TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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54正義の魔法少女は傷付きながらも立ち向かう

 

 

スターチススクラッチを庇うために、私は彼女の前方に立ち、幹部トーレストの攻撃を受ける。

 

魔法少女に変身することで、身体能力は通常の人間のそれを遥かに凌駕しているはずなのに、幹部トーレストの攻撃は重く、彼の攻撃で、私の足が地面に深く沈み込んでしまうほどのものだった。

 

「っ………」

 

どうにか耐え忍んだ。けれど、最初の一撃だったから耐えられただけで、攻撃を何度も繰り返し行われれば、いくら魔法少女といえども、無事では済まないだろう。

 

「『フルーツパラダイス』」

 

私は魔法を放ち、幹部トーレストから距離を取る。

基本的に、『フルーツパラダイス』はあまり積極的に使いたい魔法ではない。

 

『フルーツパラダイス』は、様々なフルーツの見た目をした固形の攻撃魔法が四方八方に飛び散り暴れ回る、というものなのだ。けど、この魔法は制御が効かず、仲間の魔法少女にも当たってしまう危険性がある魔法だ。

 

だから、普段はシャイニングシンガーの『リズライド』で、『フルーツパラダイス』が敵にだけ向かうように調整してもらうんだけど……。

 

シャイニングシンガーは……聖歌は、今ここにはいない。

 

『フルーツパラダイス』を使うのは、危険だ。

けれど……。

 

「……キューティ……」

 

「スターチス、大丈夫?」

 

こうでもしないと、スターチスを守れそうになかった。

私の魔法の中で、あの巨体を止めうるのは、『フルーツパラダイス』くらいだったから。

 

「…………状況的に、私達に、勝ち目は…ない……完全に、流れを………持って……行かれた」

 

『ライオネルにも連絡していますが、それだけでこの戦況をひっくり返せるかどうか……といったところですわ』

 

ピュアには2本私の『ストロベリーアロー』が刺さっているし、ストック魔法による牽制も出来ている。

 

けど、ストック魔法にもデメリットはある。

ストック状態にある弓を解除しない限り、その弓が存在している場所以外で『ストロベリーアロー』を扱うことができないというデメリットが。

 

勿論、二度目以降の魔法行使は魔力消費量が上昇してしまうため、あまり二度目も同じ魔法を行使するということは多くはない。

 

そのため、基本的には問題ないのだが……。

 

「手数が足りない…」

 

あの巨体を打ち倒すためには、二度目だの何だのと気にしている場合ではない。使える手はいくらでも使った方がいい。

 

しかし、ピュアへの牽制のために弓を“ストック”させている以上、『ストロベリーアロー』はトーレストに対しては使えない。

 

「………レディ……ライオネルが………来る………まで……あと、どれくらい?」

 

『連絡がつきませんわ……仕方ありませんの。どのみちスターチスは戦闘が続行できる状態ではありませんし、私自身が時間稼ぎいたしますわ』

 

「時間稼ぎって……妖精は戦えないんじゃ?」

 

『魔法少女のようにはいきませんわ。しかし、私達が貴方達を利用して戦わせているのに、私達自身が何もしないのは、筋が通っていないとは思いませんの?』

 

「……わかった。私と一緒に戦おう。けど、無理しないでね」

 

スターチスが動けないのを見てか、レディがリーベル……魔法少女ライオネルグレーテが来るまでの時間稼ぎを手伝ってくれることになった。

戦力として、頼りにできるかと言われると、やっぱり魔法少女ではないから、どうしても物足りなさはあるけれど…。

 

でも、私は彼女の思いに、ちょっぴり救われた気がした。

1人で戦うより、誰かと一緒に戦った方が、心強いと思うから。

 

「行くよ、レディ」

 

『背中は預けましたわ!』

 

私とレディは、トーレストへと突撃する。

最初にレディがトーレストの前へ出て、彼の攻撃がレディ自身へ向くように誘導する。

レディはおそらく、攻撃手段を持っていない。だから、少しでも私に攻撃が向かないように、できるだけトーレストの攻撃を受けることにしたんだろう。

 

おかげで、私はトーレストの背後へ回ることができる。

 

「『ストロベリークラッシュ』」

 

私は、トーレストの背後から、苺型の魔法弾を放つ。

しかし、彼にはあまり効いていないようだった。

 

私が攻撃を仕掛けたことにより、トーレストの注目がレディから私へと移る。

そして、トーレストは私目掛けてその拳を振り下ろした。

魔法を放ったばかりの私は、すぐには回避動作に移れず、そのまま……。

 

『っ! 危ないですわ!!』

 

レディが代わりにトーレストの攻撃を受け止めることによって、私自身は何のダメージを負うこともなく、そのまま、レディは私のはるか後方へと吹き飛ばされていった。

 

「レディ!!」

 

レディは地面を転がっていき、そのまま倒れ込んで動かなくなってしまった。

スターチスの変身が解除されていないことから、レディが死んだ、ということはないのだろうけど……。

 

「そんな……」

 

共に戦おうと、戦う力を持っていないにも関わらず、そう提案してくれた彼女が、こうもあっさりとやられてしまったという事実に、私は焦りを隠せない。

 

本来は戦闘する力を持っていないのだから、当然の帰結ではある。けど、危機的状況で手を貸してくれたレディの存在は、私にとってありがたかったし、心強かった。だからこそ、そんなレディがやられてしまったという事実に、私は動揺してしまう。

 

ライオネルグレーテには、連絡がついていない。

遊美ちゃんにも、連絡はしていない。

聖歌も、壊れてしまって、動ける状況ではない。

 

……このままじゃ、私は……。

 

「あう……ぐがぁ!!」

 

トーレストは、再び私に向けて拳を振るう。私はその攻撃から逃れる、が…。

 

「くっ……」

 

トーレストの拳は、地面へと直撃し、その衝撃で、回避行動をとっていたはずの私の体は大きく揺さぶられ、壁へと打ち付けられてしまう。

 

「痛っ…!」

 

そして、トーレストの猛攻は、まだ終わらない。壁に打ち付けられた私に、追いうちをかけるように、トーレストは壁に向けて突進してくる。

 

痛みに悶えながら、私は何とか右側に転がり込むようにしてトーレストの突進攻撃から逃れる。

けれど、壁に打ち付けられたことによって負った傷が、回避のための転倒によってさらに酷くなり、一瞬にして、私の体は傷だらけになってしまっていた。

 

壁に大きくめり込んだことで、暫く動きを取れずにいたトーレストだったが、そんな無防備なトーレストを見ても、私は彼に魔法を放とうとは思えなかった。

 

彼が、ピュアによる被害者だから……ではなく。

 

ただ、どうすれば彼に勝てるのか、それが私には、全く思い浮かばなかったからだった。

 

気付けば、私の思考は、どうすれば彼を倒せるのか、ではなくて。

 

どうすれば、彼の攻撃から、スターチス達を守れるか、というものへと、変化してしまっていた。

 

やがて、トーレストは破壊した壁から再び私の前へと姿を現す。

私は、そんな彼に何の対抗策も持たないまま、ただがむしゃらに戦うことしかできない。

 

どうすればいい?

どう戦えば、スターチスやレディを守れる?

 

私は、どうすれば……。

 

「キュー、ティ…、来…る…」

 

スターチスが、ボロボロの体で、うまく言葉が紡げないながらも、私に警告を伝える。

 

瞬間、トーレストは、私目掛けて猛突進を仕掛けてきた。

近くには、スターチス。

避ければ、彼女が犠牲になる……。

 

「……なんで……私……」

 

焦りすぎた。立ち位置をちゃんと考えてなかった。私は、目の前のトーレストに気を取られるあまり、スターチス達に被害が及ばないように立ち回ることを失念していたのだ。

 

さっき、トーレストを倒すことから、スターチス達を守ることに、思考を切り替えたばかりだというのに。

 

「……それなら!」

 

私は切り替える。

避ければスターチスに被害が及ぶ。なら、自分の身を犠牲にしてでも、トーレストを止めるしかない。

 

私は、地面に足を踏み締め、全力でトーレストを迎え入れる体勢を整える。

衝撃に備え、魔力を防御のために回し、少しでも人体への被害を抑えれるように……。

 

しかし……。

 

「……躾がなってないよ」

 

「………どう……して……」

 

私が、トーレストの猛突進を受けることは、なかった。

 

トーレストは、沼のようなものから這い出た、黒い両の手によって、その動きを封じられていたのだ。

 

私は、その魔法を知っている。

 

私は、彼女が何者かを、知っている。

 

「キューティバース。一時休戦にしよう」

 

「ブラック……ルーイ」

 

私を助けたのは。

 

私と敵対しているはずの魔法少女、ブラックルーイだった。

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