そんなこんなで、俺の半身含めたジェネちゃん達一行は幹部集合会議へと出向いていきましたとさ。
で、アジトに1人残された俺は、これからラフのところにでも行ってゲームで遊んでこようかなって考えてるところなんだけど……。
「ルーイ」
ふと、後ろから声をかけられて振り返る。
そこには、幹部集合会議に出かけたはずの師匠の姿があった。
「師匠? どうしてここに?」
「洗脳されててもその呼び方は変わらないのね。……まあ、ここに戻ったのは一時的によ。言ったでしょ、伝手があるって」
そりゃ洗脳されてないからね〜。というか、そういえば伝手があるって言ってたね。完全に忘れてた。
よく見てみると、師匠の後ろには1人のご老人が立っていて………。
なんとなく見覚えがあるような…?
「はじめましてルーイ様、ワタクシの名は湿島と申します。本日はルーイ様の護衛の依頼をヒンナ様から受け、こちらのアジトへ来させていただきました」
白い髭を生やした白手袋の老人は、丁寧に挨拶をする。
彼は健康的に大丈夫なのか心配になるくらいには細く、それに相反するかのように、背筋はピンと伸びている。スレンダーと称するのがピッタリな体型をしている。服装もタキシードであり、背筋が真っ直ぐで整っているのも相まって、物凄く礼儀正しい印象を受ける様相をしていた。
「ブラックルーイです。本日はよろしくお願いします」
なんとなく俺も礼儀正しくしなければと、ぺこりと頭を下げ、丁寧に挨拶を交わす。
…どこかで見たことがあると思ってたけど、あれだな。1回目の幹部集合会議の時に、不参加だった幹部の代理として出席してた人だ。
「……師匠って湿島さんと知り合いだったんですか?」
「……まあ顔見知り程度よ。イコルとそれなりに交流はあるから、湿島を貸してもらったってだけ」
あーそっかぁ。
湿島さんみたいなタイプと師匠じゃ全然合わなさそうだもんなぁ。
「まあ、師匠って礼儀正しさとかなさそうですもんね〜」
「……それはピュアに洗脳されてるから出た言葉? それとも、本心からそう思ってるのかしら??」
師匠が目を細め、まるで糾弾するかのように言う。
おぉ怖い。いじるのもこれくらいにしておきましょう。人生引き際が大事なので。
「タブンセンノウノセイダヨー。たはは!」
「…………怪しいわね……」
ん…?
というか、そのイコルって幹部には、俺が分身したことを伝えてるってこと?
伝えてないにせよ、湿島さんがここに来てる時点で、イコルと湿島さんに俺の分身の存在がバレるのは必然なわけで……。
「……あの、師匠、私の分身のこと、バラしたんですか?」
「まあね。といっても、イコルならルーイの秘密をバラすような真似はしないわ。湿島も、イコルに忠誠を誓っているから、裏切ることはないし」
自信満々げに師匠は言うが、正直不安だ。
俺と違って師匠はポンコツだからなぁ……。そのイコルって幹部、裏で何してるかわからんよ? もしかしたら幹部集合会議でバラされてるかもしれんよ? 大丈夫そ?
……まあ、信用するしかないか。向こうの千夜ちゃんに頑張ってもらおう。最悪、バレたらバレたで立ち回りはまた考えれば良いし。
「とにかく、幹部集合会議中は湿島に面倒を見てもらうことになるから、そういうことで」
そう言って、師匠はアジトから去っていく。
幹部集合会議へ出席するために。
さて、初対面の湿島さんと取り残されてしまったわけだが…。
「……えーと、湿島さんって、テレビゲームとかします?」
「……それなりには嗜みますよ」
「じゃあ、ゲームしません?」
と言うわけで……。
「たのもー!」
ラフの部屋へとやって参りましたー!!
ラフの部屋の鍵は、ジェネちゃんの部屋から拝借したよ!
ま、この間も遊んだばっかだし、その時にラフと交流して、そんな悪い妖精じゃないってことは理解したし、まあ大丈夫でしょ!
そんじゃ、久しぶりに出会ったゲーム友達に……!
「ラフ〜! 久しぶり〜!」
ハイタッチ!
……しようと思ってたんだが…。
『ひ、ひぃぃぃぃぃ!?!!』
「ら、ラフ…?」
な、なんかめっちゃ怯えてるんですけど…?
ど、どしたん? 話聞こか?
「ラフ、落ち着いて、ほら、大丈夫だから。ね?」
俺はラフを優しく包み込み、赤子をあやすようにして落ち着かせる。
ラフの小さな体はガクガクと震えていて、収まる様子はない。が、大声を出して怯える様子は、もう見せなかった。
「………状況が飲み込めないのですが……」
「私もよくわからないです。ラフ、どうしたの? 何があったの?」
『ゆ、ゆるして………』
な、なんだなんだどうしたんだ?
本当に大丈夫か? 一応一緒にゲーム遊んだ仲だし、それなりに心配だぞ?
『……ぼく、夕音を怒らせちゃったんだ…。それで、それで……あ、そうだ、目隠し、しとかなくちゃ……』
そう言って、ラフは俺の腕の中から抜け出し、ふらふらとしていて不安定な体でふわふわと浮遊して、目隠しを手に取る。
「目隠しって、なんで…?」
『……ぼくがこの前、ルーイちゃんに対して……その……』
そういえば、はじめてラフと遊んだ時、ジェネちゃんに、ラフの目は見るなって言われたな……。
………あれ? あの時、確か俺って……。
「……ラフ、この前の時、私ってラフの目を見たっけ?」
『ひ、ひっ! ち、ちが! 悪気があったわけじゃないんだ! ぼ、ぼくも、ちょっとここから出たくて…!』
よく分からないが、まあ多分俺はラフの目を見てたんだろうな。その結果、何かしら事件が起こってしまって、その件でラフはトラウマを植え付けられて、あんなにビクビクするようになってしまったと。
……ラフって多分悪い子じゃないし、目を見てしまった結果事件が起こってしまったのなら、多分それは俺のせいだろう。というか、ラフの意思に関係なく発動する魔法、とかなら、制御不可能だし仕方ないと思うんだよね。
だから……。
「ラフ、いいんだよ。分かってるから。大丈夫」
『わ、分かってるって、何が……』
「私の注意不足でもあるからさ、ラフの目を見てしまったのは。だから、ラフは悪くないよ。悪いのは私だから」
『……は…? 何を言ってるんだ…? ぼくは……君を利用しようとして……』
利用しようと?
……ん? 話が噛み合わないな。まあいいか。トラウマでビクビクされてたらゲームどころじゃないし、こっちも気分悪いしな。はやいとこ立ち直っといてもらわないと。
「いいよ、そんなの。一緒にゲームした仲じゃん。あの時のことは、お互い謝ろう」
何を謝るのか知らんけど。
「だからさ、もう一度、一緒にゲームしようよ、ほら、ね?」
『………どうして、そんな……』
「だって、私達、友達でしょ?」
『な、なんなんだ、なんなんだよぉぉぉ!!!』
俺が言葉を投げかけるたびに、ラフは頭を掻きむしり、発狂したように体を震わせる。
………怖。
いや、まあトラウマに苦しんでるんだろうけど。
……あーこりゃ、ゲームどころじゃなさそうだな。
「……ごめんなさい湿島さん。テレビゲームは無理そうです」
「まあ、仕方がありませんよね。そっとしておきましょう」
せやな。
なんか可哀想なことになってるっぽいし、そっとしといてあげよ。俺はメンタルケアできるような人じゃないんだ。そういうのはカウンセラーに頼んでおくれ。
ま、今度キュヴァちゃん来た時にカウンセラーやらせてみるか。ワンチャンそれでトラウマ克服できるかもしれないしね。
「ラフ、またね。今度はキュヴァちゃんも連れてくるから。それじゃ」
俺はそう言って、ラフの部屋の扉を閉める。
あーあ、ゲームしたかったのになぁ…。