TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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57分身少女の異文化交流

 

 

ゆーちゃんからの連絡が来た際に対応できるよう、俺は襲撃を行う俺と、ゆーちゃんからの遊びの誘いに乗れる俺の2人に別れることになった。俺はゆーちゃんからの連絡対応担当であるため、連絡を取るためのスマホを持っている。

 

そして、分身魔法によって二手に分かれた後、俺が向かったのは、ゆーちゃんといつも遊んでいる場所の近辺であった。何故向かったかって? 決まっている。ゆーちゃんから遊びの誘いが来たからだ。

 

「お待たせゆーちゃん。ごめんね、最近遊べなくて」

 

「うんうん、全然。私の方もちょっと、色々あったから」

 

俺こと広井愛結の正体がスターチススクラッチにバレてから、ゆーちゃんには全然連絡を取れておらず、ついこの間ようやく電話で声を聞くことができたばかりだった。

けど、ゆーちゃんはこうして俺に会ってくれたし、今まで連絡を取れなかったことに対して、怒っている様子もなさそうだった。

 

「それと、今日は私だけじゃなくて、紹介しておきたい子がいて…」

 

ゆーちゃんが言うと、ゆーちゃんの後ろから、どこか見覚えのある、堀の深い外国人のような見た目の少女がひょいと顔を出す。

 

「こんにちは。私はリーベル=ローゼンベルク。……その……この前はごめんなさい。確証もないのに、貴方達の事を襲ってしまって……」

 

「……? えと、広井愛結です」

 

誰だっけ?

確証もないのに襲った? もしかして、スターチススクラッチなのだろうか?

 

いや、でもスターチスが襲ったのは俺だけで…。じゃあ、目の前のこの少女は…。

 

「あれ? あーちゃん、あんまりピンときてない感じ?」

 

「そういえば……。私、あの時『夢幻の魔』を使っていたから、私の姿をよく覚えていないんだと思うわ」

 

「そっか。変身前でも『夢幻の魔』を使えるんだっけ? リーベルは」

 

「ええ、まあね」

 

…『夢幻の魔』?

その単語って、魔法少女でしか聞いた事ないし……。

ってことはもしや。

 

「この前私とゆーちゃんを襲ってきた、あの魔法少女?」

 

俺が広井愛結の状態で出会った魔法少女で、かつゆーちゃんも一緒に襲われた、となれば、思い当たるのは、俺達に道案内をしてきた、あのドイツ人っぽい魔法少女くらいだ。記憶が朧げで、顔とかをはっきり覚えていなかったんだが、あれは『夢幻の魔』

のせいだったのか。

 

「うん、そうだよ。あそこで襲われた後、私が個人的にリーベルと連絡を取るようになってね。少し仲良くなったから、あーちゃんにも紹介したいなって」

 

「そ、そうだったんだ……」

 

「襲ってしまった事、そういえばちゃんと詫びてなかったと思って……。その、改めて、何だけど……。ごめんなさい。私は、人違いで貴方のことを…」

 

リーベルは、そう言って俺に向けて頭を下げる。

まあ、そりゃ敵がいるかもと思ったら襲わざるを得ないというか……被害が出る前に何とかしなきゃってなるのは当然だと思うし、実際俺がブラックルーイなのは合っているわけだから、リーベルは何も間違った行動はしていないんだけどね。

 

「あの、顔をあげてください。リーベルさんは街を守ってくれている魔法少女なんですよね? だったら、むしろ感謝しかないですし、私達のことを襲ったのも、結果的に勘違いだっただけで、街のためを思っての行動だったと思うので、気にしてませんよ。私もゆーちゃんも、特に怪我一つなく、平穏に過ごせていますし」

 

だから俺は、あまりリーベルが思い詰めないよう、気にしてないアピールをすることにした。まあ、実際気にしてないし、何なら俺が悪いというかリーベルは何も間違った行動をしていないので。

 

……さて、スターチスは俺がブラックルーイであると完全に見破っていたわけだけども、彼女はそうでもないんだろうか?

とすれば、スターチススクラッチは広井愛結がブラックルーイであるということは、他の魔法少女には共有していない?

 

………まあ、少なくとも彼女にバレていないのであれば、ゆーちゃんに俺がブラックルーイであると看破される心配はないはずだ。とりあえずは安心しても良い、のかなぁ?

 

「でも……私は……あんなに必死に友達を庇える貴方のことを、悪者だと断じて、それで……銃口を向けてしまったのに……」

 

ゆーちゃんに危害が加わったり、ゆーちゃん自身がリーベルを許してないとかならまた話は別だけど、ゆーちゃんが個人的に仲良くするようになったっていうなら、別に俺からわざわざリーベルを責める理由もないんだよね。

 

ま、正解だよリーベル。俺がブラックルーイだ! なんてとても言えないので、気にしてないよアピールを繰り返すことしかできないんですけども。

 

「………えーと、とにかく、気にしてないので、そんなに思い詰めないでもらえませんか? 罪悪感を持たれたままだと、交流しにくいっていうか……」

 

「……それもそうね……」

 

「…そうだ! 私今まで魔法少女の友達っていなくて……。だからその……魔法少女のお話とか聞ける人がいたら、是非友達になりたいなぁ〜? なんて」

 

チラチラとリーベルの方を横目で伺うようなそぶりを見せながら、俺はわざとらしく言う。

 

元々ゆーちゃんも俺とリーベルを仲良くさせようと思って彼女を連れてきたんだろうし、実際魔法少女の友達ができれば、『あの悪役娘も実は可愛いところあるんだぜ』作戦も順調に執り行うことができるだろうしね。

 

リーベルと友達になるのは、俺にとってもいいことで、ゆーちゃんだって喜ぶだろう。

 

「………わかった。それじゃあ……。改めて……よろしく、あーちゃん」

 

「え、その愛称はゆーちゃんの……」

 

「へ? 駄目だった?」

 

俺はチラリとゆーちゃんの様子を伺う。

その表情から、特に感情は読み取れない。

 

けどまあ、ゆーちゃんのことだ。俺の愛称を他の人が使っていたところで、そこまで気にするようなタチじゃないだろう。

 

「いや、別にいいけど……。それじゃあ、私も……ベルちゃんとかって呼んだ方がいいかな?」

 

「あー、まあ、何でも。好きなふうに呼んでよ。ベルでもリーベルでも、リーちゃんでも。私は大歓迎だし」

 

「んー、じゃあベルちゃんで」

 

そう言って、俺とリーベル……もといベルちゃんは、互いに握手を交わす。

悪の組織に所属してから、ゆーちゃんの次に友達になるのが、魔法少女だとは思わなかった。

 

え? キュヴァちゃんとかはどうなるんだって?

 

……キュヴァちゃんは俺のこと友達だと思ってるのかな? わかんないや。師匠は師匠だし、ジェネちゃんは叔母だし……。うん、キュヴァちゃんって俺のことどう思ってるんだろ?

 

まあ、向こうから特に何も言われてないしなぁ。ただ一回ゲームしただけ、くらいに思われててもおかしくなさそうな気もする。

 

ともかく、晴れて俺は、魔法少女の友達を獲得するに至ったわけだ。

まさか、襲撃をきっかけにゆーちゃんが魔法少女と交流を深めているとは思わなかったけど、ゆーちゃんとか絶対陽キャでクラスの人気者だし、まあ、誰と仲良くなってもおかしくはないよねって言うのが正直な感想だ。

 

「あーちゃん…」

 

「? どうしたのゆーちゃん」

 

「流石に、愛称は違うのにして欲しかったかな。……その、リーベルを仲間はずれにしたいとか、そういうわけじゃないんだけど……。なんか、私だけの愛称だと思ってたのになぁ……」

 

あ、そっか。そりゃ気になるよね。

 

……これは流石に俺が無神経だったか?

ベルちゃんには悪いけど、ゆーちゃんは大事な親友だしなぁ。

呼び方変えてもらうしかないか。

 

「え、ご、ごめんねゆーちゃん! 確かに私も、別の人がゆーちゃん呼びしてたら、あんまり良い思いしないかも……」

 

「ごめん。2人だけの愛称だったんだ。私が無神経だったね。じゃあ、私は普通に愛結ちゃんって呼ぼうかな」

 

ベルちゃんは俺とゆーちゃんの関係で察してくれたのか、俺への呼び方を変えてくれると言ってくれた。察しがいい子は好きよ。

ふう。まあ、そうだよね。ゆーちゃんからすれば、大切な愛称を他の人に取られたくないと思ってもおかしくはないというか……。

 

いくら陽キャとはいえ、ゆーちゃんだって一人一人との関係を大切に構築しているはずなのだ。それに対して、軽い気持ちで他人を介入させてしまうというのは、あまり気分の良いものではなかったのかもしれない。

 

「……まあ、とりあえず、これからよろしくね、ベルちゃん」

 

珍イベントにより、ゆーちゃんの嫉妬という思わぬ供給をいただくことにはなったが、これで俺と魔法少女であるリーベルは友人となった。

 

さてさて、これからどのようにして『あの悪役娘も実は可愛いところあるんだぜ』作戦を実行していくかなぁ。これからが楽しみだ。

 

なんて、俺が思考を巡らせていると、ふと、1人の少女の声が、耳に届く。

 

「先輩…?」

 

「…? あーちゃんの知り合い?」

 

「先輩って、学校の後輩とか?」

 

声が聞こえた方へ顔を向けるも、そこにいるのは知らない少女で。

彼女は、明らかにこちらを見つめて、『先輩』と、そうこぼしていた。

しかし、ゆーちゃんもリーベルも、その少女のことは知らないという素振りを見せていて。

 

じゃあ、じゃあ。

 

「えーと……」

 

「やっぱり先輩だ! 先輩を見つけた!」

 

じゃあ、目の前の少女は、一体誰なんですか?

 

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