんどいけどまあしゃーないか。くらいの感覚で受けてたし、たまに不快感を伴うものとかもあったけど、終わったらまあこんなもんか、くらいで済ませてたし。
だけど、ピュアだけは駄目なんだよね。
なんか、どーしても不快感が消えないっていうか。
関わり終わった後も、あいつキモい……って感情がずっと残り続けてるんだよなぁ。
本当、何でなんだろうね?
ま、それは良いとして。とにかく、襲撃の準備準備っと。
にしても、1人かぁ。
……まあ、前にキュヴァちゃんと一緒に襲撃した時のことを考えれば、魔法少女達ってそんなすぐやってくるわけでもないし、ある程度は耐えられるだろうけど…。
「ピュアのこと待つのか……なんかやだなぁ」
頼りにするのがピュアって、やっぱりうーん……って感じ。
というか、裏切り大作戦とか言ってるけど、どうしよ?
とりあえず、俺は自分の体に魔力増強剤を摂取させ、分身魔法を使う。
何でかって? いつでもゆーちゃんの連絡には出れるようにするって約束してるからね。分身でいつでも広井愛結が出動できる状態にしておかないとさ。
戦闘中にゆーちゃんから電話きても対応できないでしょ?
そういうこと。
それに、ゆーちゃんちょっと様子がいつもと違ったからね。
声だけとはいえ、なんか震えてた? というか、まあ、とにかく体調悪そうだったというか。
何かに縋るような、か細い声だったような気が……。
いやでもわかんないな。電話越しだったし、もしかしたら電波が悪かったとか、スマホの調子が良くなかったとか、そういうことなのかもしれない。
「とにかく! ゆーちゃんのことは任せたぞあーちゃん!」
「おっけールーイ。といっても、ゆーちゃんから連絡来なかったら暇してるだけになるけどね〜」
暇してるっていうか、分身中でゆーちゃんと会ってない時はその辺ぶらぶらして遊んでるんだけどね。
暇といえば暇かもしれんが、金ある限りは何かしら暇を潰す手段はあるし、戦闘とか実験とかと比べたら、変に疲れることはないから、俺もできればそっちが良かったんだけどなぁ。
まあ、分身が解けたらどのみち統合されるんだし、あんま関係ないんだけどさ。
ただ、分身してる今だけは意識が分離してる状態なもんだから、どうしてもそういう発想は出てくるんだよねぇ。
「ま、いいんだけどさ」
「?」
「こっちの話。どうせ統合したら分かることだから、気にしないで良いよ」
統合した後は、分身の時あんなこと考えてたけど、結局どっちも体験したって感覚あるんだから同じじゃん、って発想になるんだけどね。
本当、自分でも不思議だわ、分身って。
「ま、そだね。どうせ共有されるんだし、気にしなくていっか。それじゃあ、襲撃、頑張ってきてね〜」
「はいよー」
俺はヒラヒラと手を振りながら、分身と別れを告げる。
さて、気になる襲撃地点は……。
「普段とはちょっと違う場所だね。キューティバースちゃん達来れるかなぁ?」
普段の活動地域とは違う位置。まあ、ピュア主導の計画だから幹部様のやり方とは違うってことなんだろうけど。
ちょっとキューティバースちゃん達が現場に向かうの遅れたりしそうで不安だよね。土地勘あるのかな? 大丈夫そう?
スターチススクラッチとか、ライオネルなんちゃらは活動範囲知らないし、ワンチャン来るかもしれないけど……。
「まあ、やばそうだったら街の襲撃してるフリしとけば良いし、大丈夫大丈夫」
どっちにしろ裏切る予定だしね! セクハラピュアめ、首を洗って待っていろ!
ま、『ワ・ルーイ』は俺が怪人に人殺させないようにしてても何も言ってこないし、分身魔法の件もバレてないし、何とかなるでしょ!
ピュアのこと裏切ったってへーきへーき。どうせ見逃してくれるって!
俺は光堕ちのことだけ考えて生きていくって決めてるからね〜。お気楽にいくよー。