アジトに帰還し、ピュアに洗脳されたんじゃないか疑惑をかけられた翌日。
俺はもう1人の俺、千夜ちゃんと共に、ジェネちゃんと師匠を交えて会議を行っていた。
「……2人とも来たね。……それじゃ、今後の方針について話していくんだけど」
「……今後の方針、ねえ」
「まずは明日の予定から。……急で申し訳ないんだけど、幹部トーレストが撃破されてしまったことについて、緊急で幹部集合会議が行われることになったの」
幹部集合会議っていうと、師匠が幹部様のアジトを破壊しちゃった時に行われた、アレか。
確かあの時の会議では、キュヴァちゃんと幹部イグニスが険悪な雰囲気だった気がするなぁ。
「……トーレストを倒したのは、ルーイと魔法少女キューティバース達だっけ?」
「そうだね。けど、どちらにも倒した記憶はない。それに、どうやらトーレストはピュアに脳を弄り回されて、都合の良い手駒として使われた状態だったらしいからね。責任の所在は千夜ちゃん達には行かないと思うよ」
「けど、実際にトーレストを倒したのはルーイだわ。事情を聞かれたっておかしくはない。かといって、幹部集合会議に連れて行かないのも、無理がある話だわ」
なるほどな。つまり、幹部集合会議に出席する上で、その“トーレストを倒した理由”を聞かれたりする事があるかもしれないから、どうしようという話だな。
トーレストを倒した張本人である俺が会議に出席するわけにはいかないし、幹部集合会議に出席しない場合、幹部様がなんて言うかな。少なくとも、俺を出席させなかったジェネちゃんや師匠から、俺を引き離すくらいのことはするだろう。
あとは…。
「その幹部集合会議、私と千夜ちゃん、どちらが出席するんですか?」
2人いる俺、どちらが会議に出席するのか。これは問題になってくるだろう。
2人一緒にというわけにはいかない。少なくとも、ジェネちゃん達は俺の分身魔法の存在を、幹部様には隠し通そうとしているわけだし。とすれば、どうするのか。
「……前の幹部集合会議の記憶がある方がいいわね。……となると、自然とルーイの……ピュアに洗脳された方のルーイが出席することになるわけだけど」
「その場合、下手にピュアと連携されると厄介なんだよね。もしルーイちゃんの方を連れていくなら、絶対に目を離さないようにしないと」
実際には俺はピュアとは繋がっていないわけだが、ジェネちゃん達目線はそんなことわからないもんなぁ。
うーん、まあ仕方ないことではあるんだけども。
「…………じゃあ、私はお留守番ってことでいいんですかね?」
「……まあ、そうなるね。けど、千夜ちゃんをアジトに1人残しておくのは不安だからね…。幹部集合会議って名の通り、幹部は全員出席する必要性があるから、私やヒンナちゃんがそばに居るっていうのも難しいし……」
ん? でも前の幹部集合会議では、2人くらい欠席してなかったっけ?
確か撃破されたっていうトーレストと、俺がキュヴァちゃんの上司だと勘違いしてたイコルって幹部が。
それじゃ駄目なんだろうか?
「質問いいですか?」
「どうしたのルーイ」
「前の幹部集合会議では、トーレスト様とイコル様が欠席されてましたよね? ああいう感じで欠席するのは駄目なんですか?」
「……前の場合は、トーレストとイコルはそれぞれ代理をよこしていたからね。だから、本人が欠席しても最悪問題はなかった。けど、私やヒンナちゃんにはその代理がいないから」
なるほど。確か、キュヴァちゃんがトーレストの、もう1人の老人がイコルの代理をしてたんだっけ。
……じゃあ、代理人のいない師匠やジェネちゃんは、幹部集合会議に必ず出席しなければいけないということになるのだろうか。
……いや、でも。
キュヴァちゃんの上司であるトーレストが撃破されたことによって、キュヴァちゃんの上司はジェネちゃんに変更されたはず。
となれば……。
「………ジェネちゃんはキュヴァちゃんを代理で立てればいいんじゃないですか?」
「残念ながら無理なんだ。そもそも、キュヴァちゃんが私の下についてるのも一時的なものでしかないし、幹部集合会議は、キュヴァちゃんがどの幹部の下で活動するか、正式に決めるためのものでもあるからね。代理なしでも、どのみちキュヴァちゃんは出席しなくちゃいけないんだよ」
なーるほど?
話を聞く感じ、キュヴァちゃんが当人として出席すると同時に代理人としても出席する、所謂兼任ってやつは出来なさそうだし、どちらにせよ師匠とジェネちゃんは出席になるのか。
そんで、どう足掻いてもアジトを開けることになるから、無防備になる俺、光千夜ちゃんが心配であると。
ふーむ。どうしたものか。
「まあ、ピュアも幹部集合会議には出席必須だから、ピュア自身が直接千夜ちゃんを狙いにくる心配はないって思ってるんだけど……。ピュアは私を出し抜いてきたからね」
「……あんた、こっそりピュアと手を組もうとしてたわよね。まあ、結局、ピュアに出し抜かれてしまったせいで、協力関係に持ち込めなかったわけだけど」
え、そうなん?
ジェネちゃんピュアなんかと組もうとしてたの?
いや、あいつはやめた方がいいって。なんか胡散臭いし。
「……夕音叔母さん…私を洗脳しようとした人と協力しようとしてたんですか?」
「ち、違っ! 違うの千夜ちゃん。私は、オクトロアから千夜ちゃんを守るためにピュアに協力を持ちかけようとしただけであって…。まさかピュアが千夜ちゃんを洗脳装置にかけようとしてるなんて1ミリも思ってなかったから……」
「あんたが何考えてるのかは知らないけど、協力を投げかけるならイグニスやイコル辺りにすれば良かったのよ。イグニスは裏がないし、協力できそうになかったらキッパリと断るわ。あいつああ見えて誠実なところあるし」
あー、ジェネちゃん意外と抜けてるところありそうだしなぁ。協力相手ミスっちゃうのもあり得なくはないか。
「イグニスじゃあ腹芸はできないでしょ。オクトロアを出し抜こうと思ったら、ああいう実直な奴じゃダメなの」
なんでそんなに幹部様を出し抜こうとしているのか。別に幹部様は俺を悪いように扱ったりはしないんだけどね。どうも触手の見た目をしてるせいで悪く捉えられがちな気がしなくもない。実際は真面目で勤勉な働き者さんなんだけどね。
「ならイコルにすればいいのに。ピュアなんて選ぶ時点でナンセンスよ」
「……ヒンナちゃん、分かってないなぁ…。イコルは私に協力することはあり得ないんだってば」
「? あいつプライド高いように見えるけど、意外と協力してくれるわよ?」
イコルって幹部がどんな存在かは知らないけど、ピュアの話によればイグニスに誘われて別地域の魔法少女と戦うこともあるっぽいし、確かに、案外協力してくれるタイプなんじゃないかなって気もするな。
「………ともかく、現状の課題は千夜ちゃんをどうするか、だよ」
そういやそんな話だったっけ。
うん、そうだな。一応半身ではあるし、俺だって千夜ちゃんに危害が及ぶ状況は好ましくない。
だから………そうだな…。
「ラフに任せれば?」
「ぜっっっっっっっったいダメ!」
「えぇ…?」
どのみちアジトに残るし、せめてラフに千夜ちゃんを見守ってもらうくらいした方がいいんじゃないか? とは思わなくもないが。
………何故か全力で拒否された。
いや、まあそりゃ………ラフみたいな小さい妖精に誰かを守る力があるのかと問われれば?マークちゃんなんだけどさ。
そんな全力で否定しなくても良くない?
うーん。ラフに見てもらうのもダメなら、そうだな……。
「じゃあ私が残ろうか」
「……ルーイちゃんが?」
「うん。だって、千夜ちゃんがピュアに洗脳されるかもしれないっていうのが不安なんでしょ? だったら、私の方が残ればその心配はないじゃん?」
「…………確かに………それは……そうだけど……」
「それに、前の集合会議の話は、こっちで共有してあげればいいだけだからね」
俺が残る。これが最適なんじゃないだろうか。
ピュアも会議に出席するんだろうし、どのみち心配しすぎなんじゃないかって気もするけど、万が一を考えるなら、うん。これが良いと思う。
「………けど………」
「……………はぁ……なら分かったわ。私に伝手がある。そいつにルーイを守ってもらえば大丈夫だから」
「ヒンナちゃん、友達とかいるの?」
「失礼なっ! いや、まあ友達とかではないけども。まあともかく、アジトに残すルーイは、そいつに任せることにするわ。それに、洗脳されてるとはいえ、それでもやっぱり心配だったんでしょ?」
「はぁ……そうだね」
ふむ。それじゃあ俺は師匠の言う伝手とやらと一緒にアジトでお留守番、ということで良いんだろうか。
まあ、どうせ会議出席しても立たされるだけだしな……。
「分かった。それじゃあ良い子で留守番しておきます」
ちょっとイコルって幹部がどんなのかとかは気になるけど、まあ2人で出席ってわけにはいかないからね。
「……幹部会議かぁ、どんな感じなんだろ?」
「モルモットの扱いをされる場所だよ。気をつけてね」
「も、モルモット…? ど、どんな扱いされるんだ…?」
困惑してるけど、そんな酷い扱い受けるわけじゃないよ。まあ、言わないけど。
こういう新鮮なリアクションを楽しめるのも面白いな。前の分身より味があるかもしれない。
まあ、ともかく。残念ながら明日の会議はお留守番ということになった。
伝手とやらが来るかもしれないけど、どちらにせよ暇そうだしなぁ。
ラフとゲームでもして暇潰そっかな。うん、そうしよ。