TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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70分身少女達は光堕ちしたい!

 

 

「で、どうするのよ?」

 

「どうする、かぁ……」

 

「今のルーイ……えぇと、椅子に縛りつけてる方のルーイは、ピュアに洗脳されてるんでしょ? だったら、このまま拘束を解いて自由にどうぞっていうのもやりにくいと思うんだけど」

 

洗脳、されてないんだよなぁ。

けど、もう完全にジェネちゃん達は俺が洗脳されているという前提で話を進めようとしている節がある。

 

はてさてどうしたものか。

 

「『支配の魔』でピュア様の洗脳を上書きしようか?」

 

「……いや、ダメだよ。これ以上ルーイちゃんの脳に負荷をかけるわけにはいかないし、分身かつ洗脳されてしまっているとはいえ、この子がルーイちゃんであることには変わりないから。あんまりそういう真似はしたくないんだよね」

 

「確かに。私は何も考えずに『支配の魔』を使ってしまったのでした。これはいかんぜよ」

 

まあ、ジェネちゃんが俺を見る目が、いつものソレに戻っていたのは、良かったかもしれない。俺の正体を探っている段階では、かなり敵意を向けてきていたからね。今のジェネちゃんからは敵意をこれっぽっちも感じないし、俺が光千夜ことブラックルーイであることはちゃんと認識してくれているようだ。

 

「ねえ夕音叔母さん、私に任せてくれない?」

 

「千夜ちゃん…どうしたの?」

 

「私のことだから、私自身で解決したいなって思って。だから、私の面倒は私が見るよ」

 

……記憶を失った光千夜。その性格は、拉致洗脳される前の俺のもの……らしいが。

正直、当時の俺の行動原理とか、思想とか、そんなに事細かに覚えてるわけじゃない。

成長すれば価値観も人生観も変わるだろうし、趣味や趣向だって異なってくるだろう。

 

だから、読めない。

記憶を失い、ただの光千夜となった俺が、どういう行動を取ってくるのか。

 

「ピュアに洗脳されている以上、この子に近づくことは千夜ちゃんの身の危険を意味しているんだよ? ピュアの目的は、千夜ちゃんなんだから」

 

「大丈夫だよ夕音叔母さん。私ちゃんと上手くやるからさ。それに、2人で外に出たりはしないし、基本部屋の中で関わるようにするから」

 

「…………何かあったらすぐ言ってね」

 

「うん。大丈夫だから」

 

そう言って、俺……記憶を失った光千夜は、俺の元へとトコトコと歩いて、俺の後ろに回る。

 

「とりあえず拘束は解いておくね」

 

手際良く、俺の縛りつけられた手足を解放していく、記憶喪失の千夜。

自分ではない自分に助けてもらうって、なんだか変な気分だなぁ。

 

「……夕音叔母さん、ヒンナさん、とりあえず、私は私と一緒に自室に戻ろうと思うんだけど、いい?」

 

「一つだけ条件。……分身は分身のままで。間違っても、分身魔法を解除して一つになってしまわないこと。もし分身魔法を解除したら、洗脳されてない千夜ちゃんの部分もピュアの洗脳に落ちてしまう可能性があるからね。それが守れるなら、いいよ」

 

……当初の予定通り元に戻る……っていうのは無理そうになったなぁ。

しばらくは分身として2人にわかれた状態で行動しなきゃいけないかもしれない。

 

「はーい。分かりました」

 

許可を貰った瞬間、記憶喪失な千夜ちゃんは、俺の手を引いて、強引に自室へと向かい……。

 

「………よし……それじゃ……」

 

扉を閉め、俺を無理矢理ベッドに座らせて、一息つき……。

 

「……………はじめまして、私。……なんだか、変な気分だけど、色々と聞きたいことがあるんだ。いいかな?」

 

……まあ、そうか。

記憶を失ってるんだから、そりゃできるだけ情報は得たいわな。

自分のことを1番理解しているのは、多分自分だし、もし自分の分身なんてもんが現れたら、そりゃそいつに話を聞きたくなるに決まってる。

 

……まあ、答えられる範囲で答えようか。この子も俺自身だし、敵対することはまあまずないだろうからな。

 

「いいよ、なんでも質問して。あー、あと、名前呼ぶ時ややこしいから、私のことは広井愛結で呼んでくれたらいいよ。こっちは千夜ちゃんって呼ぶから。……それで、何から聞きたい?」

 

「呼び名に関しては了解したよ。じゃあ私は愛結ちゃんって呼ぶね。それで……まず、だけど。……夕音叔母さん達が、洗脳がどうこうって言ってたけどさ。………洗脳とかされてないよね、見た感じ」

 

「分かるの?」

 

「まあ、なんとなく。なんか、別におかしいところとかなかったし。あー、だべ? とかおっすおら広井愛結! は、流石にびっくりしたけど……でもあれ私もやっちゃいそうだなぁって思ったから」

 

やるんかい。

前世の記憶を思い出す前の俺も、今の俺とさほど変わらない性格をしていたのかもしれないな。

 

「まあ、洗脳はされてないよ。……流れ的に否定できそうにもなかったし、ピュアのせいにできるんならまあいっかって感じだったから」

 

「ふむふむ。……それで、何で分身なんかしてたの?」

 

分身してた理由か。

根本的なところを辿れば、確か『あの悪役娘も実は可愛いところあるんだぜ』作戦のためだったんだよな。けど、それを説明しようとすると、光堕ちの話からしないといけないし……。

 

前世の記憶を思い出す前の俺って、多分光堕ち最高! とかそんな感じじゃなかっただろうし、理解されないような気もするんだよな。

 

………まあ、でも自分自身に嘘つく必要性も感じられないし、素直に言っておくべきか。

 

「……えーと、千夜ちゃんはさ、光堕ちって知ってる?」

 

「光堕ち…?」

 

……あーやっぱ知らないよなぁ…。

まあ、そうだよね。昔の俺は陽キャで天才でクラスの人気者の美少女でしかなかったから、光堕ちだなんて特殊な趣向なんて持ち合わせてなかったよね。

 

「……例えば、アニメや漫画で、敵側にライバルポジションのキャラがいたとします」

 

「ほうほう?」

 

「そのキャラクターが敵側を裏切って、味方側についてくれる展開、熱くないですか?」

 

「………それが光堕ち?」

 

「Yes」

 

「ほう………」

 

伝わった……かな?

……まあ、理解はされないかもしれないが、伝わればそれでいい。

自分自身のことだし、味方にはなってくれるだろうからな。

 

「…………やっぱ私なんだなぁ」

 

「?」

 

「いや、何でもないよ。……それで、どうしてその光堕ち?っていうのと、分身魔法が関係してくるの?」

 

「………実は……」

 

俺は『あの悪役娘も実は可愛いところあるんだぜ』作戦について、千夜ちゃんに事細かに伝える。

 

自分の黒歴史を自分自身で暴露しているような気分になって、少し気恥ずかしい気持ちになってしまったが、よくよく考えれば相手は自分。むしろ、俺からこんな作戦が出てきたことに1番羞恥心を感じているのは千夜ちゃんなのかもしれない。

 

なんて下らない現実逃避でもしながら話していくうちに、一通り光堕ちに関する情報共有は千夜ちゃんに行うことができた。

 

「………ほえー……」

 

「まあ……そんな感じ……うん………」

 

「……面白いね」

 

「へ?」

 

「……やっぱり、愛結ちゃんは私なんだって、話を聞いていて確信したよ」

 

「はひ?」

 

「……私もね、同じなんだよ。自分自身なんだから、そりゃそうだろって話ではあるんだけどね」

 

……どういう、ことだ?

 

「私なら、私の気持ちもわかるよね」

 

もしかして………。

 

前世の記憶がなくても、俺には光堕ち願望があったのか…?

 

「昔からそうだった。私はね、悪い人とか、素行不良な子とか、そういうのにばっか構ってた」

 

そうだ。そうだった。

俺は確か、不良とか、いじめっ子なんかに積極的に声をかけにいって…。

 

「どうしてだろうね、不良を更生させたり、いじめっ子がいじめを行うのをやめさせたり。昔から、そういうことばっかりやってたんだ。どうして、そんなことしてたんだと思う?」

 

前世の記憶を思い出す前から。

ずっと俺は……。

俺の魂には、刻み込まれていたんだ。

 

「答えは簡単。………悪い人が更生する瞬間、それが見たくて、私は不良やいじめっ子に声をかけ続けていたんだよ」

 

……善意とか、全くなかった。ただ、悪い奴が良い奴になった瞬間、俺の中の……胸の中にある何かが、ポカポカと暖かくて、何か満たされるような感覚がしたんだ。

 

「まあ、正直どうかしていたと思うよ。だって、それのせいで私はキュートに迷惑かけちゃってたしね」

 

一度それを味わったら、止まらなくて。

 

刺激を求めて、さらなる更生をこの目に焼き付けたくて。

 

ヤクザの本拠地に行こうとして、誰かに止められたり。

刑務所に忍び込もうとして、誰かに止められたり。

 

本当に、人が更生する瞬間を見るために、危険な橋をいくつも渡るような、そんな危ない子だったんだ。

 

………結局、俺が酷い目に遭うことは、組織に拉致洗脳されるまでなかったわけだけど。

 

……あれ? 誰が俺の奇行を止めてくれてたんだっけ?

 

……まあ、そんなことはどうでもいいか。

とにかく、俺は昔からそんな奴だった。

 

……思えば遊美と仲良くなったのだって。

 

俺がいじめっ子を更生させた功績から、クラスで孤立し気味な子とか、話しかけにくい子とかと、光千夜なら交流してくれるだろうと、いつの間にか周りがそういう風になってたからっていうのもある。

 

「でも、そうだなぁ……。ちょっと、刺激が欲しいっていうか。……私、周りから良い子だって言われてきたからさ。自分自身では、人が“更生”するその瞬間っていうのを味わえないなって、ちょっと思ったんだ。人気者で、明るくて優しい千夜ちゃんには、更生しなきゃいけない要素なんてないんだなって」

 

そっか。

最初から、俺は俺だったんだな。

 

最初っから、光堕ちへの渇望を抱いて生まれてきていたんだな。

 

「……だからこそ、私は思うんだよね。……こんな美味しいチャンス、2度とないって。邪魔、されたくないって」

 

……そして、目の前の千夜ちゃん……いや、俺自身が言うセリフも、もうわかっている。

 

「……光堕ち展開は、2度もいらない、だよね」

 

「……光堕ちって表現を借りるなら、そういう言い回しになるね。…さすがは私。私の考えてることなんて、お見通しってわけか」

 

そうだ。つまり。

 

「……今日からライバル同士ってことかな?」

 

「そうなるね。どちらが先に光堕ちできるか、どちらが先により良い“更生”を味わえるか」

 

今日ここに、正真正銘。

 

本物の光堕ちライバルが、誕生してしまったのだ。

 

「……まあ、とはいっても、そっちの光堕ちを邪魔するつもりはないよ。あくまで、ライバルとして、公平に行こうよ。自分同士だし、本気で険悪になるのは嫌だし」

 

「まあ、そうだね。自分同士で喧嘩とか、アホくさすぎて笑えないもんね」

 

自分と本気でやり合うっていうのは正直ごめんだ。それに、どちらが先に光堕ちしても、分身を解除して元に戻れば、その光堕ちは自分の経験として記憶できるわけだしね。

 

「たまには協力するぐらいが丁度いいかもね。もちろん、その光堕ちってやつは私がいただいていくつもりだけどね」

 

「光堕ちを譲るつもりはないよ」

 

けど、それはそれだ。

分身を解除すれば元通りになるとは言っても、やっぱり光堕ちの瞬間を自分で味わいたいって気持ちはあるからな。

 

だからやっぱり、この勝負、負けられない。

 

先に光堕ちするのは……。

 

 

俺の方だ!

 

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