いーみがわからん。
……シャイニングシンガーってもしかして持病持ち?
割と重い設定持ってるタイプの人なんです?
とにかく、何故かは知らないけど、姉はいないよー、ついでに妹も弟も兄もいないよーって話をしたらシャイニングシンガーさんが不安そうな顔を辛そうな顔に変身させて胸を押さえて呼吸が荒くなり出したわけなんですよ。
どういうこと?
なんか地雷踏んじゃったのかね?
本当によく分かんないや。
まあ、実際俺兄弟姉妹いなかったからね。一人っ子だったんよ。だからまあ、正直にその通りで答えてたんだけどさ。
にしてもさぁ。質問するって言っても限度があるでしょ。何から何まで質問してきて、そりゃ、善良な魔法少女からすれば、どうしてあんなことするんだー! 何か理由があるに違いない! ってなっちゃうのもわかるんだけどさ。それにしても、よ。
いやね、普段の俺だったらそんなに不満じゃなかったと思うよ? けど分身してたからさ。
本当に焦ってたんだよね。なんか、生命力が削られる感覚? そんな感じで、あんまり長時間分身するのって体に良くなさそうだったからさ。ちょっと怖かったんよ。何ならビビりすぎて漏らした。
まあ、いいか。無事、分身状態解除して元通りになれたわけだし、結果オーライ。
といっても、当初の予定だった、『あの悪役娘も実は可愛いところあるんだぜ』作戦はあんまり上手くいかんかったんだけどね。
というのも、シャイニングシンガーの調子が悪そうだったし、遊び呆けている俺を見せつけてもあんまり効果なさそうだなって思ったんで、とっとと分身に合流してもらって、とりあえず『あの悪役娘も実は可愛いところあるんだぜ』作戦は今日は見送りって形で終わらせることにしたんだよね。
「まあ、『あの悪役娘も実は可愛いところあるんだぜ』作戦の頻度は少し抑えめで行くか。分身怖いし」
それに、魔法少女シャイニングシンガーの様子がおかしかったのを見るに、多分まだ俺の光堕ちのターンではないと見た。
まあ、シャイニングシンガーには何かしらトラウマとか、そういう類のものがあるんだろう。
んで、初戦闘と2度目の邂逅で見事にその地雷を踏み抜いてしまったと。
つまり、魔法少女向いてる向いてないとかそういう話じゃなくて、今現在はシャイニングシンガーの成長エピソードの途中なのだ。
うん、納得だ。そう考えると、今までのシャイニングシンガーの不可解さにも説明がつく。
なーんだ。成長エピソードの布石かー。なら安心した。
ただまあ、あんまりにも成長エピソードのターンが長すぎても困るからね。俺が光堕ちするまでに、そこんとこは何とか克服してもらうことにしよう。場合によっては俺も手を貸すぜ。
「さてと、それで……なーにしてんの? 幹部さ、ま!」
「これはこれは。ブラックルーイさん。少々資料の整理をしておりまして」
悪の組織『ワ・ルーイ』は、首領クロマックを軸に据えた組織だ。
目的は、世界征服。らしい。あんま知らん。
で、当然首領クロマックです、はい終わり! なんて単純な構造ではなく、クロマックの次に偉い幹部って地位についてるやつがいる。
幹部の数は全部で7人で、内6人は俺が滞在しているアジトにはいない。
だから、ここにいるのはその7人の内の1人で、基本ずっとこのアジトに滞在している奴なんだが。
どう見ても人間の見た目をしていない。
もう一度言う。
どう見ても人間の見た目をしていないのだ。
目もある。鼻もある。口もある。んで耳も多分ある。けど、見た目は人間じゃない。
簡単に言うと、触手の集合体だ。腕も数本の触手で形成されてるし、その割には手を見ると指は5本。見た目触手だけど。
あ、ちなみに俺の脳クチュを行った触手はこいつの体から取ってるらしいですよ。
実質俺の初めての相手です。何のって? 脳クチュのだよ!
「ふーん。その資料、私が見てもいいやつ?」
「あーこちらは別に構いませんよ。見られて困るものではありませんし、貴方にも関係してくることですので」
それじゃあお言葉に甘えて、なんて一言添えて、触手型幹部君の見ていた資料なるものに、俺も目を通してみる。
「げっ、何でこんなの撮ってんの?」
「今後のために必要だったので。こうして写真や動画で記録を残しておけば、今後2度目を行う時にスムーズに事が運ぶでしょう? そのためです」
触手幹部君が持っていた資料は、俺が脳クチュ洗脳かまされた時の写真だった。
こうしてみると間抜けだね〜俺。なんか恥ずかしいや。
「あんま他の人に見せないでよね〜これ。恥ずかしいから」
「必要な時しか使わないので安心してください。それと、動画もありますが、見ます?」
「いい、いい。自分の醜態をみたくはないし」
「そうですか。こういうのは本人確認を事前にしておくべきかなとも思ったんですが」
何が楽しくて自分が洗脳されているところ(実際にはされてないが)を見なくちゃならんのだ。俺は光堕ちがしたいのであって、悪堕ちの過程になど全く興味はないのである。
それと、本人確認とか言っているが、拉致して勝手に映像撮ってる時点で今更許可取っても遅いからね? 何まとも風吹かしてるん? 君ら犯罪者集団だよ?
「本当に必要な時だけにしてよ?」
「大丈夫ですよ。普段はしまってありますので。しかし、中々見つかりませんね、魔法少女の卵は」
「みたいだね」
後から聞いた話だが、魔法少女の素質があるものを探すのは、中々大変な事らしい。
俺の時に組織が必死になって攫ったのも、魔法少女の素質があって嬉しくて飛びついた結果なんだとか。実は拉致されるかなり前から、俺の情報は収集されてたみたいなんだよね〜。当時の俺はそんな事全然気づかんかったわ。
交友関係とか、家族構成とか、一応知られてるらしいよ。恐ろしー。
だからまあ、仮に洗脳されてないからって組織から逃げ出してても、情報既に持ってるわけだから、逃げられなかったかもね。ま、俺としちゃそっちの方が好都合だからありがたいけど。
「それに、最近は魔法少女も増えてきたので、仮に素質がある子を見つけても、中々拉致する機会が見つからないのです」
「幹部様も苦労してるんだね。いつもお疲れ様」
クロマック君偉そうにしてるだけで何もしてくれないからね。いや働けよ。仮にも組織のトップだろあんた。って思うけど、俺は一応クロマック様バンザーイってなるように洗脳されてる(ということになっているらしい)ので、反抗的な言葉をクロマック君に投げかけることはできない。
「そうなんですよ。今まで素質のある子だと目をつけていた子も、魔法少女が邪魔して拉致できませんでしたし、気づいたらその目をつけていた子が魔法少女に覚醒していましたからね」
「マスコットよりも先に見つけたのにね〜」
私が先に少女を見つけたのに! 略してWSSだね。
ま、仮に魔法少女の素質ある子を見つけて拉致したところで、洗脳装置はぶっ壊れてるのでなーんの意味もないんだけどね!
光堕ちってさ、繰り返すとダメなんだよ。
1作に1回でお腹いっぱいなんだよね。強いて2回目で許すパターンがあるとすれば、主人公ないしその仲間たちの誰か1人が闇堕ちして、光堕ちで戻ってくるパターンとかくらいかな。あれは光堕ちというよりも、闇堕ちして闇堕ちから戻ってくると表現するのが正しい気もするけど。
少なくとも、俺と全く同じパターンの光堕ちする子が出てくると、二番煎じになっちゃうからね。もし俺よりも先に光堕ちする奴が現れたら、俺はもう心の底から闇堕ちしちゃうね。
俺の光堕ちの機会を奪いやがって! 絶対に許さん! って怒りのままに闇堕ちの覇道を歩むことになるだろう。
「しかし、大丈夫ですか? また1人、新たに魔法少女が誕生しましたよ。仲間が必要では?」
ん? 俺が知らぬ間に、新人魔法少女ちゃんが生まれてたのか。おめでたいね〜。どんな子なんだろ? ま、会うのはまだ先になるだろうけど。
「大丈夫だよ。仲間がいなくても、私なら上手くやれるから。だから、安心して見てなよ」
光堕ちするまでは、ちゃーんと仕事してあげるからさ。