TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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番外編ですごめんなさい。


間話 魔法少女は闇堕ちしたい!!

 

 

私の名前は、恩智寧(おちね)魅夜(みや)

魔法少女として活動していること以外は、なんの特徴も持たないただの少女だ。

 

…………この世界には、怪人と呼ばれる、街を破壊する理性のない化け物がいる。

そんな怪人から街を守る存在が、魔法少女。

 

私は、怪人の被害から街を守るために、妖精のラブリーと契約し、戦いの日々を送っている。

 

そして、今まさに、その怪人と戦闘しているところだった。

 

「フィルバー! やっちゃって!!」

 

燃えるように真っ赤な髪を持つ、私の仲間……。魔法少女バーニングインテンスが、私……魔法少女フィルバーグレーネに告げる。

私は、彼女に言われた通り、怪人に向けて魔法を放つ。

 

「うん、わかったよ……。『バルーンラット』!」

 

私が言うと同時、ネズミの姿が描かれた風船が次々と怪人に向かっていき、それらが怪人の肌に触れた瞬間、パチンっと、軽く音を鳴らして、怪人の肌を刺激する。

 

「うぎゃっ!」

 

「ナイスフィルバー! あとはうちに任せて! ほうら! 『スプラッシュパニッシュ』!!」

 

私の魔法によって隙ができた怪人に、すかさず魔法少女シューティスターが攻撃をし、怪人にトドメを刺す。

 

私たちのコンビネーションは完璧で、今日も私たち魔法少女の活躍によって、街の平和は守られた。

 

けど……これで終わりじゃない。

怪人は倒した。けれど、私達の戦いは、まだ終われない。

 

何故なら…。

 

「怪人も貴重な戦力、らしいけどなァ。こうも簡単にやられちまうところを見ると、どうにも本当に戦力になってんのか疑問なんだが………。まあいい。やられっぱなしってのも癪だからな。テメェらの相手は、俺がしてやるよ」

 

赤い髪を左半分だけオールバックにした、目つきがするどく、ピアスに変な腕輪と、いかつい格好をした男。

悪の組織『ワ・ルーイ』の、幹部。

彼の存在が、私達の戦闘継続の証となっているのだから。

 

「うげ……幹部じゃん。強敵きちゃった。やべー。うちらで戦えるかな?」

 

不安な思いを口に出すシューティスター。

 

「戦えるよ! 私たちの力があればね!!」

 

対照的に、やる気満々のバーニングインテンス。

 

そして、私は……。

 

「そうだね。が、頑張ろ」

 

今日も本音を隠し続ける。

 

「俺じゃなくて、俺達が、でしょ? あーあ、悲しいなー。イグニス様には私の姿が見えてないんだー。イグニス様が1人じゃ不安だっていうから、ゲームの時間を削ってまで仕方なく来てあげてるのになー。あーあ」

 

そして、男の隣にはもう1人、女の子が立っている。

彼女も、おそらく組織の幹部に名を連ねるものだ。

 

基本的に私達は怪人を倒したあと、このような形で幹部の男イグニスと続けて戦闘に入ることが多い。

なので、怪人を倒しても、気が休まることはなく、連戦を強いられてしまうのだ。

 

おまけに、今日は助っ人までついてきている。確か彼女、魔法をコピーできる『模倣の魔』とかいうのを持ってたんだっけな。あー、面倒臭い。

 

はあ、本当に、ついてないな。

なんで私こんなことしてるんだろ。街を守るなんて、面倒臭いし怠いだけなのに。

 

悪の組織が羨ましい。好きに街を破壊して、好きなように力を振るってさ。

絶対そっちの方が楽しいし、私だってできることなら悪の組織で好き放題やりたかった。

 

けど、それができないんだよね。

なんでかっていうとさ。

 

『みゅ? みー!』

 

妖精がいないと、魔法少女って変身できないらしいんだよね。

けど、私の……私達の妖精はこんな感じで、契約する時以外は言葉を発せないし、多分私が悪の組織側に行きたいって言ったら、魔法少女の力を与えてはくれないだろうから。

だからまあ、仕方なく街を守ることにしてるんだけど。

 

なんで私がこんなことしないといけないんだろうね?

 

そんな風にやる気を出さずに、ぼーっと考えていたら、いつの間にかバーニングインテンスとシューティスターは幹部達との戦闘を始めていて……。

 

「遅れました。戦況はどうなってますか?」

 

「あ……エンシェント…」

 

出遅れた私に対し、同じように出遅れてやってきた桃色の髪を持つ魔法少女……エンシェントカラミティが、私に状況の伝達を求めてくる。

 

 

サボってるって思われたかな…。

もしそうだとしたら、ちょっと面倒臭いんだけど…。

 

「怪人は、私が隙を作ったことで、シューティが倒してくれたんだけど、その後に幹部がやってきて…」

 

とりあえず、サボってないアピールをするために、怪人戦での私の功績をさりげなく挟み込んでおく。

 

「あらあらなるほど? 私の出番が必要ということですね?」

 

けどまあ、多分気にしてなさそうだなと思う。

……それもそうか。彼女……エンシェントは、気まぐれで自由人で……バーニングやシューティみたいに、正義感で魔法少女として街を守っているわけじゃないから。

今私達の仲間になっているのは、バーニングが金で彼女を雇っているからだし。

 

「しかし、どうしてフィルバーは戦わないんです? 幹部相手ともなれば、2人だけでは対処が難しいでしょうに」

 

「それ……は……」

 

……戦うのが、面倒臭いから。

正義の味方として……魔法少女として街を守るのが、馬鹿馬鹿しいから……。

 

なんて、口には出さない。

そんなことを口走ってしまっては、私はきっと…この力を奪われてしまう。だから……。

 

「前々から思っていたんですけど……自分のしたくないことを、わざわざやる必要はないと思いますよ? ええ、だって私だって、こうやって好き勝手に生きてるんですから」

 

………ああ、そうか。彼女にはお見通しなんだ。私が、本当は正義の魔法少女なんて、柄にもないことをしたくはないってことくらい。

 

だって、彼女は彼女自身がやりたいように、好き勝手に行動しているだけなのだから。

 

けど、私が本当にしたいのは……。

 

「そしたら私は……エンシェントの敵になるよ。そうだとしても、自分のやりたいようにやれって、そう思うの?」

 

「別に構いませんよ。だってあなた弱いので」

 

はっきりと言う彼女に、私は呆れて物も言えなくなる。

弱い……か。

ろくに私の戦闘を見てきていない癖に、よくもまあ簡単に言ってくれるものだ。

 

私だって……私だって…好き勝手に暴れられたら……絶対……。

 

「そっちの方が良い目をしていると思いますよ。私は、魔法少女が街を守らなくちゃいけない、なんて固定観念に縛られるのは、よくないと思いますから」

 

「……それじゃあ、私が……街を破壊する魔法少女になるって言ったら?」

 

「良いんじゃないですか? だって、実際にもういますしね」

 

「へ?」

 

「はいどうぞ」

 

そう言って、彼女は私に一枚の写真を手渡してくる。

そこに写っていたのは、漆黒のドレスに、髑髏の入れ墨をその手に彫っている魔法少女の姿だった。

 

「魔法少女ブラックルーイ。『ワ・ルーイ』に協力する、悪の魔法少女です」

 

「う……そ……。それじゃ……」

 

「ええ、いますよ。街を破壊する、わるーい魔法少女は、もう既に」

 

もう、いたんだ。

 

街を破壊して、人々を恐怖させて……。

自分の好きなように、やりたいように振る舞う、悪の魔法少女…。

 

私はもう一度、写真を見つめる。

写真の中に映る彼女は……ブラックルーイは、どこか生き生きとしていて……それでいて……。

 

「……かっこいい……」

 

「気に入ってくれたようでよかった」

 

エンシェントはニコリと、私に微笑みかける。胡散臭い笑みだ。

私が喜ぼうと悲しもうと、彼女からすればどうでも良いというのに。

 

「貴方がどうするのか、私には知ったことじゃないですけど、こういう道もあるんだってことは伝えておきます。それを見てどうするかは、貴方自身が決めてください。敵になるのもご自由にどうぞ。どうせ私の敵じゃありませんので」

 

そう言って、エンシェントは幹部達との戦いに身を投じはじめた。

……そっか、いたんだ。好きなように街を破壊して…好きなように暴れ回って。

好きなように自分の力を解放する、かっこいい悪の魔法少女。

 

私は、エンシェントから手渡された写真を、もう一度、舐めるように見つめる…。

 

私も、彼女のようになれるだろうか。

好きなように振る舞い、好きなように暴れて、自分の欲望を満たすためだけに、行動する。そんな、自己中で、けれどキラキラとしていて、暗闇の中で確かに存在感を放つ、かっこよくてクールな、悪の魔法少女に。

 

「私も……貴方みたいに……」

 

私も、貴方のようになりたい。

貴方のような、“闇堕ち系魔法少女”に。

 

……ずっと諦めていた。魔法少女が、闇側に堕ちるなんて、そんなこと許されないって。

悪の魔法少女として、クールに、悪辣に。カッコよく敵として大活躍するなんて、夢のまた夢だと思ってた。

けど、私は知った。

 

“先輩”の存在を。

私と同じように悪を目指し、そして、私よりも確かな信念で悪になった、立派な“先輩”を。

 

だから私も、目指してみようと思う。

最高にかっこいい、“悪の魔法少女”ってやつを。

 

最高に最悪な、闇堕ちした魔法少女ってやつを。

 

「待っててください先輩……私も、すぐにそのステージに行きます……」

 

だから今は、正義の魔法少女として振る舞おう。

いつか、先輩みたいになるために。

 

その先にある、闇堕ちのために、さあ!




⭐︎恩智寧魅夜(おちねみや)/フィルバーグレーネ

キューティバース達とは別地域で活動している魔法少女。闇堕ち魔法少女に憧れがある。
魔法少女エンシェントカラミティから魔法少女ブラックルーイの写真を見せられたことで、彼女に憧れと尊敬の念を抱き、密かに先輩と呼び、慕っている。

魔法少女に変身すると、グレー基調のドレスに、紫の花(桔梗)が模様としてついている衣服に。ベルトが付いており、ネズミのしっぽみたいになっているのが特徴的。


⭐︎北条センカ/バーニングインテンス

純真無垢な魔法少女。どこまでもまっすぐで、街を守るヒーローに憧れている。金持ち。魔法少女になった理由は、街を守るヒーローになりたかったからというのと、チヤホヤされたいという思いから。


⭐︎南根柚月(みなみね ゆづき)/シューティスター

ギャルな魔法少女。魔法少女に変身する理由は、魔法少女の衣装が可愛くて好きだから。戦ってボロボロになってしまうのもそれはそれで可愛いのでよしとしている。


⭐︎西織妖愛(にしおり あやめ)/エンシェントカラミティ

自己中な魔法少女。魔法少女に変身する理由は、利益とストレス発散。人の上に立つのが好き。負けるのが嫌い。組織と敵対しているのは、バーニングインテンスから金で雇ってもらっているため。


⭐︎ラブリー

バーニング、シューティ、フィルバーと契約している妖精。喋れない。ぷるぷる、ぼく悪い妖精じゃないよ


⭐︎スマイル

エンシェントカラミティと契約してる妖精。出番なし。
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