「先輩! どこに行きますか? まずはカラオケ? それともプリクラでも撮りに行きますか? もしくは先輩の家でも!」
「距離近ぁ……」
俺のことを何故か認知している謎の少女と交流することになったわけだが、何ででしょうね、一緒に遊ぶということになった瞬間、若干挙動不審気味で気弱だった彼女の態度が一変。グイグイ系の元気っ子に早替わりしちゃいました。
いやーミステリアスムーブをした時の俺でもこんなに切り替え早くなかったよ?
というか俺の家に来ようとしてるの中々に図々しいっすね…。ゆーちゃんですらまだ呼んだことないのに。
まあ、俺が今住んでるの悪の組織のアジトなんで、誰も呼べないんですけど。
「あーちゃん、本当に知らない子なの? 仲良い先輩後輩関係にしか見えないんだけど?」
「うん、知らない子。話したこともないし、見かけたこともないよ」
「関係ありますよ、私と先輩は。そう! 私と先輩の関係は、古生代にまで遡ります」
「何? 愛結ちゃん達三葉虫か何かだったの?」
「誰がカンブリア紀の生物じゃ!」
「あーちゃん、別に三葉虫はカンブリア紀に限らないよ」
「私のボケにも的確に乗ってくださるとは流石です。それに古生代の中でもカンブリア紀をチョイスするとは……。古い時代を選択することで、私と先輩の親密さをより濃く表現したというわけですね!」
何を言ってるのかよくわからないです…。
本当に急にどうしたんだこの子。さっきまでと態度違いすぎない?
本当に何考えてるのかわけわかんないよ…。怖……。
「しかし私の好みとしては三葉虫よりもアノマロカリス派ですね。なんといいますか、何となく感じる悪の波動といいますか……」
アノマロカリスに悪も正義もなくないか? ただの生物でしかないし…。
犬猫に善悪あるかって言われたら別になさそうだしな。強いていうなら犬が善で猫が悪? あんまりしっくりこないけど、二極化するならそうなるか。ちなみに俺は猫派。
「アノマロカリス好きの女の子ってドイツでも流行ってないと思うわよ。いや、別に私はドイツに住んでいるわけじゃないんだけど…」
「流行ってる流行ってないの話ではなくない…?」
「先輩はどうですか? 三葉虫派ですか? アノマロカリス派ですか?」
なんだその二択。犬猫みたいなノリで聞いてくる質問じゃないだろ。
まあ、そうだな……。
三葉虫もアノマロカリスも一緒じゃね?
いや、全然別物ではあるんだろうけどさ。
んーそうだなぁ。
可愛さでいうと、正直俺はどっちにも可愛さを感じない。だって俺、ストレートに猫が可愛いと思うタイプの人だし、キモカワとか、そういうのに理解がないわけじゃないけど、好んで好きになるわけでもない。
だから、可愛さ判定は不可能。となれば、かっこよさでいうとどうだろうか?
……まあ、かっこよさで判定するなら…。
「アノマロカリスかなぁ…」
「やはり、先輩も波動を感じ取っているようですね…」
波動とは?
さっき言ってた悪の波動がどうたらって話か?
悪の波動って単語自体威力80の技でしか聞いた事ないぞ…。
まあ、かっこいいとかそういう意味の言葉をそれっぽく別の言葉に言い換えてるだけだろうな、多分だけど。
「あーちゃん、何でアノマロカリスの方が好きなの?」
「んー、だってアノマロカリスの方が三葉虫よりかっこいいかなって」
「へ………へぇ………」
ゆーちゃんが珍しく苦笑いをしている……。普段俺の発言に引いたりとかしないのに…。
いや、これ質問が悪くない? 三葉虫とアノマロカリスの二択とか意味わからないでしょ。どっちも一緒じゃん。どっち答えても詰みの質問じゃん。ずりぃよこれ。
「先輩、やはりアノマロカリスの波動を感じ取れるのは私達だけのようですね」
「ゆーちゃん? 何でちょっと後退りしてるのかな? 違うからね? 別にアノマロカリス好きとかいう変な趣味ないからね私」
「う、うん、いいと思うなぁ私…。アノマロカリス好きの女の子って、素敵だと思うよ」
いや、いるとは思うけどさ、間違いなく一般的な趣味ではないよね。そういう趣味持ってる人は古生物学者なり地質学者なりになる人だと思う。
あと、一つ言いたいんですけど、じゃあ何でさっき後退りなんてしてたんですか?
「んー。じゃあ愛結ちゃんはエビがカッコいいと思うタイプの人なの?」
「へ? 何でエビ?」
「え、だってアノマロカリスってエビでしょ。エビの先祖でしょ」
「そうなの?」
俺は詳しくないからなぁ。そう思って、何故か俺を先輩と呼んで慕う少女、魅夜ちゃんの方に顔を向けて問いかける、が…。
「知らないですね。アノマロカリスに興味ないので」
とか言い放ちやがりました。
いや、じゃあアノマロカリスに感じてた悪の波動の件はなんだったん?
かっこよさ感じてたんじゃないんですか?
そもそも、古生代からの仲だとかよくわからんボケをかます時点でという話ではあるが。
「違うよ、アノマロカリスの子孫はいないから。エビはアノマロカリスの子孫ではないよ」
そんな俺たちをよそに、ゆーちゃんがさらっと補足を入れてくれる。
流石はゆーちゃん。陽キャで知識豊富で頭が良い。まさに非の打ち所がない完璧女の子ですね。
「というか、何でこんな話になったんだっけ?」
「先輩と私の関係が古生代がうんぬんの流れから発展した感じですね」
「うん、間違いなく初対面の人同士でする会話じゃないね」
初対面の会話で三葉虫とアノマロカリスの話は意味がわからないというか、これが縁談だったら即破談だと思うよ。成功パターンはそれこそ古生物学者どうしとかそういうパターンしかないんじゃないかな…?
でも案外いるのかな、趣味で古生物好きなだけの人。
いそう。
でも俺とは趣味合わないなぁ。光堕ち好きだったら気が合うんだけどね。
「確かに、私と愛結ちゃんもほぼ初対面だし、魅夜ちゃんに関しては皆初対面だし。正直、初対面の会話って考えたらディスコミュニケーションすぎる気がするわね」
「そうかもしれませんが、今の会話で私は先輩と波動に関して通じ合えたところがあると思います」
「どこが?」
「しらを切るのですね先輩。わかっています。先輩の目的の邪魔は致しません。ですが私も“そう”であると、今の流れで察していただけたはず!」
「なーんか絶妙に話が通じないなぁこの子」
アノマロカリスがかっこいいって点で通じ合えたとかそういう話ですか?
でもあなたさっきアノマロカリスに興味ないとか言ってましたよね。
通じ合えてなくない?
「まあ、愛結ちゃんと魅夜ちゃんは通じ合ったかもしれないけどさ」
「あーちゃん、そうなの?」
「いやいやいや、この会話のどこで私と魅夜ちゃんが通じ合ったと?」
向こうが勝手にシンパシー感じてるだけなんですけど…。
本当に何なんだろうなこの子。会った覚えがないし、あり得るとして魔法少女の知り合いって線なんだけど、正直今まで会った魔法少女のどの子とも性格が一致してないような気がするし…。
やっぱり俺のストーカーなんじゃ…?
あ、ありえるな…。俺って結構容姿は整ってる方だし、たまに鏡見てやっぱ私可愛いなって思ってた時期もあったわけだし…。
いや、別にナルシストってわけじゃないんだよ。お姉ちゃんの方が美人やん、私大したことないね、ってなった後はそんな事なかったし。
ただ、世間一般的に考えて中の上くらいの容姿はあると自負してるんだよね。
上の下くらいかも?
ともかく、俺の容姿は客観的に見て平均より若干整ってる方だと思われるので、そんな俺のことをストーキングするような子がいてもおかしくはないのよ。
……もし俺のストーカーなら…。
「ともかく、私達の初対面率は高いわけだし、カラオケでもいって皆でパーっと歌う方がいいんじゃないかなって思うわけ。デュエットでもしたりすれば、何となく仲が深まる気もするしね」
「うん、そうだね。曲の趣味とかを知ると、お互いのこと何となく知れるような気がするし、そうしよう」
……アジトに帰る時、警戒しておかないとな。
前のスターチススクラッチみたいに、アジトの場所がバレる、なんて事態になりかねないわけだし。
まあ、腕輪型転移魔法機があればその心配はないんだけど、あれ今戦闘に向かってる俺の分身が持ってるからなぁ…。
流石にアイテムは分身で2倍になったりはしないらしい。じゃあ服どうなってるんだって話ではあるが。
生地が薄くなったりしてるのかな?
まあ、そんなことはどうでもいい。
俺のことを何故か認知している謎の少女、恩智寧魅夜。
彼女のことは、十二分に警戒しておいた方がいいかもしれない。